
奇瑞の智界、海外向けはHuawei技術を採用せず――国内と海外でADAS・車載システムを分離
[メンバーシップ限定]中国の奇瑞汽車(Chery Automobile)は2026年10月21日、安徽省蕪湖市で高級車ブランド「智界(LUXEED)」のグローバルブランド発表会を開催した。
今回、最も注目されるのは、海外向け車両には華為(Huawei=ファーウェイ)のハードウェアもソフトウェアも採用しないという方針が、奇瑞側の海外事業責任者によって明らかにされたことである。
智界は中国国内では、Huaweiの自動運転支援技術である乾崑ADS、HarmonyOSを基盤とするスマートコックピットHarmonySpaceなどを採用する、鴻蒙智行(HIMA)のブランドとして展開されている。
しかし、海外向けでは技術体系を変更する。
LUXEED InternationalのCEO、Shawn Xu氏は10月21日、オーストラリア、ニュージーランド、英国などのメディアに対し、海外向け智界とHuaweiの関係について、ハードウェアもソフトウェアも含めて使用しないと明言した。
奇瑞の公式発表でも、海外向けブランドの展開、独自のスマートコックピット、運転支援、車両制御技術が紹介されている。
ただし、今回確認できた奇瑞の公式プレスリリースには、Huawei非搭載を明示する記述はない。Huawei側からも、海外向け智界の技術構成について同じ内容を確認できる公式声明は見つかっていない。
したがって、現時点で確認できるのは、奇瑞側の海外事業責任者が海外向け車両のHuawei非搭載方針を明言したという事実である。
それでも、中国国内と海外で同じブランドを使いながら、ADASや車載ソフトウェアの技術体系を分けるという方針は、中国のAI Vehicle(AIV)の国際展開を考えるうえで重要な動きである。

海外事業責任者がHuaweiのハード・ソフト非搭載を明言
今回の発言を報じたのは、10月21日付の自動車専門メディアInside China Autoである。
同メディアのRichard Edwards記者は、奇瑞が開催したグローバルブランド発表会の後、LUXEED InternationalのCEO、Shawn Xu氏から直接説明を受けた。
Xu氏は、OMODAおよびJAECOOの事業責任者も兼ねている。
同氏は、海外向け智界とHuaweiの関係について、次のように説明した。
「海外向けの智界はHuaweiとは関係がない。ハードウェアもソフトウェアも含め、何もない」
この発言は、単に海外向け車両でHuaweiのブランド名を使用しないという意味ではない。
少なくともXu氏の説明では、Huawei製の電子機器や車載ソフトウェアを海外向け車両に搭載しない方針である。
中国国内向けの智界では、HuaweiのADASやHarmonySpaceが重要な製品特徴となっている。
これに対し、海外向けでは同じブランド名を維持しながら、車両を構成する技術を変更する。
ただし、今回の発言だけで、Huaweiと奇瑞の資本関係、知的財産権、商標契約、開発協力のすべてが海外事業から排除されるとまでは判断できない。
確認できるのは、海外向け完成車に搭載するハードウェアとソフトウェアについての方針である。

中国国内ではHuawei、海外では奇瑞の技術体系
中国国内の智界は、Huaweiと奇瑞が協力して展開するブランドである。
Huaweiは鴻蒙智行を通じて、運転支援、スマートコックピット、車両制御などの技術を提供している。
一方、奇瑞は完成車の開発、生産、車両プラットフォームなどを担う。
今回の海外展開では、この構成を変更する。
10月21日の中国メディア報道では、海外向け智界に奇瑞独自の電気・電子アーキテクチャー、Falcon(ファルコン)運転支援システム、Lingxiスマートコックピットを採用し、奇瑞の中央研究開発組織が開発を担当すると伝えられた。
この報道は、Xu氏が直接説明したHuawei非搭載方針と整合する。
ただし、FalconとLingxiの具体的な搭載範囲や、車種別のハードウェア構成については、今回確認できた奇瑞の公式資料だけでは確定できない。
そのため、現段階では奇瑞独自技術への切り替えが報じられているものの、量産仕様の詳細は今後の正式発表を待つ必要がある。
重要なのは、奇瑞が国内向けのHuaweiとの協業を維持しながら、海外向けには自社技術を利用する別の製品体系を構築しようとしていることである。
これは、Huaweiとの協力を解消するという話ではない。
中国国内と海外で、異なる技術構成の車両を展開するという判断である。

奇瑞の公式発表は何を示しているか
奇瑞グループは10月21日、海外メディア向けに実施した185kmの試乗プログラムについて公式発表を公開した。
試乗には大型MPV「LLOUNGE」と高性能SUV「STORMAX」が使用された。
試乗ルートは都市部の道路、高速道路、山岳道路、試験場から構成され、運転支援、車両制御、乗り心地、車載システムなどを紹介した。
奇瑞は、両車が複数のセンサーとアルゴリズムによる経路計画を利用するNOAに対応すると説明している。
高速道路では、車間距離の維持、車線中央の維持、速度調整、ナビゲーションに連動した車線変更や追い越しなどを実演した。
また、車載コックピットには大規模言語モデルを利用したAI音声操作を採用し、複数言語による自然な対話に対応すると説明した。
さらに、スマートフォンなどから駐車操作を行うSIVPの実演も紹介している。
これらの説明から、海外向け智界でもAI音声操作や高度運転支援を重要な製品機能として位置付けていることが分かる。
一方、公式資料では、それぞれの機能を実現する半導体、センサー、OS、AIモデル、ADASソフトウェアの供給元までは明示されていない。
したがって、公式資料にHuaweiの名前が登場しないこと自体を、Huawei非搭載の証拠とすることはできない。
今回のHuawei非搭載方針を直接裏付けるのは、あくまでXu氏の発言である。

海外向け2車種、LLOUNGEとSTORMAXを公開
今回のグローバルブランド発表会では、海外市場向けの主力車種として、LLOUNGEとSTORMAXが紹介された。
LLOUNGEは大型高級MPVである。中国における智界V9だ。
中国国内向けのV9に対応する車種として紹介され、後席の快適性やプライバシー機能を重視している。
奇瑞の公式発表では、2列目のゼログラビティシート、123度までのリクライニング、遮音ガラス、33スピーカーの音響システムなどを説明している。
一方、STORMAXは高性能SUVである。中国における智界RXだ。
800Vの高電圧BEVプラットフォームを採用し、デュアルモーターの最高出力は460kW、最大トルクは775Nmとされる。
0~100km/h加速は3.9秒未満、最高速度は250km/h超と説明された。
また、両車にはデュアルチャンバー式エアサスペンション、電子制御ダンパー、最大7度の後輪操舵などが採用されている。
ただし、これらは発表会と試乗会で紹介された仕様であり、すべての海外市場向け量産車で同一構成になるとは限らない。
特に、Huawei製システムを使用しない海外仕様では、ADASやコックピットの構成が中国国内仕様と異なる。
そのため、中国国内仕様の性能や機能を、そのまま海外向け車両の確定仕様として扱うことはできない。
