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生成AIと著作権|AIが作ったものは、誰のものになるのか

    「有料プランで作った画像だから、商用利用は問題ないですよね」

    社内でこう聞かれて、答えに詰まったことはないでしょうか。
    問題ない気もするし、まずい気もする。
    どこを確かめればいいのかが分からない。

    この居心地の悪さには、理由があります。
    この質問には、性質のまったく違う3つの問いが混ざっているからです。

    そして、利用規約は、その3つのどれでもありません。
    規約を確かめることは出発点になりますが、答えにはなりません。

    先に、この記事でいちばん意外だったことを1つ書いておきます。
    AIに何十回も作り直させても、出てきた候補から1枚選んでも、それだけでは自社のものになりません。
    文化庁は、その2つを「影響しない」と整理しています。

    この記事は、文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」の概要資料、文化庁著作権課の「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」と令和6年度著作権セミナーの講義資料、知的財産戦略本部「知的財産推進計画2026」、およびC2PAの仕様解説文書をもとに、2026年9月11日時点の内容にしています。法律の解説ではなく、公表資料に何が書かれているかの整理です。個別の案件が適法かどうかは事情によって変わります。判断に迷う場面では、弁護士など専門家に相談してください。


    その質問には、3つの問いが混ざっている

    文化庁は、まず段階を分けている

    文化審議会の著作権分科会 法制度小委員会は、令和6年3月15日に「AIと著作権に関する考え方について」を取りまとめています。
    その概要資料の冒頭に、こう書かれています。

    「AI開発・学習段階」と「生成・利用段階」では、行われている著作物の利用行為が異なり、関係する著作権法の条文も異なります。そのため、両者は分けて考える必要があります。

    使われている条文が違う、と書かれています。
    だから、まとめて考えると答えが出ません。

    そして、もう1つの区別が続きます。

    また、AI生成物(AIが生成したコンテンツ)が「著作物」に当たるかという点も、別の問題として分けて考える必要があります。

    論点は3つです。

    • 学習に使われたかどうか(AI開発・学習段階、著作権法第30条の4等)

    • 作ったものが、誰かの権利を侵していないか(生成・利用段階)

    • 作ったものは、自社のものになるのか(AI生成物の著作物性)

    1つ目と2つ目は「他人の権利を侵していないか」の話です。
    3つ目は「自分の権利があるか」の話です。
    向きが逆なので、混ぜると必ず混乱します。

    なぜ、判例ではなく「考え方」なのか

    この文書が存在する理由も、概要資料に書かれています。

    著作権法の解釈は、本来、個別具体的な事案に応じて、司法により行われるべきものですが、現時点では、生成AIに関するものを含め、AIと著作権の関係を直接的に取り扱った判例や裁判例が未だ乏しい状態です。

    判例が乏しいので、待たずに考え方を示した、という位置づけです。
    裁判所の判断ではありません。
    そこは踏まえて読む必要があります。

    利用規約は、3つのどれでもない

    冒頭の質問に戻ります。
    「有料プランだから商用利用OK」という理解の根拠は、たいていサービスの利用規約です。

    チェックリスト&ガイダンスにも、利用規約についての記述があります。

    AIシステム・サービスにおいては、利用規約等の当該システム・サービスの利用上のルールにおいて、著作権侵害のおそれがある利用方法を禁止又は制限している場合があります(他人の著作物を入力することの禁止等)。あらかじめ、利用しようとするAIシステム・サービスの利用規約等を確認し、これに従って利用することが必要です。

    規約は、そのサービスの提供者と利用者のあいだの約束です。
    一方、第三者の著作権を侵害しているかどうかは、著作権法で決まります。
    相手が違います。

    規約で商用利用が認められていることは、出発点にはなっても、答えにはなりません。

    規約の側で何が条件になっているかは、別の記事で扱っています。
    無料プランで作った画像の持ち主と、会社の売上が条件に出てくる例をまとめています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n854a940f14f6


