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世界同時債券安は終わりの始まり?【レポート6】

このnoteでは、現在起こっている「世界同時債券安」の影響について考察する。

・債券安は、金利高とほぼ同じだ
 何度か過去のnoteで解説してきたが、債券安と金利高はほぼ同じである。そして、短期金利と長期金利の違いに気を付けよう。現在「世界同時債券安」と呼ばれているのは10年以上の長期債券が主であり、つまり「長期金利の上昇」こそが問題の本質であると理解できる。

・長期金利が上がる時
 さて、ではなぜ長期金利が上がっているのだろうか?ちなみにアメリカ、日本、EU、イギリスの全てで長期金利が上がっている。つまり先進国全般の問題と言える。

 長期金利が上がる時は、大きく分けて2通りと考える。一つ目が「将来の経済成長が期待されている時」、二つ目が「将来に通貨の価値が下がる事を警戒されている時」だろう。まあ要はどっちもインフレなのだが、経済成長と通貨価値低下ではメカニズムが全く異なるはずだ。

・長期金利と株が同時に上がっているのは強烈なシグナル
 債券安、つまり長期金利上昇に注目してこの記事を書いているわけだが、見過ごせないのが「株も同時に上がっている」という点だ。現在、SP500は7500に迫る勢いで、半導体やAI関係を中心に根強い株高が続いている。日経平均も60000を超えた。

 短期か長期かに関わらず、金利が上がれば株には不利というのが、経済の原則だろう。なぜなら、暴落のリスクが無い預金や債券の利回りが上がるわけだから、株を買う意味が薄れる。

 つまり、歴史的に見ても凄まじいスピードで長期金利が上がっているのに、株価が最高値を更新し続けているというのは、経済の「ありがちなパターン」から外れた状況と言えるはずである。これは何を意味するのか?

・爆発的な成長か、通貨の信用喪失か?
 株高と長期金利上昇が両立しうる状況は、以下の2通りと考える。一つ目が、爆発的な経済成長が期待されている時。もっと詳しく言うと、株は景気に対して先行性があるから未来の成長を期待して上がっているとする。そうすると、将来にGDPと人口が増えてインフレも起きる事が期待されるので、長期金利も上がる。ということだ。

 そして二つ目が、通貨が信用を喪失し、価値が低下すると警戒されている時。この場合、現金を誰も持ちたがらないので、株は上がると言える。一方で長期国債は10年以上、その国の国債を保有し続ける必要があり、その間に通貨の価値が下がると、国債の価値も下がってしまう。だから「高金利をつけないと買い手がいない」状況になる。

 果たしてどちらがあり得そうだろうか?今や、世界的に少子化は進行しているのだ。筆者は、前者のポジティブなシナリオの解釈は無理があると考える。あり得るとすればAIが爆発的に進歩して、産業革命が起こる可能性だろうか。

・ドル、円、ユーロ、ポンドがトルコリラ化する世界
 先進国通貨が信用を喪失し、ネガティブな文脈でのインフレが起こる時。それはつまり、ドル、ユーロ、円、ポンドなどの先進国通貨がトルコリラに近くなるということだろう。まあ規模が全然違うのでいきなりトルコリラみたいな速度にはならないだろうが、年に10%~ずつ価値が減っていくぐらいの状況は覚悟すべきかもしれないと考える。

・利上げは必ず通貨高を起こすわけではない
 「日銀が利上げをすれば円高」「円安は日銀のせい」・・こういう意見をよくSNSとかで見る。過去のnoteで何度も説明したが、これらの原則は「他に問題が無ければ」成立することを忘れてはいけない。政府の債務が巨大である時や通貨の信用が下がっている時は、むしろ利上げは通貨安の原因になりうる。これこそが、量的緩和の副作用としてインフレ制御機能の喪失が挙げられることの実態と考える。

