AIターゲティング時代の勝ち筋とは?鍵を握るのは「広告クリエイティブ」と「LP」の精度|フルファネルラボ
フルファネルマーケティングを4領域にわけ、フルファネルラボメンバーが専門家にインタビューして考えを深めていく企画。最終回は「購入」領域です。
前回までの記事はこちらです!
【コアアイデア】
強いコアアイデアは人を巻き込む求心力をもつ。重要なのは生活者を見つめる「構え」
【認知】
認知は事業インパクトにつながることが前提。成果を最大化するメディア選定やKPI設計とは
【ファン化】
ブランドを支える「ファン」の存在。見えないファンを評価するには?社内体制や評価指標の工夫が鍵
運用型広告の広告代理は、私たちソウルドアウトの祖業であり、日々技術を研磨してきた領域でもあります。

今回は、Meta日本法人 Facebook Japan(以下、Meta)でエージェンシーパートナーを務める西川 拓さんをお呼びしました。
世界30億人以上のユーザー基盤から成る膨大なデータ量と、精度の高いAIを武器に、「認知」から「購入」までをダイレクトに結びつけるプラットフォームとして圧倒的な強さを誇るMeta。
フルファネルラボの主席研究員亀ノ上 忠昭と中村 太一が、インタビューしながら「購入」領域に関する議論を深めます!

フルファネルマーケティングの重要性
顧客体験のストーリーは1本ではなく複数存在する
亀ノ上:「ソウルドアウトが考えるフルファネルマーケティング」を図式化すると、「コアアイディア」が最初にあって「認知~購入~ファン化」が1本のストーリーとなって連鎖するような構造をしています。西川さんはこの構造について率直にどのようなことを感じられましたか?

西川:非常に重要な考え方ですよね。ビジネスの成果を出すために必要であることはもちろん、何より顧客体験としてあるべき姿だと思います。
今日では、日常生活で接触するメディアは非常に多様化しています。何か情報を調べる際には、検索エンジンだけではなく、SNSや、さらにはAIも活用される時代です。情報が溢れているからこそ、マーケティングにおいてバラバラな施策を打つのではなく、一貫性をもって構築しておくことの重要性は増していると感じます。
亀ノ上:たしかに、ユーザーが様々なメディアを行き来する今、企業側が一本のストーリーを用意しておくことが大切ですね。
西川:そうですね。
ただ、Metaのプロダクト設計の思想から少し補足すると、今の時代、ストーリーは一本ではなく何本も存在する可能性がある、と考えています。
というのも、今のAIはクリエイティブの内容を「これは、こういう悩みをもつ人に響くはずだ」と解釈してくれるんです。ターゲットを絞り込みすぎず、あえて訴求の幅を広くもたせておけば、AIが想定を超えたターゲットを見つけだし、購入までつなげてくれます。
AIの力を借りることで、これまで以上にストーリーの幅を自在に広げられるようになっています。
亀ノ上:一貫した「一本のストーリー」をベースにしつつも、AIがそれを多層的に広げてくれる。とてもおもしろいです。
西川:人間がいろいろな素材を用意し、AIがその都度、最適な形に組み合わせてユーザーに届けていく、というイメージに近いですね。
もちろん大前提として、ストーリーが分断されていてはいけません。一貫性は保ちつつ、AIによってストーリーの「つなげ方」や「幅」を広げていく。 そんなふうに捉えています。

Agency Partner
西川 拓氏
AIで変わる購入領域について
データは、AIがうまく機能するための“燃料”
亀ノ上:では「購入」領域についてお伺いしていきます。
私たちは「購入成果をわける2つの鍵」として「データを活用したターゲティング設計」と「ランディングページ(LP)の重要性」との両輪が重要だと考えています。この考え方についてはいかがでしょうか?

