
中国「車路雲一体化」、22社が量産車で共同開発――道路3.2万kmを整備、一汽・長安がL3向け実装を推進
[メンバーシップ限定]中国が進める車両・道路・クラウドの協調システム「車路雲一体化(路車協調とクラウドの一体化)」が、都市単位の実証実験から、自動車メーカーによる量産開発と商用サービスの構築へ移行し始めた。
北京で開催された2026年世界スマートコネクテッドカー大会(WICV2026)で、中国工程院院士、清華大学教授、国家智能網聯汽車イノベーションセンター首席科学者の李克強氏が10月22日、車路雲一体化の最新の開発・実装状況を報告した。
共同開発・試験に参加する中国内外の企業は、従来の15社から22社へ拡大。量産開発を前提とする試験には21車種が参加している。2026年7月時点で、インテリジェント路側インフラの整備対象となった道路は約3万2,000kmに達した。
さらに、完成車メーカー、都市のプラットフォーム運営会社、部品サプライヤーの間で商用契約の締結が始まっている。
一汽は紅旗ブランドの量産車への情報サービス導入を進め、長安汽車は自動運転レベル3(L3)を対象に、道路側の情報を車両の認識・判断へ取り込む開発を推進する。
李克強氏が強調したのは、車路雲一体化は車両単独の自動運転技術に対抗する方式ではなく、その能力を拡張する仕組みだという点である。
道路側のセンサー、交通信号、クラウドに蓄積された情報を車両が利用できれば、車載センサーだけでは把握できない危険を事前に認識できる可能性がある。
中国の車路雲一体化は、道路インフラを整備する段階から、その情報を量産車が実際に利用する段階へ進もうとしている。
2026年10月22日、李克強氏が産業化の進展を報告
李克強氏は、世界智能網聯汽車大会の「ネットワーク協調フォーラム」で、「車路雲一体化の実証事業を高品質に推進する取り組みと量産応用の進展」と題して講演した。
講演では、中国の運転支援・自動運転技術の普及状況、20の試験都市におけるインフラ整備、中国内外の自動車メーカーによる共同開発、量産車への導入、事業化の進展を説明した。
李氏によれば、中国の乗用車におけるL2運転支援の普及率は、2025年に64.9%、2026年上半期には71.9%へ上昇した。
また、2026年上半期のNOA機能の普及率は31.3%に達したという。
運転支援機能の普及が進む一方、L3やL4の自動運転を大規模に実用化するには、依然として多くの課題が残る。
李氏は、その中でも安全性、利用者が対価を支払う価値、企業の収益性という三つの条件を重視した。
技術的に自動運転が実現できても、安全性が十分でなければ普及できない。また、利用者が価値を認めず、企業が採算を確保できなければ、継続的な事業として成立しない。
車路雲一体化は、こうした課題を車両単独ではなく、道路インフラやクラウドを含めた交通システム全体で解決しようとする取り組みである。

単車知能には四つの限界、センサーと計算能力の増強だけでは解決できない
李克強氏は、現在の自動運転システムが直面する技術的な課題を四つに整理した。
第一は、車両から周囲の状況を十分に把握できないことである。
カメラやLiDARなどのセンサーは、車両の周囲を認識するために利用される。しかし、建物や大型車両の陰に隠れた歩行者、見通しの悪い交差点の先にある障害物など、車載センサーから見えない対象を直接認識することは難しい。
第二は、複雑な交通状況を十分に理解・予測できないことである。
他の車両や歩行者の行動を予測し、安全な走行経路を選択するには、認識だけでなく判断能力も必要となる。特に発生頻度の低い複雑な状況では、AIの判断が難しくなる。
第三は、他の車両や道路インフラ、交通管理システムとの情報連携が不十分なことである。
第四は、開発・運用コストの増大である。
自動運転の性能を高めるために、車両側のセンサーや半導体を増強し、学習データや計算資源を拡大し続ければ、研究開発費や車両コストが増大する。
李氏は、車載システムの高度化だけでは、これらの問題をすべて解決することは難しいと指摘した。
そこで、車両自身の認識・判断能力と、道路・クラウドが提供する情報を組み合わせる必要があるという。
車路雲一体化は単車知能の代替ではなく、その能力を拡張する仕組み
李克強氏は、車路雲一体化と車両単独の自動運転を対立する技術として捉えるべきではないと強調した。
従来の自動運転では、車両に搭載したセンサー、計算装置、AIモデルを使い、周囲の状況を認識して走行を判断する。
車路雲一体化では、これに道路側のセンサー、交通信号、クラウドの情報を加える。
