退去精算で貸主が確認すべきこと。借主負担と貸主負担の線引き。
入居者が退去した後、管理会社から退去精算の報告が届きます。
「ハウスクリーニング費用、借主負担。クロス張替え、貸主負担。フローリングの傷、借主負担。合計○○円。敷金から差し引いて精算します。」
こういった内容です。
初めて見ると、何が借主負担で何が貸主負担なのか、判断がつかないと思います。管理会社に任せていれば適切に精算してくれますが、オーナーとして基本的な考え方は理解しておいたほうがいいです。
退去精算で確認すべきポイントを整理します。
まず契約書の特約を確認する
退去精算で最初に確認すべきは、契約書にどんな特約が入っているかです。
弊社の場合は、契約時に以下を借主負担として定めています。
ハウスクリーニング費用(金額明示済み)。
エアコンクリーニング費用(金額明示済み)。
鍵を紛失していた場合のシリンダー交換費用。
これらは特約として契約書に明記し、重要事項説明で借主に説明済みです。退去時に「聞いていない」というトラブルが起きないよう、契約時点で明確にしています。
オーナーとしてまず確認すべきは、自分の物件の契約書にどのような特約が入っているかです。管理会社に「うちの契約書の特約、見せてください」と聞くだけで確認できます。
▶ 参考記事:分譲マンションを貸すなら特約が大切。しっかりと入れて、万が一のトラブルに備えましょう。
経年劣化・通常損耗は貸主負担です
特約で定めた項目以外の部分は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に基づいて判断するのが基本です。
ガイドラインの考え方はシンプルです。
経年劣化や通常の使用による損耗は、貸主が負担する。
借主の故意・過失や、通常の使用を超える損耗は、借主が負担する。
たとえば、日焼けによるクロスの変色、家具を置いていたことによる床のへこみ、画鋲の穴程度の壁の穴。これらは通常の使用の範囲とされ、貸主負担です。
一方、タバコのヤニによるクロスの変色、ペットがつけた傷、落書き、結露を放置して拡大したカビ。これらは通常の使用を超える損耗として、借主負担になります。
クロスの耐用年数は6年です
退去精算でよく問題になるのがクロス(壁紙)です。
ガイドラインでは、クロスの耐用年数は6年とされています。6年で残存価値が1円になる計算です。
つまり、借主の過失でクロスを汚損した場合でも、入居期間が長ければ長いほど借主の負担割合は減っていきます。
たとえば入居3年で借主の過失によるクロスの汚損があった場合、張替え費用6万円に対して借主の負担は約3万円(残存価値50%)。入居6年以上であれば、借主の負担はほぼゼロになります。
オーナーとしては「汚したんだから全額払ってほしい」と思うかもしれませんが、ガイドラインではこのように経過年数を考慮する考え方が採用されています。
フローリングの傷は経過年数を考慮しない場合があります
フローリングについては、部分的な補修であれば経過年数は考慮せず、借主が補修費用を負担するのが一般的です。
ただし、フローリング全体の張替えが必要な場合は、建物の耐用年数に基づいて経過年数が考慮されます。
つまり、部分的な傷の補修は借主負担になりやすいですが、全面張替えとなると貸主の負担割合が大きくなるということです。
設備の故障は経過年数で按分します
エアコンや給湯器などの設備が故障している場合、借主の過失であっても、設備の耐用年数に基づいて経過年数が考慮されます。
たとえばエアコンの耐用年数は6年です。入居5年でエアコンを借主の過失で壊してしまった場合、修理・交換費用の大部分は貸主負担になります。
設備が古くなっていればいるほど、借主に請求できる金額は少なくなるということです。
鍵の紛失は借主負担です
退去時に鍵の本数が足りない場合、紛失による鍵交換費用は借主負担です。これは経過年数を考慮しません。
弊社では鍵紛失時のシリンダー交換費用を契約書に明記していますが、分譲マンションの場合は鍵が高額なケースもあるため、金額を事前に把握しておくことが大切です。
退去精算でオーナーが確認すべきチェックリスト
管理会社から退去精算の報告が届いたら、以下を確認してください。
契約書の特約に基づく借主負担項目(ハウスクリーニング・エアコンクリーニング・鍵紛失)が正しく計上されているか。
借主の故意・過失による損耗と、経年劣化・通常損耗が正しく区別されているか。
経過年数に基づく借主の負担割合が適切に計算されているか。
敷金との差額が正しく精算されているか。
管理会社が適切に処理してくれていることがほとんどですが、内容を理解しておくことでオーナー自身が納得して精算に同意できます。
▶ 参考記事:退去のとき、修繕費用は誰が払うの?オーナーが知っておくべき基本。
まとめ
退去精算で大切なのは、「何が借主負担で何が貸主負担か」の線引きを理解しておくことです。
まず契約書の特約を確認する。ハウスクリーニング・エアコンクリーニング・鍵紛失などの約定を把握する。
経年劣化・通常損耗は貸主負担。借主の故意・過失は借主負担。
クロスの耐用年数は6年。入居期間が長いほど借主の負担割合は減る。
フローリングの部分補修は借主負担になりやすい。全面張替えは経過年数を考慮。
設備の故障は耐用年数に基づいて按分。古い設備ほど借主に請求できる金額は少ない。
鍵の紛失は経過年数を考慮せず借主負担。
退去精算は管理会社に任せるのが基本ですが、オーナーとして基本的な考え方を知っておくことで、精算内容に納得でき、不要なトラブルも防げます。
管理会社を選ぶときに確認すべきポイントは、こちらにまとめています。