西川:私たちの考えにかなり近いですね。
まずは「データを活用したターゲティング設計」についてです。
私たちMetaでは、広告運用の大部分をAIにシフトしています。そのなかで重要になるのが、
AIに何をインプットするか、という点です。顧客データやランディングページ(LP)を含むクリエイティブなど、核となる情報をどう読み込ませ、どう活用するのか。
AIを単なる自動化ツールとして、漠然と捉えていない。そういった視点に共感します。
亀ノ上:AIによる最適化はかなり進化していますよね。
西川:そうですね。例えば最近では、「どのようなコンテンツを、どのような順番で見せれば購入に至りやすいのか」といった流れの分析と設計が細かくできるようになってきています。
亀ノ上:AIによる自動ターゲティングによって、実際のコンバージョンや成果にはどのような変化が起きているのでしょうか?
西川:弊社の2024年の決算発表では、「広告配信にAIソリューションを活用したことで、費用対効果が22%改善された」と発表がありました。
▼最新の調査では、顧客獲得単価が20%改善されたとのデータもあります。Meta Advantage+ AIでキャンペーンのパフォーマンスを最大化|Meta for Business: Marketing on Facebook
コンバージョンのボリュームが大きくなっているのはもちろん、費用対効果も大幅に改善されており、AIがもたらすインパクトが数値としてもはっきりと証明されています。
亀ノ上:反対に、AIによる配信がうまく機能しないのはどのようなケースでしょうか?
西川:AIに渡す情報が少ないケースですね。
例えば、日本独自の非常にニッチなマーケットを対象とした商材などは、Metaのようなグローバルプラットフォームでも、最適なターゲットを見つけだすためのデータが不足しがちです。また、LPやクリエイティブの中に、「これが何なのか」がわかる情報が足りないと、AIはどこに配信すると良いか判断できません。
亀ノ上:何か対処法はありますか?
西川:一般的には、あえて最初はターゲットを絞って手動で配信し、一定のコンバージョンが蓄積されてからAIに任せたり、LPやクリエイティブに情報をより分厚く詰め込んだりする、といった方法ですね。
亀ノ上:ライトコンバージョンを設定したり、オフラインのデータを読み込ませたりすることも有効でしょうか?
西川:そうですね、いいと思います。ただし、データの「質」には注意が必要です。精度の低いデータを読み込ませると、AIはそれを正解だと誤解して配信を広げてしまいます。どういったデータが最適かはケースバイケースで、私たちも複数のパターンを試しながら、最適解を探っている最中です。
私たちはAIをロケットと例えて、データを「燃料」と呼んでいます。良質な燃料をたくさんくべることが大切ですね。
AIは、動画を最後まで読み込んでいる
中村:AIの挙動についても伺わせてください。私たちは、AIが「LPの情報」を読み込んでターゲティングの精度を高めていると認識しているのですが、その理解で合っていますか?
西川:そうですね。正確には、「クリエイティブ」「LP」「過去の購買実績(データ)」「同業界の購買実績(データ)」の4つをみています。ただ、現時点での比重は「クリエイティブ」と「過去のデータ」の影響がかなり大きいですね。「LP」も読み込みますが、まだAIが100%完璧に中身を読み込み切れているわけではありません。
中村:クリエイティブを読み込む際、AIはテキスト情報だけでなく画像や動画も解析しているのでしょうか?
西川:はい、テキストだけではなく、画像も動画も、ですね。動画が何秒あろうと、最後まで全て読み込んでいます。
中村:動画のラストまで!そこまで深い情報を読み取った上で、ターゲティングを最適化しているんですね。

中村 太一
動画広告時代にLPに求める役割
亀ノ上:では、もう一つの鍵である「ランディングページ(LP)の重要性」についてはどのようにお考えでしょうか?
西川:もちろん、重要性はますます高まっていると思います。ただ、ここ数年でユーザーがLPに到達するまでの情報量が劇的に変わりました。
以前は、静止画バナーを見て、詳細はLPで確認するという流れが一般的でした。しかし今は、30秒~1分ほどある動画広告が普及し、動画内でLPの情報の多くを理解した状態で来訪するようなケースが増えています。
亀ノ上:ユーザーがすでに多くの情報をもっているからこそ、起きている変化はありますか?
西川:広告とLPの「ずれ」が起きやすくなっているような気がします。
例えば、広告代理店が広告主から指定された既存のLPをそのまま使う場合、動画で伝えたストーリーとLPの内容が噛み合わず、ユーザーが離脱してしまうことがあります。
逆に、アフィリエイトを得意とする企業などは、動画もLPも自社で一気通貫で制作する場合が多く、「ずれ」が起きづらい。結果として、高い成果を出している印象があります。
亀ノ上:LPが「一から説得する」のではなく、広告からのストーリーをいかにスムーズに着地させるか。LPの役割が変化してきているといえそうですね。

亀ノ上 忠昭
亀ノ上:LPの構成要素である「ファーストビュー」「ボディ」「クロージング」。改善に着手する場合、西川さんはどこが最も重要だとお考えですか?

