Chapter6. 凝血現象:真の生化学的意味②
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そして第一に、この組織が今や血管外の混合物である点に留意すると、もはや自然な生理学的状況にないことは明白である。
環境の変化に伴って容器と内容物各々の解剖学元素が栄養失調に陥り、全ての可溶性有機物や鉱物質と細胞・顆粒間液が混合すると、その組成が直ちに変化する。異化生成物が使用できぬまま排除もされず、栄養物の利用も補充もできない。更に、適切な機能に酸素を必須とする流体組織の解剖学元素は益々酸素が奪われることになる。何故なら、流体組織に貯蔵し、吸収可能な形で蓄積させた未消化物が全て消費されると、同時に消費した酸素が呼吸で充填されない為である。従って流血に真先に生じる変化とは、細胞・顆粒間液が必然的に受けるその組成の変化である。
微小発酵体分子顆粒は培地と存在条件の変化で真先に影響を受ける解剖学元素であり、その影響は非常に強力かつ急速で、その雰囲気の構成成分であるアルブミノイド物質に生じる甚大な変化~極希薄塩酸へ即座に溶解する処、難溶性を示し、時間と温度の関数でのみ溶解する~を期に数秒以内に顕現する。これは即ち、この影響にはアルブミノイド物質を希薄塩酸で凝固する性質へと変化させる効果があることを意味する。
問題は解決した。凝血形成の機序とは以下の通りである。
微小発酵体分子顆粒は、流体組織中の血球や細胞・顆粒間液を除く空間全域に渡って存在する。間液の密度を極僅かに上回る程度の密度により、静止状態では顆粒同士は接近し、接触する。軟質かつ粘質のアルブミノイド雰囲気が交雑すると同時に先述の凝固を受ける。この変化が余りに急速な為に、遥かに高密度の筈の血球は沈殿する猶予もないまま、(ハラーが述べた通りフィブリンと膜を構成する)雰囲気同士の癒着で形成される網目構造に捕縛される。
分子顆粒や血球は毛細管現象で間液と密接に結合しており、凝血完了から数分後にその容器を逆様にしようと液体が漏れることはない。これは、流体組織中の分子顆粒の分布、三種の解剖学元素を囲む間液の分布に関する是迄の話からも予想の範疇である。
ここで「だがこれぞ血漿仮説での現象だ」と一見理性的な主張をされる可能性がある。だがこの仮説が検証された試しがない。それ処か血液に血漿は存在せず、一方その中心に微小発酵体を持つ分子顆粒は確実に存在し、またホイッピング分離のフィブリンに微小発酵体が存在することも直接証明した。そして以下の二つの現象は血漿仮説では説明不可能である。
凝血完了後の凝血塊は次第に二つの部分へと自然分離する。凝血塊の血球を包含するもの、即ち(微小発酵体分子顆粒の癒着で形成される)フィブリンの網目構造は、凝血塊が形成された容器の形状を維持しつつ一定の限界まで収縮し、その間に間液が一部排泄されて所謂「血清」を構成し、ここに収縮した組織が浸漬する。
排出時点での血清は透明なレモン色だが、間液が溶液状態で保持していた酸素や、血球内部の酸素が次第に消費されると、デュマが酸素を奪取された血球に観察した現象が顕現する。血球や色素物質が変質し、変質した色素物質が周囲の血清へと拡散し、深紅色となる。血漿を全成分が完全な溶液状態の液体と仮定する血漿仮説ではこの現象は説明不可能である。この事実を更に直接的に実証しよう。
他の条件を全て統制しようと、凝血速度は種によって顕著な相違がある。雄牛や羊と条件を揃えた馬の血液は、流体組織の第三の解剖学元素が果たす役割の確認に最適である。馬の流血を放置すると二層に分離する。下層は通称「血餅 」、血球で形成される。上層は通称「リキュール 」、微小発酵体分子顆粒を含む。上層は透明だが懸濁し、独特の粘性のある流体であり、血球沈殿後(下層との分離後)にもデカントが可能な程である。非常に急速に塊を形成し、容器を逆様にしてもリキュールは一滴たりとも垂れることはない。その後、透明性が消失しつつ収縮が生じ、血清の滲出が始まる。血球が二層分離しない動物種の血液と同様である。さて、同じ培地に凝固状態では不溶性になる筈の物質が仮説通りに溶解していれば、このような収縮が起こることはない。
馬の血液が呈する特異性は、血球と間液の密度差の大きさ、アルブミノイド雰囲気の軟性の高さに起因するだろう。これにより分子顆粒が更に膨潤し、その結果血清が囲む塊は容易に血球を通過させる。そこで私は、雄牛と羊の血液をその一般的組成に関して馬の血液と比較することにした。

馬血清には有機物および鉱物質の量が少なく、その旋光度は雄牛血清に近似して羊血清より遥かに低い。だが最も印象的な点は、特に鉱物質の含有量が他二種の血清より7~8倍も少ないことである。
馬の血液血清には、私が比較対象とした二種の血清と並外れた相違がある。これは顆粒のアルブミノイド雰囲気の軟性と血球の急速な沈殿を一挙に説明するに十分である。
以上より実験的に確証が得られた。血球が占拠する血液中の空間全域のみならず、血球沈殿後の空いた空間全域もまた分子顆粒が占拠している。
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