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子どもをご褒美で釣ってもいい?『「学力」の経済学』を父親になって読み返した

※本記事にはアフィリエイト広告を含みます。

中室牧子先生の『「学力」の経済学』という本を初めて読んだのは、今から約10年前のことです。

2016年、当時27歳だった僕は、5年間付き合った彼女に振られました。
「この人と結婚するんだろうな」
と思っていたので、当時はかなり落ち込みました。

その出来事をきっかけに、新しい価値観を求めて色々行動していました。
行ったことのない立ち飲みバーに行ってみたり、街コンに参加してみたり、本屋で自己啓発本を読み漁ってみたり…。

この時の失恋については、以前こちらの記事に詳しく書きました。↓

そんな時期に、たまたま手に取った一冊が、『「学力」の経済学』でした。

当時の僕は独身で子どももいません。
それどころか、今の妻ともまだ出会っていませんでした。

なので、
「教育について知りたい!」
と思って読み始めたわけではなりません。
本屋で目立つように置いてあったので、何となく手に取ってみただけです。

ただ、読んでみたらこれが結構面白かったんです。

子どもをご褒美で釣ってもいいのか。
褒めて育てるのは本当に正しいのか。
ゲームは悪影響なのか。
当たり前のように語られていることを、研究やデータをもとに検証していく内容で、素直に「へぇ」と思わされることばかりでした。

「いつか自分に子どもができたら参考になるかもな…」
そんなことをぼんやり思いながら本棚に残していました。

約10年前に購入して、今も手元に残している『「学力」の経済学』

あれから約10年。
僕は結婚し、父親になりました。

最近、YouTubeのおすすめに中室先生の動画が流れてきて、
「そういえば、あの本まだ持ってたな」
と、久しぶりに『「学力」の経済学』のことを思い出しました。

親になった今読み返したら、何を感じるんだろう。
そう思って、約10年ぶりに読み返してみました。

今回は、本の中で特に印象に残った研究やデータを紹介しながら、父親になった今の僕が、それを実際の子育てにどう取り入れていきたいと思ったのかを書いてみます。


子どもをご褒美で釣ってもいいのか?

「テストで100点取ったら、欲しいもの買ってあげるよ」
「宿題が終わったら、お菓子食べていいよ」

子どもに何かを頑張ってもらうために、ご褒美を用意するのはよくあることだと思います。

一方で、
「ご褒美で子どもを釣るのって、教育としてどうなんだろう?」
と思う人もいるのではないでしょうか。

僕自身も、
「ご褒美が目的になって、ご褒美がないと何もしない子になってしまいそう…」
というイメージを持っていました。

しかし、『「学力」の経済学』では、必ずしも「ご褒美=悪いもの」とはされていません。
重要なのは、何に対してご褒美を与えるのかです。

本の中では、ハーバード大学のローランド・フライヤー教授らが行った実験が紹介されています。
94億円を使った大規模なものだったそうです。

「テストでよい点を取ればご褒美をあげます」
「本を1冊読んだらご褒美をあげます」
子どもの学力を上げる効果を持つのはどちらでしょうか。

中室牧子『「学力」の経済学』

前者はアウトプットに、後者はインプットにご褒美を与えて、その後の学力などアウトプットにどれくらい影響するのかを明らかにしようとする実験です。

直感的には、アウトプットにご褒美を与える方がうまくいきそうに思えます。
しかし、結果は逆でした。
学力テストの結果がよくなったのは、インプットにご褒美を与えられた子どもたちだったのです。

中室牧子『「学力」の経済学』

後のアンケート調査によると、アウトプットにご褒美を与えられた子どもたちは
「どうすればもっとご褒美がもらえるか?」
という問いに対してほぼ全員が
「テストの問題文をよく読む」
というようなテストで点を取るためのテクニックについての答えに終始していたそうです。