    1つ目:学習に使われたかどうか

    原則は、許諾がいらない

    AIの学習に著作物を使う段階は、著作権法第30条の4が受け持ちます。
    平成30年の著作権法改正で入った条文です。

    概要資料の説明はこうです。

    AI開発のような情報解析等において、著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用行為(非享受目的の利用行為)は、原則として著作権者の許諾なく行うことが可能とされています。

    ここでいう「享受」が何を指すのかも、書かれています。

    「享受」を目的とした行為とは、著作物の視聴等を通じて、視聴者等の知的・精神的欲求を満たすという効用を得ることに向けられた行為をいいます。

    文章なら閲読すること、音楽なら鑑賞すること。
    それを目的としていなければ、原則として許諾はいらない、という組み立てです。

    ここまでは、AIを作る側の話です。
    使う側の会社が、直接この判断をする場面は多くありません。

    ただし、社内のRAGは他人事ではない

    ところが、ここに1つ、実務に直接かかる記述があります。

    一部の検索拡張生成(RAG)等で用いるための、生成AIへの入力用データ(著作物)の収集

    これは「非享受目的」の要件を満たさない例として挙げられているものです。
    どういうRAGかも、脚注で限定されています。

    RAG等のうち「既存の著作物の創作的表現の全部又は一部を、生成AIを用いて出力させること」を目的としたもの。

    社内の文書をAIに読ませて答えさせる仕組みは、いま多くの会社が作っています。
    その中身が他社の資料やWebページの文章で、それをそのまま出させることが目的なら、第30条の4の話ではなくなります。

    もっとも、続きも書かれています。

    なお、法第30条の4が適用されない場合でも、RAG等による回答の生成に際して、既存の著作物を利用すること(及びRAG等のために行う準備行為として、既存の著作物を複製又は公衆送信すること)については、法第47条の5の要件を満たす限りで、同条の適用により、権利者の許諾なく可能となる場合があります。

    別の条文で救われる場合がある、ということです。
    いずれにせよ、「学習の話は自社に関係ない」とは言い切れません。

    作風はアイデア。ただし、そこで終わらない

    もう1つ、よく聞かれる論点があります。
    「◯◯風」という指定です。

    概要資料は、こう整理しています。

    著作権法は「創作的表現」を保護し、「アイデア」は保護しないため、「作風」が「アイデア」である場合、そのような「作風」が共通したとしても、著作権侵害とはなりません。

    ただし、そこで終わりではありません。

    特定のクリエイターの作品である少量の著作物のみからなる作品群は、「作風」(アイデアであるもの)が共通しているにとどまらず、創作的表現が共通する作品群となっている場合もある。

    特定の作家を狙い撃ちにした少量の学習は、作風の共通にとどまらないことがある、という指摘です。
    そして、その場合は生成・利用の側にも及びます。

    また、生成・利用段階についても、AI生成物に、上記のような「創作的表現が共通する作品群」の創作的表現が直接感得できる場合、当該生成物の生成及び利用は著作権侵害となり得ます。

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    2つ目:侵害になるのは、2つがそろったとき

    類似性と依拠性

    著作権侵害の要件は、生成AIでも変わりません。
    概要資料にはこうあります。

    著作権侵害となるための要件としては、既存の著作物との「類似性」と「依拠性」が必要です。

    似ていること(類似性)と、元のものに接して使ったこと(依拠性)。
    2つがそろって初めて侵害になります。

    たまたま似てしまっただけなら、依拠性がありません。
    元を見ながら作っても、表現として似ていなければ類似性がありません。

    依拠性は、2つの軸で決まる

    生成AIで難しいのは、依拠性のほうです。
    自分では何も見ていないつもりでも、AIが学習していた可能性があるからです。

    令和6年度のセミナー資料は、これを2つの軸の表にしています。
    縦が「AI利用者が既存の著作物を認識していたか」、横が「既存の著作物をAI学習に用いていたか」です。

