【社会人向け】20年働いてわかった。数学は仕事の問題解決にどう役立つのか?
私は約20年間、組織でさまざまな問題解決に携わってきました。
その中で、あるときふと気づいたことがあります。
「仕事で問題を解決するときに使っている考え方は、学生時代に数学で身につけた考え方と、よく似ている」ということです。
本記事では、前半でその問題解決の5ステップを紹介し、後半では、それぞれのステップで数学の考え方がどのように役立っているのかを解説します。
「仕事のパフォーマンスを高めたい」「大人になって数学をやり直す意味を知りたい」という方への、ささやかなメッセージとなれば幸いです。
■ 実務における「問題解決の5ステップ」
まずは、私自身が実務を通して培ってきた、組織で働いていく上での問題解決プロセスを、5つのステップに整理してご紹介します。
なお、この考え方は、ノーベル経済学賞を受賞したハーバート・サイモンの意思決定モデルとも共通点があります。私自身は実務経験からこのプロセスにたどり着きましたが、後から調べてみると、ビジネス分野で広く知られている考え方とも重なるものでした。
分かりやすいように、ここでは「新しい業務ツールの導入を検討する」という具体例を交えながら進めていきます。
【問題解決の5ステップ】
ステップ1:情報収集する
ある問題(課題)が生じたとき、対応策を検討する材料として、まず前例や類似の事例についての対応を、職場の資料から集めます。同時に、関連する参考となりそうな情報や、法令、ガイドラインといった規則も、インターネットや図書館などを使って収集し、判断の土台となる事実と規則を確認します。
(例:他部署でのツール導入実績、ツールの予算相場、会社のセキュリティ規程、セキュリティ関連法令などを収集する)
ステップ2:メリット・デメリット(以下、メリデメ)を整理する
集めた情報をもとに、問題解決に必要で、かつ実現可能な対応策を検討します。いくつか対応策が考えられる場合は、それぞれのメリデメを整理し、客観的に比較・評価します。
(例:「高機能なAツール」と「安価なBツール」のメリデメを一覧で比較する)
ステップ3:対応方針を考える
メリデメが整理できたら、組織の中長期的なビジョンや価値観と整合するようにそれぞれの軽重を評価し、対応方針の案を作成します。
(例:「今はコスト削減より現場の業務効率化を最優先すべき」という組織方針に照らし、Aツールを軸にする方針を固める)
ステップ4:上司へ説明し対応方針について承認を得る
対応方針の案が出来たら、問題の概要、情報収集結果、対応策のメリデメ、対応方針を簡潔にまとめた資料を作成します。その資料を用いて上司へ説明し、必要に応じて修正意見を取り入れながら、組織としての最終方針を確定させます。
(例:1枚の提案書にまとめ、「なぜBではなくAツールなのか」を上司に説明し承認を得る)
ステップ5:対応方針のとおり、実行する
方針が定まり上司からの承認を得たら、あとは決定した方針に従って着実に実行に移します。実行中も進捗や結果を確認し、必要に応じて細かな調整を加えていきます。
(例:マニュアルを作成して初期設定を進め、現場の利用状況を見ながらサポートを加える)
■ 問題解決プロセスを進めるために必要な「数学の力」
ここからが本記事の本題ですが、上記の問題解決プロセスの5ステップを実行するためには、実は数学で特に鍛えられる「論理的思考力」が重要になります。5つの各ステップで、どのような数学の考え方が活きるのかを解説します。
① 情報収集における「問題の属性を見極める力」
ステップ1で重要なのは、目の前の問題がどのような属性を持っているのかを把握することです。
例えば、新しい業務ツールを導入する場合でも、「情報セキュリティ」「法務」「予算」「現場運用」など、さまざまな側面があります。それぞれの属性を把握して初めて、必要な情報を漏れなく集めることができます。
数学でも、例えば関数を考えるときには、まず「一次関数か二次関数か」「対称性を持つか」「周期性を持つか」といった、その関数が持つ性質(属性)を把握します。属性によって、問題へのアプローチが変わるためです。仕事における情報収集でも同様に、まず問題の属性を見極めることで、集めるべき情報が見えてきます。
② メリデメ整理における「論理の連鎖を想像する力」
ステップ2のメリデメ整理で重要なのは、単に思いつく要素を並べることではありません。「この対応策を取った場合、次にどのような影響が起こるか」という“論理の連鎖”を想像する力が必要です。
「Aを実行する → 結果としてBが起こる →
