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【文学フリマ挑戦】#26 たった一通のメールで、51歳の心がざわついた。「ここにいていいよ」と言われた気がした日|MMPP Publishing

▶ 1つ前のお話はこちら

「いよいよだ……」

メールが届きました。

文学フリマ大阪14。
開催が近づいてきた出店者向けの案内メールです。

内容はいたって普通。

これからのスケジュール。
入場証の発送。
宅配搬入の受付。

そして、一番上に書かれていたのは、

「7月31日21時、Webカタログ公開・ブース番号発表」

その一行を見た瞬間。
一瞬、止まりました。

「いよいよだ……」

自分でも少し不思議でした。
何か月も前から、参加することは決まっています。

自分で申し込みましたから。
本も作りました。
家族にも話しました。
ここまで、少しずつ準備してきました。

なのに。
たった一通のメールで、心がかき乱されました。

あと1か月と少し。
まだ時間はある。

慌てるには早い。
のんびりしている時間でもない。

「何だか、じれったい……」
手が自然と胸元をなでていました。

二日後にはWebカタログが公開されます。

「作品展示よし!」

ブース番号と配置図が発表されます。

たぶん、他の人から見たら、それだけのこと。

「あなた、ここにいていいよ」

そう言ってくれる。
そんな瞬間なんだと思います。

Webカタログ……知らない誰かが、そのページを見るかもしれません。
私の本を見つける人がいるかもしれない。

少し前まで、私は家族に聞いていました。

「文学フリマに出てもいいですか?」

「本を作っちゃったんだ。誰かに見て欲しい」

その本を持って外に出ていいのか。
趣味なのか。
ただの自己満足なのか。
正直、自分でも分からない部分がありました。

それでも。

「文学フリマに出る」

そう口走っていました。

今までブログを書いていた人が、急に本を作って、イベントに出ると言い出したんです。

「そっちに行ったんだ?」

妻の言葉が印象に残っています。

最後には、

「楽しそうではあるよね」

と言ってもらえました。

そこから、本当に少しずつ進んできました。

本が届いた日のこと、忘れません。
壊れ物をさわるように、でも、何度も何度も読み返しました。
画面の中にあった文章が、紙になり、手の中にあるんです。

それで十分だったはずなんですけどね。

次は、いよいよ、いよいよです。
この本を、知らない誰かが見る。

少し怖い。

手元の本を眺めながら、何度も想像しました。
何度もです。

本当に誰かの前に出していいものなのか。

ネットでさらす分には、そういう文化だし、まぁ大丈夫でした。

今まで、文章は、自分の世界の中にありました。
家族の前で読むふりをしたこともあります。

何も知らない誰かが、本を手に取る。
数ページ読んでくれる。
その人が何を感じるのか。
面白いと思うのか。
何も感じないのか。

「怖い」

でも、それ以上に楽しみでもあります。

ドキドキします。
ワクワクします。
足は、ガクブルです。

そして、文学フリマには1800以上の出店者がいます。
私は、その中の一人です。
大きな会場の中では、小さな一つのブースです。

作ったポップも、3メートル先から見たら、

「……なんだろ?」

たぶん、そんなものが出来上がりつつあります。

同じように、自分の作ったものを持ってくる人たちがいます。

何年も続けている人。
今回が初めての人。
小説を書く人。
詩を書く人。
誰かに届けたいものを持っている人。

その1人になる。

半世紀も生きてきました。

これまで、いろいろな経験をしてきました。
分かることも増えました。
初めてのことは減りました。

そう思っていました。

まだ、こんな気持ちになれるんですね。

怖いのに、不安なのに、それ以上に楽しみで仕方がない。

「なんか、ちゃんと生きてるな、私」

文学フリマに出ることだけが特別なのではないと思います。

自分で作ったものを、知らない誰かに渡してみたいと思ったこと。

そのために、少し怖い場所へ向かっていること。

その気持ちになれたこと……。

もう一度、メールを見ました。

何度見ても、ただの案内メールです。
これは始まりの合図なんだと、受け取りました。

「いよいよだ!」


#27 文学フリマ大阪14 ブース番号【な-10】決定!
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