メインコンテンツへスキップ
見出し画像

東風日産、開発3年・7,400項目超の検証で新型N7の品質を訴求――電池安全から製造・納車まで、開発スピード競争とは異なる戦略

    [メンバーシップ限定]中国の自動車市場では、新型車の開発期間短縮や新技術の迅速な投入が競争力を左右する一方、実車試験や安全性検証をどこまで確保するかが重要な課題となっている。

    こうしたなか、東風日産は2026年10月26日、広東省広州市の花都工場から公式ライブ配信を実施し、新型N7の開発、電池安全性、製造工程、完成車検査、納車までを紹介した。

    車両開発、電池、製造、品質管理の各担当エンジニアが登場し、開発に約3年間を費やしたこと、7,400項目を超える車両検証を実施したこと、電池の熱暴走対策や製造工程の追跡管理などを具体的に説明した。

    今回の配信で東風日産が強調したのは、単に長い開発期間や多くの試験項目を誇示することではない。中国企業の技術を採用しながら、日産が長年培ってきた開発・検証・製造の仕組みを中国向けNEVに適用し、完成車としての品質を確保するという考え方である。

    画像

    開発に約3年、7,400項目を超える車両検証

    ライブ配信では、N7の車両開発を担当する呉昌生氏が、開発から量産までの検証体制を説明した。

    N7は約3年間の開発を経て、7,400項目を超える車両検証を実施したという。

    開発ではCAEなどのシミュレーション技術を活用する一方、実物の車両や部品を使用した試験も重視した。コンピューターによる解析は開発効率を高める手段であるが、実際の車両が置かれる複雑な環境をすべて再現できるわけではないという考え方である。

    車両は高温、低温、さまざまな道路条件などで評価され、衝突時の車室保護、耐久性、乗員の快適性なども検証対象となった。

    重要なのは、開発期間の長さそのものではなく、量産前に必要な評価を完了することである。

    中国市場では新型車の開発期間短縮が進んでいるが、開発の高速化と検証の省略は同じではない。シミュレーションや開発工程の効率化によって、試験の水準を維持しながら開発期間を短縮することも可能である。

    東風日産が今回示したのは、開発スピードだけでなく、検証の内容と完成車の品質を競争力として打ち出す姿勢である。

    画像

    Momentaとの共同開発、日産側も独自の要求を提示

    N7の運転支援システムについても、東風日産の開発上の役割が説明された。

    N7は中国の自動運転技術企業Momentaと協業しているが、東風日産によれば、既存の運転支援システムをそのまま車両へ搭載したわけではない。

    日産側は安全性、乗り心地、システムの限界条件などについて独自の要求を提示し、Momentaと共同で調整を進めた。

    開発過程では双方の要求や技術的な判断をめぐって議論もあったという。

    この発言は、中国企業の技術を採用する日系合弁メーカーの役割を考えるうえで重要である。

    運転支援AIの開発を外部企業が担う場合でも、そのシステムを車両に組み込んだ際の安全性、乗員の快適性、車両運動との整合性については、完成車メーカーが判断しなければならない。

    東風日産は今回、技術の採用だけでなく、完成車としての要求設定と検証にも関与していることを強調した。

    画像

    電池は146項目・500以上の細目を検証

    電池開発を担当する張秋美氏は、N7の電池について、日産独自の基準に基づく146の大項目、500以上の細目に及ぶ試験を完了したと説明した。

    対象には振動、圧壊、浸水、熱暴走などが含まれる。

    東風日産では、電池の熱安全性や耐久性に関係する試験を開発初期から進め、量産直前に評価が集中しないようにしているという。

    また、N7を一般家庭向けの乗用車としてだけでなく、配車サービスなどで長距離を走行する可能性のある車両としても評価した。

    電池パックでは100万km相当の台上振動耐久試験を実施したと説明している。

    これは実車で100万kmを走行したという意味ではなく、試験装置によって走行時の負荷を再現した耐久評価である。

    家庭用車両より使用頻度や走行距離が大きくなる営業運行も開発条件に取り込むことで、耐久性に余裕を持たせようとした点が特徴となる。

    画像

    側面衝突と底面損傷、電池を多層構造で保護

    電池の安全性については、車体構造と電池パックを組み合わせた保護設計も紹介された。

    側面衝突への対策として、座席下の横方向補強部材には1,700MPa級の鋼材を使用しているという。

    さらに、電池パック側面には250mmの衝撃吸収空間を設け、衝突時の荷重が直接電池セルに伝わることを抑える構造とした。

    底面については、厚さ2.5mmの高強度アルミ合金製保護板を採用した。

    その内側には緩衝層と高強度アルミ合金製の冷却板を配置し、路面の突起物や飛び石などによる衝撃を分散する設計としている。

    こうした対策は、電池セルそのものの安全性だけでなく、車両に搭載された状態で外部からの衝撃をどう処理するかを重視したものである。

    ただし、これらの構造によって、あらゆる衝突や底面接触で電池の損傷を防げるという意味ではない。

    画像

    4セル同時異常を想定、24時間の熱安全性試験

    電池開発の説明で特に注目されるのが、複数の電池セルに同時に異常が発生する条件を想定した試験である。

    張氏によれば、電池パックを満充電とし、冷却機能を作動させない状態で、4個の電池セルに同時に異常を発生させる試験を実施した。

    その結果、24時間の観察期間中に発火・爆発は発生しなかったという。

    さらに、電池パック単体だけでなく、完成車に組み込んだ状態でも熱暴走を模擬した。

    異常発生時には警告表示、ドアの開閉、遠隔監視・警報機能などが正常に作動することを確認したとしている。

    ここには二つの異なる安全対策がある。

    一つは、電池セルに異常が発生しても、周囲への熱の拡大を抑えることである。

    もう一つは、熱暴走が発生した場合でも、乗員が異常を認識し、車外へ避難し、救援を受けられるようにすることである。

    東風日産は、電池セル、排気経路、絶縁・遮熱構造、温度管理、遠隔監視などを組み合わせた六つの防護策を説明した。

    ただし、試験時のセルの異常発生方法、温度履歴、合否判定の詳細は今回の配信では明らかにされていない。

    したがって、4セル同時異常や24時間という条件は注目に値するものの、その数字だけで他社の電池より安全性が高いと判断することはできない。

    画像

    この記事はnoteマネーにピックアップされました

    noteマネーのバナー
     
     
    急速に進む中国のCASE(Connected&Cabin,Autonomous,Shared&Service,Electric)やAIについての最新情報。2018年から1日1本以上のレポート配信。毎朝8:00日刊中国モビリティレポートと適時号外レポート

    あなたへのおすすめ