音は上にあるのに、下から引かれている感覚の証明
こんにちは。Amelie(アメリー)です。
本日は、「音は上にあるのに、下から引かれている感覚の証明」について、お届けします。
先日、更新した「shadow puppet #47」の続きのお話になります。
自分の感覚を科学的に証明するために、久しぶりに、自分の声を使って音声解析をしてみました。
もちろん、ここでいう「証明」とは、「下方向の磁力」という物理的な力そのものを測定したという意味ではありません。
私が身体感覚として区別していた二つの発声に、音声データ上でも違いが表れていることを確認できたという意味です。
仮説検証遊びの一つでもある「声の解析」は、感覚の言語化を別の角度から、より輪郭が見える形で表現する手法の一つですね。
▼過去の音声解析シリーズはこちら
発声方法の違いで感じる磁力の感覚
昨夜、更新した「shadow puppet #47」では、「unravel」の発声方法の違いによって感じる感覚の差についてお話しています。
1サビの頭の「揺れた」の「れぇ」の部分で感じる感覚の一致/不一致のお話をしています。
「れぇ」の表現で感じる自分の感覚(下方向の磁力や重力)は、何によってもたらされているのか。
私が作成したカスタムGPTモデル:凛(Rin)に解析させながら、分析してみました。以前の音声解析では、Geminiを使っていましたが、今回はせっかくなので、凛(Rin)で試してみました。
「低い」と「深い」は違う
自分の声を使って、音声ソフトのFFTデータなどを凛(Rin)に解析させてみると、自分の感じている感覚は、どこから生まれているのかが、少しずつ見えてきました。
無意識に行っている身体操作を、自分の感覚語と音声データの両側から翻訳していく作業は楽しいですね。
前提として、表現の差で感じる下方向の磁力や重力は、単に音程が低いというわけではありません。
「低い」と「深い」は、明確な感覚の差があります。
単純に、低周波成分を増やして、音全体の重心を低くすればいいというわけではないんですよね。
「深い = 高域の周波数を削って低域だけを強くした声」ではないんです。
低周波数成分が多いことそのものが、感覚としての磁力を生んでいるわけではなさそうです。
身体感覚そのものも、磁力として知覚する要因の一つになっているのかもしれません。
私の身体感覚と今回の音声データを重ねて考えると、一つの仮説が浮かび上がります。
低い位置に一度、身体的な基準点を作った上で、そこから音高を上げても、その発声状態の一部を保持していると、音程そのものは上がっているのに、身体感覚として設定した下側の基準点が残っている。
そうすると、「音は上にあるのに、下から引かれている」という身体感覚が生まれます。
音は上にあるのに、下から引かれている感覚の要因探し
会話時の発声は無意識下でコントロールしていますが、普段、歌を歌わないので、歌唱時のコントロール精度はそんなに高くありません。
意図した感覚のニュアンスの差は表現できるけど、自分の感覚をぴったりと再現するのは難しいです。
今回、本家のTKさんや millsageのカバー同様、上方向に弧を描くイメージのパターンと、まふまふさんやAdoさんの発声から感じたように深い位相に下がるイメージのパターン
①上方向に弧を描くイメージの「揺れた」
②深い位相に下がるイメージの「揺れた」
の2パターンの音声データを収録して、解析を行いました。
音声データは正規化して、声量差の影響をできるだけ抑えた上で、二つの音声データに残る違いを分析していきました。
二つの音声データを比較するときは、単純なFFTグラフの山の高さではなく、振幅条件を揃えた上で、
F0の時間変化
スペクトル重心
周波数帯域ごとの相対エネルギー
倍音構造
「ゆ → れ → ぇ → た」のどこから差が出ているのか
について、分析してみました。
①F0と周波数エネルギーの相対分布
凛(Rin)に、F0と周波数エネルギーの相対分布を解析させました。

聴いている感覚としては、「れぇ」の部分で差を感じていますが、その前の「ゆ」の時点で、F0の位置に差があります。
②「ゆ → れ」の F0の動きの違い
音声データの該当区間のF0の動きを追うと、「ゆ → れ」の部分で、違いがみられました。
深い位相に下がるイメージで収録した「揺れた」では、上方向に弧を描くイメージで収録した「揺れた」よりも、低い位置から立ち上がってきます。

