Uber Eats・出前館の配達で稼いだお金、事業所得?雑所得?|分かれ目は「帳簿があるかどうか」でした
配達の報酬は、給料ではありません。源泉徴収されていないので、利益(売上−経費)に対して自分で申告する必要があります。
そのときに最初に決まるのが「所得の種類」です。ここで税額が大きく変わります。そして分かれ目は、多くの人が思っているものとは違いました。
■ 分かれ目は「金額」ではなく「帳簿」です
「副業は300万円以下なら雑所得」と聞いたことがあるかもしれません。これは2022年に一度そういう案が出て、意見公募を経て変更されました。
現在の取り扱いはこうです。
帳簿書類の保存があれば、収入金額が300万円以下であっても、原則として事業所得に区分されます。
帳簿書類の保存がなければ、おおむね雑所得になります。
(所得税基本通達35-2、令和4年10月改正)
つまり金額ではなく、記録をつけているかどうかで決まります。
ただし例外があります。帳簿を保存していても、収入金額が僅少と認められる場合や、その活動に営利性が認められない場合は、事業と認められるかを個別に判断されます。月に数千円だけ、という状態では事業所得になりません。
■ 事業所得だと何が違うのか
① 青色申告特別控除が使える
最大65万円(e-Tax等の要件を満たす場合)を所得から引けます。雑所得では使えません。
② 赤字を他の所得と相殺できる(損益通算)
配達が赤字なら、給与所得と相殺して税金が戻ることがあります。雑所得ではできません。
③ 家族への給与(専従者給与)などの制度が使える
この差は、記録をつけるかどうかだけで生まれます。「帳簿」と聞くと大げさですが、要はいつ・いくら稼いで・何にいくら使ったかを記録した表のことです。
■ 会社員の方:20万円ルールの正しい理解
給与を1か所から受けていて年末調整が済んでいる場合、給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要です(国税庁 No.1900)。
判定するのは所得(売上−経費)であって、振り込まれた金額ではありません。
注意:20万円ルールは所得税の話だけです。住民税にこのルールはないので、20万円以下でも市区町村への申告が必要になります。取り扱いは自治体で異なるため、お住まいの窓口でご確認ください。
■ 経費にできるもの(配達特有のもの)
自転車配達
・自転車本体(10万円以上は減価償却)
・修理費、タイヤ・チューブ、メンテナンス代
・レンタサイクルの利用料
バイク・原付配達
・ガソリン代(プライベート利用分は除く=按分)
・自賠責・任意保険、車検、オイル交換
・駐車場代、駐禁を避けるための一時利用料
共通
・配達バッグ、保温バッグ、ドリンクホルダー
・スマホ本体・通信費(アプリ利用分だけ按分)
・モバイルバッテリー、スマホホルダー
・レインウェア、ヘルメット
・配達中の駐車料金
按分が必要なものが多いのが配達の特徴です。ガソリン代もスマホ代も、生活で使う分と混ざっています。国税庁は、こうした家事関連費について「業務上必要な部分を明らかに区分できる場合」にその部分だけを経費にできるとしています(No.2210)。
根拠の作り方が大事です。
・ガソリン代 → 配達した走行距離 ÷ 総走行距離
・スマホ代 → 配達アプリを起動していた時間 ÷ 使用時間
「なんとなく5割」ではなく、数字の裏付けを残してください。
■ 掛け持ちしている人がいちばん困ること
Uber Eatsと出前館を掛け持ちしていると、報酬の体系が違うので、合算した本当の利益がわからなくなります。
・Uber Eats:配達ごとの報酬+インセンティブ
・出前館:距離や時間帯で変わる報酬体系
さらに、そこからガソリン代・自転車の償却・スマホ代を按分して引いて、はじめて「本当の時給」が出ます。
本当の時給 =(月の売上 − 経費)÷ 月の稼働時間
この数字を出していない人は、実はかなり多いです。稼働時間あたりの利益がわからないと、「どの時間帯に、どのアプリで動くのが得か」も判断できません。
■ 記録に使えるもの
売上・ガソリン代の按分・車両の減価償却を1つの表でまとめて管理できるExcelを配布しています。軽貨物ドライバー向けに作ったものですが、日ごとの売上と経費を入れて日当(1日あたり利益)を出す構造は、配達の記録にそのまま使えます(税込¥300)。
■ 数字を残すところから始めるなら
所得区分をどちらにするかの前に、まず「いくら稼いで、いくら使ったか」が出ている必要があります。帳簿があるかどうかが分かれ目になるのは、そのためです。
自転車・原付で配達している方は、こちらが合います。
Uber Eats・出前館の売上と経費をExcelで管理する方法(税込¥980)
件数・報酬・稼働時間・走行距離を入れるだけで、1件あたりと時給換算、スマホや自転車の按分、10万円以上の自転車・バイクの減価償却まで自動で出ます。
軽自動車で運送業として配達している方は、次のテンプレのほうが合います。
ガソリン代・スマホ代の家事按分は、割合の決め方をこちらに整理しました(無料)。
作業時間から工数を集計する表はこちら(無料)。稼働時間の記録に使えます。
■ 参考・出典
・事業所得と雑所得の区分(帳簿書類の保存があれば、300万円以下でも原則として事業所得):国税庁 所得税基本通達35-2(令和4年10月7日改正)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/kaisei/221007/pdf/02.pdf
・給与所得者で確定申告が必要な人(20万円ルール):国税庁 タックスアンサー No.1900 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm
・家事関連費の按分:国税庁 タックスアンサー No.2210 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm
・減価償却のあらまし(10万円未満・一括償却資産・少額減価償却資産の特例):国税庁 タックスアンサー No.2100 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
※本記事は制度の一般的な整理です。所得区分の判断、按分割合の妥当性、住民税の取り扱いは、所轄の税務署・お住まいの市区町村・税理士にご確認ください。
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