【文学フリマ挑戦】#20 最初は二冊を文学フリマ大阪14に持っていきたかった。でも……|MMPP Publishing
文学フリマからメールが届いた。
出展者情報(カテゴリ・カタログ記載情報)の締め切りが迫っています。
あわせて、七月後半、Webカタログの公開いたしますので、準備していきましょう。
「いよいよか」
そう呟いて、登録したアイテムを開く。
並んでいたのは二冊。
『喫茶トキカサネ』(*1)
『誰かに伝えたいショート・ショートがあるんだ──1話1分のアンソロジー 第1集』(*2)
しばらく、画面を見ていたら、なんか感じことのない感情がわいてきました。
嬉しいとも違う。
安心とも違う。
高ぶっている。
でも、静かだった。
祭りの前の日みたいな。
いや、もっと前か。
運動会の前の日でもなく、旅行の前の日でもない。
とにかく、ずっと前から楽しみにしていた日が、ようやく近づいてきた。
そんな感じです。
「ここまで来たんやな」
自然と、そんな言葉が出た。
そして、思い出します。
走馬灯……?
二月。
『文学フリマ大阪14(*3)』、そんな言葉が目に入ってきました。
「へぇ、こんなんあるんや」
本を作った人が、自分で持って行って、自分で並べて、自分で売る。
なんか、面白そうやな。
その時は、まだ他人事でした。
自分が出るなんて思っていませんし、サークル(レーベル活動)なんて知らない。
出店者側の画面なんて見ることもない。
ただ、一つだけ思ったのを覚えています。
『喫茶トキカサネ』と、『誰かに伝えたいショート・ショートがあるんだ』、この二冊を持って行けたら、ちょっと面白そうかも。
「出てみたい」
そんな言葉が出たのは、いつやったやろ。
酒を飲みながらやったかもしれない。
スマホを見ながらやったかもしれない。
一人で、ぼんやり考えていた。
でも、そのあとに必ず続く言葉が。
「いやいや」
「無理やろ」
「そんな簡単ちゃうやろ」
自分で言って、自分で笑う。
そんな感じでした。
それでも、頭の片隅から消えなかった。
「出てもええ?」
家族に、そう言った時も、半分は冗談だった気がします。
本当にやるとは、自分でも思っていなかった。
でも、家族は笑いながら聞いてくれた。
あれで、ちょっとだけ現実になって、はっとしました。
「個人で出るん?」
「サークルって何?」
「せっかくなら、レーベルの名前にするか」
そんなことを言いながら、MMPP Publishingという名前も、少しずつ現実になっていった。
「レーベルって何やねん」
自分でも思った。
出版社ごっこかもしれない。
いや、ごっこで十分やった。
面白そうやから始めた。
ただ、それだけだった。
参加費を払った時も、六千六百円で、何を買ってるんやろと思いました。
売上か。
経験か。
思い出か。
自己満足か。
よく分からない。
でも、払わなかった後悔より、払った後悔の方がマシな気がしました。
だから、払いました。
名刺も欲しくなった。
普通の名刺じゃ面白くない。
栞みたいなやつがいい。
「あ、それ、ええやん」
一人で盛り上がる。
コミケのブースを眺めながら。
「あれもええな」
「これも真似したいな」
頭の中だけ忙しかったです。
でも、全部やるんか?と、自分で突っ込んだりしてました。
そんな毎日。
ZINEフェス大阪(*4)にも行きました。
初めて見る小さなブース。
「思ったより小さいな」
でも、その小さな机の上に、それぞれの好きなものが並んでいました。
とても幸せそうに見えてん。
「ええなぁ」
人の多さに辟易しつつも、あの空間が、なんだか羨ましく思えました。
帰り道。
「やっぱり、参加決めて良かったかも」
そう思いました。
気がつけばnoteを始めていました。
最初は、文学フリマまでの記録のつもりだった。
でも、書き始めると止まらない。
作品を書いて。
