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PDFの文字が相手の画面で変わる|書体と動画が中に入っているかの見分け方

    取引先に見積書を送ることになりました。
    体裁を崩したくないので、ExcelではなくPDFにして送ります。

    折り返し電話が来ます。
    「書体が違って見えます」。
    別の担当者からは「一部が黒い丸になっています」。

    自分の画面では、正しく出ています。
    ファイルも壊れていません。

    PDFにすれば同じ見た目で届く、というのは半分だけ正しい話です。
    書体がファイルの中に入っているかどうかで、結果が変わります。

    この記事では、PDFの書体と、スライドの動画について、AdobeとMicrosoftが日本語で公開している資料から、渡す前に見る場所を並べます。

    この記事は、アドビとマイクロソフトが日本語で公開している資料をもとに、2026年9月時点の内容にしています。画面の名称や仕様は改訂されます。お使いのバージョンの表示とあわせて確認してください。


    PDFは、書体そのものを中に入れて運べる

    埋め込みという仕組みがある

    Adobeの日本語の解説に、仕組みが書かれています。

    フォントの埋め込みは、PDF ファイル内にフォントデータを組み込むプロセスであり、PDF の表示時や印刷時に元の文書で使用されている正確なフォントが利用可能になります。

    文字の形そのものを、ファイルの中に入れてしまうということです。
    相手のパソコンにその書体が入っていなくても、同じ見た目で出ます。

    ただし、許可されている場合だけである

    同じ段落に、条件が続いています。

    フォントの埋め込みができるのは、フォントメーカーが埋め込みを許可している場合のみです。

    許可している場合のみ、と書かれています。

    PDFにすれば必ず見た目が保たれる、とは書かれていません。
    使った書体しだいです。

    買った書体でも、埋め込んでよい範囲は製品ごとに違います。
    無料で配られている書体も同じです。

    入れ方が2つある

    埋め込みには2通りあると書かれています。

    • フォント全体の埋め込み

    • ファイルで使用されている文字のみを含むサブセットの埋め込み

    全部入れるか、使った文字だけ入れるか、です。

    日本語で効いてくる注記も、同じページにあります。

    フォントを埋め込むと、通常アジア言語で使用される CID フォントを文書で使用しない限り、ファイルサイズはわずかに大きくなります。

    裏を返せば、日本語の書体を使っている文書では、わずかでは済まないことがあるということです。
    文字の種類が多いためです。

    渡すだけなら、使った文字だけを入れるほうで足ります。


    埋め込めなかったPDFは、エラーを出さずに別の書体になる

    置き換えられて、そのまま開く

    埋め込めなかったときに何が起きるかも、同じページにあります。

    フォントベンダーの設定のためにフォントを埋め込めず、PDF を開いたり印刷したりする人が元のフォントにアクセスできない場合は、Acrobat Distiller によって元のフォントが置換されます。

    置換される、と書かれています。

    開けなくなるのではありません。
    別の書体に差し替えられて、普通に開きます。

    ここが厄介なところです。
    エラーが出ません。
    相手は違和感なく読み進め、印刷して初めて気づきます。

    差し替え先には、名前が付いている

    何に差し替えられるかも書かれています。

    マルチプルマスタータイプフェースは一時的に置換されます。たとえば、見つからないセリフフォントには AdobeSerifMM が使用され、見つからないサンセリフフォントには AdobeSansMM が使用されます。

    セリフ体かサンセリフ体か、という大きな分類だけを引き継いだ書体に置き換わります。

    行は維持される。形は一致しない

    ここは、思われているのと逆です。

    置換フォントは伸縮して、元の文書の行と改ページを維持するように適合させることができます。

    行と改ページを維持するように適合させることができる、と書かれています。
    置き換えたせいで2枚になる、という話ではありません。

    崩れるのは、そちらではありません。

    置換では、特に筆記体のような特殊なタイプフェースの場合、常に元の文字の形状と一致するわけではありません。

    形が一致しない、です。

    ページ数は合っているのに、字面だけが違う。
    だから受け取った側も「壊れている」とは言わず、「なんとなく違う」と言うことになります。

    日本語では、黒丸になることがある

    日本語を扱う会社に効く記述が、続けてあります。

    アジア言語のテキストの場合、Acrobat では、インストール済みのアジア言語キットのフォント、またはユーザーシステムの同様のフォントが使用されます。一部の言語のフォントや、エンコーディングが不明なフォントは代替できません。そのような場合、テキストはファイル内で黒丸として表示されます。

    黒丸として表示される、と書かれています。

    先方から「丸が並んでいます」と言われる現象は、これです。
    文字化けというより、代わりに使える書体を用意できなかった状態です。


    渡す前に見る場所は、文書のプロパティにある

    一覧が出る画面が決まっている

    確認する場所も、同じページに書かれています。

    Windowsならメニューから、macOSならファイルから、文書のプロパティを選び、そこで「フォント」タブを選択する、という手順です。

    なお、Adobeはこの手順を、PDFからテキストをコピーしたり貼り付けたりすることが困難な場合の確認先として案内しています。
    埋め込みの確認そのものの手順として書かれているわけではありません。
    ただ、開く画面は同じで、そのPDFが使っている書体の一覧がそこに出ます。

