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実務代行をしない危機管理広報コンサルの舞台裏(総論)


危機管理広報とは

広報の業界で「危機管理広報」というと、設備トラブル・不祥事等が実際に発生したときの公表対応(とくに緊急記者会見)を指すことが多いです。

一方、わたしの実務経験や、株式会社タンシキが過去に行った当該領域のマネジメント・コンサルテーション実績を踏まえれば、危機管理広報を事象発生時の公表対応(緊急記者会見)だけを対象と捉えると、あきらかにスコープが狭い。

もちろん、設備トラブルや不祥事が発生した時は、公表対応が企業・組織のレピュテーションに直結するため、その重要性・必要性を否定するものではありません。

しかし、企業・組織における危機管理広報の実態と、一般的に危機管理広報と言われる範囲にはギャップがあります。


危機管理広報の種類と業務

危機管理広報の種類(3種類)

  • 重大イベント対応
    M&A、工場建設、料金改定など、ステークホルダーの反発を招きかねないイベントに向けて、意図的・計画的に受容度を上げる広報活動

  • トラブル対応
    不祥事・設備トラブル等によって緊急的に対応する広報活動

  • リカバリー対応
    重大イベント対応やトラブル対応によって失った信頼の回復を目指す広報活動(社外広報に限らず、組織風土改革などの社内広報領域を含む)

危機管理広報の業務(4項目)

  • プランニング(計画・管理)
    危機管理広報活動全体の計画や、個別施策のプランニング業務。前者はたとえば、今期取り組むこととして、メディアトレーニングを計〇回いつごろ実施、危機管理広報マニュアルの見直しをいつごろ開始していつまでに完了等を計画。後者は、個々のメディアトレーニングの対象・狙い・シナリオ骨子など、重大イベントに向けたコミュニケーションプラン等を検討すること。

  • 平時に備える業務
    文書(危機管理広報規程/マニュアル/手順/ひな型等)整備や、研修・訓練、啓発などを行う業務。このほか、緊急記者会見を想定した備品の点検など。

  • 危機事象に対応する業務
    重大イベント対応・トラブル対応・リカバリー対応の実務。プレスリリースやQ&Aを作成する、主管部と調整するなど。

  • 評価
    プランどおりに、平時に備える業務や危機事象に対応する業務を完了できたか、改善点がないか等を振り返って記録に残す業務。


わたしたちの危機管理広報へのかかわり方

危機管理広報のご支援はたくさんしているが、ここでも実務代行はほとんど発生していない

近年、わたしたちが行う広報のマネジメント・コンサルテーションでも、危機管理広報のご相談「件数」は増えています。
売り上げ構成比でいうと、危機管理広報と、調査を核にした戦略・戦術策定(従業員意識調査・エンゲージメントサーベイ/広報活動の効果測定/報道トレンド調査/ベンチマーク調査など)が同じぐらいですが、ご相談の「件数」ベースでみると危機管理広報の領域が圧倒的に多いです。

ところが、わたしたちは、いわゆる「緊急時の実務代行」(危機事象発生時のプレスリリースやQ&A作成、緊急会見の直前準備や実施支援など)をお手伝いするケースはほとんどありません。

個々のお客さまのお立場からみれば数年に1度程度、わたしたちの立場で見ると(いろいろなお客さまとかかわりがあるため)年に数回です。

ただ、ご支援対象のお客さま側で、緊急時対応、いわゆるトラブル対応が発生していないわけではありません。

お客さま側では、軽微な事象であってもしっかりと公表しています(結果として一般的な企業よりも対応頻度は多くなる傾向にあります)。

つまり、お客さま側ではトラブル対応の実務が発生していますが、わたしたちにその実務代行に関するご相談をいただくことはほとんどありません。

“実務代行が発生しない”危機管理広報コンサルって?

