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Chapter6. 凝血現象:真の生化学的意味⑦(了)

⇩の続き

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ビール酵母の場合は更に感興を唆る。酵母は細胞に還元される生命体であり、その変質と完全破壊は血球の同じ事象へ強烈な光明を投じることになる。甘蔗糖のアルコール発酵に、その完全発酵の必要量より僅かに多い酵母を使用したとする。発酵が完了すると、発酵した溶液に酵母が沈殿し、その形態と特質を維持しつつ、さながら無気力に陥ったかの如く永久不変のまま保存される。では醸造所から送られた新鮮な酵母を蒸留水で洗浄した後、3~4倍量のクレオソート蒸留水に浸漬してみよう。約30℃(86℉)で一切の空気接触もない生理的な存在条件から大きく異なるこの条件では、長時間にわたり純粋な炭酸が放出されると同時に、一貫して形態を維持した儘、比較的大量のアルコールや酢酸等が生成される。被包構造が無傷に維持される以上、明らかにこれら生成物は全て酵母自身の組成成分や内容物を対価にしてのみ生成可能である。これを酵母が劣化するまで放置すると、やがて被包自体が消失し、その微小発酵体が遊離した後にビブリオが出現することになる

ここに、ビール酵母細胞が自然崩壊に至る迄の機序を追究する最短の方法がある。一般に酵母は馬鈴薯澱粉を発酵させないと周知されている。だが、酵母が馬鈴薯澱粉を液化し、その液体培地の中で完全に破壊された後に微小発酵体だけを残しつつ、周辺環境に一部の可溶性の内容物を散布させる現象は知られていない。この現象の持続時間はクレオソートの量に依存する。少量の場合は微小発酵体がビブリオへ進化する。十分量ならば進化は観測されない。だがそれが全てではない。このビール酵母細胞の自然崩壊現象の追究により、ビブリオの微小発酵体起源を研究する過程で長年にわたり観察した事実の普遍性に確証を得たのである。 

酵母の小球が破壊され、遊離した微小発酵体がビブリオ進化を開始する迄に幾つかの段階が観測され、これはエストールと私が肝臓等の器官研究でその当初から指摘してきた。初期段階の微小発酵体には大きさと形態に殆ど変化はない。次に、微小発酵体が8の字型に結合する。更に、3粒から10粒、20粒の微小発酵体がチャプレット 数珠玉状になり、その全てが同じ大きさである。次にビブリオ、運動性の可否がある屡々巨大なバクテリア、またトレキュル Tréculのアミロバクターが自由な活動状態か、両端が結合した状態で出現する。クレオソートやフェニック酸でこの現象が緩和されない場合、顕微鏡の実視野にこれら生成物が全て同時に映し出される。ここで実験条件を変更せずに観察を続けると、単純な微小発酵体以外の形態が全て次々と消失することが分かる。真先にアミロバクターが消失し、新たに小さな形態が出現しては消失し、最終的に元の微小発酵体と大差ない運動性の形態の集合だけが残る。

従って解剖学的な表現をすれば、微小発酵体はビブリオに進化する。ビブリオやバクテリア、ビブリオ属全般は進化の逆転現象により微小発酵体の形態に回帰し、その最終形態は細胞の解剖学元素である微小発酵体と相違ない。

酵母の小球、即ち一般的な細胞はその破壊によって自身の微小発酵体を遊離させる。必要な条件が揃えばこれら微小発酵体はビブリオへ進化し、また外観上の同一条件で逆進化現象により微小発酵体を繁殖させる。

エストールと私が家禽の胚細胞の発生学研究で証明した通り、また私がビール酵母や酢母細胞の発生で実証した通り、微小発酵体はあらゆる細胞や組織構成、バクテリアの始原であると同時に終焉でもある。

ビール酵母の微小発酵体の真理は、動植物のあらゆる細胞、あらゆる組織の微小発酵体に対しても真理である。そしてこの事実は、微小発酵体の存在を否認し、この名称を忌避する余りに”点状発酵体 punctiform ferments”と称する者達までもが意図せずして確認している。始めに生産者の微小発酵体があり、終わりの微小発酵体がある。これはバクテリアや細胞の始原と終焉である。

ビシャが考想し且つ定義した有機的構造とは、その内部に生きる唯一の存在として形態学的定義を持つ解剖学元素を宿し、天然の動植物質とは即ち、この構想に準ずる秩序化された物質である。そう、これら物質は全て、最高度に秩序的な存在からビール酵母に至る迄、その生理的な存在条件が破綻した途端に化学的かつ解剖学的な自然変質を遂げるのである。

その化学的変質、特にアルコール、酢酸、乳酸、安息香酸の生成や炭酸放出の有無等を強調することで、私は、これらの変質とはその実、生ける有形発酵体の存在を前提とする、最も馴染みのある発酵現象の類なのだという証明を志向していた。だがビール酵母の自然変質であろうと、唯一の生成物とはアルコールや酢酸ではない。1864年初頭に他の生成物を報告した。詳細な研究の結果、私はコハク酸や、粘液酸を生成する特殊な三元系粘着性物質、ロイシン、チロシン等の窒素化合物を発見し、その形成は、酵母のアルブミノイド物質もまた変質に関与する証であった。他にも同じ窒素化合物が発見された。この酵母研究を、馬肉や魚肉の自然劣化にまで拡張し、これらの研究を組成や機能的に類似する生成物の分離により検証した。