    見るのは、名前の後ろの表記です。
    埋め込まれているものには、埋め込みである旨と、サブセットかどうかが付きます。
    何も付いていないものは、相手の環境にある書体で表示されることになります。

    書体を減らすほうが早い

    毎回このタブを開くのは、現実的ではありません。

    使う書体を社内で決めている会社なら、最初の1回で分かります。
    埋め込めない書体が混じっていたら、その書体を標準から外します。

    凝った見出し用の書体を1つ入れただけで、そこが差し替わります。
    本文と見出しで2種類までに絞ると、起きる場面がほとんど無くなります。

    消したつもりで残っているものを確かめる話は、こちらで扱っています。
    PDFの黒い四角が文字の上に置いただけであることと、墨消しとの違いをまとめています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n08277ce46aef


    スライドの動画も、中にあるか外にあるかで決まる

    入れ方が2つある

    同じ構造の事故が、スライドでも起きます。
    製品紹介のスライドを送ったら、動画のところが黒いまま、というものです。

    Microsoftの日本語の解説は、最初にこう書いています。

    使用しているPowerPointのバージョンに応じて、埋め込みビデオ (既定の動作) を挿入したり、コンピューターに保存されているビデオ ファイルにリンクしたりできます。

    埋め込みと、リンクです。

    そして、それぞれの長所と短所が並べて書かれています。

    埋め込みビデオの挿入は便利ですが、プレゼンテーションのサイズが大きくなります。

    ビデオをリンクするとプレゼンテーションのサイズは小さいままですが、リンクが切れる可能性があります。

    埋め込みは重い。
    リンクは軽いが、切れる。

    黒いままになるのは、リンクのほうです。
    スライドの中に動画そのものは入っておらず、自分のパソコンの置き場所を指しているだけだった、という状態です。

    ファイルを送っても、指し先までは付いていきません。

    既定は埋め込みだが、選べる

    上の引用に「埋め込みビデオ (既定の動作)」とあります。
    何もしなければ埋め込みになります。

    ではなぜリンクになるのか。
    挿入するときに選べるからです。

    [ビデオの挿入] ボックスで挿入する画像をクリックし、[挿入] ボタンの横にある下向き矢印をクリックし、[ファイルにリンク] をクリックします。

    挿入ボタンの横の矢印です。

    自分で押した記憶がなくても、前の担当者が作ったファイルを引き継いでいれば、リンクのまま使い続けていることがあります。
    容量制限のあるメールでやり取りしていた時期に、軽くするために選ばれていた、ということが起こります。

    どちらなのかは、ファイルタブで分かる

    ここが実務で効きます。

    スライドにビデオが既に存在し、どこに保存されているのかを知りたい場合は、[ ファイル>Info] に移動します。 [メディアの互換性の最適化] の下に、ファイルにリンクされているのか、埋め込まれているのかなど、プレゼンテーション内のすべてのメディア ファイルに関する情報が表示されます。

    ファイルタブの情報です。
    そのスライドが持っているメディアの一覧と、リンクか埋め込みかが出ます。

    リンクがある場合については、続きがあります。

    リンクされたビデオがある場合は、PowerPointリンクの 表示 ハイパーリンクが表示されます。 それをクリックすると、リンクされているファイルの保存場所を示すダイアログ ボックスが開きます。

    どのファイルを一緒に渡せばよいかが、その画面で分かります。

    自分の画面では正常なのに相手の画面では違う、という形は、クラウドの同期でも起きます。
    手元のフォルダーに見えているのに中身がそこに無い状態と、その見分け方をこちらで扱っています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n42a8fbd13b62


