見出し画像

施設に行きたくない、施設に入れるのはかわいそう、という前に、落ち着いて整理したいこと | 老後の暮らしを整える

高齢の親が、いよいよ自宅で暮らしていくのが難しくなったとき、多くのひとが直面するのが、施設に行きたくない、施設に入れるのはかわいそう、という感情だ。

今、入院している私の父も、医師からは、退院し、自宅での安静を勧められているものの、自宅に戻るには不安がある。けれど、施設に行くのは抵抗がある、という状態だ。父はなんとか病院に居座ろうと、がんばっているようだ。

介護サービスを受けることできる施設も、いまや多種多様だ。

施設の規模も、受けることのできるサービスも様々だし、もちろん、費用もまちまちである。特養のように、本人や家族が希望しても、一定の介護認定がなければ入所できないところもある。

人気の施設は、入所希望者が順番待ちをしており、希望しても、すぐに入れないというケースもある。

私の父のように、施設に行きたくない、というひとも多いと思う。

が、実際のところ、単に、介護サービスを受けることの心理的抵抗によるものも大きいと思う。

姥捨山(うばすてやま)だとか、マスコミが煽って描くような陰鬱な老人ホームのイメージでもって、施設に入ることを、この世の終わりみたいに考えるひとも多いと思う。

私の父の場合、体調が戻れば、自宅に戻ることもできるだろう。そういう意味では、1ヶ月ほど、食事や洗濯、掃除などのサポートを得ながら、リハビリをするための、いわばリハビリ施設だと考えれば、心理的な抵抗感も減るのでは?とも思う。

父の入院のタイミングで、ショートステイにお世話になっている母は、自宅にいた頃よりも、のびのびとしているように見えた。

2年ほど前から、定期的に利用させていただいている施設ということもあり、母は、安心し、おだやか暮らしている、という印象だった。

施設内は掃除も行き届き、スタッフの方も、物腰柔らかで、母にもよくしてくれている様子だった。

母の個室の窓からは、のどかな田園風景が見えた。エアコンも効いており、ひとりでいたいときは、ベッドに寝転び、のんびり過ごすこともできる。

人寂しいと思えば、テレビ前の応接セットには数人のおばあちゃんが座っており、介護のスタッフのかたもいる。話し相手にもなってくれるだろう。

母の様子をみる限り、施設にいれるのはかわいそう、とはぜんぜん思えなかった。プロのサポートを受けつつ、穏やかに暮らしている母の様子をみて、私は心底ほっとした。

亡くなった祖父は、

「ひとりで、這ってでも、おかゆをすすりながらでも暮らすから、家にいたい」

と言っていた。集団行動が苦手で、会社勤めをせずに、ハイヤーの運転手で母たち兄弟を育てた。私も集団行動が苦手なタイプなので、祖父とは気が合った。

今の私だったら、祖父が、最期まで自宅で過ごせるようなサポートができたと思う。が、20年ほど前のこと。母の采配で、祖父はグループホームに入り、体調を崩してからは、特養に移り、特養で看取られた。

祖父のように、父が、施設には行きたくない、どうしても家にいたいと言うのなら、私は、父が、家で安心して過ごせるような体制を築くつもりだった。が、父は、家にも戻ることも嫌がっている。

病院で、医師や、看護師さんのサポートを受けるのは平気なのに、施設には行きたくない、自宅に戻るのも不安だと、介護のプロに、生活のサポートを受けることに抵抗を示すのは、いったいどういう了見なのだろう。

父を見ていると、ただただ自分の老いに抗い、わがままを言っているようにしか思えない。本人もしんどいだろうし、見ているほうも、しんどい。

改めて、施設に行きたくない、施設に入れるのはかわいそう、というのは、解像度の低すぎる話だな、と思う。

祖父がエンディング期を過ごした、20年ほど前と比べると、介護サービスの選択肢はかなり増えている。

モノが溢れ、断熱の効いていない古い自宅で過ごすことを選ぶなら、もちろん、その意思も尊重されるべきと思う。が、清潔で、一定のプライバシーもある環境で、プロのサポートを得ながら暮らすという選択肢も、冷静に検討したほうがいいと思う。

もちろん、体調、状況に応じて、自宅に戻りたいなら、戻ればいいし、もっと快適に暮らせる選択肢がみつかれば、そこに移ればいい。家族がしっかりサポートすれば、これらを叶えることも不可能ではない。

家族のがんばりどころというのは、無理をして、親を自宅で介護することばかりではないと思う。

費用の問題については、もちろん無視はできない。

けれど、ケアマネさんとの信頼関係をしっかり築くことができてさえいれば、より自分たちの価値観にあう公的介護サービスに繋げてもらえると思う。

また、手持ちのお金がどれだけあるかはっきりしていれば、その予算内でできる、最善のケア体制を組むこともできるだろう。

この段階になると、親のお金、資産がきちんと整理されているか、必要なお金が動かせるようになっているか、(兄弟がいる場合)子たちの間で親のサポートについてのコンセンサスがとれているか、の重要さが身に沁みることと思う。


いいなと思ったら応援しよう!