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「結論から話せ」と注意される人は、“結論から”話してはいけない

会議で、こんなやり取りを何度も見てきました。

「これ、今月中にリリースできそうですか?」
「実は先週から仕様変更が続いていて、開発チームもかなり頑張っているんですが、Aさんが別案件も持っていて……」

聞いている側は、数十秒ほど我慢したところで言います。
「で、できるんですか?」

すると話している側は、「だから今それを説明しているんです」という顔をする。お互い、ちょっとだけ腹が立っています。

こういう人への定番のアドバイスが、「結論から話しましょう」です。もちろん、それができれば話は早い。でも、それができない人に「結論から」と繰り返しても、なかなか直りません。
「結論から話せ」で直らないのは、そもそもの話す順番ではなく、”誰の”結論なのかを誤解しているからです。

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自分の結論は、相手にとって結論ではない

先ほどの人にも、たぶん結論はあります。
「仕様変更が多く、この体制では厳しい」。これが本人の言いたいことであり、本人なりの“結論”なのでしょう。

でも、相手が聞いたのは「今月中にリリースできるか」です。

つまり問題は、結論が後ろにあることだけではありません。
相手の問いと、自分が答えている問いが違う。

ここを直さずに「結論から話せ」とだけ教えると、今度は「この体制では厳しいです」と元気よく始めるかもしれません。
前より短くなりました。すばらしい。でもまだ、「今月中に出せるの?」には答えていません。

問いを外したまま結論先行を覚えると、聞かれていないことを、ものすごく簡潔に話す人が出来上がります。

「聞かれたことに答えるなんて当たり前」が、いちばん危ない

「聞かれたことに答えるなんて当たり前でしょう」と思うかもしれません。

ところが、人間はこの当たり前を意外と外します。

Todd RogersとMichael Nortonの研究では、人は「聞かれた質問」と少し違う質問に流暢に答えられても、そのズレを意外なほど見逃します。一方で、元の質問が目の前に残っていると、そのズレには気づきやすくなる。

ここから得られる示唆はシンプルです。
人間は、「いま何を聞かれているのか」を自分が思うほど正確には保持していない。

話しているうちに、自分が説明しやすい話、自分が詳しい話、自分が言いたかった話へ少しずつ寄っていく。そして本人も、聞いている側も、そのズレにすぐには気づかない。

だから「聞かれたことに答える」は、「はいはい、それは当たり前ですね」で通過してはいけない基本動作です。
当たり前だから意識しなくていいのではなく、当たり前なのにできないから、わざわざ意識する価値がある。

できる人は「結論」の前に暗算している

仕事ができる人にとって、「結論から話す」と「聞かれたことに答える」は、ほぼ同じ意味になります。

「できますか?」と聞かれた瞬間に、

何を聞かれているか → 今月中にリリース可能か
自分の答えは何か → 難しい
最初に何を言うか → 「現状では難しいです」

までを一瞬で処理しているからです。

本人からすると、この途中式は存在しないも同然です。暗算です。
だから部下に「どうすれば分かりやすく話せますか?」と聞かれると、「結論から言えばいいんだよ」と答える。

数学が得意な人の「ここは普通に変形すれば出ます」と同じです。
普通に、が一番難しい。

実際、ピラミッド・プリンシプルで知られるBarbara Mintoの考え方でも、単に要点を先頭へ持ってくるのではなく、その前に「読者の頭の中にある問い」を捉えることが重視されています。

結論は単独では存在しません。
何の問いに対する結論なのかが先にある。

まずは「聞かれたことに答える」

だから、「結論から話す」より先に、「聞かれたことにまず答える」を徹底した方がいい。

「できますか?」なら、「できます/できません」。
「原因は何ですか?」なら、原因。
「AとBのどちらですか?」なら、「Aです/Bです」。

理由は、その後です。

ここまでは、明示された問いに答える話です。
次のレベルになると、そもそも問いが明示されていません。

たとえば上司から「この資料、どう思う?」と言われたとします。

文章を直してほしいのか。内容が正しいか見てほしいのか。経営会議に出せる品質か判断してほしいのか。
この場合、いきなり「結論」を言おうとしても、何に対する結論なのかが決まっていません。

ならば、「経営会議にこのまま出せるか、という観点で見ればいいですか?」と確認すればいい。

明示された問いに答えられる。
次に、明示されていない問いを特定できる。
その先に、その問いへの結論を先に話せる、がある。

この順番です。

実は、会議にも「聞かれたこと」がある

これは一対一の会話だけの話ではありません。
会議にも、実は「問い」があります。

「新規事業について」
「来期の採用について」
「新機能について」

これは話題です。まだ問いではありません。

「新規事業への投資を来期2倍にするべきか?」
「採用目標を20人から15人へ下げるべきか?」
「この新機能を来月の開発計画に入れるべきか?」

こうなると、会議で答えるべきものが見えてきます。

会議で「聞かれたことに答える」というのは、誰かの質問に答えることだけではありません。
その会議自体が何を問うているのかを捉え、その問いに答えることです。

問いが明確な会議なら、その問いへの答えを結論から話せばいい。
問いが明確でないなら、「今日この場では、何を決めるんでしたっけ?」と問いを明確にする。

つまり、「聞かれたことに答える」ができるようになると、次には「まだ言葉になっていない問いを見つける」という仕事ができるようになります。

ここまで来ると、単なる話し方ではありません。会議を設計したり、議論を前に進めたりする力になります。

「結論から話す」は、後回しでいい

「結論から話す」は、情報をどの順番に並べるかという話し方の技術です。
一方、「聞かれたことに答える」は、何に答えるべきなのかを見定める思考の技術です。

思考の技術の方が先にあります。

だから、「結論から話せ」と何度も注意されている人ほど、いったん結論のことを忘れていい。

まず、「今、私は何を聞かれているのか?」を確認する。

明示されているなら、そのまま答える。
明示されていないなら、問いを特定する。分からなければ確認する。
そして、その問いへの答えを最初に言う。

できる人が「結論から話す」と呼んでいるものは、たぶんここまで全部含まれています。

「結論から話す」は話し方の技術です。
「聞かれたことに答える」は思考の技術です。

結論を急ぐ前に、まず”相手の”問いを学ぶ。

その方が、話はずっと早く終わります。


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