    リンクのまま渡すなら、置き場所の決まりがある

    同じフォルダーに入れてから、貼り直す

    リンクのまま渡す場合、置き方の指定があります。

    リンクの破損を防ぐために、ビデオをプレゼンテーションと同じフォルダーにコピーし、そこにリンクすることをお勧めします。

    同じフォルダーにコピーしてからリンクする、という順番です。

    別の場所にある動画にリンクしたままフォルダーごと渡すと、相手の環境では指し先が変わります。
    先にコピーして、貼り直すのが正しい順番になります。

    そのうえで、フォルダーごと圧縮して渡します。
    スライドだけを添付すると、動画は付いていきません。

    形式の推奨も書かれている

    リンクと埋め込みを直しても再生できないときは、形式を疑います。

    H.264 ビデオ (a.k.a. MPEG-4 AVC) と AAC オーディオでエンコードされた .mp4 ファイルを使用することをお勧めします。

    拡張子が .mp4 でも、中の圧縮方式が違うことがあります。
    撮影機材から出てきたものを、そのまま貼っていないかを見ます。

    再生されないのは、始まる条件のせいかもしれない

    最後に、故障でも設定ミスでもない場合があります。

    同じページに、再生の始まり方が3つ挙げられています。
    一連のクリック動作、自動、クリック時、の3つです。

    そして、既定については、こう書かれています。

    既定では、スライド ショーでのビデオはクリック シーケンスの一部として再生されます。

    つまり、スライドのどこかをクリックして次に進むと、そこで再生が始まります。
    動画そのものを押す操作ではありません。

    会議の場で動画だけ押しても始まらない、という話は、ここに当たることがあります。
    渡す側が「自動」に変えておけば、相手は何も考えずに済みます。

    送る前の3つ

    実務としては、これだけです。

    1. ファイルタブの情報を開き、リンクか埋め込みかを見る

    2. リンクなら、動画をスライドと同じフォルダーに置いてから貼り直し、フォルダーごと渡す

    3. 相手に1回再生してもらう

    社内で配る資料なら、埋め込みに統一しておくほうが事故が減ります。
    重くなりますが、届かないよりましです。

    中に入れて重くなったファイルは、こんどは渡す手段の側で引っかかります。
    USBメモリの1ファイルの上限と、共有フォルダで弾かれる文字を別の記事で扱っています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n8cbec20bce98


    まとめ

    • PDFのフォント埋め込みは、文字データをファイルの中に組み込んで、元の書体で表示できるようにする仕組みである

    • ただし、埋め込みができるのはフォントメーカーが許可している場合のみ、と明記されている

    • 埋め込めず、相手も元の書体を持っていない場合、フォントは置換される。エラーにはならない

    • 置換フォントは伸縮して、元の文書の行と改ページを維持するように適合させることができる、とされている。ページ数が増える話ではない

    • 一方で、特に筆記体のような特殊なタイプフェースでは、常に元の文字の形状と一致するわけではないと書かれている

    • アジア言語では、代替できない場合にテキストが黒丸として表示されるとされている

    • 確認は、文書のプロパティのフォントタブである。Adobeはこの画面を、テキストのコピーが困難な場合の確認先として案内している

    • スライドの動画には埋め込みとリンクの2つがあり、既定は埋め込みである

    • 埋め込みは便利だがサイズが大きくなり、リンクはサイズが小さいままだがリンクが切れる可能性がある、と書かれている

    • どちらなのかは、ファイルタブの情報にある「メディアの互換性の最適化」で確認できる

    • リンクのまま渡すなら、ビデオをプレゼンテーションと同じフォルダーにコピーしてからリンクすることが推奨されている

    • 形式は、H.264とAACでエンコードされた .mp4 が推奨とされている

    • 既定では、ビデオはクリックシーケンスの一部として再生される。動画を押す操作ではない

    皆さんが先週送ったPDFは、書体が中に入っていたでしょうか。
    配ったスライドの動画は、中にあったでしょうか、外を指していたでしょうか。


    参考・引用元

    PDFの書体

    スライドの動画


    実務で使う書式について

    この連載の内容を、社内でそのまま使える書式にまとめたものを、別のマガジンで公開しています。規程のひな形、対応フロー、チェックシート、報告書式などです。

    実務で使う書式・キット
    https://note.com/yunta_fukurou/m/mfc25857fab40


    関連する記事

    消したつもりで残っているものは、別の記事で扱っています。
    PDFの黒い四角が文字の上に置いただけであることと、墨消しとの違いをまとめています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n08277ce46aef

    自分の画面だけでは分からない状態は、クラウドの側でも起きます。
    フォルダーに見えているのに中身がそこに無い、という場面をまとめています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n42a8fbd13b62

    開く環境によって結果が変わる話は、表計算でも同じ形です。
    先頭の0が消える理由と、直すのは開く前であることをまとめています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n8bb215311d9d

    同じ形なのに中身が違う、という話は、こちらで扱っています。
    USB-Cケーブルの表示の読み方と、確かめる順番をまとめています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n18f830c7d620

    入れ物の側で止まる話は、別の記事で扱っています。
    USBメモリに大きなファイルが入らない理由と、共有フォルダで弾かれる文字をまとめています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n8cbec20bce98

    同じPDFでも、サイトに置いたときに開くか落とすかは、置く側が指示できます。
    印刷したときの見え方とあわせて、別の記事で扱っています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n5f6d9b1c398f

    AIが作った画像の文字は、フォントから呼び出されたものではありません。
    絵として描かれているので誤字が出る、という話を別の記事で扱っています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n6348e4464032

    社外に渡す資料を、AIの中で作って書き出す場合の話は、別の記事で扱っています。
    書き出せる4つの形式と、組織の外へは共有できないプランをまとめています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n898fe82f83b5

     
     
    Digital Workplace Architect|社内外のIT・AIの導入と運用 IT・AI・セキュリティと周辺機器の「今さら聞けない」を一次情報で解説。書式・キットも。 Amazonのアソシエイトとして、梟 〜GLEANINGS〜は適格販売により収入を得ています。

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