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知識を増やす前に、「気になること」を一つ増やす。

車を買おうとすると、街を走っている車が急に気になり始めます。
「あ、あれもRAV4だ」
「この色、意外と多いな」
「ハリアーってこんなに走っていたのか」
もちろん、昨日までハリアーが地下に潜伏していたわけではありません。ずっと走っています。こちらが見ていなかっただけです。

妊娠した人から、「妊娠したら街に妊婦さんがものすごく多いことに気づいた」という話を聞くこともあります。妊婦が急に増えたわけではありません。
世界は、ほとんど何も変わっていない。変わったのは、自分の関心です。そして関心が変わると、不思議なくらい「見えるもの」が変わります。

世界には、見えていない情報が大量に落ちている

私たちは毎日、ものすごい量の情報に触れています。電車の広告、同僚の会話、取引先の発言、ニュース、本、SNS、街を歩いている人。
しかし、そのすべてを情報として処理しているわけではありません。そんなことをしたら、駅に着く前に脳が疲弊します。

だから人間は、自分に関係がありそうなものを選んで見ています。
車を買おうと思えば車が見える。犬を飼おうと思えば、街が急に犬だらけになる。
「今まで知らなかった」というより、「今まで気にしていなかった」のです。

この現象は、仕事でもかなり起きています。

仕事は、ちょっと首を突っ込むと急に情報量が増える

たとえば、いつも作っている売上レポートがあるとします。言われた数字を集め、表にして提出する。それだけなら、売上は単なる数字です。
でもある日、「この商品だけ、なぜ急に売上が落ちたんだろう?」と一つだけ余計に調べてみる。

すると翌週の営業会議で、ある人の「最近、この商品は競合に負けることが増えていて」という発言が耳に引っかかる。ネットニュースを見ていたら、その競合企業の記事が目に入る。休日に家電量販店へ行ったら、競合商品の売り場が大きくなっていることに気づく。本を読んでいたら、「あれ、これも同じ構造では?」と思う。

急に世界が、自分の仕事についていろいろ教えてくれるようになります。
会社から研修を受けたわけでもありません。上司が教材を配ったわけでもありません。家電量販店も、あなたの人材育成に協力しているつもりはありません。
ただ、そのテーマが一度「気になること」になったため、それまで通り過ぎていた情報を拾えるようになったのです。

好奇心旺盛な人にならなくていい

ここで、「やっぱり好奇心が大事なんですね」と言われると、私は少し困ります。それでは、「私は昔から好奇心旺盛なので」で成功談が終了してしまうからです。

好奇心旺盛な性格になる方法は、あまりよく分かりません。
でも、一つ余計に調べることならできます。一人だけ詳しい人に聞いてみる。いつもと違う方法を一度だけ試す。「なぜ?」と思った数字を10分だけ追ってみる。

すると、そのテーマとの距離が少し縮まります。
気になる。情報が目に入る。少し分かる。分かるから、さらに気になる。

つまり、一歩余計に動く → 気になる → 情報を拾う → 分かる → さらに気になるという循環が始まります。

仕事が面白いから、余計なことまで調べる。もちろん、それもあるでしょう。
でも逆もある。
余計なことを一つ調べるから、その仕事が面白くなっていく。

私は、こちらの方が重要なのではないかと思っています。

一回の行動は、その後の情報量まで変える

私は『仕事を面白くする人が伸びる』というnoteマガジンで、仕事を面白がる人ほど一歩余計に動き、その小さな行動が経験と学習を増やしていく、という話を書いています。

今回考えていて、この「一歩余計に動く」には、もう一つ大きな効果があることに気づきました。
一回の小さな行動が増やすのは、その一回の経験だけではありません。その後の日常から回収できる情報量まで増やす。

ここから学習には、ちょっとした複利が働き始めます。
情報を拾うから、少し詳しくなる。少し詳しくなるから、今まで区別できなかったものが区別できる。区別できるから、新しい疑問が生まれる。疑問があるから、さらに情報を拾う。

車に詳しくなると、街に単に「車」が走っているのではなく、「新型」「旧型」「珍しいグレード」と違いが見えるようになります。
仕事でも同じです。最初は全部「顧客の要望」に見えていたものが、経験を重ねると、「価格の問題」「運用の問題」「社内決裁の問題」「競合への不満」に分かれて見えるようになる。
同じ会話を聞いていても、拾える情報の粒度が変わります。

そして、この小さな循環を何度も回していると、今度はもっと大きな循環が始まります。
学ぶ。できることが増える。少し違う仕事を任される。新しい問題に出会う。また「気になること」が増える。

数日では、ほとんど差は見えません。でも数年たつと、一方は「なぜかこの業界にものすごく詳しい人」になり、もう一方は「同じ会社に同じ年数いた人」になっているかもしれない。

その差の始まりは、才能でも、長時間の勉強でもなく、「あれ、これって何だろう?」と思って、一つ余計に調べたことだったのかもしれません。

学習は、机の前だけで起きるわけではない

仕事の成長というと、「もっと本を読もう」「勉強しよう」「研修を受けよう」と考えがちです。もちろん、それらは大切です。
でも、「気になること」が一つあれば、会議も、顧客との会話も、ニュースも、読書も、街歩きも教材になります。逆に何も気になっていなければ、どれだけ情報に囲まれていても、大半は背景として流れていきます。

だから、知識を増やす前に、「気になること」を一つ増やす。
そのために、いつもの仕事へ一歩だけ余計に首を突っ込んでみる。

仕事を好きになると念じる必要はありません。そんな念力が使えるなら、月曜日の朝はもっと平和です。

『仕事を面白くする人が伸びる』では、こうした小さな行動から、仕事を面白くし、経験を増やし、学び、できることと機会を増やしていく循環について考えています。
仕事が面白くなるのを待つのではなく、自分から小さなきっかけを作る。その一歩から、学習ループは始まります。


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