見出し画像

Chapter6. 凝血現象:真の生化学的意味⑤

⇩の続き

//////


エストールの助手セルヴェル氏が、空中胚種を完全に遮断しようとも、肝臓や腎臓等の有機的組織は内部にもバクテリアを発生させ得る事実を確認した旨の論文をアカデミーに提出し、ドイツでの別の検証例も紹介した。さて、バラールがこの論文を提示した折に、パスツールの実験では血液が腐敗発酵もせず、バクテリアも発生させずに長期間保存されていると論評した。私はバラールに、血液や卵は、その微小発酵体がバクテリア進化を遂げ難い種類の一つだと返答した。この返答も空しく、パスツール氏の実験は、組織や体液を土壌にバクテリア進化が可能な有形物は内部培地には存在しない先駆的な証明だと紹介され、また氏の見解を支持し、この実験は同時に動物の体は外来の胚種に閉鎖的である証明でもあると断言されたのである。

医学アカデミーの議論の場でもやはり私は改めて微小発酵体理論を弁護したが、この場に居合わせたパスツール氏が先の結論を強弁し、やはり微小発酵体の存在を否認し続けた。そこで私は、氏の血液実験は氏自身の理論体系への違反だと反論した。

血液結晶が出現し、血球も消失した血液に変質がない確証はあるのか vous affirmez que le sang , ce liquide où des cristaux se forment et les globules s'évanouissent , n'est pas altéré ? この血液の血球は既に破壊され、消失しているが Les globules de ce sang se détruisent toujours et disparaissentでは血球が破壊された原因は何か qui donc les a détruitsヘモグロビンもまた結晶へと変容し、液体には微小発酵体の凝集が確認される L'hémoglobine même se transforme en cristaux et on trouve alors dans le liquide un fourmillement de microzymas。…貴君が認識も報告も仕損じた微小発酵体である Les microzymas… vous n'aviez pas vus et pas signalés.

Sur les leucomaïnes , les ptomaïnes et la théorie microbienne. (1886).
In J.-A. Béclard, Bulletin de l’Academie de médecine (Vol. 15, pp. 666–682); p.680-1.
G. Masson, Editeur, Libraire de l’Académie de médecine.

最早接触触媒への言及もないパスツール氏の返答は

だがこの変容は空気中の酸素の影響で生じるのだ。 Mais ces transformations se font sous l'influence de l'oxygène de l'air

ここで微小発酵体の存在に関して、氏の実験ではバクテリアに進化したのだという私の主張を「信じるに任せる je la lui abandonne 」という体で氏は容認した。

微小発酵体の存在が容認された時点で実験結果の批評は完了した。その後のパスツール氏に「空想の産物 un être de pure fantaisie」と扱われ続けようと、氏が現象を「酸素による何等かの影響」と説明しようと然したる問題ではない。この公言で以て、私の学問上の反対論者達が開眼し、自らが欺かれていた自覚を得ることに期待を寄せる理由が私にはあった。だが何一つ変化はなかった。だが存在が容認された以上、後は第二段階における現象の推移や血球破壊の原因が真に微小発酵体だと証明するのみである。

第一章では、フィブリンを空気に晒したまま石炭酸水に浸漬すると可溶性生成物へと変容し、バクテリアも悪臭腐敗も発生せず、新たな微小発酵体分子顆粒が残留すると示した。またこの分子顆粒の微小発酵体が変容の原因となる発酵体であった。一方、馬鈴薯澱粉に投入したフィブリンはこれを液化した後に発酵し、その間にバクテリアが発生した。ここに二つの事例がある。一つは進化の伴わない微小発酵体の活性化、もう一つはバクテリア進化である。

以下の実験は、脱線維素血液の血球破壊現象に酸素が一切関与しない証明である。

雄牛の血液約300㏄に飽和フェノール水溶液50ccを加えた直後に脱線維素化し、フィブリンから慎重に分離した血液中の酸素を排出する為に炭酸の気流に晒した。フラスコを密閉し、モンペリエの6月の気温に1ヶ月放置した後に30~33℃(86~91.4℉)のオーブンに入れた。血液は悪臭腐敗せず、血球の形状に極僅かな変化は視認されたが、始め10~12日は構造全体が維持された。非常に微細な分子顆粒が6月15日頃に大量に出現し、極稀ながらこの日より出現の早い例もあったが、ビブリオやバクテリアの痕跡はなかった。長期間に渡り抵抗した血球は最後に消失した。これは無酸素環境での変質であり、その微小発酵体は血球に由来する他にはない。

フィブリンや、脱線維素血液の血球は悪臭腐敗せずバクテリアも発生させず、それ自身の微小発酵体の作用でのみ破壊される。

雄牛の血液から脱線維素の有無を問わず血液結晶が形成されないとすれば、それはそのヘモグロビンが結晶を形成しない、或いは形成に困難を伴う種の為である。

自らがその変質を実証しながら筋肉や生肉、血液は腐敗し難いとの結論にパスツール氏が達したとすれば、それは発酵体の起源は唯一空中胚種にあり、有機的構造の原形質理論が厳密な観察事実に基づくと盲信した為に違いない。そして敢えて言おう。氏は自らの誤りを悟り、観察の不備と踏外した道を認められずに微小発酵体理論を故意に否定したのだと。

私が血液実験で再吟味した如く、ジョセフ・ベシャン教授は生肉で再検証した。教授はパスツール実験を、防腐剤にアルコールを使用せずに繰り返した。結果、肉片の中心部、パスツール氏が「ビブリオ菌は存在しない」と言った箇所に、進化の最中にある微小発酵体や、ビブリオやバクテリアを発見した。同時に崩壊する組織も発見した。

パスツール氏に変質する血液に微小発酵体の存在を容認させた議論の場で、氏が別の実験で報じた”悪臭を放つ肉塊”の内部にバクテリアが存在する事実を自供させようとした。だが氏は拒んだ。

私の生肉に関する実験についての貴君の趣旨が不明である je ne sais ce que vous voulez dire en parlant d'une expérience de moi sur de la viande

Ibid((1886). p.681

この学者が空中胚種の役割を過大評価し、その侵入を遮断した有機物全般が腐敗しないという虚偽の証明をして以降、科学界は悲惨な道へと突入した。斯くして氏は、遥か昔より認知された真理に疑念を投じたのである。即ち「あらゆる天然の有機物は動植物を問わず、マッケル条件の下、発酵現象により自然変質する」という真理にである。


いいなと思ったら応援しよう!

MitNak 全記事無料公開しつつサポートのみでの生存を目指す男です。 何か響くものがあれば、期待できる何かがあれば投げ銭頂けると幸いです。 よろしくお願いいたします。