つまり、「良い点を取りたい」という気持ちはあっても、そのために普段どんな勉強をすればいいのかまでは分かっていなかったということです。

この研究結果を踏まえるなら、
「テストで100点を取ったら100円」
のように結果に対してご褒美を渡すより、

「毎日30分勉強した」
「本を1冊読んだ」
のように、本人が自分の意思で実行できる行動に対してご褒美を設定する方が良さそうです。

もちろん、何でもかんでもご褒美で釣るつもりはありません。
「何をご褒美にするか」だけではなく、
「何に対してご褒美を与えるのか」を考える。

これは、これから娘が勉強や習い事を始めていく中で、覚えておきたい考え方だと思いました。


ご褒美は「勉強の楽しさ」を奪うのか

前に書いた通り、僕は
「ご褒美がないと何もしない子になってしまいそう…」
というイメージを持っていました。

それについてもこの本では解説がされていました。

先ほどのフライヤー教授の実験後のアンケート調査の結果で、
ご褒美が子どもの「一生懸命勉強するのが楽しい」という気持ちを失わせてはいなかった
ということが分かったのです。

これを見て、少しほっとした自分がいました。
「将来、子どもが全然勉強してくれないような状況になっても、ご褒美作戦を使うのはアリなんだな…」
と。笑


「お金」はよいご褒美なのか

以前、子どものお小遣いについて調べた記事でも、「お手伝いをしたら○円」という報酬型について考えました。


『「学力」の経済学』では、そこについても言及されていました。
シカゴ大学の実験で、子どもへのご褒美としてお金の代わりに安いトロフィーを使った実験を行ったそうです。

小学生に対しては、400円のお金よりも、同額のトロフィーのほうが大きな効果があったことがわかっています。
(中略)
子どもが小さいうちは、トロフィーのように、子どものやる気を刺激するような、お金以外のご褒美を与えるのがよいでしょう。

一方、同じ実験の中で、中高生以上にはやはりトロフィーよりもお金が効果的だったこともわかっています。

中室牧子『「学力」の経済学』

娘はまだ3歳なので、今のところ「○○ができたら100円」のようなご褒美は必要なさそうです。

それよりも、何かを頑張れたときにシールを貼ったり、ちょっとしたお菓子を用意したり。
お金以外で本人が喜ぶものを使う。
そして、もう少し大きくなったらお金も選択肢の一つとして考える。

今のところは、そんな使い分けをしていこうと思っています。


子どもは褒めて育てるべきなのか

僕は「子どもはたくさん褒めた方がいい」と思っています。
娘がお絵描きして見せてくれたら
「おぉ、上手じゃん!」
と必ず褒めます。

心理学の研究では、自尊心が高い生徒は教員との関係が良好で学習意欲が高い傾向があるということが指摘されているようです。

これについて、『「学力」の経済学』の中で、ある研究が紹介されていました。

アメリカのカリフォルニア州でも「社会問題の多くは個人の自尊心が低いことに起因している」という考えから、州知事主導で自尊心に関する大規模な研究を行いました。

「子どもの自尊心を高めれば、学力が高まり、反社会的行為を未然に防げるのでは」と期待して。

しかし、この大規模な研究プロジェクトは思いもよらぬ結果に終わりました。
自尊心が高まれば、子どもたちを社会的なリスクから遠ざけることができるという有力な科学的根拠は、ほとんど示されなかったのです。
(中略)
自尊心と学力の関係はあくまで相関関係にすぎず、因果関係は逆である。
つまり学力が高いという「原因」が、自尊心が高いという「結果」をもたらしているのだと結論づけたのです。

中室牧子『「学力」の経済学』

自尊心が高いから、学力が高くなる。
ではなく、
学力が高いから、自尊心が高くなる。

これを知った時、結構衝撃的でした…。

また、バージニア連邦大学ではこのような実験を行ったようです。
成績の悪い生徒を2つのグループに分けて、毎週メールで別のメッセージを送ります。

片方は、宿題に関する連絡とともに「あなたはやればできる!」のような自尊心を高めるメッセージを送る。
もう片方は、自尊心を高めるメッセージは送らず、宿題に関する事務的な連絡や責任感の重要性を説くメッセージを送る。

その結果、自尊心を高めるメッセージを送ったグループの方が、期末テストの成績は悪かったそうです。

この研究は、悪い成績をとった学生に対して、自尊心を高めるような介入を行うと、根拠のない自信を持った人になってしまうことを示しています。

これらの結果から、
「じゃあ褒めるのも良いことばかりじゃないんだ…」
と僕は少し自分の価値観を否定された気持ちになりました。

ですが、中室先生は
「褒めてはいけないのではなく、褒め方が重要なんです」
と本の中で仰っていました。


「頭いいね」と「よく頑張ったね」どちらが効果的?

