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対人支援には自己理解が必要だ

はじめに

対人支援の仕事は、人と人との関係性のなかで成り立っています。目の前にいる誰かの悩みや課題に寄り添い、その人にとってよりよい働き方や生き方を支えるためには、専門的な知識や技術以上に、『支援者自身=「自分」』という存在そのものが極めて重要です。

だからこそ、支援者自身が自分の価値観や感情、力量などの「自分というもの」を深く理解しておくことが必要になります。自己理解が不十分であると、知らず知らずのうちに相手に押しつけをしたり、感情に巻き込まれたり、支援の軸がぶれてしまうこともあります。自身の疲労や体調不良にもつながります。

私の専門とする産業保健領域では、残念ながら、自己理解を学ぶ機会はほぼありません。また、それが重要だと教育される機会もほぼありません。そのため、自己理解が不十分な状態で対人支援活動を行い、苦しんでしまう方も多いように思います。

そこで、この記事では、支援職における「自己理解」の意義と、その方法や注意点について整理していきたいと思います。

なぜ支援には自己理解が重要なのか

自己理解が不足している人の対人支援とは?

ざっと大まかな特徴だけ列挙します。

①境界線の曖昧さ(バウンダリーの欠如や混同)、公私混同、過干渉、価値観の押し付け、依存関係の促進・共依存関係
②一貫性のない支援、関係性の破綻、支援効果の低下、支援の失敗、信頼性の低下
③支援者のバーンアウト・体調不良・離職・退職

支援の「武器」は自分自身であり、その言動

対人支援職の最大のツールは「自分自身」であり、その「自分自身」が発する言動そのものが武器となります。特に産業保健職には言葉しかないんです。その自分の価値観や感情、癖や反応パターン、ものさしを理解していなければ、無意識のうちに支援に影響を及ぼしてしまいます。

たとえば、自分が「石の上にも3年が大事であり、転職は逃げである」と思っていれば、上司との関係やキャリアの悩みを抱えて転職を考えている相手に寄り添うことが難しくなりますよね。

相手をジャッジしないために、自分の「ものさし」を知る

自分はどのような「ものさし(判断基準)」を持っているかを知ることは不可欠です。その「ものさし」には次のような要素が影響しています(かなり多めですが、人の「ものさし」は本当にありとあらゆることが影響して形成されているんですよね)

理想論、経験論
価値観、倫理観・道徳観、経済観
人生観、労働観、健康観、幸福観
ジェンダー観、家族観、宗教観
文化背景(国民性、地域性)
過去の経験、原体験、トラウマ

支援者が自分の中の「ものさし」に無自覚でいると、どうしてもその基準で対象者を判断したり、押しつけたりしてしまいます。たとえ自覚していても、それは完全には防げないものです。だからこそ、「自覚する」ことは最低限必要な姿勢だといえるでしょう。

相手と自分の感情を切り分ける

支援の現場では、対象者の苦しみや怒り、悲しみに強く共鳴してしまうことがあります。ハラスメントの被害を訴えている従業員が対して、ひっぱられて同調してしまうこともあります。そのときに、自分の中に湧き上がる感情が「相手由来のもの」なのか「自分自身の過去や価値観に反応しているもの」なのか、区別できないと巻き込まれてしまいます。

また、同調しているだけだったはずが、助長したり加担してしまうかもしれません(特にハラスメント事案は、産業保健職がどちらかに助長・加担してはいけません)。

自己理解は、対象者との距離感を適度にし、独立性を保つことと共感的姿勢を両立させる土台となります。

コラム 〜対人支援とは川で溺れている人を救うようなもの〜
川で溺れている人を救おうとしたら、安全な陸から声を出していても救えません。救うためには、自身も川に飛び込みその人のところまで泳ぎ手を差し伸べることがときには必要になります。その際に、溺れている人はテンパっていて助けにきた人に必死にしがみついてきますが、一緒に溺れてはいけませんよね。対人支援とは、そういった危険もはらんでいます。

溺れている人を救うためには、自身の泳力や助ける力量を把握しておくことが重要になります(=自己理解)。泳いで手を差し伸べることができなければ、ロープを投げたり、人を呼んだりすることも救うための方法です。

また、安全域から一歩出ることも対人支援には必要になります。対人支援に必要な共感的姿勢のためには、相手の方に一歩踏み込むことも必要であり、相手から遠いと思われないことが必要です。

対人支援活動の侵襲性を最小化する

対人支援活動には、常に相手に侵襲性を与える恐れがあります。特に、相手が弱っている状態のときほど、言葉によって傷つきやすくなっていますので、慎重な対応が求められます。

そして、自己理解が足りないと、言葉は意図せずして棘を持ち相手を傷つけます。無意識の偏見による言動が典型的です。

自己開示

支援の本質は「人と人との関係づくり」です。その際には、ちょうどいい「自己開示」も求められます。何者か分からない人に、相手は簡単には心を開きません(自己開示すればいいわけでもなく、過剰な自己開示は支援を妨げになります)。

自分自身をよく理解している人は、ちょうどいい「自己開示」を行うことができ、相手にもオープンで誠実に関わることができます。そのような人は、言動に一貫性があるため、相手に安心感や信頼感を与えることができます。

自己一致

また、「本当の自分(内的経験・感情)」と「自分の振る舞い(言葉・態度・表現)」が一致している状態(=「自己一致」の状態)にあると、支援の場面でもぶれない姿勢が伝わり、関係性の安定にもつながります。

自己一致している人は、自分の感情を抑圧せずに対人支援を行うことができ、支援職の体調の維持にもつながります。

体調とパフォーマンスを維持するため

対人支援の活動は、モヤモヤやストレスに満ちています。時に体調を崩すこともあります。自己理解が不十分だと、モヤモヤに飲み込まれたり、のめり込みすぎて燃え尽きたり、逆に感情を遮断して無感動になってしまうことがあります。「今、自分は疲れている」「このケースはつらい」と気づくことができなくなってしまいます。

特に、トラウマ体験を有する者への支援は、二次的トラウマストレスに暴露し、支援職が過覚醒状態になる恐れがあります。ときに、自身の原体験と重ね合わせてしまうこともあり、体調にも大きく影響が出てしまいます。自身を守るためにも、自己理解を深めておかないと無防備に二次的トラウマストレスに暴露することになります。

いわゆる「セルフケア」のためには、自己理解はその第一歩です。支援職もまた働く人であり、対人支援活動というストレスフルな業務にあたるのであれば、自己理解し、自身の健康を最大限ケアしてください。

判断がブレないように

特に、産業保健活動はやっていることがブレやすいものです。だからこそ、自己理解を深め、さらに自分の軸を作る必要があります。

例えば、「自分はどういう人間か」「なにを大切にしているのか」「どのように働きたいのか」「支援職(産業保健職)として実現したいことはなにか」といった問いへの答えを持つことで、仕事の軸を作り、活動をブレなくさせます。

疾病利得の陰性感情をコントロールする

対人支援活動は、ときに対象者の疾病利得をうみだします。その疾病利得に対して陰性感情を持ちすぎたり、それが表出されてしまうと、対人支援活動にも悪影響を及ぼします。そのためにも自己理解は非常に重要です。
疾病利得と陰性感情については次の記事に詳細をまとめていますのでお読みください。


続き(自己理解の方法)

ここから先は、別のnoteにしました。


関連note

参考にした記事・ブログ


産業カウンセラー資格やキャリアコンサルタントは自己理解が深まるらしいです。


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