得意な「動詞」でわかる、生物が好きな人の生物学科・農学部の選び方
「生物が好きだから、大学では生物を学びたい」
「でも、農学部と理学部生物学科って、何が違うの?」
「食品、環境、動物、植物、遺伝子、細胞……興味はあるけれど、自分にはどの学部が向いているのかわからない」
理系の進路を考える高校生から、このような相談を受けることがあります。
いざ学部を調べてみると、農学部、理学部生物学科、生命科学部、応用生命科学科など、似たような名前がたくさん出てきます。その中でも特に迷いやすいのが、「理学部生物学科」と「農学部」の違いです。
「自分が何を学びたいのか」「どの学部に適性がありそうなのか」を考えないまま決めてしまうと、「思っていた学びと違った」「自分には合わなかった」と感じてしまいます。
ここでは「受験学部」を決める段階で、「理学部生物学科」「農学部」のどちらの学部が自分に向いているのか」を考えるための判断材料をお伝えします。
□ 「生物が好き」の先は「動詞」で考える
理学部生物学科と農学部の違いを考えるときに大切なのは、「生物が好き」という気持ちだけで判断しないことです。
同じように生物が好きでも、生物への関わり方は人によって違うからです。
生命の仕組みを「明らかにしたい」のか。
植物や動物を「育てたい」のか。
食料や環境の課題を「解決したい」のか。
遺伝子や細胞の働きを「深く調べたい」のか。
生物の力を社会に「役立てたい」のか。
このように、自分が生物に対して何をしたいのかを「動詞」で見ていくと、学部選びの判断材料が見えてきます。
「学部」の違いや「適正」を判断するには、次の2つのステップで考えます。
① 得意なことを「動詞」で見つける
② 学部で求められる「動詞」とつなげる
この順番で考える理由は「何に興味があるか」だけでなく「どのような役割で関わりたいか」によって、向いている学部が変わるからです。詳しくは、以下の記事で紹介していますので、ぜひご覧ください。
① 「得意なこと」を見つける
自分の「得意なこと」を「動詞」で見つけていきます。例えば「得意なこと」とは、以下のようなものです。
「得意なこと」とは「生物が好き」「動物が好き」「植物が好き」といった対象そのものでなく、自分がどのように関わるのが得意なのかを見ます。
生き物の特徴を「観察する」ことが得意
違いや共通点を「比べる」ことが得意
なぜそうなるのかを「考える」ことが得意
実験結果やデータを「分析する」ことが得意
細かい変化を「記録する」ことが得意
同じ「生物が好き」でも、何をすることに面白さを感じるのかは人によって違います。学部を選ぶときには、「何が好きか」だけでなく、「どのように関わることが得意か」を見ることが大切です。
得意なことの見つけ方については、以下の記事で詳しく説明しています。ぜひご覧ください。
② 得意な動詞×学部の動詞
次に見ていくのは、学部ごとの「動詞」です。その学部では、学問に対してどのような役割で関わるのかを見ていきます。
たとえば、農学部や生物学科を「名詞」で見ると、植物、動物、微生物、細胞、遺伝子、環境、食料、生命、進化、生態系といった分野が見えてきます。
しかし、理学部生物学科でも遺伝子や細胞を扱いますし、農学部でも遺伝子や微生物を扱います。理学部でも生態系を学ぶことがありますし、農学部でも植物や動物の仕組みを深く学びます。
だから、高校生からすると「結局、どちらも生物を学ぶ学部ではないのか」と感じてしまいます。

そこで理学部「生物学科」を「動詞」で見てみます。
理学部生物学科は、生物の仕組みを「観察する」「比べる」「分類する」「分析する」「記録する」といった学びに重心があります。生物そのものに向き合い、「なぜそうなるのか」「どのような仕組みで成り立っているのか」を深く追究していく学部です。
そして、自分の「得意な動詞」と、「学部で求められる動詞」が合わさったところが、自分の適性を考える手がかりになります。

□ 理学部「生物学科」で求められる動詞
理学部生物学科の中心にある動詞は「明らかにする」です。
「生命は、どのような仕組みで成り立っているのか」
「なぜ、生き物には共通点や違いがあるのか」
「細胞、遺伝子、生態系、進化は、どのような法則で説明できるのか」

こうした問いを深く考えていくのが「理学部生物学科」です。農学部に近い内容を学ぶこともありますが、出発点にあるのは「生物の仕組みそのものを理解したい」という関心です。
食料や環境、医療や産業に応用されることもありますが、最初の問いは「どう役立てるか」よりも「なぜそうなっているのか」にあります。
理学部生物学科で求められる動詞は、たとえば次のようなものです。

これらの動詞が、自分の得意なことと重なるなら、理学部生物学科は進路の候補として考えやすくなります。
例えば、
動物や植物を見たときに、「かわいい」「きれい」で終わらず「なぜこの形になっているのか」「どういう仕組みで生きているのか」と考えてしまうタイプ
授業や実験で結果が出たときに「何に役立つか」よりも先に「なぜこの結果になったのか」「別の条件ならどうなるのか」が気になってしまうタイプ
身近な生き物の違いや共通点を見つけるのが好きで「図鑑」「観察」「分類」「実験」「データ」を見ることに面白さを感じるタイプ
こういう人は、理学部生物学科に向いている可能性があります。
□ 「農学部」で求められる動詞
農学部の中心にある動詞は「役立てる」です。
「生物の力を、食料や環境の問題にどう生かせるのか」
「植物や動物を、どのように育て、守り、改良していくのか」
「生命の仕組みを、社会の課題解決にどうつなげるのか」

こうした問いを考えていくのが「農学部」です。
農学部と聞くと「農業を学ぶ学部」というイメージを持つ人もいるかもしれません。もちろん、農業や作物、畜産に関わる学びもあります。しかし、現在の農学部で扱う内容はそれだけではありません。
食品、環境、森林、資源、微生物、遺伝子、生命科学、動物、植物、生態系など、かなり幅広い分野を扱います。
農学部で求められる動詞は、たとえば次のようなものです。

これらの動詞が自分の得意なことと重なるなら、農学部は進路の候補として考えやすくなります。
例えば、
植物や動物の仕組みを知るだけでな、「どうすればもっとよく育つのか」「どうすれば病気や環境変化から守れるのか」と考えるタイプ
食品、環境問題、森林、農業、動物、微生物などを見たときに「この知識を社会の課題解決に使えないか」と考えてしまうタイプ
生物が好きなだけでなく、食料不足、地球温暖化、生物多様性、地域の農業、食品開発など、現実の問題と結びつけて考えることに関心があるタイプ
こういう人は「農学部」に向いている可能性があります。
□ おわりに
農学部と理学部生物学科は、どちらも「生物」に関わる学部ですが、名前や分野だけで判断しようとすると、違いは見えにくくなります。
進路選択で大切なのは、
自分が、生物をどのような視点で見たいのか。
どのような問いを考えることに、面白さを感じるのか。
どのような動詞が、自分の得意なことと重なるのか。
そこまで考えることで、学部の違いは少しずつ見えやすくなります。
自分が「どんな動詞に力を発揮しやすいか」を考えてみると、自分に合う学部が少しずつ見えてくるはずです。
その考え方を、商・経営・経済で迷う生徒との面談例としてまとめたワークブックも公開しています。ぜひ、こちらも一緒にご覧ください。
文系学部の違いを「動詞」で考えたい方は、商学部・経営学部・経済学部の記事もあわせてご覧ください。
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