 実際に、トルコリラやアルゼンチンペソでは驚異的な通貨安が進行したわけだが、この期間はほぼずっと「超高金利」であったはずである。利上げ=通貨高の理解の人は、おそらく池〇彰的な解説本レベルの知識で満足していると推測する。今の相場で勝ちたいなら、トルコリラがその原則から明らかに外れている原因を真剣に考え抜くべきだ。

 さらに注目すべきは、政府債務は政府の責任、政策金利は中央銀行の責任であるという問題だ。つまり政治家は「通貨安になっているのは、政府ではなく中央銀行のせい」だと国民が思っていた方が都合がいいはずだ。ましてや、日本円がトルコリラ化しているなどと政治家サイドから言えるはずもなく、それは大手メディアや金融機関などの忖度サイドも同様だろう。

 類似する問題として、「高金利でゴールドが下がる」という説も妄信は危険だと考える。実際にドルの長期金利は上がり続けているのに、ゴールドも上がっているではないか。もし政府に債務が無ければ、この説は高い確率で成り立つと思う。しかし債務が巨大である時は、むしろ高金利は利払い費の増加からドルの信用を下げ、ゴールドへの資金流入を促進する可能性だってあるはずだ。

 一般論として、「教科書的な原則」と「それが成立しやすい前提」に注意が必要だろう。特に、大規模な量的金融緩和はリーマンショック以降にアメリカ、日本、ヨーロッパなど各国で行われてきたが、量的緩和は「非伝統的金融政策」と当時まで呼ばれていたものである。つまり現代の相場で生き残りたければ、量的緩和が引き起こした巨大債務の例外性は常に考え抜くべきであり、むしろそれについての先見性だけで勝敗が決まると言っても過言ではないかもしれない。

・どうすれば良さそうか
 筆者はこの状況を考察し、以下の資産ポートフォリオを好む。「全世界株式50%、ゴールド20%、その他好きなもの30%」(注意:これは個人的に好きだという感想であって、投資助言ではありません。)

 これは約半年前のポートフォリオ考察の記事で紹介したバランスと全く同じである。なお他の記事も読めばわかると思うが、これから長期金利が上がると考え、価格下落が起こりそうな債券は好きでないという意味の文章を何回も書いているはずで、つまりずっと前から今の状況を予想していたのである。

 その他好きなものは何でもいいと思うが、筆者ならグローバルサウスなどの途上国株、欧州株、大型バリュー株、仮想通貨、ゴールド以外の金属、不動産などへの分散を好む。

 いわゆるビッグテック、M7、FANG系も悪くない気がしているが、筆者は全世界株50%に含まれる割合で満足する。これらは「グロース」に分類され「高PER」という特徴を持つため、経済の原理原則では長期金利上昇時に特に不利なセクターと判定できるはずだ。しかしながらAIの爆発力はそういう原則を吹き飛ばす可能性もあると思う。さらに近年では、ビッグテックは金融や広告などのバリュー的かつインフラ的なビジネスと融合しつつあるので、そもそもグロース的に扱えば良いのかも、ぼやけてきていると感じる。

・世界同時債券安は終わりの始まり?
 世界同時債券安つまり長期金利上昇、さらに株高の共存は非常に強烈なシグナルと見る。ドル、ユーロ、円、ポンドなどの先進国通貨がトルコリラに近づいていく可能性を危惧する。また、それによって何かしらの大事件が起こることも警戒する。具体的にはわからないが、リーマン級の金融危機とか、暴動とか、戦争のような何か。通貨の価値が急激に下がり、金利によって住宅ローンや会社の資金調達コストが重たくなる世界。どこかで歪みが爆発する気がしているのだ。

 今や世界経済は、数年前から筆者が想像していたような激動の時代に突入しつつあると考える。

・まとめ
債券安つまり高金利に注目する
長期金利上昇と株高の共存を強いシグナルと見る
ドル、ユーロ、円、ポンドのトルコリラ化を危惧する

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