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上汽、ByteDance・Momenta・Huaweiを横断活用――工博会で示したAI自動車のグループ戦略

    [メンバーシップ限定]中国の自動車大手、上海汽車集団(上汽集団=SAIC)が、グループ全体のAI自動車戦略を改めて提示した。

    2026年10月12~16日、上海の国家会展中心で開催されている中国国際工業博覧会(工博会)に、SAICは栄威(Roewe)、MG、智己汽車(IM Motors)、尚界(SAICと華為(Huawei=ファーウェイ)の協業ブランド)、上汽大通(MAXUS)の最新モデルと技術展示を集結させた。

    今回の注目点は、個々の新型車の発表ではない。

    栄威はByteDance傘下の火山引擎(Volcano Engine)、MGは自動運転AI企業Momenta、尚界はHuaweiと連携する。智己は独自のフル・バイ・ワイヤ・シャシーを基盤に、運転支援とAIエージェントを統合する構想を示した。

    異なるAI技術、異なるサプライヤー、異なるブランドを一つの展示会場に並べたことで、SAICが進めるグループ全体の変革が鮮明になった。

    SAICは今回の展示を「AIの深い統合」「先端技術の大衆化」「利用場面に応じた商品展開の加速」という三つのテーマで構成している。

    AIを車両全体へ浸透させ、その技術を主流価格帯へ広げ、さらに多様な移動需要へ展開する。

    今回の工博会は、SAICが個別ブランドの新車競争を超え、グループ全体としてAI Vehicle(AIV=AI自動車)への転換をどう進めようとしているかを示す場となった。

    自動車ショーではなく、工業博覧会で提示した意味

    今回の中国国際工業博覧会のテーマは「スマート経済、スマート製造に境界はない」である。

    SAICはこの場で、単なる電動車の新型モデルではなく、AI、電動化、車両制御、運転支援、車室内サービスを組み合わせた技術体系を紹介した。

    展示された主要モデルは、栄威・家越07、MG 07、智己LS8 NEO純電、尚界Z7T、上汽大通・大家9である。

    さらに智己は、車両全体のバイワイヤ制御とAIを組み合わせた「フル・バイ・ワイヤAI概念キャビン」も展示した。

    これらの車種や技術には、すでに個別に発表されていたものも含まれる。

    しかし、今回の意味は、それらをSAICという一つの企業グループの技術戦略としてまとめて提示した点にある。

    各ブランドが別々にAIを採用しているのではなく、SAIC全体としてAIを自動車の機能、価格、利用体験へ広げていく。

    その方向性を、複数の実車と技術展示によって具体化した。

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    栄威×ByteDance、AIが2,000以上の車両機能を操作する

    最初のテーマ「AIの深い統合」を象徴するのが、栄威・家越07である。

    SAICは同車を「世界初のAIネイティブ自動車」と位置付けている。

    この表現はSAICによる製品上の主張であり、世界初であることが客観的に認定されたという意味ではない。

    技術面で重要なのは、ByteDance傘下の火山引擎と共同開発したAI車室システムである。

    家越07には、火山引擎の豆包(Doubao)AIアシスタントが搭載される。

    SAICによれば、車両には2,000以上のSOA(サービス指向アーキテクチャ)インターフェースが用意され、AIがそれらを通じて車両の各種機能を操作する。

    従来の車載音声アシスタントは、ナビゲーションの目的地設定、音楽再生、空調調整など、個別の命令に対応するものが中心だった。

    これに対し、家越07が目指すのは、利用者の自然言語による複雑な要求を理解し、複数の機能を連続的に実行する仕組みである。

    例えば、目的地への移動に必要なナビゲーション設定と、車内の快適性に関わる機能を、一つの要求から組み合わせて操作する。

    SAICはこれを、車両ハードウェアの「細かな機能単位での統合制御」と説明する。

    重要なのは、AIモデルそのものの能力だけではない。

    車両の座席、照明、空調、音響、ナビゲーションなどを、AIが利用できる機能としてソフトウェア側に公開する必要がある。

    2,000以上のSOAインターフェースという数字は、SAICがAIと車両ハードウェアを結び付けるための基盤を整備していることを示している。

    さらに家越07は、ネットワーク経由で外部のリアルタイム情報を取得し、検索、サービス、車両制御を連携させる。

    SAICはクラウド側のAIの進化に伴い、車両の知識や能力も継続的に向上すると説明する。

    ここで示されているのは、AIを車載アプリケーションの一つとして搭載するのではなく、車両全体を操作するためのインターフェースへ発展させる方向性である。

    ただし、2,000以上のインターフェースが存在することと、すべての機能をAIが無制限に実行できることは同義ではない。

    実際の制御範囲や安全上の制限、クラウド接続がない場合の動作などは、別途確認が必要である。

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    智己、全線控シャシーとPhysical AIを結び付ける

    同じ「AIの深い統合」のテーマでも、智己が示した方向性は栄威とは異なる。

    智己は今回、「フル・バイ・ワイヤAI概念キャビン」を展示した。

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    その中核となるのが、「フル・バイ・ワイヤ霊蜥シャシー」「全域Physical AI」「新世代NEO三電アーキテクチャ」という三つの技術である。

