メインコンテンツへスキップ
見出し画像

北汽、Physical AI新会社「北京元啓物理智能科技」を設立――2027年にPersonal Agent搭載車を発売へ

    [メンバーシップ限定]中国国有自動車大手の北汽集団は2026年10月21日、北京で開催された2026年世界スマートコネクテッドカー大会(WICV2026)で、Physical AIを中核とする新会社「北京元啓物理智能科技」を設立したことを明らかにした。

    北汽集団の張建勇董事長が全体会議で発表した。新会社は、AIの計算基盤、大規模AIモデル、ハードウェア端末を一体的に開発し、ユーザーを理解して能動的に支援する「Personal Agent」の実現を目指す。

    同社が開発する「Boson Agent」を採用した新世代の車室内システムは、2027年発売予定の新型車に搭載される計画である。

    張董事長は、自動車の知能化競争が、半導体やセンサーの性能を競う段階から、ユーザーが日常的に利用する体験の差別化へ移行しているとの認識を示した。

    そのため北汽は、運転支援、車室内、シャシーの三領域を重点分野に設定。華為(Huawei=ファーウェイ)、Momenta、地平線(Horizon Robotics)などとの協力を維持しながら、自社開発のAI技術も強化する。

    今回の発表で注目されるのは、北汽がAIを既存の車載機能に追加するだけでなく、車両とユーザーの関係を再設計するための技術として位置付けたことである。

    10月21日、北汽董事長が新会社を発表

    張建勇董事長は、今回の講演で、中国自動車市場における知能化競争の変化を指摘した。

    従来は、高性能半導体、大型ディスプレー、LiDARなどの装備を充実させることが、車両の知能化を示す重要な指標となっていた。

    しかし、こうした装備は他社も採用できるため、ハードウェアの性能や搭載数だけでは長期的な差別化が難しくなる。

    張董事長は、多くの自動車に豊富な知能化機能が搭載されている一方、ユーザーが日常的に利用する機能は必ずしも多くないと指摘した。

    そこで北汽が重視するのが、具体的な利用場面から技術を設計する考え方である。

    単に新しい機能を搭載するのではなく、ユーザーがどのような状況で何を必要とし、どのようなサービスを求めるのかを出発点とする。

    新会社の設立は、こうした方針を具体化する取り組みである。

    画像

    北京元啓物理智能科技、AIの基盤から端末まで開発

    北汽が新たに設立した北京元啓物理智能科技は、Physical AIを事業の中心に据える。

    同社が構築するのは、AIを動かす計算基盤、大規模AIモデル、実際にユーザーが利用するハードウェア端末を含む技術体系である。

    この構成からは、外部の大規模言語モデルを車載ディスプレーに接続するだけではなく、車両の利用環境に合わせたAIの開発を目指していることが分かる。

    Physical AIは、AIが現実世界の状態を認識し、物理的な環境や機器と関わりながら行動する技術領域を指す。

    自動車の場合、走行環境を認識して車両を制御する自動運転AIだけでなく、車室内の状況を理解し、空調、座席、照明、情報提供などの機能と連携するAIも、その応用領域となり得る。

    ただし、北汽が今回発表した新会社については、まず車室内AIが具体的な製品化の対象として示された。

    人型ロボットなどの開発・量産計画が発表されたわけではない。

    また、計算基盤から端末までを開発するという方針は示されたものの、半導体そのものを自社設計・製造する計画や、AIモデルの規模、学習データ、計算資源などの詳細は明らかにされていない。

    Personal Agent、ユーザーを理解する車室内AIへ

    新会社が目指すのは、ユーザーの指示に応答するだけでなく、その人の利用習慣や状況を理解して支援するPersonal Agentである。

    従来の車載音声アシスタントは、音楽の再生、目的地の設定、空調の調整など、ユーザーが指示した操作を実行する機能が中心だった。

    これに対し、Personal Agentという構想では、ユーザーの好みや行動、車内外の状況を踏まえ、複数の機能を組み合わせてサービスを提供する方向が想定される。

    例えば、目的地や移動時間に応じた車内環境の調整、利用者ごとの設定の切り替え、移動中の情報提供などは、こうしたAIが担い得る機能である。

    ただし、これらはPersonal Agentの一般的な応用例であり、北汽が今回、個別機能としてすべての実装を発表したわけではない。

    今回の発表で確認できるのは、ユーザーを理解する個人向けAIを車室内に組み込み、2027年の新型車で製品化する方針である。

    具体的な認識能力、操作対象、外部サービスとの連携範囲などは、今後の製品発表で明らかになるとみられる。

    2027年、新世代のBoson Agent車室内システムを投入

    北汽は、新会社の技術を活用した次世代の車室内システム「Boson Agent」を、2027年発売予定の新型車に搭載する計画を示した。

    ここでは、Personal AgentとBoson Agentを区別する必要がある。

    Personal Agentは、ユーザー個人に寄り添い、状況を理解して支援するAIの構想を示す表現である。

    一方、Boson Agentは、2027年の新型車に採用される車室内AIシステムとして紹介された名称である。

    今回の発表では、搭載車種の名称、ブランド、販売価格、発売月などは明らかにされていない。

    北汽には、極狐(ARCFOX)、享界(STELATO)、北京汽車など複数の乗用車事業があるが、Boson Agentがどのブランドから導入されるのかも、現時点では特定できない。

    ファーウェイ鴻蒙智行(HIMA)である享界は少なくとも中国国内ではファーウェイ乾崑のHarmonySpaceの採用が続くことが見込まれ、導入はなかなか考えづらい。ただし、享界の海外展開においては、ありえないことでもない可能性がある。

    それはともかく、今回の発表だけでは既存の特定車種への採用決定と結び付けることはできない。

    重要なのは、北汽が新会社の設立と同時に、2027年という具体的な製品投入時期を示したことである。

    研究開発の構想だけでなく、量産車への搭載を前提とした取り組みとして位置付けている。

    画像

    この記事はnoteマネーにピックアップされました

    noteマネーのバナー
     
     
    急速に進む中国のCASE(Connected&Cabin,Autonomous,Shared&Service,Electric)やAIについての最新情報。2018年から1日1本以上のレポート配信。毎朝8:00日刊中国モビリティレポートと適時号外レポート

    あなたへのおすすめ