進路が決まらない高校生は「やりたいこと」ではなく「得意なこと」を見つけよう。
進路について考えるとき、多くの高校生がぶつかる悩みがあります。それは、
「やりたいことがない」です。
「将来なりたい職業があるわけでもない」
「行きたい学部がはっきり決まっているわけでもない」
「好きなことはあるけれど、それが進路につながるイメージは持てない。」
「得意なことを聞かれても、胸を張って言えるものなんて何もない……。」

でも、それでいいんです。むしろ、高校生の段階で「やりたいこと」が明確に決まっている人のほうが珍しいです。
僕は教師として何千人もの生徒と接してきましたが、最初から「薬剤師になりたい」「プログラマーになりたい」「建築を学びたい」と明確な目標を生徒が持っていたわけではありませんでした。
そのような生徒が最終的に「納得感のある進路」を見つけることができた方法をお伝えします。
◾️ 「やりたいこと」には公式がある
進路を考えるとき、多くの高校生は「やりたいことがない」と言います。
「やりたいこと」という言葉は、かなり大きな言葉なので「分解」して考えてみましょう。
数学にも公式があるように、「やりたいこと」にも公式があります。
「やりたいこと」とは、
「好きなこと」と「得意なこと」
が重なったところに見えてくるものだと僕は考えています。

「好きなこと」とは、自分が興味を持てることです。もっと知りたいと思えること。なぜか気になってしまうこと。時間を忘れて調べてしまうこと。
「得意なこと」とは、自分が自然にできてしまうことです。人より少し楽にできること。周りからよく頼まれること。
進路を考えるときには、「好きなこと」だけを探すのではなく「得意なこと」に目を向けることが大切です。
◾️ 「得意なこと」を先に探す理由
「得意なこと」とは、スキルや知識のことではありません。

例えば、
整理整頓できること
計画を立てて勉強できること
友達の相談によく乗ること
たくさんの人の前で発表できること
こうしたものは、才能や特性と言い換えることもできます。では、なぜ「好きなこと」よりも先に「得意なこと」を探すのでしょうか。理由は3つあります。
① 高校生の好きは変わりやすい
多くの高校生と接する中で感じたのは、「好きなこと」は変化しやすいものだということです。今は建築に興味があっても、新しい授業や本、動画、探究学習、あるいは先生との出会いによって、経済や心理、情報へと関心が移ることも珍しくありません。
例えば、
動物が好き
K-POPが好き
AIが面白そう
お金に興味がある
人の役に立ちたい
こうした好きは、進路を考えるうえでとても大事なものですが、それが本当に深い関心なのか、単なるイメージなのか、一時的な憧れなのか、SNSや周囲の影響を受けたものなのか、まだ判断しきれないことも多いです。
好きなことは、これから経験を増やしながら変わっていくことがあります。だからこそ、変わりにくい「得意なこと」から見ていきます。
② 学部・学科探しのヒントになる
「得意なこと」が発見できると、どの学部・学科が自分に適正があるのかを見つけるヒントになります。たとえば、
「情報を整理して、わかりやすく説明すること」が得意な人は、教育学部、情報学部、メディア系、経営学部などを調べてみる価値があります。
「仕組みを理解し、問題を分解して改善すること」が得意な人は、情報学部、工学部、システムデザイン系、経営工学系などを調べてみる価値があります。

もちろん、得意なことだけで進路を決めればいいわけではありません。大切なのは、「まず得意を見つけ、そのあとに好きなことや大事にしたい価値観と重ねていく」ことです。
得意なことから、学部の適正を知る方法は、以下の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。
③ 得意なことは、日々の行動に表れやすい
「得意なこと」を先に探す理由は「好きなこと」よりも日々の行動に表れやすいからです。たとえば、
「相談に乗ること」が得意
「ノートを整理すること」が得意
「予定を立てること」が得意
「友達に説明すること」が得意
「細かいミスに気づくこと」のが得意
「改善点を見つけること」が得意
このような「得意」が見えてくると「自分の得意な勉強の仕方」も発見することができます。高1から「自分の得意」を知っておくと、効率的に学習を積み上げることができます。

「得意なこと」から、自分に合った「勉強法」を見つける方法は、記事の最後で紹介していますので、ぜひご覧ください。
◾️ 「得意なこと」の探し方
「得意なこと」は「すでに当たり前にやっていること」の中に隠れています。実際に「やりたいことがない」と感じている生徒とは、以下の3つの手がかりから、一緒にヒントを見つけていきました。
①得意な科目から見つける
高校生にとって、「教科」や「科目」は自分の得意を見つけるための一番身近な材料になります。ここで行うのは単なる「得意科目探し」ではありません。その科目の「何が」得意なのかを深掘りしていきます。
たとえば、「数学が得意」と言っても、その中身は人によって全く違います。

