メインコンテンツへスキップ
見出し画像

無料で作ったAI画像は自分のものとは限らない|規約の4か所と1年もたない手順書

    チラシに使う絵を、AIで作ってみることになりました。
    無料で試せるサービスがいくつもあります。

    担当者が触ってみると、思ったより見られるものができました。
    これを刷って配ろう、という話になります。

    ここで止まるところがあります。
    AI画像は、作れることと、仕事に使ってよいことが別だからです。
    そして、その線は各社の規約に書いてあります。

    この記事では、無料で試した絵をそのまま仕事に使う前に、規約のどこを見るかを扱います。
    どのサービスがよいか、という話ではありません。

    先に、調べていていちばん意外だったことを2つ書いておきます。

    1つ目は、無料プランで作った画像の持ち主が、自分ではないと書いてあるサービスがあることです。
    しかも、その画像は公開のギャラリーに出ます。
    新商品の絵を試したら、それが人目に触れます。

    2つ目は、同じ絵が他の人にも出ることがある、と規約に書いてあるサービスがあることです。
    自分だけのものにはならない、と先に書いてあります。

    この記事は、Recraft、Midjourney、Canva、Microsoft、OpenAI、Googleが公開している規約と案内をもとに、2026年9月時点の内容にしています。英語の規約については、書かれている内容を読んだうえで日本語で書き直しています。条件は変わります。使う前に、そのときの原文を見てください。


    「商用利用できます」の一言で済む規約は、ほとんどない

    条件が置かれるのは4か所

    各社の規約を読み比べると、条件が置かれている場所が4種類に分かれます。

    • 1つ目、無料か有料か

    • 2つ目、会社の規模

    • 3つ目、何に使うか

    • 4つ目、個人向けの契約か、法人向けの契約か

    「商用利用できます」と一言で書かれている例は、ほとんどありません。
    この4つのどこかに条件が付いています。

    以下、実際の規約から1つずつ見ます。
    挙げるのは例であって、推薦ではありません。


    1つ目、無料か有料かで、画像の持ち主が変わる

    無料で作ったものは、サービス側のもの

    Recraftという画像生成サービスの料金ページを見ます。
    公式は、無料プランで作った画像はRecraftが所有し、公開のコミュニティギャラリーに表示され、商用利用の許諾はしていないと説明しています。

    続きもあります。
    所有の証明を求める素材販売の場には、通常は出せない、とされています。

    所有していないのだから出せない、という筋です。
    試作のつもりで新商品の絵を作ると、その絵が人目に触れる、ということでもあります。

    有料プランは、別に書かれている

    同じページに、有料プランについての記述があります。
    公式は、契約している間に作ったすべての画像について、所有権と商用の権利が利用者に与えられると説明しています。

    その画像は非公開のままで、コミュニティギャラリーには出ないとされています。
    解約したあとも、所有権と商用の権利は残る、と書かれています。

    ここまでを実務の言葉に直すと、こうなります。
    無料で試した1枚は、そのまま使えません。
    契約してから、作り直すことになります。

    同じ絵柄が出るとは限らないので、試作は試作として割り切る前提で触ることになります。


    2つ目、会社の売上が、規約に出てくる

    規約に自社の売上が出てくる、と言われてもぴんと来ないかもしれません。
    実際に書かれています。

    Midjourneyの商用利用の案内を見ます。
    公式は、年間の売上が100万米ドルを超える事業に属している人が、会社のために画像を商用で使う場合は、上位の2つのプランのいずれかが必要だと説明しています。

    100万米ドルは、日本円でおよそ1億数千万円です。
    中小企業でも、この線を超えている会社は珍しくありません。
    担当者が個人的に契約した安いプランでは足りない、という話になります。

    同じページには、原則も書かれています。
    公式は、作った画像も動画も利用者のものであり、契約をやめてもそれは変わらないと説明しています。

    ただし、上の規模の条件が付きます。
    例外も挙げられています。

    公式は、他の利用者が作った画像を高解像度化した場合、その画像は元の作者のものであって、高解像度化した人のものにはならないと説明しています。
    その画像は作者のギャラリーに出るので、使うには許可が要る、とも書かれています。

    社外の人が作った絵を見つけて手を加える、という使い方はできない、ということです。

    そして、同じページに、著作権の問題については案内できない、という一文があります。
    規約を読んでも、著作権法の判断までは出てきません。
    ここは別の記事で扱っています。
    規約で商用利用が認められていることは、出発点にはなっても、答えにはなりません。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n627054c224ee


    3つ目、何に使うかで、同じ絵でも可否が変わる

    作ったものを何に使うか、で条件が変わることもあります。

    Canvaのコンテンツライセンスの禁止事項を見ます。
    公式は、素材を商標、意匠、商号、事業名、サービスマークの一部として使うことを禁じています。
    フォントは除く、と付いています。