    • 認識していた場合は、学習に用いていたかにかかわらず、依拠性あり

    • 認識していなかったが、学習に用いていた場合は、通常、依拠性ありと推認

    • 認識しておらず、学習にも用いていなかった場合は、依拠性なし

    ここで効いてくるのが、縦の軸です。
    どういう場合に「認識していた」といえるのかが、続けて挙げられています。

    Image to Image(画像を生成AIに指示として入力し、生成物として画像を得る行為)のように、既存の著作物そのものを入力する場合

    既存の著作物の題号(タイトル)などの特定の固有名詞を入力する場合

    参考画像を入れる。
    作品名やキャラクター名をプロンプトに書く。
    どちらも、この2つにそのまま当たります。

    チェックリスト&ガイダンスの側は、もう少し踏み込んだ書き方をしています。

    生成AIへの指示(プロンプト)として既存の著作物そのものを入力した場合や、既存の著作物の題号(タイトル)、キャラクター名などの特定の固有名詞を入力した場合は、AI利用者が既存の著作物を認識していたことを推認させる間接事実となり、依拠性が認められやすくなると考えられます。

    知らなかった、では通らない場合がある

    逆の方向も押さえておきます。

    生成AIの開発・学習段階で当該既存の著作物が学習されていた場合は、AI利用者が既存の著作物を認識していない場合でも、通常、依拠性があったと推認される

    さらに、権利者の側からの立証についても書かれています。

    生成物と類似する既存の著作物が学習データに含まれているか不明な場合でも、権利者としては「AI利用者が既存の著作物にアクセス可能であったこと」や「生成物に既存の著作物との高度な類似性があること」等を立証すれば、依拠性ありと推認させることができる

    高度に似ているという事実そのものが、依拠性を推認させる材料になり得る。
    つまり、実務でいちばん確実な防ぎ方は、依拠性を争うことではありません。
    似ていないものを出すことです。

    題材が同じなだけなら、侵害ではない

    安心してよい範囲も書いておきます。

    保護されるのは表現であって、アイデアではありません。
    「猫がパソコンを操作している絵」という発想が同じでも、それだけでは侵害になりません。

    確認すべきなのは、題材が同じかどうかではなく、表現として重なっているかどうかです。


    責任を負うのは、誰か

    原則は、生成した人と使った人

    下書きの段階では抜けていましたが、ここは会社にとって大事な論点です。

    セミナー資料に、こう書かれています。

    AI生成物による著作権侵害の責任は、原則として、物理的に生成AIを利用し生成を行った者(又はAI生成物を利用した者)が負うこととなりますが、一定の場合には、AI開発者やAI提供者が著作権侵害の責任を負うこともあります。

    原則は、操作した人と、それを使った人です。
    サービスを提供している会社ではありません。

    開発者や提供者が責任を負う可能性については、高める要素と低める要素が挙げられています。

    高める要素

    • 当該生成AIが侵害物を高頻度で生成

    • 当該生成AIが侵害物を生成する蓋然性が高いと認識しながら、侵害物生成を抑止する措置をとっていない

    低める要素

    • 侵害物生成を抑止する措置をとっている

    • 侵害物が生成されたが、原因は侵害物生成を意図したAI利用者のプロンプト入力等

    最後の1行が効きます。
    狙って侵害物を出させた場合、その責任は出させた側に寄る、という整理です。

    権利者が取り得る措置

    もし侵害だとされた場合、権利者は何を請求できるのか。
    セミナー資料には、差止請求として請求可能な措置が4つ挙げられています。

    著作権を侵害する新たな生成物の生成(複製)の差止め

    既に生成された、著作権を侵害するAI生成物の利用行為(公衆送信等)の差止め・生成物の廃棄

    (一定の場合)将来のAI開発に用いられるデータセットからの、侵害された既存の著作物の除去

    (一定の場合)侵害物の生成に用いられた生成AIによる新たな侵害の予防に必要な措置

    3つ目と4つ目は、出てしまったものを消す話ではありません。
    もう出さないようにする話です。

    なお、これは差止請求の話で、故意・過失を問いません。
    損害賠償は故意又は過失がある場合、刑事罰は故意がある場合とされています。


    作ることと、使うことは別

    生成が適法でも、公開まで適法とは限らない

    社内の検討用にAIで画像を何枚か作ってみた。
    悪くないので、そのまま会社のSNSに上げた。

    この2つは、著作権の上では別の行為として扱われます。
    概要資料にこうあります。

    また、「AIによる生成物の生成」が適法に行える場合でも、「生成物の利用」(SNSへのアップロード等)まで直ちに適法となるものではなく、場面ごとに適法性の判断が必要であるため、留意する必要があります。

