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メディアトレーニングの舞台裏 ①「非日常の備え」だという認識を変えてみよう

メディアトレーニングとはなにか

一般的にメディアトレーニングとは、「記者会見・取材対応等を想定して、情報・メッセージが正しく伝わるように説明・質疑対応し、不信感を持たれない言動をするための訓練」です。
ざっくり言えば、「会社を代表する話し手としての技術を習得するトレーニング」です。一般的には、トラブル・不祥事の発生時の緊急記者会見という非日常に備える訓練が多いです。

一方、広報のマネジメント・コンサルティングを行うわたしたちは、メディアトレーニング(とくに上記のようなトラブル・不祥事等発生時の緊急記者会見を想定した訓練)は、「非日常」の備えとしての技術習得に加えて、「日常」に役立つ経営と広報のチームビルディングであり、経営の価値観をアップデートするためのアセスメント研修だと捉えています。

今回から、わたしたちの「危機管理広報領域のメディアトレーニング」の舞台裏をご紹介します。

※なお、メディアトレーニング自体は、必ずしも危機管理広報の領域に限定されません。わたしたちは、たとえば社長交代時の会見前や社内動画撮影前、社長・役員・幹部が外部で講演をする前、新聞・TVの個別インタビューを受ける前などに、トレーニングのご相談をいただくことがあります。社長交代に関するトレーニングは、会見での「所信表明」の構成・内容のご相談を含めて実施することが多いです。

さて、危機管理広報領域における「メディアトレーニング」の大半は、「緊急記者会見」の備えとして実施されますが、必ずしもそれだけではありません。いったん体系的に整理したうえで、わたしたちの特徴をお伝えします。

この連載の全体像
メディアトレーニングの舞台裏①非日常の備えという認識を変えてみよう ← 2026/8/31公開(本記事)
メディアトレーニングの舞台裏②経営層が何度も受けたくなるメディアトレーニングとは ← 2026/8/31公開
メディアトレーニングの舞台裏③ 準備編:準備段階でいったい何をしているのか ← 2026/9/7公開
メディアトレーニングの舞台裏④ 当日編:トレーニング中に講師は何を考えているのか ← 2026/9/14公開
・メディアトレーニングの裏側 ⑤事後講評編:もはや執念の塊 ← 2026/9/22公開予定


メディアトレーニングの対象

まず、メディアトレーニングの対象となる方は、主に以下のとおりです。

  • 会見登壇者
    記者会見やレクに登壇して説明・質疑対応する可能性がある方(例:トップ・役員/事業部・拠点幹部/広報担当者等)

  • 判断者・判断支援者
    危機事象の開示要否・方法・内容等を検討・判断する方(例:トップ/広報担当役員/事業部・拠点幹部/広報担当者)、および、それらの判断を支援する方(例:法務部幹部・担当者/カスタマーセンター幹部・担当者等)

  • 広報実務者
    危機管理広報の実務を担い、会見の読み原稿・プレスリリース・Q&A作成や、会見の案内、報道関係者からの電話取材に対応する方(例:広報担当者/事業部・拠点側広報担当者)

  • 主管部側実務者
    危機事象が発生する現場で、情報の収集・整理や会見・公表資料作成等を支援する方(例:事業部・拠点側担当者等)

「判断者・判断支援者」や「主管部側実務者」を対象にするトレーニングの多さは、我々ならではかもしれません。
とくに「判断者・判断支援者」対象のものは、非常に有用です。たとえば役員同士でケースをもとに開示要否等を討議してもらうと(内容は別記)、開示に対する考え方やステークホルダーの優先順位がそれぞれ異なる状態になりやすいもの。落ち着いた平時に互いの考え・価値観の違いを浮き彫りにし、すり合わせをすることで、緊急時に判断のブレが少なくなります。役員同士で判断基準が揃いやすくなるのです。


一般的なメディアトレーニングの実施方法

メディアトレーニングは、大きく3つの実施形態があります。

 ①座学

  1. 危機管理広報の総論
    【主な内容】危機管理広報の概要・要諦/報道・記者・SNSの概要・潮流/心構え・技術等
    〇最低限、習得してほしい知識をインプットできる
    〇危機事象発生時に広報にとって社内のカウンターパートと共通の認識を持てる
    △知識習得に偏るため実効性には限界がある

  2. 事例研究(ケーススタディ)
    【主な内容】自社・他社の危機事象の公表・報道状況に関する分析結果の共有
    〇事例を読み解くことで具体的なイメージを持ちやすい
    △事例から得られる学びを「一般化」しきれない(背景にある「固有」の状況・事情にこだわってしまう)