例えば、見通しの悪い交差点では、道路側のセンサーが車両から見えない歩行者を検出し、その情報を接近する車両へ伝えることが考えられる。
高速道路では、前方の事故や障害物、合流車両の動きなどを、車載センサーが直接確認できる位置に到達する前に把握できる可能性がある。
さらに、車両と道路側で収集した情報を組み合わせれば、自動運転AIの学習に利用できるデータも拡充できる。
李氏は、AIモデルの能力を高めるには、データの量だけでなく、実際の交通環境をどこまで幅広く把握できるかが重要だと説明した。
一つの自動車メーカーが大量の走行データを収集しても、その車両のセンサーから見えなかった交通状況までは記録できない。
道路側の視点を加えることで、車両単独では取得できなかった情報を補完できる可能性がある。
この考え方では、道路インフラは単に車両へ情報を送る設備ではない。自動運転AIの開発や継続的な性能改善にも利用する基盤となる。
20の試験都市、道路3.2万kmでインフラ整備
中国では2024年7月、工業情報化部など5部門が、車路雲一体化の応用試験を実施する20の都市・都市連合を選定した。
試験期間は2024~2026年であり、都市単位で路側インフラ、通信設備、クラウド制御基盤などを整備する計画である。
李克強氏によれば、2026年7月時点で、インテリジェント路側インフラの整備対象となった道路は約3万2,000kmに達した。
ただし、この数字は、対象道路のすべての区間で同一水準の路側認識や自動運転支援サービスが利用できることを意味しない。
実際の設備構成や提供可能な機能は、道路や都市によって異なる。
中国政府が2024年に示した試験制度では、交通信号機のネットワーク接続、C-V2X通信設備、路側センサー、エッジコンピューティング、都市クラウド制御基盤などを整備対象としている。
都市ごとに設備を設置するだけでなく、システム構成や技術標準を統一し、異なる車両や都市間でもサービスを利用できるようにすることが目標である。
2025年には試験都市のプラットフォーム運営会社による連携組織も設立され、標準化された建設・運用体制の整備が進められている。

22社・21車種が参加、研究用車両から量産車の開発へ
今回の講演で明らかになった重要な進展の一つが、完成車メーカーによる共同開発の拡大である。
車路雲一体化の共同開発・試験に参加する中国内外の企業は、従来の15社から22社へ増加した。
量産開発を前提とする試験に参加している車種は21車種である。
参加企業には、一汽、東風、長安、BYD、小米、NIO、トヨタなどが含まれる。
共同開発・試験に使用される車種として、一汽の天工07、BYD漢、小米YU7、トヨタRAV4なども報じられている。
ここで重要なのは、研究開発専用の実験車両だけでなく、実際の量産車のプラットフォームを使った開発が進められていることである。
量産車への導入では、機能が技術的に動作するだけでは不十分となる。
車両の電子・電気アーキテクチャーとの適合、通信の安定性、情報の正確性、サイバーセキュリティー、品質保証、コストなどを検証する必要がある。
また、異なるメーカーの車両が同じ都市の情報サービスを利用するには、通信方式やデータ形式、サービスの仕様を共通化しなければならない。
22社の参加は、車路雲一体化が特定企業の実証技術から、複数メーカーによる量産開発の対象へ広がっていることを示している。
ただし、22社すべてが車路雲一体化機能を搭載した量産車を販売しているわけではない。
2026年は車載アプリから導入、2027年に運転支援システムとの連携へ
李克強氏は、量産車への機能導入を段階的に進める方針も説明した。
2026年内には、完成車メーカーの車載アプリ、API、公式アプリストア、車載画面などを通じて、車路雲一体化の情報サービスを量産車へ導入する計画である。
初期段階では、交通事象の通知、信号情報、道路状況の案内など、運転者が情報を確認する機能が中心となる。
その後、2027年には車載システムと運転支援・自動運転システムを組み合わせた機能の導入を目指す。
この違いは重要である。
車載画面に前方の事故情報を表示する機能と、その情報を自動運転AIが利用して減速や車線変更を判断する機能では、必要な安全性や信頼性が大きく異なる。
後者では、道路側から届く情報の正確性、遅延、欠落、位置のずれなどが、車両の判断に直接影響する可能性がある。
そのため、情報提供から協調認識・協調判断へ段階的に進めることには、技術的な理由がある。
2027年の導入は計画段階であり、すべての参加車種に同時に搭載されることを意味しない。