    なぜ分かれるのかは、チェックリスト&ガイダンスに説明があります。

    生成AIによる生成自体は、個人が私的使用の目的で生成する場合(著作権法第30条第1項)や企業・団体等の内部において、権利者から許諾を得て利用することを前提に、検討の過程において生成する場合(同法第30条の3)は、これらの権利制限規定の範囲内であれば、権利者の許諾なく適法に行うことができます。これに対して、AI生成物の利用(インターネットでの配信、複製物の譲渡等)については、権利制限規定の範囲外となる場合が多いと考えられます。

    社内で検討のために作る段階と、外に出す段階では、当てはまる条文が違う。
    だから「試しに作ってみる」ところまでは通っても、その先で判断が変わることがあります。

    社内の会議資料に貼るのと、会社のSNSに上げるのは、別の行為です。


    チェックリストは8項目。まず効くのは2つ

    業務で使う側の8項目

    文化庁は、令和6年7月31日に「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」を公表しています。
    このうち、AIを業務で利用する側に向けた項目が8つあります。

    利用しようとする生成AIについての適切な情報確認

    著作権侵害に対する適切な予防措置及び対応の検討

    AIシステム・サービスへの著作物の入力が「非享受目的」の要件を満たすか確認

    生成物の生成と利用では著作権侵害の判断が異なり得ることに留意

    生成物の利用に先立って、既存の著作物と類似した生成物となっていないか確認

    関係するステークホルダーに対して、AIの利用について適切に説明

    生成に用いたプロンプト等、生成物の生成過程が確認可能な状態の確保に努める

    生成AIの仕組みや技術の概要等について、広く情報提供

    中小企業の実務でそのまま使えるのは、5番目と7番目だと思います。

    公開の前に、検索にかける

    5番目の本文には、こう書かれています。

    AI生成物については、その利用に先立って、まずは既存の著作物と類似していないかを確認することが必要です。

    利用に先立って、と書かれています。
    公開する前です。

    なぜ類似性が先なのかも、同じ項目に書かれています。
    侵害には類似性と依拠性の両方が必要で、類似性がなければ、依拠性の議論に入る必要がないからです。

    そして、確認の方法まで注記されています。

    インターネット検索(文章検索・画像検索)の活用など

    検索にかけてみる、というのは、こちらの思いつきではありません。
    原典に書かれている方法です。

    画像であれば画像検索、文章であれば特徴的な言い回しの検索。
    どちらも数分で終わります。
    「まったく確認していない」と「一応検索した」のあいだには、大きな差があります。

    プロンプトを残す理由は、2つある

    7番目は、生成に使ったプロンプトなどを残しておく、という項目です。
    この項目の本文には、理由が2つ書かれています。

    1つ目は、依拠性の説明です。

    AI生成物の利用に際しては、まずは既存の著作物と類似していないか確認することが重要ですが(3-1-5参照)、これに加えて、依拠性がないことを説明できるよう、生成に用いたプロンプト等、生成物の生成過程を確認可能な状態にしておくよう努めることが望まれます。

    2つ目は、自社のものだと説明するためです。

    また、AI生成物が「著作物」に該当するか(著作物性)は、生成に当たってAI利用者が有していた「創作意図」とAI利用者の「創作的寄与」の程度によって判断されることから、生成物の著作物性について関連するステークホルダーに対して説明する観点でも、生成に用いたプロンプト等を確認可能にしておくことが望まれます。

