グレースケールからカラフルへ No.6~創作大賞2025 ファンタジー小説部門エントリー作品
第1章~第5章
第1章 学校に行く理由を教えて
第2章 居場所探し
第3章 ワタシルーティン
第4章 迷い込んだ場所
第5章 それぞれの持ち場
第6章 迷わない自分へ
山道は一本道にだった。途中で別れることなく下っていて、下り終わったところに木造の家や小屋が並んでいるやや平たい地形の場所に出た。
おそらくここが村なのだろう。確かにこの質素な家々には似つかわしくない紫、水色、黄色、濃いピンクというような色の筋がいたるところに散見する。そして、よく見ると砂利道や川にかかっている木造の橋、ところどころにある高い木々の幹にも同じような色の筋が残っている。
村を歩いてみても誰もいないようだった。歩きながら見ていると、家は壁やドアが壊れ、小屋は壊れている。ひどい乱闘があったことがうかがえる。
どこから誰が出てきても対応できるように、芙美香は肩に武器を構えながら歩いていた。少し開けた広場のようなところに出ると、そこには小さな木製の塔があったが、やはりペンキの落書きのような幾筋もの線が残っていた。その少し先の方に誰か倒れているのが見えた。
芙美香が近寄ってみると、頭の両側から牡牛のような角が出ているバイキングのような被り物を被り、茶色っぽい半そで上着は腰がすっぽり隠れるくらいに長くその下には黒いズボンを履いている。
「あれはチョコに違いない」
芙美香は直感でそう思い、駆け寄って話しかけた。
「チョコ、大丈夫?『鉄仮面』だよ」
と声をかけた。何度か声をかけたが反応がない。芙美香は肩や背中を軽くたたき、声をかけ続けてみた。すると目を開けて芙美香を見て言った。
「チョコは俺だよ。あんた誰?」
とチョコは夢から覚めたような顔をして芙美香を見ていた。
「私、『鉄仮面』だよ。チョコ、一緒にゲームやっていたけど覚えている?」
と言う芙美香の声を聞いたチョコが
「『鉄仮面』!お前女なのか?てっきり男だと思っていたよ」
と驚いて大きな声を出し、芙美香をなめるように見つめた。
「うん。ゲームの中では男の子になったつもりだった。自分じゃない別の人になったような気がして楽しかったよ」
と言いながら、チョコの驚いた顔を見ているのもなんだかおかしかった。
「チョコ、今、歩いて来たけどどうやらここにはチョコ以外誰もいないみたい。チョコはどうしてここにいるかわかる?」
と芙美香が言った。
「いや、よくわからないな」
とチョコが言った。
「私もそうだけど、一緒にゲームをしていたミケやマリンもいつも感じないような衝撃を感じたあとに気付いたらこの世界に居たんだって。ここに来る前のことを何か覚えている?」
と芙美香が聞いた。
「そうなのか。でもなんでみんなここにいるんだ?俺も。ここは一体どこなんだ?そうだ、俺たちゲームをやっていたよな?」
とチョコが言った。
「うん、どういうわけか今いるこの世界と私たちのゲームの世界が繋がっちゃったみたいなんだよ。で、繋がっちゃったからゲームから沢山の人がここの世界に流れ込んできちゃったみたいなんだよね。
それでゲームからきた人たちが、ここの村の人たちを襲ったり、困らせたりして、村人たちが怖がって逃げてしまったみたい。私は今、ここの村人たちの世界とゲームの世界を切り離そうとしているところなの。
チョコがもしこの村人たちの世界にいるなら、探し出さないと切り離してしまったらこの村に取り残されてしまうと思ったから探しに来たんだよ」
と芙美香が説明した。
「うーん、よくわからんが、助けに来てくれたのか。そいつは有難い。ありがとな。
そういえば、俺、あの時、敵にやられちゃって回復するのに時間かかるなーって思っていたら、すんごい衝撃がコントローラーを伝わって来てさ、目の前が真っ白になっちゃって、気付いたらここにいたよ。
俺が来たときは、村人みたいなやつらとゲームの被り物をして武器を持っている奴らがごちゃまぜになっていた。そうしたら、俺はまたやられちゃったみたいで、今お前に起こされたんだろうな」
とチョコが言った。
「今、沢山の村人とかゲームの被り物をして武器を持っている人たちがごちゃ混ぜになっていたって言ってたけど、今はいないみたいだね」
と芙美香が言うと、
「ああ、そうだな。俺が最初に来たときはすごかったぜ。乱闘って感じでもうみんな目がぎらぎらして、俺そういうの好きじゃないからさ、マジかよって思ってさ、すぐに逃げて遠巻きに見ていたんだぜ。でもさ、後ろから殴られたんだと思う。ああーたんこぶ出来てるよ」
といってチョコは後頭部を手で撫でた。
「それで倒れていたんだ。大変だったね」
と芙美香は言った。チョコの話から、チョコ以外のゲームから迷い込んでしまった人がもっと沢山いるはずなのに、今、村にはその迷い込んだ人がチョコ以外にいないということが不思議な感じがした。
「それと私たちは今、その繋がった世界を切り離して元に戻すために『この世界にあるべきでないもの』を3つ探しているところなの。
ミケはプログラマーだから山の上の小屋で作業し始めてる。パソコンでプログラムをチェックするって言ってた。マリンは山の途中にいて村人たちに相談して『あるべきでないもの』が何かを一緒に探してもらおうとしているところ。
