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支援費請求にメンターはいない。社福経理20年の私が行政を頼ってきた理由

社会福祉法人で会計とICTを20年やってきた経理実務家です。

算定基礎届と夏季賞与が重なる7月、月初の請求業務からフル回転という方も多いと思います。

先日ふと、こんなことを考えました。経理や税務で困ったら、税理士に聞けます。労務で困ったら社会保険労務士がいます。では、支援費請求で困ったら、誰に聞けばいいんでしょうか。

今日は「支援費請求にはメンターがいない」という話と、じゃあ私が20年間、誰を頼ってきたかという結論を書きます。

なお、障害福祉サービスの給付費請求のことを、私の周りでは今も「支援費」と呼ぶ人が多いので、この記事でも支援費と書きます。介護報酬の請求でも、話はほとんど同じだと思います。


私の結論

「支援費請求に、頼れる士業はいない。だから私は、県や市の担当課を"唯一の相談相手"として付き合ってきました」

これが結論です。

行政というと、実地指導で法人を見に来る「監視役」のイメージが先に立つかもしれません。私も長いことそう思っていました。でも、請求のことを本当に相談できる相手を20年探し続けた結果、たどり着いたのは結局、県庁と市役所の電話番号でした。

なぜそう考えるに至ったか、理由を3つ書きます。

理由①:士業の地図に、支援費請求だけ空白がある

法人の運営を支えてくれる専門家を並べてみると、こうなります。

経理・税務は税理士。労務は社会保険労務士。ガバナンスや内部統制は公認会計士。法務は弁護士。それぞれの領域に「困ったらこの人」という国家資格の専門家がいて、顧問契約という形で継続的に頼れます。

ところが、法人の収益の大半を占める支援費・給付費の請求には、対応する士業がありません。「請求士」も「加算士」も存在しないんです。指定申請の手続きなら行政書士さんにお願いできますが、毎月の請求と加算の解釈を継続的に相談できる「顧問」となると、話が別です。報酬改定に詳しいコンサルタントの方はいらっしゃいますが、町の税理士事務所のように、どの法人にも身近な顧問がいる、という世界ではないと感じます。

収益の柱になっている業務にだけ専門家がいなくて、残りの領域には全部いる。改めて地図にしてみると、ちょっと不思議な形をしています。

理由②:「正解」を持っているのが、行政しかいない

支援費まわりの実務で厄介なのは、正解の置き場所だと思います。

報酬は3年ごとに改定され、加算の要件は告示と留意事項通知とQ&Aに分かれて出てきます。さらに自治体ごとの独自ルールや様式があり、同じ論点でも県によって取り扱いが違うことがあります。

つまり「全国共通の教科書」が構造的に存在しにくい。そして最終的にその請求を審査し、実地指導で確認するのは行政です。正解を作っている側に直接聞くのが、遠回りに見えて一番の近道だと私は思っています。

処遇改善加算の実績報告など、行政とのやりとりが濃くなる実務については、こちらにも書きました。

https://note.com/fukushikeiridx/n/nc0d4253a4846


理由③:「監視役」と思っていた頃の私は、損をしていた

若い頃の私は、県に電話するのが正直怖かったです。実地指導のイメージが強くて、「聞いたら藪蛇になるんじゃないか」と思っていました。

それで、どうしたか。手引きを自己解釈して、たぶんこうだろうで請求を進めました。結果、解釈が違っていて過誤調整になったことがあります。返還は金額の問題以上に、理事長への説明と職員の落胆がこたえました。聞けば1本の電話で済んだ話でした。

それ以来、考え方を変えました。行政の担当者は、請求を審査する側であると同時に、制度を一番読み込んでいる人でもあります。監視役ではなく相談相手として付き合い始めてから、実務は目に見えて楽になりました。向こうも、締切間際に誤った請求を出されるより、事前に聞いてもらう方がありがたいはずなんです。

この付き合い方には、おまけの効用もありました。実地指導や行政監査の日が、怖くなくなるんです。日頃から照会を重ねていると、判断に迷った論点はすでに担当課に確認済みで、記録も残っています。「この処理は、この時期にこの課へ確認したものです」と言える状態で当日を迎えられる。窓口で何度か話した相手なら、監査の席でも普通に会話ができます。顔見知りだから手心が入る、という話ではもちろんなくて、こちらが萎縮せず説明できるようになる、というだけの話です。でも監査対応で一番効くのは、たぶんこれだと思います。

抱え込まずに早く相談する、という話は、こちらに書きました。

私がやっている、行政との付き合い方

「仲良くなる」というと語弊がありますが、要は相談しやすい関係を作る作法です。私がやってきたのは4つ。

1つめ、根拠を添えて聞く。「この加算どうですか」ではなく「手引きの何ページのこの記載は、うちのこのケースだとどう読めばいいですか」と聞く。回答が速く、正確になります。

2つめ、時期を選ぶ。月末月初の請求ピークや改定直後は、向こうも戦場です。急ぎでない照会は時期をずらすだけで、返ってくる答えの丁寧さが変わると感じます。

3つめ、回答を記録に残す。できればメールで聞く。電話なら日時と部署とお名前、回答内容をメモに残す。担当者を疑うためではなく、お互いを守るためです。そしてこの記録の束は、数年たつと別の顔を持ちます。メンターのいない業務における、後任への一番のメンターです。私が今フォルダに残している照会記録は、そのまま次の担当者の教科書になると思っています。

4つめ、「人」ではなく「聞き方」に投資する。担当者は数年で異動します。特定の親しい誰かに頼る関係は、異動と同時に消えます。残るのは、こちらの聞き方の技術だけ。だから投資先はそっちです。

最近はここにAIが加わりました。手引きや告示をNotebookLMに読ませて下調べを済ませ、それでも残った疑問だけを行政に聞く。質問の質が上がると、回答の質も上がります。実際に使っているプロンプトは、こちらにまとめています。

実際に市町村へ電話するところから始まる手続きの例は、こちらに書きました。

例外:行政に頼らないほうがいい場面

全部行政に聞けばいい、という話ではありません。

担当者の口頭回答だけを根拠に、大きな経営判断をするのは危ないです。担当者によって解釈が割れる論点は実際にあり、口頭の「大丈夫だと思いますよ」は後に残りません。金額の大きい判断は文書での回答を待つか、複数の根拠で固める。それから、人員配置や事業展開のような経営判断そのものは、行政が決めてくれる話ではない。そこは自分たちで決めるしかありません。

おわりに

支援費請求にメンターがいないのは、正直、心細いことです。20年やった今でも、初見の加算要件には毎回うなります。

でも見方を変えると、専門家がいない領域は、現場で積んだ経験がそのまま一番の資産になる領域でもあります。県や市の担当者と交わした何百本の電話とメールが、私の教科書でした。

同じように支援費と格闘している経理仲間の、何かの参考になればうれしいです。皆さんの県や市では、担当課とどんな付き合い方をしていますか。よければコメントで教えてください。また書きます🌱

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