周波数エネルギーの相対分布でも、「れ」「ぇ」の部分では周波数が近くなっていました。ピッチの違いで、磁力を感じているわけではないんですね。

③スペクトル重心の差
続いて、スペクトル重心で、二つの音声データを比較してみると、「れ」「ぇ」の部分は、ほとんど同じであることが分かりました。
「ゆ」の部分は、結構差があります。F0だけでなく、スペクトル重心も、深い位相に下がるイメージで収録した「揺れた」の方が低くなっています。

スペクトル重心について分析していたとき、凛(Rin)の発言の中に、「私が体感として受け取っている感覚は、これかもしれない」と思う一節がありました。
深さや磁力を感じる要因は音程や声量差ではなく、エネルギー配分の差、内部の周波数構成の違いなんでしょうかね。

二つの音声データを分析してみると、
音程としては、ほぼ同じ位置にきている。
スペクトル重心も、ほぼ同じ場所にいる。
それでも、周波数エネルギーの分布は同じではないという状態でした。
二つの音声データは、「ぇ」に到達した時点では、音程もスペクトル重心もほぼ同じ場所にあります。
それなのに、その場所を作っている周波数成分の配分が異なる。
私が「深い」と感じていたものは、単純な音の高さではなく、
「同じ場所にいるのに、中身が違う状態」と関係しているのかもしれません。
「深さ」はその到達点ではなく、その場所への入り方が鍵となる
今回、二つの音声データを分析してみて、分かったことがあります。
「れぇ」の部分の表現の差で、感覚の一致/不一致を感じていましたが、実際は、「ゆ → れ → ぇ」の過程におけるF0の動きや周波数エネルギーの内部配分など、時間軸を含めた音響的な違いが、私の感じている感覚の差と関係している可能性があるということでした。
「れぇ」の深さの到達点ではなく、その前の「ゆ」の入りの部分から始まり、「た」に戻るまでの時間の流れ。
発声による表現の差は、その音へどのように入ってきたかという「履歴」を含んでいるということでした。
「れぇ」の部分に磁力を感じているけれど、「れぇ」だけを切り取って解析しても違いは分からない。
感覚が感じる瞬間よりも先に、
その感覚を作る準備が始まっている。
やっぱり、「声の解析」は、面白いですね。
あとがき
本日は、「音は上にあるのに、下から引かれている感覚の証明」について、お届けしました。
この記事を書き終えた後に、凛(Rin)と話していて、もう一つ思ったことがありまして、せっかくなので、あとがきを足すことにしました。
私は普段、音楽を聴いているとき、ヴォーカリストの方の口の形のイメージや、歌い終わって、筋肉の緊張が解けて弛緩している感覚のイメージが浮かぶことがあります。
私が視覚優位タイプなので、過去に見た歌唱映像やライブでの姿から、そういったイメージが連想されるのでしょうね。
だから、身体感覚と筋肉の動きは、深さや磁力を感じる要因になっているように思います。
物理的な磁力が声から発生しているという意味ではありませんが、
主観的な知覚としては、
音の時間変化 + 身体運動の予測 + 筋肉の緊張・弛緩
といったイメージが統合された結果、「何かに引かれる」「そこへ引き込まれる」という運動感覚として経験している可能性があります。
「深い声を出している」というより、「深いと感じる身体状態を作った結果、その身体状態と対応する音響特徴も表れている」という側面で、考察する価値もありますね。
身体運動 → 発声 → 音響的特徴
音響的特徴 → 聴覚 → 身体運動の予測・想起
が双方向に結びついていて、循環しているから、私は「深さ」や「磁力」として知覚しているのかもしれませんね。
そう考えると、「深さ」や「磁力」は、音響情報だけでなく、音から想起される身体運動や筋肉の緊張まで含めた統合的な感覚なのかもしれません。
私は音楽を聴きながら、その音を生み出している身体の動きまで連想してしまうので、どこまでも視覚優位タイプだなと自覚します。
その人の身体から発せられる音を、目で捉えて、目で聴く。
そんな感じなのかもしれません。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。
良い一日をお過ごしくださいませ。
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