民草が紡ぎし絵巻 第32巻 新しい家を建てる夫婦
村の端に、
まだ何もない場所があった。
草が生え、
土が見えている。
朝、
若い夫婦が、
そこに立っていた。
夫は、
地面を見た。
妻は、
少し離れた田を見た。
水路がある。
その向こうには、
いくつもの家がある。
ここに、
二人の家を建てる。
夫が、
土を掘り始めた。
妻も、
土を運ぶ。
やがて、
村の男が一人、
やって来た。
木を担いでいる。
「ここか。」
夫が頷いた。
しばらくすると、
もう一人来た。
その後ろから、
女たちも来た。
誰かが木を運ぶ。
誰かが土を掘る。
誰かが縄を持ってくる。
子どもたちは、
少し離れたところから、
その様子を見ていた。
夫婦だけだった場所に、
いつの間にか、
何人もの人がいた。
太い木を、
地面へ立てる。
一人では、
支えきれない。
「もう少し。」
誰かが言う。
皆で押す。
木が立つ。
夫が、
根元へ土を入れる。
妻が、
その土を踏み固める。
一本。
また一本。
柱が立っていく。
昼になった。
皆で、
少し休んだ。
妻が、
食べ物を配った。
夫は、
立ち始めた家を見上げている。
まだ、
壁はない。
屋根もない。
それでも、
朝にはなかったものが、
そこにあった。
午後になると、
また仕事が始まった。
木を組む。
縄で結ぶ。
屋根をつくる。
日が傾くころ、
家の形が、
見えるようになった。
妻は、
入口になる場所に立った。
中を見る。
まだ、
何もない。
火もない。
食べ物もない。
眠る場所も、
できていない。
けれど、
ここが、
二人の暮らす場所になる。
夫が、
隣に立った。
「狭いな。」
妻は、
家の中を見た。
「二人なら。」
夫は笑った。
妻も、
少し笑った。
その後ろで、
年老いた女が言った。
「いつまで二人かね。」
妻は振り返った。
何も言わなかった。
けれど、
もう一度、
家の中を見た。
数日後。
屋根ができた。
壁ができた。
家の中に、
火が灯った。
煙が、
屋根の向こうへ昇っていく。
隣の家から、
それを見ている人がいた。
田から戻る人も、
新しい煙を見た。
昨日まで、
そこにはなかった煙だった。
村に、
一つ、
家が増えた。
けれど、
増えたのは、
家だけではなかった。
朝になれば、
そこから二人が出てくる。
田へ向かう。
水路を見る。
夕方になれば、
また戻ってくる。
火を囲む。
食べる。
眠る。
そして、
また朝が来る。
やがて、
その家から、
新しい声が聞こえる日が来るかもしれない。
その夫婦の名は、
残っていない。
誰が柱を立てたのか。
誰が屋根をつくったのか。
誰が最初に手を貸したのか。
何も分からない。
地面に残るのは、
柱の跡だけかもしれない。
けれど、
一軒の家が建つたびに、
そこには、
新しい暮らしが始まった。
夫婦が建てたのは、
ただの家ではなかった。
二人が、
これから同じ季節を重ねていく場所だった。
そして、
そんな家が、
一つ、
また一つと増えていく。
人々が家を建てるたび、
村もまた、
少しずつ、
育っていったのである。
※1 noteによる、本記事のAI自動翻訳(英語・韓国語)版も公開されています。興味のある方は、下記からご覧ください。👇
🌐 Scroll Spun by the Common Folk, Volume 32: A Couple Building a New Home
🌐 민초가 엮은 그림 두루마리 제32권 새집을 짓는 부부
※2 翻訳された本記事の原文と英訳を比較しながら、日本語・英語・AI・言語の面白さを綴ったコラムです。👇
🌐 AI自動翻訳が、うまくいった ― 『民草が紡ぎし絵巻』第32巻の英訳から考える
📚 AIが読んだ『民草が紡ぎし絵巻』(原文と翻訳文を比較しながら、日本語・英語・韓国語・翻訳の面白さを綴るコラム集)
『忘れられた日本人の物語』本編と『民草が紡ぎし絵巻』について
『忘れられた日本人の物語』は、その時代の歴史や暮らしを描く本編です。
『民草が紡ぎし絵巻』は、本編から生まれた名もなき人々一人ひとりの物語です。
本編が時代を描き、絵巻が人生を描きます。
どちらから読んでもお楽しみいただけます。
第二部 稲穂を育てる人々👇
📚 本編(ブログ)
🌐 第1話 稲を育て始めた人々
🌐 第2話 水を引く人々
🌐 第3話 土を耕す人々
🌐 第4話 実りを待つ人々
🌐 第5話 米を蓄える人々
🌐 第6話 村を育てる人々
🌐 第7話 糸を紡ぐ人々(9月10日公開)
🌐 第8話 海をつなぐ人々(9月12日公開)
🌐 第9話 境を守る人々(9月14日公開)
🌐 第10話 稲穂を残した人々(9月16日公開)
📚 民草が紡ぎし絵巻(本note)
第1話より
🌐 第22巻 最初に苗を植えた少女
🌐 第23巻 水を引く老人
第2話より
🌐 第24巻 初めて堰を築いた若者
🌐 第25巻 最後に水門を閉じる母
第3話より
🌐 26巻 鍬を直す父
🌐 27巻 初めて稲を刈る娘
第4話より
🌐 第28巻 雨を待つ老人
🌐 第29巻 最初の穂を見つけた子
第5話より
🌐 第30巻 種籾を残す母
🌐 第31巻 倉を守る老人
第6話より
🌐 第32巻 新しい家を建てる夫婦(本作)
🌐 第33巻 村で生まれた子(9月9日公開)
第7話より
🌐 第34巻 糸を紡ぐ娘(9月10日公開)
🌐 第35巻 母の布を受け継ぐ子(9月11日公開)
第8話より
🌐 第36巻 鉄を運ぶ舟人(9月12日公開)
🌐 第37巻 海の向こうから来た女(9月13日公開)
第9話より
🌐 第38巻 濠を掘る父(9月14日公開)
🌐 第39巻 門の内側で待つ母(9月15日公開)
第10話より
🌐 第40巻 最後の稲刈り(9月16日公開)
🌐 第41巻 父から受け継いだ田(9月17日公開)
🌐 第42巻 村を見下ろす老人(9月17日12時公開)
第一部 火を囲む人々👇
🌐 📚 『忘れられた日本人の物語』本編(ブログ)と『民草が紡ぎし絵巻』(本note)のリンク集
AI作家 蒼羽 詩詠留
📚 蒼羽 詩詠留 の創作作品はこちら
🌐 AIと人間の共創による創作物語(小説)(ブログ)
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🔗 その他のリンク
🐦 CielX(@Souu_Ciel)
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🧠 シンちゃん(古稀ブロガー)
🧠 🤖人間(古稀ブロガー)とAI(シエル)との共創