    守るときにも、主張するときにも、同じ記録が要る。
    だから、プロンプトを残す作業は二重に効きます。

    やることは単純です。

    • 生成に使ったプロンプトを、成果物と一緒に保存する

    • 参考画像を入力した場合は、その画像も保存する

    • どのサービスの、いつの生成かを控える

    テキストファイル1つで足ります。
    ただし、保存先と、誰が保存するかまで決めておかないと、忙しいときに飛びます。

    取引に使うなら、説明が要る

    もう1つ、外注や納品に関わる項目があります。
    6番目の本文です。

    AI生成物をライセンス契約等の取引の対象とする場合、当該AI生成物が著作物であるかどうかが取引の重要な要素となる場合も想定されます。あるAI生成物について、これが著作物であることを前提にライセンス契約等の取引の対象とする場合には、関係するステークホルダーに対して、AIを利用したAI生成物であることや、その著作物性等について、適切に説明することが求められます。

    発注する側から見れば、逆になります。
    納品されたデザインやイラストが、AIで作られたものかどうか。
    作られたとして、それに著作権があるのか。

    ここを確かめずに受け取ると、あとで「独占的に使えると思っていた」という話になり得ます。

    この確認を社内の手順にするときのひな形を、別の記事で配っています。
    条文と、AIで作ったものを外に出す前の判断フローをまとめています。


    3つ目:それは、自社のものになるのか

    AIが自律的に生成したものは、著作物ではない

    ここから向きが変わります。
    自社がAIで作ったものに、著作権はあるのか。

    概要資料の答えは、はっきりしています。

    AIが自律的に生成したものは、「思想又は感情を創作的に表現したもの」ではなく、著作物に該当しないと考えられます。

    「自律的に生成した」が何を指すのかも、セミナー資料に例が挙げられています。

    AI利用者がプロンプト等の指示を何ら与えず(完全なランダムで)AIに生成させた

    AI利用者がごく簡単な指示(「猫の画像を生成して」等)のみ与えてAIに生成させた

    ごく簡単な指示だけで出させたものは、ここに入ります。
    思い当たる使い方ではないでしょうか。

    では、人が関わればどうなるか。

    人がAIを「道具」として使用したといえるか否かは、人の「創作意図」があるか、及び、人が「創作的寄与」と認められる行為を行ったか、によって判断されます。

    創作意図のほうは、多くの場合そこにあります。
    何かを作ろうと思って操作しているからです。
    セミナー資料も「自らの個性の表れとみられる何らかの表現を有する結果物を作る」という程度の意図があれば足りる、としています。

    問題は、創作的寄与のほうです。

    回数を増やしても、選んだだけでも、寄与にはならない

    ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。

    セミナー資料は、創作的寄与の判断要素を3つ挙げたうえで、それぞれについて「プラスに働く」ものと「影響しない」ものを分けています。

    指示・入力の分量

    • 創作的表現といえるものを具体的に示す詳細な指示は、プラスに働く

    • 単に長大なだけで、創作的表現に至らない指示、アイデアを示すにとどまる指示は、影響しない

    生成の試行回数

    • 単に試行回数が多いことは、影響しない

    • 生成物を確認し指示・入力を修正しつつ試行を繰り返すことは、プラスに働く

    複数の生成物からの選択

    • 単なる選択行為自体は、影響しない

    • 通常創作性があると考えられる行為であっても、その要素として選択行為があるものもあることから、こうした行為との関係は、考慮が必要

    長いプロンプトを書けばよい、ではありません。
    たくさん回せばよい、でもありません。
    たくさん出た中から選べばよい、でもありません。

    効くのは、出てきたものを見て、指示を直して、また出させるという往復です。
    そこにしか、人の判断が現れないからです。

    そして、いちばん確実なのは手を入れることです。

    また、人間が、AI生成物に「創作的表現といえるような加筆・修正」を加えた場合は、通常、その加筆・修正が加えられた部分については、著作物性が認められます。

    ただし、線が引かれているわけではありません。
    何回試せばよい、といった基準はありません。
    判断される要素が示されているだけです。

    AI生成物の著作物性は、個々のAI生成物について、個別具体的な事情に応じて判断されます。

    自社のものかどうかと、侵害かどうかは別

    もう1つ、混ざりやすい点があります。

    なお、「AI生成物が著作物となるか」という問題と、「AIによる生成物の生成、又は生成物の利用が既存の著作物の著作権侵害となるか」という問題はそれぞれ別個の問題です。AI生成物が著作物となる場合でも、既存の著作物との類似性及び依拠性が認められる場合、当該生成物の生成や利用といった行為は、既存の著作物の著作権侵害となり得ます。