    ここが実務で効いてきます。
    チラシに1回使うのと、その絵を会社のロゴにするのとでは、話が違います。
    ロゴは商標です。

    同じ禁止事項に、販促品についての項もあります。
    公式は、素材を単体で、絵はがき、マグカップ、Tシャツ、ポスターといった受注生産品の販売や配布を行う場に置いたり表示したりすることを禁じています。

    販促品を作る予定があるなら、ここを先に読むことになります。
    記念品にAIの絵を刷る、という企画は、この項に当たる可能性があります。


    4つ目、契約の相手が誰か

    最後が、いちばん見落とされます。
    契約しているのが会社なのか、個人なのか、です。

    同じサービスでも、アカウントの種類で変わる

    Canvaの同じ規約に、教育向けアカウントについての節があります。
    公式は、教育向けの利用者は、上位の素材を教育目的かつ非商用でしか使えないと説明しています。

    そして、商用の制作物を作りたい場合は、別のアカウントを作って、そちらで作るようにと書かれています。

    同じサービス、同じ素材でも、どのアカウントで作ったかで扱いが変わる、という例です。
    学校向けや団体向けの割引で入っている場合は、そこを先に見るところです。

    個人向けの規約は、法人向けとは別にある

    Microsoft Copilotの個人向け利用規約を見ます。
    このページは2026年8月18日発効と表示されています。

    公式は、Copilotは自分自身の個人的な利用に限る、と書いています。

    ただし、この一文は「誰が使ってよいか」を書いた節の末尾にあり、直前はボットや自動収集での接続を禁じる文です。
    作ったものの商用利用を直接禁じた条文ではありません。
    それでも、社員が個人の契約で業務をしている状態が、この規約の前提と合っているかは、別に確かめることになります。
    法人向けには別の契約と別の規約があります。

    同じ絵が、他の人にも出ることがある

    同じ個人向け規約に、見落とされやすい記述があります。

    まず、用語の定義です。
    公式は、利用者のコンテンツを、Copilotとの会話に含まれる指示と応答の両方だと定義しています。
    生成された画像は、応答の側に入ります。

    そのうえで、Microsoftは利用者のコンテンツを所有しないが、Copilotの運用と改善のために使うことがある、と書かれています。
    複製、配布、公開表示、編集、翻訳などの許諾を与えることになる旨と、その権利を業務委託先にも渡せる旨も続きます。

    そして、同じ、または似た応答や生成物が、Microsoftや他の人にも出ることがある、と書かれています。

    自社の広告の主役にした絵が、他社の広告にも出る可能性がある、ということになります。
    これは性能の問題ではなく、規約に書いてある前提です。


    規約を読む順番

    長い規約を全部読む必要はありません。
    この4つを、この順で探します。

    1. いま使っているのは無料か有料か。無料なら、所有と公開の扱いを探す

    2. 会社の売上が条件に出ていないか。金額が書かれていれば、自社と比べる

    3. 何に使うか。ロゴ、商号、販促品は別扱いになっていることが多い

    4. 誰の契約か。個人向けと法人向けで、規約そのものが別のことがある

    この4つを確かめた記録を残しておくと、次の担当者が読み直さずに済みます。
    サービス名、プラン名、確かめた日付、規約のURL。
    4行で足ります。

    使ってよいかが決まったら、次は、その画像が刷れるかどうかです。
    A4に必要なピクセル数と、文字を画像の中に描かせない理由を、別の記事で扱っています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n6348e4464032


    手順書に、サービス名とモデル名を書かない

    ここからは、決めたあとの話です。

    去年、AIで画像を作る社内の手順書を作ったとします。
    サービス名、モデルの名前、設定の値まで書いてあります。

    今年、新しい担当者がそのとおりにやろうとすると、書かれているモデルの名前が選択肢にありません。

    置き換え先として案内されたモデルが、もう廃止される側にいる

    OpenAIが公開している廃止の一覧を見ます。
    公式は、DALL・Eという名前のモデルについて、2025年11月14日に廃止を通知し、2026年5月12日にAPIから削除したと書いています。

    同じ一覧の表には、その置き換え先として3つのモデル名が挙げられています。
    その1つが gpt-image-1-mini です。

    そして、同じページの別の項に、古いGPT Imageのモデルについて、2026年6月2日に廃止を通知し、同年12月1日にAPIから削除する、と書かれています。
    この項の表に並んでいるモデルの1つが、gpt-image-1-mini です。

    2025年11月に「こちらへ移ってください」と案内されたモデルが、2026年6月には「廃止します」と案内される側にいます。
    同じ1ページの中で読み取れます。

    Googleの側にも同じ動きがあります。
    画像生成の資料では、初期のモデルについて、こう書かれています。

    品質の向上、生成速度の向上、API 料金の引き下げを実現する Nano Banana 2 Lite への移行を強くおすすめします。

    今すぐ止まるわけではありませんが、移るように勧められている状態です。

    1年でこれだけ動きます。
    名前を書いた手順書は、1年もたないことがあります。

    同じ指示でも、同じ絵は出ない

    もう1つ、実務で困ることがあります。
    モデルが変わると、同じ指示を出しても同じ絵柄は出ません。

    去年作ったシリーズ広告の続きを、今年も同じ調子で作りたい。
    そう思っても、同じものにはなりません。
    近いものは出ますが、並べると違いが分かります。