大切なのは「数学が得意」という科目名で終わらせず、その中で自分が何をしているときに力を発揮しているのかを見ることです。
たとえば、解き方の手順を「組み立てる」のが得意な人は、ものごとの流れを考えたり、仕組みを順序立てて作ったりすることに向いている可能性があります。
このような力は、以下のような学部・学科が求められている考え方と重なる部分があります。そのため、自分に合う学部を考えるときの一つのヒントになります。

英語も同様に「得意」という一言の中にも、いろいろな得意が隠れています。

たとえば、英語の長文で文脈を「つかむ」「推測する」のが得意な人は、文章全体の流れや、言葉の背景にある意味を読み取る力があります。
この力は、文学部や国際関係学部、社会学部のように、文章・文化・社会の背景を読み解く学びとつながりやすいです。

このように、得意な科目を深掘りしていくと、自分の得意なことは「科目名」ではなく「整理する」「判断する」「組み立てる」「推測する」といった動詞で見えるようになります。
動詞で表すことで、自分がどのような考え方や行動に力を発揮しやすいのかが見えやすくなり、学部・学科探しの一つのヒントになります。
② 人から頼まれることから見つける
二つ目は、人からよく頼まれることから見つける方法です。
自分では当たり前にやっていることでも、周りから見ると「助かる」「頼りになる」と感じられていることがあります。
たとえば、友達からよく相談される人がいます。

その人は、ただ「優しい人」なのではなく「相手の話を最後まで聞くこと」が得意なのかもしれません。「相手の気持ちを整理すること」が得意なのかもしれません。「相手が言葉にできていないことを、代わりに言語化する」ことが得意なのかもしれません。
また、グループ活動で自然と予定を立てる役割になる人もいます。

その人は、「計画すること」が得意なのかもしれません。「やるべきことを整理すること」が得意なのかもしれません。
自分では「このくらい普通」と思っていても、他の人から見ると、普通ではないことがあります。ここでも大切なのは、動詞で考えることです。
「相談されることが多い」
→ 「聞く」のが得意
→ 「気持ちを受け止める」のが得意
→ 「相手の考えを整理する」のが得意
「発表資料を任される」
→ 「まとめる」のが得意
→ 「見やすく整理する」のが得意
→ 「相手に伝わる形にする」のが得意
このように、人から頼まれることを深掘りすると、自分では気づきにくい得意が見えてきます。
このような力は、以下のような学部・学科が求められている考え方と重なる部分があります。そのため、自分に合う学部を考えるときの一つのヒントになります。

③ 苦にならないことから見つける
三つ目は、あまり苦にならないことから見つける方法です。
他の人は面倒くさがるけれど、自分はそこまで苦にならないこと。周りは疲れると言うけれど、自分は続けられること。気づいたら自然にやっていること。
そこに、得意なことが隠れている場合があります。
たとえば、ノートをきれいに整理することが苦にならない人がいます。

その人は、情報を整理することが得意なのかもしれません。見やすくまとめることが得意なのかもしれません。細かい違いに気づくことが得意なのかもしれません。
また、部活の練習を毎日コツコツ続けられる人もいます。

その人は、「継続すること」が得意なのかもしれません。「決めたことをやり切ること」が得意なのかもしれません。「地道に改善すること」が得意なのかもしれません。
得意なことは「すごい成果」だけに表れるわけではありません。むしろ、普段の小さな行動の中にあります。
気づいたら調べている。
気づいたら人の話を聞いている。
気づいたら作っている。
そういう行動は、自分にとって自然だからこそ、得意なことの可能性があります。自分に合う学部を考えるときの一つのヒントにしてみてください。

おわりに
「やりたいことがない」と感じている人は、何も焦る必要はありません。まだ、自分の中にある「得意な動詞」に気づいていないだけです。
実際に、このような考え方で進んだ生徒が、最終的に「学校建築のデザインをやってみたい」「薬剤師の中でもアレルギー疾患療養指導士が合っているかも」と自分のやりたいことを見つけていきました。
具体的な「得意なこと」を見つけていくワークシートなどは、今後追加していく予定ですので、この記事が、少しでも進路を考えるきっかけになった方は、「スキ」やコメントで反応していただけると嬉しいです。
また、得意な「動詞」から学部を選ぶ方法については、以下の記事でも詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
◎ 「動詞」を使った、進路面談の実践記事です
◎ 得意な「動詞」から学部を選ぶ方法はこちら
◎ 得意な「動詞」から、勉強法を探す方法はこちら
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