    フル・バイ・ワイヤ霊蜥シャシーは、車両の運動制御を電子的に統合するバイワイヤ技術を中心としたものだ。

    SAICは20ミリ秒の高速応答を実現すると説明し、人間の反応速度より10倍速いと訴求している。

    ただし、この比較はメーカーの説明によるものであり、具体的な比較条件や測定対象を確認せずに安全性の優位性を断定することはできない。

    より興味深いのは、智己が車両制御とAIエージェントを一つの体系として提示している点である。

    運転支援システム「IM AD ZETA」は、利用者の運転を支援する役割を担う。

    一方、「IM CLAW」は移動に関わる各種の用事を支援するAIエージェントとして位置付けられる。

    つまり、車両をどのように走らせるかという領域と、移動に伴う用事やサービスをどう処理するかという領域を、同じAI戦略の中で扱おうとしている。

    さらに智己は、新世代NEO三電アーキテクチャによって、電動パワートレインの効率向上も訴求した。

    今回初めて公開されたSU BEV「LS8 NEO」は、こうした技術構想と智己の「NEXT・2028」戦略を具体化するモデルとして紹介されている。

    SAICによれば、LS8 NEOは全車に寧徳時代(CATL)製電池とフル・バイ・ワイヤ霊蜥シャシーを標準装備する。

    ただし、概念キャビンで紹介されたすべてのAI機能が、LS8 NEOの量産仕様にそのまま搭載されると確認されたわけではない。

    栄威がAIによる車内機能の統合を前面に出したのに対し、智己は車両運動制御とAIを結び付ける。

    同じグループ内でも、AIの実装対象が異なるのである。

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    MG×Momenta、R7を15万元級へ投入

    SAICが二つ目のテーマとして掲げたのが「先端技術の大衆化」である。

    高級車に限られていた先端技術を、より多くの消費者が購入できる価格帯へ広げるという考え方だ。

    その代表として紹介されたのがMG 07である。

    SAICによれば、MG 07は従来30万元級の車種に多かった技術を、15万元級の市場へ投入する。

    BEV版には800V高電圧プラットフォーム、5C急速充電、HeatMatrixアクティブ冷却モーターを採用する。

    最高航続距離はCLTC基準で845km、0~100km/h加速は5秒台と説明している。

    しかし、より注目したいのは、運転支援技術である。

    MG 07はMomenta R7を採用し、LiDARと組み合わせて都市部・高速道路でのNOA(ナビゲーション支援運転)や、自動駐車などに対応するとしている。

    Momenta R7は、同社が世界モデルを軸に展開する運転支援技術体系である。

    SAICは、その技術をMGブランドの主流価格帯へ展開する。

    これは、高度ADASが高級車の差別化装備から、量販価格帯の競争要素へ移行していることを示す。

    SAICはMG 07について、168Lの電動開閉式フロントトランク、30Lの二温度帯対応冷蔵設備、ゼログラビティシート、調光式パノラマルーフ、21スピーカーの音響システムなども紹介している。

    つまり、運転支援だけを安く提供するのではない。

    高電圧電動化、AI運転支援、車室内快適装備をまとめて主流価格帯へ投入するという戦略である。

    ただし、今回の発表は展示車の装備と技術構成を紹介したものであり、すべての仕様が15万元級の最低価格モデルに標準搭載されることまで確認できるわけではない。

    尚界×Huawei、20万元級にADS 5と896線LiDAR

    同じ「科技平権」のテーマでMG 07と並べられたのが、尚界Z7Tである。

    尚界は、SAICとHuaweiが協業するブランドだ。

    MGがMomentaを採用するのに対し、尚界はHuaweiの技術体系「乾崑」を前面に出す。

    SAICによれば、20万元級の尚界Z7Tには、Huawei乾崑ADS 5、896線LiDAR、HarmonyOSベースの車室システムHarmonySpace、途霊インテリジェントシャシー、800V高電圧急速充電を全車標準装備する。

    車長は5m超、ホイールベースは3m。後輪駆動と四輪駆動を設定し、最速の0~100km/h加速は3.44秒、CLTC航続距離は最大905kmと説明している。

    足回りには前ダブルウィッシュボーン、後マルチリンク式サスペンションを採用し、エアサスペンションも標準装備するとしている。

    MG 07と尚界Z7Tは、価格帯も商品特性も異なる。

    しかし、今回の工博会で両車を同じ「先端技術の大衆化」の枠組みに置いたことには意味がある。

    SAICは、15万元級ではMomenta、20万元級ではHuaweiという異なる高度運転支援技術を採用しながら、いずれも先端装備を幅広い消費者へ提供するという方向性を示している。

    これは単純なサプライヤーの使い分けではない。

    ブランドごとの市場定位、商品特性、技術体系を組み合わせるグループ戦略である。

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    急速に進む中国のCASE(Connected&Cabin,Autonomous,Shared&Service,Electric)やAIについての最新情報。2018年から1日1本以上のレポート配信。毎朝8:00日刊中国モビリティレポートと適時号外レポート

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