
理想i9は「都心の高級住宅」――MEGAと分けた二つのHome思想
[無料]理想汽車(Li Auto)創業者の李想氏は2026年9月9日、BEVフラッグシップSUV「理想i9」を9月16日に正式発表することを公表、「なぜ私たちはBEVのフラッグシップSUVを作るのか」と題して、その商品思想を説明した。
そこで持ち出したのは、SUVの性能でも、航続距離でも、充電速度でもない。
「どんな家に住みたいか」だった。
大家族で暮らす広い郊外邸宅。それがフラグシップミニバン「理想MEGA Home」である。
一方、北京の国貿、上海の新天地、成都の金融城、広州の珠江新城にあるような、都市中心部の最高級大型住宅。それが「理想i9 Home」である。
Li Autoはこれまで「移動する家」をブランドの中心に置いてきた。しかし今回のi9では、その「家」をさらに細分化し始めた。
MEGAとi9は、どちらも家である。
しかし、同じ家ではない。
前日にCHINA CASEでは、従来型MEGAオーナーの「平均静的利用時間が1日70分」というLi Autoのデータから、「移動する家」が実際に停車中にも使われる「部屋」になり始めている可能性を取り上げた。
今回のi9についての李想氏の説明は、その議論の続きをさらに分かりやすくする。
Li Autoはクルマを家に近づけるだけではなく、今度は「どんな家をクルマにするのか」まで商品ごとに定義し始めたのである。

MEGAは「郊外の邸宅」
李想氏はまず、MEGA Homeをこう説明した。
広い郊外の邸宅を好む人がいる。空間が大きく、大家族のにぎやかな団らんを受け止めることができる。
これが「理想MEGA Home」である。
MEGAについては、すでにその意味が具体的な商品として見えている。
新型MEGAでは4席のゼログラビティシート、大型ダイニングテーブル、396個のLEDを使った「Home Light」、270度の電動調光ガラスなどを採用した。
Li Autoはシートを「ソファ」、室内照明を「リビングの主照明」、プライバシー機能を住宅のカーテンに近いものとして説明している。
さらに従来型MEGAについて、オーナーの平均静的利用時間が1日70分に達するというデータも示した。
その計測条件や母集団の詳細は公表されていないため、数字自体は慎重に見る必要がある。
しかし、少なくとも理想自身は、「人々は本当に、このクルマを一つの部屋として使っている」と判断している。
MEGA Homeは、単に大きなミニバンを住宅に例えたものではなくなりつつある。
家族が向かい合う。食事をする。休む。着替える。一人で過ごす。
そうした生活行動を受け止める大きな共有空間として、MEGAを作り直している。
今回の李想氏の比喩を使えば、それは家族全員が集まれる郊外の大きな邸宅なのである。

i9は「都心の最高級大型住宅」
i9は違う。
李想氏が例に挙げたのは、北京の国貿、上海の新天地、成都の金融城、広州の珠江新城である。
いずれも中国を代表する大都市の中心的な高級エリアである。そこで暮らす人が求めるものとして、李想氏は、
開放的な視界
移動の利便性
上質な空間
明確に整理された空間秩序
を挙げた。そして、それを最上級の「大平層」に例えた。
中国の不動産で「大平層」とは、単なる広いマンションを意味するわけではない。
一般には、都市中心部の高級集合住宅などに設けられる、ワンフロアで大きな居住空間を構成する高級住宅を指す。階をまたぐヴィラとは異なり、一つの水平面の中でリビング、ダイニング、居室などを効率的かつ上質に構成することが特徴である。
李想は、i9をその自動車版として説明している。
MEGAが郊外邸宅なら、i9は都心の最高級大型住宅である。

同じ「Home」でも広さの意味が違う
この二つを並べると、理想がMEGAとi9をどう分けようとしているのかが見えてくる。
MEGAはMPVである。
大きな箱型空間を生かし、家族が一緒に過ごすことそのものを最大化できる。
一方、i9はSUVである。
MEGAと同じものをSUVの形に詰め直すだけでは、MEGA Homeの縮小版になってしまう。
そこで理想は、空間の価値そのものを変えた。
MEGAで重要なのは、大家族を受け止める「広がり」である。
i9で李想氏が強調するのは、限られた車体の中を上質に構成する「空間効率」と「秩序」である。
だからi9について、李想氏は「広い」とだけ言っていない。
「空間高級,秩序分明」――空間が上質で、秩序が明確である。ここが今回の説明で重要な部分である。

BEV専用プラットフォームを「住宅価値」に翻訳する
李想氏はi9について、BEV専用プラットフォームがもたらす「空間効率と視界」を特徴として挙げた。
BEV専用プラットフォームの利点を説明するだけなら、もっと自動車らしい方法はいくらでもある。
ホイールベース、床面、前後オーバーハング、パッケージ効率、車内寸法などである。
しかし李想氏は、それを住宅的な価値へ翻訳した。
BEVだから、空間を効率的に使える。
BEVだから、開放的な視界を作れる。
そして、その空間を単に大きくするのではなく、上質な住宅のように整える。李想氏はさらに、i9について、
「高級住宅の質感と空間秩序を、本当の意味でフラッグシップSUVへ持ち込んだ」
と説明している。9月16日の正式発表で確認すべきなのは、この言葉が具体的に何を意味するのかである。