    だから、こうなります。
    シリーズものは、まとめて作ります。
    あとから足す前提で計画しません。

    続きを作る必要があるなら、参考にする画像を手元に残しておきます。
    多くのサービスには、参考の画像を渡して作風を寄せる機能があります。
    元の絵が手元にあれば、それが使えます。

    作った場所は、置き場所ではありません。
    できたその日に、自社の保存先へ落とします。
    これは動画のときと同じ話で、別の記事で扱っています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/nba062653664e

    手順書は工程で書く

    ここが結論です。
    手順書に、サービス名とモデル名を書きません。
    書くのは、工程です。

    1. 何を作るか決める。出力先と必要な大きさを書く

    2. 背景をAIで作る。文字を置く余白を空ける

    3. できたものを自社の保存先に落とす

    4. 文字を載せる

    5. 試し刷りをして色を見る

    6. 台帳に記録する

    この6つは、サービスが変わっても変わりません。

    使うサービス名とモデル名は、別紙の一覧に逃がします。
    一覧だけを年に1回見直せば済みます。
    手順書の本文を書き直す必要がなくなります。

    台帳に書くのは、作った日、使ったサービスとモデル、出力した大きさ、どこで使ったか、元ファイルの置き場所。
    5つで足ります。


    まとめ

    • 「商用利用できます」の一言で済む規約はほとんど無い。条件は、無料か有料か、会社の規模、何に使うか、誰の契約か、の4か所に置かれている

    • 無料プランで作った画像はサービス側が所有し、公開のギャラリーに表示され、商用利用の許諾はされない、と書いている例がある。試した1枚はそのまま使えない

    • 有料プランでは所有権と商用の権利が利用者に移り、解約後もそれは変わらない、と書いている例がある

    • 年間売上が100万米ドルを超える事業に属する場合、上位プランでなければ会社のために商用利用できない、と書いている例がある

    • 他の人が作った画像を高解像度化しても、それは元の作者のものだ、と書いている例がある

    • 素材を商標や商号の一部として使うこと、受注生産品を売る場に単体で置くことを禁じている例がある。チラシに使うのとロゴにするのは別である

    • 教育向けアカウントでは商用の制作ができず、商用なら別のアカウントを作れ、と書いている例がある

    • 個人向けの規約に、自分自身の個人的な利用に限る、と書かれている例がある。ただしこれは利用者の範囲を書いた節にある文で、商用利用を直接禁じた条文ではない

    • 同じ、または似た生成物が他の人にも出ることがある、と書いている例がある。自分だけのものにはならない

    • 画像生成のモデルは短い周期で入れ替わる。2025年11月に置き換え先として案内されたモデルが、2026年6月には廃止される側に並んでいる

    • 手順書には工程だけを書き、サービス名とモデル名は別紙の一覧に逃がす

    皆さんの会社でAIが作った画像は、誰の名義の、どのプランで作られたものでしょうか。


    参考・引用元

    一次資料(各社の公開している規約・案内)
    2026年9月18日にブラウザで開いて照合しています。

    英語の規約は、原文を訳して並べたものではありません。
    書かれている内容を読んだうえで、日本語で書き直しています。
    原文の言い回しを確かめたい方は、上のページを開いてください。

    日本語で公開されている資料からの引用は、原文のままです。


    実務で使う書式について

    この連載の内容を、社内でそのまま使える書式にまとめたものを、別のマガジンで公開しています。規程のひな形、対応フロー、チェックシート、報告書式などです。

    実務で使う書式・キット
    https://note.com/yunta_fukurou/m/mfc25857fab40


    関連する記事

    規約で商用利用が認められていても、著作権の話は別に決まります。
    類似性と依拠性、責任を負うのは誰か、をまとめています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n627054c224ee

    社員が個人の契約で業務にAIを使っている状態は、別の記事で扱っています。
    シャドーAIと、入力した情報の行き先をまとめています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n0b6b85bdcbb4

    AIに何をどこまで任せるか、権限とログと人の承認の設計は、こちらで扱っています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n978314daa5f4

    作ったものの置き場所と費用の話は、動画の側で扱っています。
    8秒という単位と、2日で消える保存をまとめています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/nba062653664e

    出てきた画像そのものが使えるかどうかは、別の記事で扱っています。
    A4に必要なピクセル数と、AIが文字を絵として描いていることをまとめています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n6348e4464032

    AIで作ったものを会社で使うときの、設定の側の話は別の記事で扱っています。
    プランごとの既定の状態と、記録に空いている穴をまとめています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n898fe82f83b5

     
     
    Digital Workplace Architect|社内外のIT・AIの導入と運用 IT・AI・セキュリティと周辺機器の「今さら聞けない」を一次情報で解説。書式・キットも。 Amazonのアソシエイトとして、梟 〜GLEANINGS〜は適格販売により収入を得ています。

    あなたへのおすすめ