ドーパミン・ファミリー
「ドパガキ」というスラングをご存知だろうか。
スマホ依存になり、ゲームやショート動画などで常に強い刺激を求めるようになった“ドーパミン中毒のガキ”を指す言葉らしい。
今年に入ってから、目にするようになった。
「ドパガキ」になると、集中力が落ちる。
活字どころか、漫画が読めない。理解できない。
映画や動画を倍速で観る。
スマホがないと落ち着かない。
何を隠そう、私もドパガキだ。
アラフォーの私は、ドパババアといったところか。
10代の頃、私は本の虫だった。
中学でも高校でも、図書館の貸し出し数ランキングで必ず上位に入っていた。
だけど、今となっては。
SNSを常にチェックしている。
配信サイトで映画を観ても、スマホを手にしてしまう。
漫画なら読めるのに、活字は頭に入ってこない。
興味を惹かれる本を買っても、積読となる。
仕事中に手が空くと、ニュースサイトを眺める。
(断じてサボってはいない)
そんな私に、昨年、衝撃的な出来事が起きた。
インスタから「知り合いかも?」という通知が来た。
私が連絡先を知る、数少ない人物の誰かがインスタを始めたらしい。
へぇ、誰だろう。
そう思い、ページを覗きに行くと、そこには父のフルネームがあった。
父!!?
らくらくフォンを使い、おぼつかない手つきで文字入力する。
スマホの操作も、よくわかっていない。
Wi-Fi機器を買っても扱い方がわからず、私が設置した。
あのアナログな父が!!
SNSを!!!
きっと、この衝撃は、父を知る人にしか伝わらないだろう。
だけど、誰かに伝えたい。
まさに“身内ネタ”である。
私はすぐさまスクショを撮り、妹にLINEした。
妹も笑っていた。
それからというもの、父は暇さえあれば、インスタのストーリーを眺めるようになったようだ。
実家に帰っても、ひたすらスマホを眺めている私を笑っていたのに。
父だって立派なドーパミン中毒じゃないか。
やっぱり私たち、親子だね。
私たちは、ドーパミン・ファミリーだ。
そう思っていた。
私の父は自営業をしている。
10年ほど前に大病を患ってからは、仕事はだいぶセーブしているようだ。
その昔、酪農をしていた頃は、朝晩に牛の世話をしていた。
昼間は、牛舎の下に敷く藁を混ぜて乾燥させ、それをロールにしたり、牛の蹄を削る削蹄のアルバイトをしたりしていた。
何もない日や、天気が悪くて作業ができない昼は、だいたい寝ていた。
でも、それも一年のうち数える程度だった。
ワーカーホリックというか、働くことが生きがいというか。
父は、そんな人だ。
そんな父が仕事をセーブする。
つまり、時間が有り余る。
映画を観たり、バンジョーを弾いたり。
ありとあらゆる趣味を満喫している。
特に精を出しているのが、野菜や花を育てることだ。

自宅から車で10分ほどのところ
田舎は土地が有り余るほどある。
今年は気温が思うように上がらなかったため、夏野菜はあまり育たなかったようだが、ジャガイモは豊作だと言っていた。
父がインスタにあげる写真は、そうやって育てた野菜や花がほとんどだ。
花は、祖母が育てたものが多いのかもしれない。
祖母は生来、花が好きだ。
家の前にある庭は、祖母が育てている色とりどりの花で埋め尽くされている。
今では、歩行器なしで歩くことも難しい祖母。
それでも、何とか杖をついて庭に出て、土の上に座り込み、花の手入れをしている。
祖母にとって、それは生きがいであり、ライフワークなのだろう。
父の話に戻る。
父がインスタを始めたきっかけは聞いていない。
ただ、インスタを見てみると、20歳そこそこの若者たちと相互フォローになっていた。
どうやら父は、仕事の一環で、次世代を担う若者たちへの指導をしているらしい。
父は案外、すごい人なのかもしれない。
ちょっと見直した。
……いや、「ちょっと」は謙遜しすぎた。
結構見直した。
もしかすると、若者との交流がきっかけでインスタを始めたのかもしれない。
そう考えると、ドーパミン中毒は言い過ぎたかも。
ドーパミン中毒は、私だけなのかもしれない。
すまん、父。
父は67歳。
アナログな父がインスタを始めた。
不慣れながらも写真をあげ、若者たちとも交流している。
まだまだボケずに過ごしてもらえそうだ。
娘は、ちょっと安心した。
マイキーさん主催 #エッセイしりとり コンテストにてバトンをいただき、投稿いたしました。
noteにこういった文化があったとは!
バトンは、エッセイのようなものさんからいただきました。
ご指名ありがとうございます。
本名(?)はナガタさんらしいです。まだ何と呼ぶか定まっておりません。
物事の着眼点とそこからの掘り下げが絶妙で、腕がいいなと思ってます。
あと、マッチングアプリの話が面白くて。
初対面、というか会う前からこんなに意気投合できるのすごくないですか??
今後の展開にも期待しております。
さて、次にバトンを渡す人を3名まで指定できるとのことで。
指名させていただきます。
今タイトルが「ドーパミン・ファミリー」なので、次は「り」から始まるタイトルでいいんですよね?きっと。
「り」でお願いします。
1人目:植物きどりさん
言葉のリズムというか、文章の緩急の付け方がお上手だなあと毎回思わされます。
文章もさることながら、喋りもお得意な方なのかなと推察しております。
私は自身のことを「人生経験に乏しい」と評しておりますが、植物きどりさんは様々な経験をしていらっしゃる方で、人生譚は読みごたえがございました。
2人目:かぬさん
ご自身の心の機微を捉え、深く内省される、心やさしきお方。
描かれるイラストもかわいい。
コメントも度々いただくのですが、こちらの意図を正確に汲み取ろうとする姿勢に感服しております。
かぬさんからコメントをいただくと、心の奥底がじんわりと温かくなります。
肌寒い日にポケットに忍ばせたホッカイロのような、そんな存在です。
nokushiさんの投稿はエッセイに大別されるのかなと思うのですが、現実であって現実じゃない、日常だけど非日常のような。そんな浮遊感があります。夢の話をよくしていらっしゃるからなのかもしれません。文学作品を読んでいるような気分になります。
あと、スキすると、ねこちゃんが現れます。
以上3名の方にバトンを回します。
強制ではありませんので、もし余裕があればよろしくお願いします。