コロンビア大学の実験では、
「子どものもともとの能力(=頭の良さ)を褒めると、子どもたちは意欲を失い、成績が低下する」
ということが分かったそうです。

この実験では、子どもにIQテストを複数回受けさせ、テストの結果が良かったときに
「あなたは頭がいいね」と能力を褒めた子
「よく頑張ったね」と努力を褒めた子
テスト結果の推移を比べるという内容だったそうです。

能力を褒められた子は、良い成績を取れた理由を「自分には才能があるから」、悪い成績をとった理由も「自分には才能がないから」と考える傾向があったようです。

また、成績についてウソをつく傾向が高いことも分かったようです。

一方で、努力を褒められた子は悪い成績をとっても「(才能ではなく)努力が足りなかった」と考える傾向にあったようです。

この研究を見て、最初に僕が書いた娘への褒め方を思い出しました。
娘がお絵描きを見せてくれたとき、
「おぉ、上手じゃん!」
と褒めています。

もちろん、これから「上手だね」と言わないようにしよう、とは思いません。
でも、それだけで終わるのではなく、

「いつもお絵描きしてるから上手になってきたね」
「最後まで頑張って描いたね」

そんなふうに、結果だけではなく、そこまでの過程を見つけて褒めてあげられたらいいなと思いました。

…と、頭では分かっているのですが…。
こういうのって普段から意識していないと結構難しいですよね。

僕自身、「上手じゃん!」「すごいじゃん!」と反射的に言ってしまうので…笑

これからはもう少し「娘の努力」に目を向けて褒めてあげられるように意識したいと思います。


約10年ぶりに読み返して

今回、約10年ぶりに『「学力」の経済学』を読み返して、改めて面白い本だなと思いました。

経済学というと、景気や物価、お金の動きについて研究する学問というイメージがあります。
でも、この本で扱われている「教育経済学」は、経済学の理論や手法を使って教育について分析する分野です。

「ご褒美を与えると子どもの学力は上がるのか」
「褒めることは本当に子どものためになるのか」

といった教育に関する疑問を、研究やデータをもとに考えていきます。

今回紹介した自尊心と学力の話もそうでした。
「自尊心が高い子どもは、学力も高い」
というデータだけを見れば、
「じゃあ、自尊心を高めれば学力も上がるんだ」
と思ってしまいそうです。
でも、実際には因果関係が逆だった。

こういう話を読むと、子育てで当たり前のように言われていることに対して、
「それって本当にそうなの?」
と疑問を持つことも大切なんだなと思います。

もちろん、研究やデータだけを頼りに子育てをしようとは思いません。
子育ての最適解は子どもの数だけあると思っています。

それでも、自分の経験や感覚だけではなく、研究やデータも判断材料の一つにして、子どもとの向き合い方を考えていきたいです。


娘のイヤイヤ期についても、いろいろな方法を調べながら、僕なりに「どう向き合えばいいんだろう」と考えてきました。
その中でたどり着いた考え方を、こちらの記事に書いています。↓


10年前、本屋でなんとなく手に取った一冊。
まさか10年後に、自分の娘のことを考えながら読み返すことになるとは思っていませんでした。

あのとき、
「いつか自分に子どもができたら参考になるかもな…」
と思って本棚に残しておいて良かったです。

『「学力」の経済学』には、今回紹介した「ご褒美」や「褒め方」以外にも、親になった今だからこそ気になる研究がたくさん紹介されています。

そのあたりについては、また別の記事で書いてみようと思います。


今回紹介した『「学力」の経済学』はこちらです。
気になった方はぜひ読んでみてください。↓



子どもの教育について考えると、やっぱり気になるのが「教育費をどう準備するか」ということ。
わが家が学資保険について調べて、最終的に「入らない」と決めた理由はこちらの記事にまとめています。↓


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