では、なぜ、トラブル対応頻度の高いお客さまから多くのご相談を受けながらも、実務代行が発生していないのか。

主な理由として、以下が考えられます。


  1. 平時の備えにおける対象範囲の広さ(経営層や主管部に対する働きかけがある)

  2. 平時の備えにおける質の高さ

  3. 公表対応の記録と引き継ぎ


わたしたちの危機管理広報コンサルの具体例

理由をそれぞれ解説するまえに、わたしたちがトラブル対応領域行う主なご支援内容について、少し詳しくみてみます。

  • 危機管理広報のトレンド把握
    クライアントの業界・周辺業界における公表・報道の状況を網羅的に調査・分析する。自社が公表していなかった事象を他社が公表し始めた動きがないか、過去と比べて報道の扱いが大きくなる傾向にある性質の危機事象がないかなどを確認。定点観測的に、年に1度の頻度でご相談いただくことが多い。

  • 危機管理広報の事例研究・レポート
    世間を騒がせた、あるいは、クライアントにとって関心が高い危機事象の事例についてレポートを作成する。内容は、事象のレベル・性質の客観評価(事象の重大性や社会的関心の度合い)、その公表対応と報道結果の分析(開示手法・内容・タイミング等の評価)、事例からの学び(自社で類似の危機事象の発生予防、発生した場合の対応のポイント整理)など。レポートは広報部内だけでなく、経営層・関連事業部に共有して危機事象に対する啓発につなげ、関心が高い事例の場合は短時間で社内勉強会を実施。

  • 公表基準の作成・見直し
    どのような危機事象の時に、どのような方法で、なにを公表するのか目安を整理する。危機事象に伴う緊急会見の目安に加え、日常的に公表判断に迷うような事象について他社事例を踏まえながら目安を設定。会見が必要な事象については、レベル感に応じた登壇者の目安まで落とし込む。公表基準の作成後は、概ね年に1度見直す。

  • 「ひな型」の整備
    公表頻度が高い、あるいは、影響度が大きい危機事象について、プレスリリースやQ&Aのひな型を整備する。リリースのひな型は載せるべき情報とその理由、Q&Aは聞かれやすいQの一覧と、それに対するAのポイント(キーメッセージ・キーファクトの盛り込み方、批判・炎上を招きかねないAなど)を整理しておく。「何も考えずに公表できるように」ではなく、「考えるべきポイントを適時適切に検討できるように」するひな型を整備する。

  • メディアトレーニング
    会見登壇者向け:
    緊急記者会見の登壇が想定される役員・執行役員、部課長に対するメディアトレーニングを実施する。
    危機事象の発生可能性がある部署向け:
    事象の発生時に、リリースやQ&A等を広報部門と一緒に作成する部署(広報からみると“発生部署”)向けに、なぜ・どうやって公表すべきかをインプットする座学研修等を実施する(発生前から現場の部門側の理解を得ておく)。
    広報担当者向け:
    危機事象発生時の公表対応の要諦を座学や演習を通じて、認識強化・スキルアップする。

  • 社内の緊急対応訓練(防災訓練)における広報班の評価
    重大事象が発生した想定で、全社的な緊急態勢をとる防災訓練において、広報班の動き方を観察・評価。PC・電話の配線や、作業量の偏り、作業量に応じた広報班内のレイアウト、広報班内での情報共有や広報班から他の班に対する情報収集の動きなどを記録してフィードバックする。

  • 公表後の振り返り
    実施した公表対応や報道内容を客観的に評価する。緊急会見を実施した場合は、会見に至るまでの対応(いつ広報部門が情報を把握したのか、いつ誰が何を基準に会見判断をしたのか等)や、公表の内容(問い合わせ対応を含む)、対応(発生事象と公表方法・内容、SNS拡散や報道と公表との関係等)などをフィードバックする。

なお、重大イベント対応やリカバリー対応についても、以下のようなご支援しています。

  • 重大イベント対応
    重大イベントを「正式発表」する前に、正式発表時にもっとも酷く報道・SNSが炎上するシミュレーションを作成し、最悪のケースについて社内で議論しやすくする。情報を小出しにしてネガティブ・サプライズを防ぐステップや、「反対派」の反応を軽減する方法等をコミュニケーションプランに落とし込む。

  • リカバリー対応
    社外に対して継続的な情報開示に加えて、従業員の信頼回復や組織風土改革のための活動を検討・企画。不祥事発覚後にまとめられた再発防止策について、従業員全員の意見の吸い上げや自分ゴト化をするプロセスの設計や、経営層から従業員に対するメッセージ発信の内容・タイミング・トーンの設計等。