西川:難しい質問ですね。先ほどお話ししたように「動画広告でかなりの情報を得た状態で流入する」という前提で考えると、今は「クロージング」の重要性が増していると感じています。
もちろん、ほかの要素が重要ではないという意味ではありません。ただ、以前よりも購入意欲が高い状態でLPに到達するユーザーが増えているからこそ、「最後の一押し」をどう設計するかが成果に直結しやすくなっていると思います。
もちろん、ファーストビューが動画の内容とずれていれば即離脱されてしまいます。前提として、すべての要素が一定のラインに達している必要はありますが、その上で差がつくのは、やはりクロージングの部分ではないでしょうか。
亀ノ上:AIによるターゲティングの精度が向上し続けるなかでも、やはりLP改善の優先度は高まっていくのでしょうか?
西川:間違いなく高くなっていくと思います。AIターゲティングの精度が上がるにつれて、LPには「最初から興味をもっている人」が自動的に、かつ効率的に集まるようになります。
そうなると、これまで広告運用の肝であり、差別化ポイントでもあった細かいターゲット設定のスキルは、いわば均一化されていくことになります。
だからこそ、集まった見込み客を「最後の一押し」でどう確実に購入へつなげるか、という広告クリエイティブやLPが勝負をわけるようになるんです。

ブラックボックスとの向き合い方
亀ノ上:BtoBや高単価商材など、オンラインでは完結せず、その後の成約などオフラインのコンバージョンがゴールになるビジネスの場合、AIをどう活用すべきでしょうか?
西川:私たちのアプローチは、AIに「いい燃料(データ)を入れる」ことです。
例えば、美容クリニックで100件の面談予約があったとします。すべてを「1コンバージョン」として平等に扱うのではなく、その後の成果によって「重みづけ」をするんです。面談だけで終わった人よりも、実際の施術を受けた人、さらにはロイヤルカスタマーになった人のスコアを高く設定してデータを戻します。
人材紹介のサービスであれば、特定の資格を持つ人や転職意向が強い人の優先度を引き上げていきます。
私たちはこれを「バリューを付与する」と呼んでいます。「自社のビジネス成果にとって本当に価値が高い顧客は誰か」を定義してAIに教え込む。そうすることで、AIが自らその層を狙いに行くようになるんです。
中村:その際、デモグラ(属性)や興味関心などの指示はしないのですか?
西川:特にしません。電話番号やメールアドレスなどの顧客データを紐づけてデータを戻せば、Metaのもつ膨大なデータから、AIが勝手に行動パターンを見つけだしてくれるんです。
亀ノ上:AIにターゲティングを任せると、高いスコアを付与された人たちの興味関心などの共通点を人が知ることはできるのでしょうか?
西川:いえ、「なぜその人をターゲットにしたのか」はわかりません。いわばブラックボックスなんです。実際、代理店様のなかには、データクリーンルームなどで分析して言語化を試みる方もいますが、再現性は「どんな重みづけをしてAIに渡したか」という判断プロセスにありますね。
たとえ中身はブラックボックスであっても、Metaは世界30億人の膨大なユーザーデータがあるので、AIに任せたときの精度には絶対的な自信をもっています。
亀ノ上:Metaには圧倒的な「燃料」があるということですよね。
AIに任せるとブラックボックスになってしまうが、成果改善につながる可能性がある。一方、企業としては「なぜ成功したか」を言語化したいという思いがある…。企業の意思決定として難しいところだと感じました。
AIが広げる可能性
「ストーリー」を無限に広げていく
亀ノ上:ここまでのお話とも重なりますが、今後、AIがさらに普及することで、購入領域にはどのような変化があると思いますか?
西川:まず、膨大なストーリーを形にすることができるため、新たなビジネスチャンスが生まれるだろう、と考えています。
これまでは「このターゲットにはこの訴求」と人が絞り込んでいましたが、AIを使えば、膨大な訴求案から実際のクリエイティブまでを瞬時に作れて、検証できるようになります。その結果、「実はこんなところにも潜在層が隠れていたのか」という新しい発見が増え、ビジネスの可能性が大きく広がっていくはずです。
もう一つは、AIによるコンテンツが溢れているからこそ、「誰が発信しているか」「信頼できる会社か」という信頼感がこれまで以上に重要になると考えています。私たちが「パートナーシップ広告」でクリエイターとの連携を強めているのも、この「信頼」の重要性を重視しているからです。
中村:コンテンツが大量生産される時代だからこそ、最初から最後まで一貫したストーリーをもち、顧客との信頼をどう築くか。戦略的な設計が重要になりますね。
亀ノ上:データ量の多い大企業であれば、AIにフルスイングするのも手ですが、データが限られる地域企業や中小企業の場合は、まずはターゲットの仮説を立ててから始めると、成功率が高まるかもしれませんね。
亀ノ上・中村:「購入」領域に対する理解が深まりました、本日はありがとうございました!

編集後記
AIの進化によってターゲティングの設定など、広告運用領域のスキルが均一化される今、広告コンテンツ(広告クリエイティブ・LP)の精度が求められるようになりました。AIがストーリーを多層的に広げ、最適なユーザーへ届けてくれるからこそ、私たちは「コアアイデア」を磨き、生活者の心を動かす広告コンテンツをつくることが成果を出すカギになってくると思います。
【執筆・編集:みやたけ(@udon_miyatake)】

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