だがこれら自然な化学的変質が有形発酵体の存在を前提とする発酵現象に分類される以上、その発酵体とは何であろうか?実際、ビール酵母に糖を発酵させる場合、通常の発酵生成物に紛れる自身の変質した内容物で破壊されることはなく、従って形状維持の為の被包構造が自身の解剖学元素…即ち微小発酵体…と共に全体構造を維持している。対照的に、糖の供給なく自然にアルコールを生成する場合、血液や生肉、肝臓の細胞や有機的構造と同様に変質し、破壊される。従ってこの場合の自発的な発酵現象の発酵体は細胞や組織ではない。パスツール氏は変質した血液に空中胚種由来のビブリオの存在を探求したが発見されず、そこに発酵現象も化学的変質もないと結論を下した。だが、ビブリオや細胞の存在無くしてアルコールや酢酸が生成される発酵現象があり、例えば乳汁変質の初期段階や、卵を殻の内部で攪拌させた場合等である。

この場合の発酵体は当に微小発酵体か、時にその進化形態のビブリオ属、最終的にビブリオ属が破壊された後の微小発酵体である。何故なら、現象の開始期や終息期の何れの瞬間でも、変質の途中か完了した培地の中に、当初の微小発酵体か諸々が崩壊された後に残存する微小発酵体の他において形態学的定義された生成物は存在しない為である。

これは無根拠な主張ではない。動物起源の微小発酵体と酵母起源の微小発酵体は、実際的に糖や澱粉からアルコール、酢酸、乳酸を、白亜の乳酸塩の発酵により酪酸を生成する有形発酵体だと実験的に証明された為である。そしてこの分類に属すのは、まさに血液や血球の分子顆粒にいる微小発酵体である。

これら実験を総合し、生体組織全般、血液、特に血球における微小発酵体が解剖学元素であり、有形発酵体そのものであることは問答の余地がない。即ち、生ける秩序的存在であり、酵母や同じ秩序的物質から発生するビブリオ属で一般に認められる通りである。だが微小発酵体は比類なき完全なる特殊な系統に分類される生命体であり、この点を長らく訴えてきた。今改めて、血液が流体組織だと先陣で訴える者として強調しよう。

では、変質した組織には何が起こるのだろうか?まず、アントワーヌ・クロ博士の言葉を拝借すれば、生体内のあらゆる器官や組織の機能が調和し、また系全体が調和した儘の存在と機能ではもはや保存されることはない。そして血液性微小発酵体分子顆粒を囲むアルブミノイド雰囲気や、赤血球の赤色素で立証した通り、その存在条件の変化に起因して部分的に何等かの化学的変質が生じる。端的に、その特殊な解剖学元素が破壊され消失する程の形態や機能に変化が生じ、その存在の唯一の痕跡として微小発酵体が残存し、状況に応じてビブリオ進化の可否が決定される。組織学者が重々承知する通り、その解剖学的変化は余りに急速であり、組織の完全性の維持には予防措置を講じる必要がある。実際、血液の第三の解剖学元素の検出が不可能となる迄、出血から1~2分もあれば十分である

パスツール氏の実験然り、あらゆる実験系における血液の化学的・解剖学的変化は、条件が充足してもバクテリア進化を起こさない微小発酵体単独の作用に由るものと結論づけなければならない。この化学現象が如何なる系統に属するかに関してはこれで決した。生理学的有機物にある近成分の化学的変質は全て有形発酵体の作用による発酵現象或いは腐敗現象とされる以上、血液の自然な化学的変質とは、腐敗産物の生じない発酵現象や腐敗現象の帰結であることは明白である。

当然ながら、血液実験がパスツール氏の場合と類似条件下でより大規模に実施される場合、私の報告した以外の生成物が発見されるだろう。その中にアルコールが含まれていようと私は驚かない。

さて、凝血現象の真意が明白となった。それは以下の通りである。組織である血液は必然的に自然変質する。それはあらゆる組織、天然の有機物、動植物質で周知の通りであり、また凝血と呼称される現象はその完全変質の第一段階に過ぎず、その後に組織崩壊や血球の消失に移行する。現象全体が微小発酵体の作用であり、これは生理学的な発酵体として機能し、近成分の化学的転換ならびに解剖学的変質に作用する。これは最終的に組織や細胞の崩壊に終息する。

だが繰り返す通り微小発酵体は比類なき特殊な系統に属する生命体である。他の出版物でも示した通りだが、改めて強調することで、本書の内容およびその証明事実に最高度の確実性を持たせ、また、以前の著作では何気なく言及するのみであった新たな誤謬への反論を誓った。これが次章の主題である。

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