②机上訓練

  1. ケース・メソッド(判断者・判断支援者向け)
    【主な内容】危機事象の実例またはシナリオに基づき、関連するステークホルダーの棚卸、ステークホルダーと自社のレピュテーションに与える影響の程度を分析・評価、開示要否・進捗状況に応じたステークホルダーの優先順位等の検討・意見交換
    〇緊急時における判断力の向上
    〇危機事象ごとの具体的な判断基準・理由を平時に明文化しておける

  2. ケース・メソッド(広報実務者向け)
    【主な内容】上記に加えて、開示方法・開示範囲・キーメッセージ等まで具体化し検討・意見交換
    〇危機事象がめったに発生しない企業・組織でもリアリティをもって実施しやすい

③模擬訓練

  1.  全社一斉訓練
    【主な内容】自然災害・工場発災・情報漏えい等のテーマで、危機事象の発生~状況変化~第1報公表~記者会見実施まで全社的にシミュレーションを実施
    〇危機発生時に必要な情報連携や作業速度を実体験できる
    △準備を含めて実施コストが膨大

  2. 会見・記者レクの質疑対応(会見登壇者向け)
    【主な内容】危機事象のシナリオをもとに、模擬形式の緊急記者会見・ぶら下がり会見・記者レクなどを通じ説明・質疑対応を経験
    〇会見等での説明・質疑対応スキルの向上
    △会見者が「訓練慣れ」しすぎてしまうと、実際の登壇時に緊迫感・緊張感が欠けてしまう場合がある

  3. 会見・記者レク対応全般(広報実務者向け)
    【主な内容】危機事象のシナリオをもとに、時間内で読み原稿・プレスリリース・Q&Aの作成や、HPへの掲載、電話対応を訓練
    〇広報担当者のトラブル対応スキルの向上


メディアトレーニングの効果

次にメディアトレーニングの効果について。

メディアトレーニングは、「会見登壇者」と「広報実務者」に対するものが中心です。
緊急記者会見を想定して、自社のメッセージが伝わるように説明し、誤解を招くことのない質疑対応ができることを重視しているためです。
このため、一般的なメディアトレーニングの効果は、「危機発生時の広報対応のスキル・意識の向上」になります。
より具体的には、緊急記者会見で、落ち着いて説明・質疑対応ができる、不必要に印象が悪くなるような言動を控えるなどです。

メディアトレーニング導入に関する悩み

ただ、こうしたトレーニングは、効果が「短期的」には見えにくいのが難点です。
たとえば、実際に緊急会見の場がない限り、模擬訓練に効果があったのか確認できません。「非日常」に備えた訓練のため、危機事象が発生しなければ、トレーニングの有用性を実感しにくいのです。

言い換えると、「非日常」への備えとして重要度が高いものの、「日常」においては優先度がなかなか上がらない
そのため、広報担当者はメディアトレーニングが必要と考えていても、経営層への受講提案に躊躇してしまう、または、経営層が「確かに大事だが、いまは忙しいので落ち着いたタイミングに再検討を」と後回しにしてしまう。なんとか受講にこぎつけても、経営層から「一度やったからもう大丈夫だろう。会見が必要になった時の直前リハーサルで十分だ」と突き返されてしまう。

もちろん、人材育成施策や研修の受講に伴う効果の見えにくさは、必ずしもメディアトレーニングに限らないでしょう。知識や手順の習得ならばともかく、マインドの転換やスキルの習得は、時間の経過とともに研修で学んだことが腑に落ちたり、いつの間にか体得できていたりするものだからです。

経営層が何回も受講したくなるメディアトレーニングって?

しかし、わたしたちのメディアトレーニング、とくに経営層向けの会見模擬訓練は、実施後に経営層が「定期的に受けたい」「異なるシナリオで何回もやりたい」と前向きになり、繰り返し受けていただくことが少なくありません。

これは、わたしたちがメディアトレーニングを「危機発生時の会見対応スキルの向上」のためだけのものとは捉えていない点が大きいでしょう(もちろん、スキル向上は必須のもので、習得いただけるようにしています)。

次回、わたしたちが特に強く意識している以下の2点について詳しくご紹介します。

  • 「経営層が何回も受けたくなるメディアトレーニング」

  • 「広報担当者が経営層に何回も受講を提案したくなるメディアトレーニング」

ノウハウもたっぷり、お楽しみに!

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