※それぞれの業務については、別途、詳しく紹介していきます。


憂いがないよう、備えをつくる

ここであらためて、わたしたちに危機管理広報の実務代行が発生していない理由を見てみると・・・

  1. 平時の備えにおける対象範囲の広さ(経営層や主管部に対する働きかけがある)

    対象業務例:
    危機管理広報の事例研究・レポート/メディアトレーニング(経営層向け/主管部向け)
    得られること:
    事象発生時に、広報部門にとって社内のカウンターパートとなる経営・主管部が、広報を理解したが状態になっている(むやみな保身に走らず、倫理的・社会的な考え方ができるようになる)

    ※別途、メディアトレーニングを題材にした舞台裏も詳しくご紹介します

  2. 平時の備えにおける質の高さ

    対象業務例:
    危機管理広報のトレンド把握、公表基準の作成・見直し、「ひな型」の整備
    得られること:
    緊急時にはどうしても視野狭窄しやすく、情報収集・判断の作業に追われがちだが、日頃のトレンド把握や公表基準により判断時間が短縮化され、かつ、「ひな型」により考えるべきポイントが最適化される(最悪の失敗を防ぐことができる)

  3. 公表対応の記録と引き継ぎ

    対象業務例:
    公表後の振り返り
    得られること:
    公表の対応実績と評価、改善方針が資料として残ることで、担当者が変わってもノウハウが引き継がれる(属人化を防ぐ)

もっともわたしたちは、危機管理広報に関連するお客さまに対しては、「なにか緊急事態があれば、ぜひ相談してください。24時間いつでも、とりあえず声をかけてください」とお伝えしています。

でも、実際にご連絡いただくことは極めてまれ。

ご相談いただく場合は、(表現はよくないですが)「小規模案件」のことが多く、「そもそもこれは公表すべきか」という公表要否を決める際のご相談がほとんどです。
「中規模案件」や「大規模案件」のご相談はほとんどありません。

いまいちど、この10年間を振り返ると、お客さまはわたしたちの事前のご支援や公表対応の記録・引き継ぎをもとに、

「自分たちでやってみたい」
「自分たちならできるだろう」

と思える状態になっているのでしょう。

社内のカウンターパートとは調整が円滑にできる、最悪の失敗を防ぐ状態になっている、過去の失敗や成功例を参照できる、そんな状態です。

危機事象発生時、お客さまが心の中で

「タンシキさんに相談している時間すらもったいない!自分たちで十分できる!」
「いざとなったらタンシキさんがセーフティネットになるから、自走しよう!」

と思っていただけているならば、これこそが胆識(タンシキ)であり、わたしたちは非常に誇らしいです。


今回は、わたしたちの危機管理広報支援の特徴をお伝えしました。

実は、こうしたご支援でも、わたしたちは「組織の生命力」(詳しくは該当記事の前編後編)の思想を背景に意識しています。

組織のレジリエンス力に関連するのは、危機管理広報のあらゆる業務。トラブル対応で失敗を防ぐ備えや重大イベント対応は恒常性維持の機能で、リカバリー対応における従業員へのアプローチは組織の自己治癒に直結しています。

組織の変化適応力に関連するのは、危機管理広報のトレンド把握や事例研究・レポート、経営層向けトレーニング。特に、わたしたちが行う経営層向けメディアトレーニングは、「組織の生命力」との紐づけを意識しています。単に、会見対応のテクニックを習得してもらうためのものではありません。

組織の伝承・新陳代謝力に関連するのは、公表後の振り返り。担当者が変わっても記録によってノウハウが伝承され、記録があるからこそ当時と今の違いに着目して新しい対応のあり方へと新陳代謝ができます。


長くなりましたので、メディアトレーニングを中心にまた別途、ご支援の詳細をご紹介したいと思います。

↓ メディアトレーニングについて詳しい記事を公開しました

「メディアトレーニングの舞台裏」シリーズ
①非日常の備えという認識を変えてみよう ← 2026/8/31公開
②経営層が何度も受けたくなるメディアトレーニングとは ← 2026/8/31公開
・③準備編:準備段階でいったい何をしているのか ← 2026/9/7公開予定
・④当日編:トレーニング中に講師は何を考えているのか ← 2026/9/14公開予定
・⑤事後講評編:もはや執念の塊 ← 2026/9/22公開予定

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