「全部載せ」とは違う高級化
この「空間秩序」という言葉は、中国の高級NEV競争を考えるうえでも興味深い。
中国の大型NEVではここ数年、大型ディスプレイ、温冷庫、ゼログラビティシート、テーブル、カラオケ、ゲーム、ベッドモードなど、車内でできることが急速に増えてきた。
装備を増やせば、車内でできることも増える。しかし増やし続ければ、今度は空間が複雑になる。
理想がi9で打ち出しているのは、その次の段階なのかもしれない。
何を置くかではなく、どう置くか。
どれだけ機能があるかではなく、それらをどのような空間としてまとめるか。
住宅でも、高級だから家具や家電を可能な限り詰め込むわけではない。
何を置き、何を隠し、人がどこを通り、どこへ視線が抜け、どこでくつろぐのか。
そこに「空間秩序」が生まれる。
i9でLi Autoが本当にそこまで設計できているのかは、まだ実車を見なければ分からない。
ただし、少なくとも李想氏は、フラッグシップSUVの価値をその方向から定義しようとしている。

MEGAの70分からi9へ
前日に取り上げたMEGAの「静的利用時間70分」と今回のi9をつなぐと、Li Autoの商品開発の方向がさらに見えやすくなる。
MEGAでは、メーカーが「移動する家」を提案した。
ユーザーが実際に停車中の車内を長時間利用する。
Li Autoはその行動を観察し、照明、ソファ、テーブル、プライバシーなどをさらに住宅へ近づけた。
クルマを家のように作る、 ユーザーが家のように使う、 その使い方を見て、さらに家として改良するというフィードバックが生まれ始めている。
そしてi9では、その考え方をSUVへそのままコピーするのではなく、別の住宅類型へ置き換えた。
これはLi Autoにとって重要である。
「Home」という一つの商品思想から、複数の商品を作り分けられるようになるからだ。

「家族向け」の中をさらに分ける
Li Autoは長く「家庭」をブランドの中心に置いてきた。
しかし「家族向け」というだけでは、商品が増えるほど互いの違いが曖昧になる。
大型SUVも家族向け。MPVも家族向け。REEVもBEVも家族向け。上位車も下位車も家族向け。
そこで必要になるのが、どんな家族生活を想定するのかという細分化である。
今回の説明は、その一つの答えになっている。
MEGA Homeは、大人数が一つの大きな空間へ集まる家。
i9 Homeは、都市生活の中で効率、視界、質感、秩序を重視する家。
同じ「Home」でも、住人が求める生活は違う。
これはMEGAとi9の内部競合を避けるための商品ポジショニングでもあるが、それ以上に、Li Autoの「Home」が単なるブランドコピーから商品体系そのものを分類する概念へ変わり始めていることを示している。
「世界になかった形」は9月16日に確認
李想氏は今回、i9について非常に強い表現も使った。
「これまで世界には、こういう形のクルマは存在しなかった。しかし世界には本当に、こういうクルマが必要だ」としている。
もちろん、現時点でi9を客観的に「世界初の新形態SUV」と評価できるわけではない。これは李想氏自身による商品表現として受け止める必要がある。
Li Auto自身はi9を「新形態家庭旗艦SUV」、つまり新しい形のファミリー・フラッグシップSUVと位置付けており、その実体は9月16日の正式発表で明らかになる。
そこで注目すべきなのは、単純なスペック比較ではない。
Li Autoが言う「高級住宅の質感」とは何なのか。
「空間秩序」は、シート、収納、照明、ディスプレイ、視界、動線にどう落とし込まれているのか。
そして、なぜそれがMEGAではなくi9なのか。
「移動する家」から「どんな家に住むか」へ
Li Autoにとって「家」は、もともとブランドの比喩だった。
その後MEGAでは、ソファ、照明、テーブル、プライバシーといった住宅の機能を実際に車内へ移植した。
さらにLi Auto自身が示すデータでは、従来型MEGAオーナーは停車中にも平均70分、車内を利用している。
「移動する家」というメーカー側の提案が、実際のユーザー行動へ近づいてきた。
そしてi9では、次の問いへ進んだ。
家なら、どんな家なのか。
MEGAは、大家族が集まる郊外の邸宅。
i9は、都市中心部にある眺望、利便性、質感、空間秩序を備えた最高級大型住宅。
これは単なるマーケティング上の比喩にも見える。
しかしLi Autoがこの比喩を、シート、照明、プライバシー、空間設計、BEVプラットフォームまで一貫して商品へ落とし込めるのであれば、「Home」はかなり強力な商品開発軸になる。
クルマを家のようにする段階から、どんな家をクルマとして作るのかを選ぶ段階へ。
奇しくも競合であり、相応に仲の良い小米(Xiaomi)も、新シリーズ「澎程(SkyNomad)」で、「移動する家」を掲げ、それを体現する発表会を行ったばかり。
MEGA Homeの次にi9 Homeを置いたことで、理想が長年掲げてきた「移動する家」は、もう一段具体的な商品体系へ進もうとしている。
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