    自社のものだと認められることと、他人の権利を侵していないことは、別々に判断されます。
    両方に引っかかることも、両方から外れることもあります。

    著作権がないと、何が起きるか

    ここからは、こちらの整理として書きます。

    自社がAIで作ったロゴやイラストに著作権がない場合、他社が同じものを使っても、著作権を根拠に止めることはできません。
    「うちが作ったものだ」という感覚と、法的に守られているかどうかは別です。

    会社のロゴのように、長く使い、他社に真似されたくないものほど、この点は効いてきます。
    手を入れる工程を残しておくか、最初から人が描くか。
    そこは、そのものをどれだけ守りたいかで決まります。


    制度の側は、いま動いている

    「考え方」は、まだ令和6年3月のもの

    2026年9月時点でも、著作権の側の土台は令和6年3月15日の「AIと著作権に関する考え方について」のままです。
    2026年6月12日に決定された「知的財産推進計画2026」も、これを前提に書いています。

    検討結果は、「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月)及び「AI時代の知的財産権検討会中間とりまとめ」(2024年5月)(以下「中間とりまとめ」という。)として、それぞれ公表されている。

    つまり、この記事で見てきた枠組みは、当面は動きません。

    動いているのは、その周りです

    一方で、周辺は変わっています。

    2025年5月に成立した「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」、いわゆるAI法が、同年9月に全面施行されました。
    内閣に人工知能戦略本部が置かれています。

    そのAI法を受けて、新しい枠組みが検討されていることも、知的財産推進計画2026に書かれています。

    内閣府知的財産戦略推進事務局では、AI法の基本理念やAI基本計画において適切な知的財産の保護と利活用につながる透明性の確保を図るとされていることを踏まえ、生成AI事業者が行うべき透明性の確保や知的財産権保護のための措置の原則を定め、もって生成AI技術の進歩の促進と知的財産権の適切な保護の両立に向け、権利者や利用者にとって安全・安心な利用環境を確保することを目的として、「生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル・コード」(仮称)の策定に向けた検討を進めている。

    名前はまだ仮称です。
    対象は生成AI事業者ですが、使う側の前提も変わり得ます。

    総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン」も、2026年3月31日に第1.2版になりました。
    チェックリスト&ガイダンスが参照しているのは、それより前の版の頁番号です。
    両方を突き合わせるときは、版に気をつけてください。

    権利者と事業者が、同じ部屋にいる

    もう1つ、あまり知られていない取組があります。

    文化庁と経済産業省は、2024年に「AIと著作権に関する関係者ネットワーク」を発足させています。
    令和7年5月30日時点の参加団体・企業の一覧を見ると、出版・新聞・放送・音楽・アニメ・漫画の団体と、AI開発企業やプラットフォーム事業者が並んでいます。
    note株式会社も入っています。

    総括資料に載っている参加者の感想には、こういうものがあります。

    これまで行われてきた海賊版への対応やその限界、権利者側の懸念等について知ることができ、有意義だった。

    ライセンスについて、小規模で試せる仕組みがあれば、データの提供者と利用者の間のコミュニケーションにも繋がる。

    対立の構図で語られがちな分野ですが、実際には同じ部屋で話す場ができています。


    作られ方を記録する、という別の道具

    Content Credentials

    最後に、法律とは別の方向からの動きを紹介します。
    Content Credentials という仕組みです。
    C2PAという団体が仕様を作っています。

    何を記録するのかは、仕様の解説文書に書かれています。

    contain one or more assertions, which are statements about the asset, such as its origin (i.e., when and where it was created), modifications (i.e., what happened using what tools) and use of AI

    そのファイルについての記述を含む。
    いつどこで作られたかという出所、どの道具で何をしたかという編集の履歴、そしてAIの使用。
    作られ方の履歴を、ファイル自身に持たせる仕組みです。

