メディアトレーニングの舞台裏 ②経営層が何度も受けたくなるメディアトレーニングとは
「日常」でも重要度・優先度が高いメディアトレーニングとは
前回、危機管理広報領域のメディアトレーニングの概要と共に、経営層向けの模擬訓練(緊急記者会見)に関する広報担当者のみなさんのよくある悩みをお伝えしました。
たとえば、「非日常」への備えゆえに優先度が下がりがちで、経営層が受講に前向きにならない。あるいは、一度受講しただけで経営層が「できるつもり」になりがちという悩みです。
一方、わたしたちの場合、トレーニング後に「定期的に受けたい」「異なるシナリオで何回もやりたい」というお声が多いのはなぜか。
それは、わたしたちが、メディアトレーニングを「危機発生時の会見対応スキルの向上」のためだけのものとは捉えておらず、以下を強く意識しているからでしょう。
「経営層が何回も受けたくなる」こと
「広報担当者が経営層に何回も受講を提案したくなる」こと
このことについて、少し詳しくご紹介していきます。
わたしたちのメディアトレーニングの特徴
一般的な広報支援会社とわたしたちが異なる点は、大きく以下の3つです。
危機発生時という「非日常」の備えだけでなく、「日常」に役立つ内容にしている
経営層に必要な「信用・信頼獲得力」を診断する“アセスメント”の要素を含んでいる
受講する経営層だけでなく、広報担当者の育成につなげている
1. 危機発生時という「非日常」の備えだけでなく、「日常」に役立つ内容にしている
【具体例】「緊急会見のためのフィードバック」だけでなく、模擬会見の説明・質疑から本人の思考様式・価値観等をプロファイリングして、「日常的に意識・実践すべきことをフィードバック」する
得られること:
〇経営層は自分自身が気付かなかった価値観の偏りに気づき、今日・明日からできるアクションを見出しやすい(そのアクションの積み重ねが「非日常」の備えにもなる)
〇広報担当者はトレーニングのフィードバックを「武器」に、経営層の日常的な言動に助言・アドバイスしやすくなる(例:社員向けのメッセージのトーン調整/ポジティブ案件のインタビュー対応における言動の留意事項伝達等)
2. 経営層に必要な「信用・信頼獲得力」を診断する“アセスメント”の要素を含んでいる
【具体例】
模擬会見の説明・質疑の発言や振る舞いをもとに、人間性、能力、ステークホルダーに対する影響の想像力、保身の程度などを客観的に点数化しフィードバックする
得られること:
〇経営層は過去の自分や他の役員と同一指標で比較でき、自分の強み・弱みや立ち位置がわかる
〇広報担当者は経営層に役立つ「アセスメント研修」の名目で定期受講を提案しやすい(アセスメント研修の”方法”がメディアトレーニングであるという建付けで、「日常」の重要度・優先度が高いものとして提案できる)
3. 広報担当者の育成にもつながる機会
【準備段階】模擬会見用のシナリオを、極力、広報ご担当者に作成していただく
【トレーニング当日(質疑・講評)】ご担当者も記者役となって、経営層に必ず「手をあげて質問」をし、直後の講評で気づいたことをコメントしていただく
【事後講評】わたしたちが作成した講評(総評/振る舞い/言い回し/サンプル記事/信用・信頼力アセスメント結果)をご担当者から経営層に説明していただく
得られること:
〇経営層は繰り返し受講することで、広報ご担当者らの記者役としての質問内容や講評、事後の説明内容の変化からご担当者の成長機会になっていることを実感できる
〇広報担当者は、経営層への質問・コメント・説明の機会が得られることで、他の業務においても提言しやすくなる(経営層とのコミュニケーションに関する心理的なハードルが下がる)
非日常は日常の延長にある
危機発生という「非日常」は、「日常」から切り離されたものではなく、「日常」の延長の中にあるものです。一般的なメディアトレーニングは、この「日常」の延長にあるという思想が弱い。
仮に経営層が、社会規範や倫理観とやや乖離した思考様式・価値観を持っているとしましょう。会見でどれほど巧みな話術や卒のない振る舞いができたとしても、思考の偏りがにじみ出て会見が炎上してしまう可能性が高くなります。
経営層自身が、自分の価値観や思考のクセに気づき、社会的・倫理的に健全な状態に近づくように「日常」の中で調整していくことが、とても大切なのです。
また、経営層自身が、日々そうした努力をしていても、危機発生時にはどうしても正常性バイアスやグループシンク(集団浅慮)などが発生してしまいやすいもの。
※このあたりの背景については、拙著「組織風土にアプローチする危機管理広報」(日本広報学会誌・研究ノート)をご参照ください。
視野狭窄してしまった経営層に対し、広報担当者は、半歩外の立場・見方で提言することが重要です。
ところが、提言に躊躇したり、経営層が提言内容に耳を傾ける価値を感じられなかったりしたら、危機対応に失敗してしまう可能性が高まります。
そのため、わたしたちのメディアトレーニングは、
危機に備える技術・マインドを習得すること
経営層の価値観・思考のクセを浮き彫りにし、社会的・倫理的規範に沿って調整できるよう意識・行動の転換を促すこと
経営層と広報担当者の間で、日常的な信頼関係の強化を促すこと
経営層が自分の立ち位置を客観視できる状態にすること
により、
「経営層が何回も受講したくなる」「広報担当者が経営層に何回も受講させたくなる」もの
になっています。
次回、このようなメディアトレーニングを成立させるために、どのように準備・実施しているのか、舞台裏をお伝えします。
そこまで出してしまっていいのか、ちょっと心配なほど詳細に…?
この連載の全体像
・メディアトレーニングの舞台裏①非日常の備えという認識を変えてみよう ← 2026/8/31公開
・メディアトレーニングの舞台裏②経営層が何度も受けたくなるメディアトレーニングとは ← 2026/8/31公開(本記事)
・メディアトレーニングの舞台裏③ 準備編:準備段階でいったい何をしているのか ← 2026/9/7公開
・メディアトレーニングの舞台裏④ 当日編:トレーニング中に講師は何を考えているのか ← 2026/9/14公開
・メディアトレーニングの裏側 ⑤事後講評編:もはや執念の塊 ← 2026/9/22公開予定