こぼれ話を書いて。
連作を書いて。
One-Cut-Storyを書いて。
気が付けば百記事を超えていました。
「何やってんねやろ」
ただの趣味やのに。
ご機嫌な余白のはずやのに。
なんでこんなに悩んでるんやろ。
入口って何。
ホームって何。
ピン留めって何。
PVって何。
スキって何やねん。
数字が増えたら喜んで。
減ったら落ち込んで。
管理職の仕事だけで十分やと思っていた数字を、夜中に見ている自分がいました。
「本当に、私、何やってんねや?」
そう思いながらも、やめようとは思えませんでした。
不思議だった。
「試したいんですね?」
そう言われた。
「そうや」
と答えていました。
試したかった。
挑戦したかった。
売れるかどうかじゃない。
成功するかどうかじゃない。
ただ、やってみたかった。
それだけでした。
気が付けば、四か月近く経っていました。
本番当日のことも考えるようになってきました。
誰も来なかったらどうしよう。
話しかけられたら、ちゃんと話せるやろか。
お釣りってどうするんやろ。
何冊持っていけばええんやろ。
値札ってどうするんやろ。
立ちっぱなしやろか。
トイレ行きたくなったらどうしよう。おむつか!
そんなことまで考えていました。
二月の自分が見たら、苦笑して。
「そこまで行ったんか」って、言ってそう。
そして今、Webカタログの画面を見ています。
『喫茶トキカサネ』:はじめて本にした1冊。
『誰かに伝えたいショート・ショートがあるんだ──1話1分のアンソロジー 第1集』:「短い文章が好き。」を、書きはじめた1冊。
二冊。
私の原点が並んでる。
結局、最初から変わっていませんでした。
私は、この二冊を持って行きたかった。
それだけ。
始まりは、案外単純です。
この二冊を、本棚の片隅ではなく、文学フリマ大阪の会場に並べてみたかった。
それだけ。
それだけなのに、少しだけ胸の奥が熱くなりました。
まだ当日は来ていない。
始まってもいない。
でも。
「あぁ、ここまで来たんやな」と、改めて、口からこぼれ落ちました。
そして、ふと思う。
タイムマシーン・ロッカー、短くて小さな物語、One-Cut-Story、こぼれ話……気が付けば、あの頃にはいなかった子たちが、たくさん増えていた。
「この子も連れて行ってあげたいな」
「いやいや……二冊で十分やろ」
「でも、これも好きやねんな」
「あれも捨てがたいな」
「この子、本にしたらどうやろ……」
頭の中が、賑やかになり始めます。
ほんま、キリがない。
でも。
こういう悩み、嫌いやない。
最初は、二冊を持って行きたい、ただ、それだけだった人間です。
次は誰を連れて行こうか、なんてことで、悩んでいます。
……いや。
本当は、少し違うのかもしれない。
連れて行きたい子は増えた。
棚も増えた。
作品も増えた。
やりたいのは、新しい何かじゃないですね。
どの子を読んでもらいたいか、なのかもしれません。
誰から紹介しよう。
どの子を、最初に手に取ってもらおう。
増えていった棚を眺めながら、私は、少しだけ考えました。
「さて、どの子を紹介しようかな」
▶ #21 MMPP Selection=選書
▶ #19 数字の呪縛を越えて。通り過ぎる四百ではなく、立ち止まる三百
▼ 文学フリマ大阪14への軌跡|一覧はこちらからどうぞ
「短い文章が好き。」の作品一覧
▶ One-Cut-Story(断片・切取り)
▶ 短くて小さな物語(読みやすい短編)
▶ Lab(実験・断片・連作)
(*1) 喫茶トキカサネ
(*2) 誰かに伝えたいショート・ショートがあるんだ──1話1分のアンソロジー 第1集
(*3) 文学フリマ大阪14
(*4) ZINEフェス大阪
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