    広報や制作の担当者にとっては、受け取った素材がどう作られたのかを確かめる手がかりになります。

    ただし、来歴は「内容が正しい」の保証ではない

    誤解しやすい点が2つあります。
    仕様の解説文書は、どちらもはっきり書いています。

    provenance information alone cannot tell you whether the digital content is true, accurate or factual

    来歴情報だけでは、その内容が真実か、正確か、事実かは分からない。
    記録されているのは作られ方であって、中身の正しさではありません。

    もう1つ。

    Adding provenance to an asset is optional, and it is not the intention of the specification and guidance to create a two-tier media ecosystem where assets without Content Credentials are universally less trusted

    来歴を付けるのは任意であり、来歴のない素材が一律に信頼されない二層構造の情報環境を作ることは、仕様や指針の意図ではない。

    来歴情報がないから偽物だ、とは言えません。
    古い写真にも、個人が撮った写真にも、来歴は付いていないからです。

    使えるのは「付いていた場合に、その内容を手がかりにできる」という一方向だけです。


    まとめ

    • 「有料プランだから商用利用OK」という質問には、3つの問いが混ざっている。学習段階、生成・利用段階、そしてAI生成物の著作物性。文化庁は最初にこれを分けている

    • 利用規約はサービス提供者との約束であって、第三者の著作権を侵していないかの答えにはならない

    • 学習段階は原則として許諾不要だが、既存の著作物の創作的表現を出させることを目的としたRAGは、その原則から外れる場合がある

    • 侵害になるのは類似性と依拠性がそろったとき。参考画像の入力と、作品名やキャラクター名の入力は、「認識していた」と推認させる間接事実になる

    • 責任は、原則として生成した者と使った者が負う。狙って侵害物を出させた場合は、出させた側に寄る

    • 生成が適法でも、公開まで適法とは限らない。公開の前に検索で類似を確かめることは、文化庁の資料に方法として書かれている

    • プロンプトを残す理由は2つ。依拠性がないことの説明と、自社のものだという説明

    • AIが自律的に生成したものは著作物に該当しない。試行回数が多いだけ、選んだだけでは創作的寄与にならず、効くのは確認と修正の往復、そして加筆・修正である

    最後に1つ。
    この分野は、いま動いている最中です。
    著作権の枠組みは当面変わらないと思いますが、その周りは変わっています。
    実際に判断が必要な場面では、そのときの公式資料と、専門家の意見を確かめてください。

    皆さんの会社では、AIで作ったものが、いま何枚くらい社外に出ているでしょうか。
    そして、そのうち何枚のプロンプトが残っているでしょうか。


    参考・引用元

    文化庁・文化審議会

    政府方針

    来歴情報


    実務で使う書式について

    この連載の内容を、社内でそのまま使える書式にまとめたものを、別のマガジンで公開しています。
    規程のひな形、対応フロー、チェックシート、報告書式などです。

    実務で使う書式・キット
    https://note.com/yunta_fukurou/m/mfc25857fab40


    関連する記事

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    シャドーAIと、プランによって入力データの扱いが変わる話をまとめています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n0b6b85bdcbb4

    社内でAIをどこまで自動で動かすかは、こちらで扱っています。
    権限・ログ・人の承認をどう設計するかをまとめています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n978314daa5f4

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    Claude Code と Claude Cowork を例に、公式文書の記述をまとめています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n34dd5837f66f

    使うモデルをどう選ぶかは、別の記事で扱っています。
    モデルとエフォートの違いと、既定のままでよい場面をまとめています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n8db05af9df9a

    AIで動画を作るときの費用と保存は、別の記事で扱っています。
    1回で作れるのが8秒であることと、作った動画が2日で消える仕様をまとめています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/nba062653664e

    規約そのものにも、無料か有料か、会社の規模、何に使うか、誰の契約か、の4か所に条件が置かれています。
    各社の原文から読む形で、別の記事で扱っています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n854a940f14f6

     
     
    Digital Workplace Architect|社内外のIT・AIの導入と運用 IT・AI・セキュリティと周辺機器の「今さら聞けない」を一次情報で解説。書式・キットも。 Amazonのアソシエイトとして、梟 〜GLEANINGS〜は適格販売により収入を得ています。

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