管理職になって分かった、優秀な若手が昇進から外れる瞬間
「管理職になって初めて分かったこと」シリーズです。
「あの子、仕事はできるんだけどね」
人事評価の会議で、そんな一言をきっかけに、昇進の話がふっと消えていく。
そんな場面を、何度か見てきました。
管理職になる前の私は、評価や昇進は、基本的には「成果を出した人」が選ばれるものだと思っていました。
仕事ができる。
専門性が高い。
周囲からも評価されている。
それなら、当然、次のポジションに進んでいく。
そう思っていたのです。
でも、実際に評価する側に回ってみると、少し違いました。
「仕事ができる」と「次のポジションを任せたい」は、必ずしも同じではありません。
むしろ、仕事ができる人ほど、ある瞬間の振る舞いで評価が分かれることがあります。
今回は、私自身が管理職として実際に見てきたことを書きます。
実力があるのに、なぜか声がかからない
数年前、私のチームに、設計力のある若手社員がいました。
図面は丁寧です。
資料も分かりやすい。
会議での説明もそつがなく、上司からの評判も悪くありませんでした。
次のリーダー候補として、名前が挙がっていた時期もあります。
いわゆる、「仕事ができる若手」です。
ところが、あるプロジェクトで納期が遅れそうになったときのことです。
会議で彼は、
「〇〇の部署の対応が遅かったので……」
という趣旨の発言をしました。
事実としては、おそらく間違っていなかったと思います。
実際、その部署の対応が遅れていた部分もありました。
その場で誰かが強く指摘したわけでもありません。
そのときは、私自身も「まあ、事実を説明しただけだ」と受け止めていました。
ところが、その後の昇進検討の場で、その発言が何度か話題に戻ってきたのです。
「あのとき、彼はどういう対応をしていたっけ?」
そんな話から、あの発言が再び出てくる。
そこで初めて気づきました。
評価する側は、意外とこういう小さな場面を覚えている。
そして、それが昇進を考えるときの材料になっている。
昇進から外れる瞬間は、大きな失敗の日じゃない
ここが、管理職になって一番意外だったことです。
昇進候補から外れるきっかけは、必ずしも大きな失敗ではありません。
むしろ、
* 納期が遅れたとき
* ミスが発覚したとき
* 上司から厳しく指摘されたとき
* 他部署との調整がうまくいかなかったとき
そんな「うまくいかなかった瞬間」に、その人がどう振る舞ったか。
そこが強く印象に残ります。
技術力や成果は、日々の仕事の中で積み上がっていきます。
だから、評価する側からすると、
「この人は仕事ができる」
ということは、ある程度分かっています。
そのうえで見たくなるのが、
「この人に、もっと大きな仕事を任せても大丈夫だろうか」
という部分です。
責任を人に押しつけるのか。
それとも、自分が引き受けるのか。
問題が起きたときに黙ってしまうのか。
それとも、早めに状況を伝えてくるのか。
完璧な答えを出せるかどうかではありません。
困ったときに、どういう行動を選ぶか。
そこに、その人の「これから」が見えてしまうのだと思います。
管理職が見ているのは「今の能力」だけではない
もちろん、これは公平な評価なのか。
私自身も、管理職になった今でも自信がありません。
たった一度の発言や、一つの行動で、その人の評価を決めてしまっていいのか。
そう考えることもあります。
ただ、昇進を考える立場になると、どうしても別のことを考えるようになります。
「この人にチームを任せたら、部下に対しても同じ対応をするのではないか」
そんな想像が頭をよぎるのです。
管理職になると、仕事を自分一人で完結させることはできません。
部下を育てる。
他部署と調整する。
問題が起きたときに判断する。
時には、チームの失敗について、自分が前に出て説明しなければならない。
だからこそ、技術力や個人の成果だけでは判断しきれなくなります。
「この人なら、困ったときにもチームを守れるだろうか」
そんな視点が、昇進の判断に入ってくるのです。
推薦した人が、昇進した後に苦労する姿は見たくない。
その気持ちも、少なからずあります。
だから私は、技術力以上に、その人が「困ったときに、どういう行動を取るのか」を思い出すことがあります。
昇進していった人たちに共通していたこと
振り返ってみると、実際に昇進していった人たちは、必ずしもチームで一番優秀だったわけではありません。
ただ、共通していたことがあります。
うまくいっていないときほど、早めに報告してくる。
自分のミスを、体裁を整えてからではなく、先に伝えに来る。
「まだ原因が分かっていません」
「このままだと納期に影響する可能性があります」
「自分のところで確認が足りませんでした」
そんなふうに、完璧ではない状態でも、自分の言葉で状況を説明してくる。
こちらは、そういう姿勢を無意識のうちに「信頼」として積み上げていたのだと思います。
そして、ある程度の経験を積んだときに、
「次は、この人に任せてみよう」
という判断につながっていく。
振り返ってみると、昇進していった人たちは、問題が起きない人ではありませんでした。
むしろ、問題が起きたときに、逃げずに向き合う人だったのだと思います。
おわりに
評価というのは、本人が思っているよりずっと、日常の小さな場面から作られていくものなのかもしれません。
もちろん、成果は大切です。
専門性も必要です。
仕事ができることも、間違いなく大きな強みです。
ただ、管理職になってから強く感じるのは、「仕事ができる人」と「次の仕事を任せたい人」は、必ずしも同じではないということです。
特に印象に残るのは、うまくいっているときではありません。
納期が遅れたとき。
ミスが発覚したとき。
他部署との調整がうまくいかなかったとき。
そんな「困ったとき」に、その人がどう振る舞うのか。
誰かのせいにして終わらせるのか。
それとも、自分の言葉で状況を説明し、次の一手を考えるのか。
うまくいかないときに、どんな姿勢を見せるのか。
そこに、その人のこれからが見えることがあります。
もし今、思うように進んでいない仕事を抱えているなら、一度だけ考えてみてください。
「自分は、この状況を誰かのせいにして終わらせようとしていないだろうか」
それとも、
「今、こういう状況です。自分はこう考えています」
と、自分の言葉で説明しようとしているでしょうか。
管理職になった今、私が若手を見るときに意外と気にしているのは、そういう小さな瞬間です。
そして、もしかすると昇進を左右するのは、特別な日に見せる能力ではなく、
「困ったときに、どんな姿勢を見せるか」
なのかもしれません。
「管理職になって初めて分かったこと」シリーズ
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私は自動車製品開発の管理職として、
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