私は、どうしてもチョコを探さないといけないと思ってたから探し出さないといけないと思ってた。チョコもここにいるべきではない人だよね?」
と芙美香が言うと、
「ん?つまり俺が邪魔ものってことか?」
とチョコが言った。
「あ、そうじゃなくて、この村人たちの世界に元から居たわけじゃないってことだよ」
と芙美香が言うと、
「まあそうだな。村人たちが平和に暮らしていたのに、ゲームの延長線だと思って遊び半分で村人たちを襲ったりしていた奴らは『あってはいけない』もんな。っていうと、そうか、おれもこの世界では『あってはいけない奴』だな」
とチョコが言った。
「そこなの。チョコはこの村人たちが平和を願って生活している世界には『あってはならない』存在で、繋がっちゃってこちらに来たけど、本来の生活に居るべきなんじゃないかな。
あとここにゲームから流れ込んだ人たちは全員元居た場所に戻らないといけないんだけど、なんでチョコだけしかいないんだろう?」
と芙美香がいった。
「すっげえ変な奴が沢山いたぜ。ゲームから来た奴ら。そうだよな、そういえばみんなどこに行っちゃったんだろうな」
チョコは考え込みながら言った。
「そう、それがちょっと気になるところだよね」
と芙美香が言った。
「元居た場所に戻るか。別に俺は元々の生活に戻らなくてもいいけどな。でもそうか、俺やゲームから迷い込んだ連中がここにいることが、本来ここで暮らしている人たちにとって不都合ってわけだよな」
とチョコが言った。
「不都合というか、本来ここに居なかったチョコが、ここに連れてこられたって事実があるだけだよ。だったら元に戻しましょ、って。
私も元の世界は家にも学校にもいる場所が無くてゲームが居場所だったし、ゲームをやっている時だけが自分だなぁって感じてた。だからゲームをやっている時が楽しいし、ゲームだけが居場所だったから、元の場所に戻りたいかと言われると複雑だけど。
なぜかそのゲームの世界とここの村と繋がったことで村人の生活が荒らされて困っているのは嫌だって思う。だから私にできることをしたいと思ってるよ。
ところで、チョコはなんで元の世界に戻らなくていいと思うの?」
と芙美香が聞いた。
「うん、おれ今フリーターなのよ。前の仕事クビになっちゃってさ。だから、ま、求職中なんだけどなかなか見つからなくてね。今3つバイト掛け持ちしてさ、さすがに体がきつくて。だから俺も一緒よ、現実逃避ってやつだな。ゲームが居場所だった」
とチョコが遠い目をしながらため息をついた。そして
「んじゃあ、俺らどうすればいいのかな?見当つかないんだけど」
とチョコが言った。
「山の上の小屋に行くよ。そして途中でマリンを落ち合ってどうなっているか聞こうと思う。武器は持って歩ける?何が出てくるかわからないから武器を持ってね。山の上まで歩くよ」
と芙美香が言いながら歩きだした。チョコは「ちょっと待てよ」と言いながら付いて来た。
そして芙美香は歩きながら、老婆の言った「自分の感覚に従う」は本当にスゴイ実感をもたらしてくれた。今回は自分で自分の思ったことをやると決めて、心に浮かんだことのために迷わず行動できた。
不安や怖さもあったけど、心は「これでよかった」と喜んでいる。
でも、学校にいるときはなぜか自分の感覚を優先できなかった。そしていつもどうしたらいいかわからなくなっていたのだ。
それはなぜ?
多分、常に正しい答えばかり探して、正しくないなら動いても仕方ないと思うと「どうしたらいいのか」わからなくなって思ったことができなかった「ふがいない自分」を思い出していた。
だから、腹痛を我慢するのではなく、保健室に行ったり、給食を拒否することで「自分の感覚」に従っていたのかもしれない、そう思ったらフッと力が緩んだように感じだ。
「それでよかったんだ。自分の声を聴けたんだ」
そう思ったらなんだかうれしくなってきた。だから危険を承知でチョコの消息を知ろうとしたこと。実際、チョコがいるかどうかもわからないのに、自分を信じて動いたことで、こうしてチョコを見つけられて一緒に山頂に向かうことができている。
芙美香にとって「自分の感覚に従う」ってことがこんなに自分に自信をもたらすとは知らなかった。逆にこの「自分の感覚」を信じないで誰かほかの人の意見で動いていたり、人の目を気にして動いていた自分を振り返って、「だからうまくいかなかった」のだと思った。
なんだかこれからは全てがうまくいくような気がした。
「おい、疲れたわ。少し休もうぜ」
とチョコが言った。
「いいよ。でも少しだけね。早くマリンに会って欲しくて」
芙美香は「マリンがチョコに会ったらどんな顔をするだろうか」と思うとワクワクするのだった。でもまだ先は長い。少し休もう。
少し休んでから、二人はまた歩き出した。そして、ほどなく山の中腹辺りで一人で座り込んでいるマリンを見つけた。
☆ドキドキしながら創作大賞に初エントリーします。もしよかったらスキやフォローお願いします💛
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