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浮世絵で旅する|江戸の五感【涼み船】食べて、遊んで、江戸の船遊び

前回の「江戸の五感【川開き】」では、夜空を彩る花火に着目しました。
今回はその花火の下へ。

舟に揺られながら、江戸っ子たちが楽しんだ夏のひとときを旅してみましょう。


① 江戸の夏は大川へ

勝川春山《大川端夜景》三枚続
(おおかわばたやけい)
出典:ColBase

5月28日に川開きが始まると、江戸っ子たちは川べりを歩くだけでなく、舟に乗って涼を楽しみました。大川とは隅田川のことで、当時は親しみを込めて大川と呼ばれました。

こちらは大川の西岸、両国橋南の元柳橋河岸(もとやなぎばしかし)を描いた三枚続の続絵

扇子や団扇、提灯を手に、そぞろ歩きを楽しむ人々の姿が見えます。

対岸には、右に幕府の御船蔵(おふなぐら=幕府艦船の格納庫)、中央には堅川(たてかわ)に架かる一つ目橋。その手前の川面には、屋形船をはじめ、さまざまな舟が浮かび、それぞれ思い思いに夏を楽しんでいます。

大型で立派な屋根をもつのが「屋形船」。

中型の屋根付きの船が「屋根船」で、現在「屋形船」と呼ばれる船の原型ともいえる存在です。

この絵を描いた勝川春山(しゅんざん)は勝川春章の門人とされますが、すらりと長身の美人たちの姿には、鳥居清長を思わせる優雅さも感じられます。

② 船にもいろいろ

喜多川歌麿《橋の上下》六枚続 橋上部分
(はしのうえした)
出典:ColBase
喜多川歌麿《橋の上下》六枚続 橋下部分
(はしのうえした)
出典:ColBase

こちらは両国橋の上と下の様子を描いた六枚続。

上下それぞれが三枚続となり、また一枚ずつでも楽しめるよう人物が巧みに配置されています。

橋げたの間からは遠く新大橋も望め、どこを切り取っても見飽きることがありません。

日傘をさす人も描かれているので、昼間から舟遊びを楽しんでいた様子もうかがえます。


③ 小さな舟で粋に遊ぶ

鳥文斎栄之《新大橋橋下の涼み船》五枚続の一部
出典:Wikipedia Commons

さらに舟へ近づいてみましょう。

船上で人形浄瑠璃や三味線を楽しみながら、お料理をつまみ、ゆったりと流れる時間を味わう人々。まるで水上の料亭のような、なんとも粋な遊びです。

手前の屋根のない小型船は「猪牙舟(ちょきぶね)」。船首が細長く尖り、船頭一人で客一人か二人を乗せる高速艇です。小回りが利き、隅田川では人気の足でもありました。


④ 川も一つの町だった

歌川国芳《東都名所・両国の涼》
出典:ColBase

さらに面白いのは、「うろうろ船」と呼ばれる物売り船です。小料理や酒、お土産などを積み込み、舟から舟へと売り歩いていました。

この絵でも、うろうろ船の船頭がお料理を屋根船のお客へ手渡しています。

うろうろ船の看板の後ろでは、団扇で風を送りながら焼き物でも焼いているのでしょうか。

頭上には花火が打ち上がり、川面には無数の舟。

まさに、川そのものが一つの町になったような賑わいです。

⑤ 花火は五感で楽しむ


橋の上から眺める花火は無料です。
しかし、江戸っ子はただ眺めるだけではありませんでした。

打ち上げの音。
火薬の匂い。
夜風。
そして降ってくる灰。

その灰を頭につけて帰ると風邪をひかないと信じられ、多くの人が花火の真下へ集まったといいます。

「たまやー」「かぎやー」の掛け声も有名ですが、これは人気歌舞伎役者へ声を掛ける文化にならったものとも伝えられています。

江戸の花火は夕方から始まり、宵の口が最も華やかな時間でした。

舟に揺られ、
風を感じ、
音を聞き、
火薬の匂いを楽しむ。

五感すべてで味わう。
それが、江戸の夏でした。


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歌川国芳《東都名所・両国の涼》(部分)
出典:ColBase


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