その結果Cというデメリットが発生する」というふうに、因果関係を順序立てて考えることは、数学の証明で「ある事柄を論理的につないでいく思考」とよく似ています。
③ 方針決定における「与えられた条件の中で最善を選ぶ力(最大・最小問題)」
ステップ3の意思決定は、数学でいう「与えられた条件のもとで、最善の答えを探す(最大・最小問題)」という発想に近いものです。
現実の仕事では、「予算」「納期」「人員」など、さまざまな条件を踏まえて判断する必要があります。その中で、「今回は納期を最優先する」といった組織の方針やプロジェクトの目的を踏まえ、その目的を最もよく達成できる選択肢を選ぶ思考が求められます。
数学でも、「面積を最大にする」「距離を最短にする」といった問題では、与えられた条件のもとで、ある目的を最もよく達成する答えを求めます。仕事の意思決定も同様に、組織の方針や目的を踏まえ、その目的を最も達成できる選択肢を選ぶという点で、数学の最大・最小問題とよく似ています。
④ 上司への説明における「ゼロから筋道を立てる力(証明)」
ステップ4で上司に説明する資料を作成し説明するには、ゼロから筋道を立てて論理を構築する力が必要です。
これは数学における「証明」の力と深く重なります。「前提(情報収集で得られた事実や条件)」から出発し、「論理の展開(メリデメの比較や評価)」を経て、「結論(取るべき方針)」へと、飛躍や矛盾なくつなげていく思考が必要となります。
⑤ 実行における「手順通りに正確に進める力(計算・アルゴリズム)」
ステップ5でご説明した「実行フェーズ」で求められるのは、決まった方針を正しく、ミスなく遂行する力です。
これは数学でいう「決まった手順や公式を正確に適用して計算する力」に通じます。論理を組み立てる段階(ステップ1〜3)と、手順を守って着実に処理する段階(ステップ5)を適切に切り替えることも、数学の問題解決と共通しています。
■ 大人に必要な「ビジネス数学力」を身につけるために
学生時代、「数学は大人になって何の役に立つのか?」と疑問に思った方は多いはずです。また、「学校の数学=テストで素早く正確に計算するためのもの」と思っていたかもしれません。
しかし、こうして振り返ると、数学で培う思考力とは、「社会に出てから複雑な問題を解決するための、仕事の土台となる力」であると私は感じています。
ここまで見てきたように、仕事の問題解決と数学の問題解決のプロセスは、共通部分が多くあります。①情報を整理し、②論理の連鎖を考え、③与えられた条件の中で目的を最も達成できる選択肢を選び、④他者にわかりやすい論理(証明)を作り、⑤着実に実行する——これらはすべて、大人になってからビジネスの現場でこそ強く求められる能力です。
最近ではAIが文章を作成し、論理的な案まで提示してくれるようになりました。だからこそ、AIの提案を評価し、上司(あるいは他の関係者)へ論理立てて説明し、問題を解決へ向けて進めていく力が、我々人間にとって、より重要になっていくと感じています。
「複雑な条件が絡み合うプロジェクトの方針が決められない」
「上司を納得させる論理的な説明ができない」
そんな悩みを抱えるビジネスパーソンの方々にとっても、数学的な考え方を改めて学ぶことで、ビジネスの現場で大きく活きてくる部分があるはずです。
数学は答えを覚える教科ではなく、「条件を整理し、筋道を立てて結論を導く訓練」を繰り返す教科です。だからこそ、その思考法は仕事の問題解決にも応用できるのだと私は考えています。
20年ほど仕事をしてきた今、振り返ってみると、学生時代には「こんなことが将来何の役に立つのだろう」と思っていた数学の考え方が、仕事のさまざまな場面で役立っていました。
もちろん、仕事で二次関数を解いたり、数学の証明問題を解いたりするわけではありません。
それでも、条件を整理する、複数の選択肢を比較する、そして一つの方針を導く。
こうした思考の型には、数学と仕事の間に確かな共通点があります。
これが、私が長年仕事をしてきて気づいたことの一つです。
そして、AIがさまざまな答えや案を提示してくれるようになった今、この「自分で考え、判断する力」は、以前にも増して重要になっているのではないかと感じています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
☆おすすめの関連記事
📚 上記の算数・数学パズル問題集は、BOOK☆WALKER、Amazon・楽天Koboでも販売しています。
#数学 #算数 #四則演算 #数学の学び直し #大人の勉強 #Grit #受験
#数学 #学び直し #思考力 #ビジネス思考 #問題解決 #AI時代 #大人の学び直し #LogiGrit
