
中国自動車市場、秋商戦で販売現場に異変――売れ筋車は供給不足、在庫車は売れず、5ブランドの販売員が証言
[メンバーシップ限定]中国自動車市場で、例年9~10月に訪れる秋の販売繁忙期「金九銀十」が大きく変化している。2026年9月の乗用車国内小売販売は前年同月比28.0%減の161万8,000台となり、10月も前年を大幅に下回る状況が続いている。
しかし、販売現場で起きている問題は、単純な需要減少だけではない。
中国の自動車販売業界コミュニティ「車fans」が、BYD、華為(Huawei=ファーウェイ)鴻蒙智行(HIMA)、理想汽車(Li Auto)、BMW、小鵬(XPENG)の5ブランドで働く販売員に聞き取り調査を行ったところ、売れ筋車種の供給不足、販売が振るわない車種の在庫、新型車待ち、購入補助金の不確実性など、複数の問題が浮かび上がった。
2026年10月26日発表のレポートによる。なかでも特徴的なのは、販売店に顧客が来ても、希望する車種を販売できないという現象である。
人気車種には注文が集まる一方、在庫のある車種には関心が向かない。値引きを拡大しても販売につながるとは限らず、販売員は需要と供給の不一致に直面している。
9月の乗用車小売28%減、10月も前年割れ続く
中国汽車流通協会の乗用車市場情報聯席分会によると、2026年9月の中国国内乗用車小売販売は161万8,000台で、前年同月比28.0%減少した。
前月比では5.0%増加したものの、例年のような秋の販売拡大には至らなかった。
内訳を見ると、ガソリン車などの従来型燃料車は53万4,000台で前年同月比43%減、NEVは108万4,000台で同16.7%減となった。
NEVの小売浸透率は67.0%に達しているが、これはNEVの販売台数が増加したことを意味しない。従来型燃料車の落ち込みがさらに大きかったため、NEVの構成比が上昇した側面がある。
10月も低調な状況が続いている。
同協会が公表した10月1~18日の乗用車国内小売販売は78万9,000台で、前年同期比26%減少した。
同期間のNEV小売販売は52万台で、前年同期比13%減である。
一方、メーカーから販売店などへの卸売販売では、NEVが65万5,000台と前年同期比5%増加している。
つまり、NEVについては国内小売が減少する一方、メーカー卸売は増加しており、両者の動きが一致していない。
ただし、卸売には輸出向けなども含まれるため、この差をそのまま国内販売店の在庫増加と解釈することはできない。
販売店の約88%が「秋商戦は例年より弱い、または消失」と回答
販売現場の厳しさは、中国汽車流通協会による経営状況調査にも表れている。
9月の自動車販売店在庫警戒指数は63.2%となり、前年同月を8.7ポイント上回った。
同協会が販売店に秋商戦の状況を尋ねたところ、54.2%が例年より明らかに弱いと回答した。さらに33.7%は、従来のような秋商戦の効果がほぼ消失したと回答している。
両者を合わせると87.9%に達する。
一方、例年より好調と回答した販売店は3.6%にとどまった。
こうした調査結果は、今回の車fansによる販売員インタビューが、単なる一部店舗の不満ではなく、市場全体で進む販売環境の変化を反映している可能性を示している。
ただし、車fansの聞き取り対象は5ブランドの各1人であり、ブランド全体や全国の販売店を代表する調査ではない。
以下では、個々の販売員の証言として整理する。

BYD、旧型車には在庫、新型の大型車は供給不足
BYDの販売員は、9月20日ごろまでは販売状況が比較的良好だったものの、その後は来店客が目立って減少したと説明している。
国慶節の連休中には一時的な回復があったが、期待したほどではなく、連休終了後は再び低調になったという。
販売員は今年の状況を、従来の「金九銀十」ではなく、さらに厳しい「銅九鉄十」と表現している。
顧客が最も重視するのは最終的な購入価格である。
国や地方政府の購入補助金、車両の値引き、付属品、メンテナンスサービスなどを合計し、実際にいくらで購入できるかを細かく比較するという。
一方、BYDの値引きについては、以前ほど積極的ではなくなったとの見方を示した。
在庫車や一部の販売が振るわない車種では値引きがあるものの、新型車の割引は限定的だという。
供給面では、旧型シーガルやシール05などに一定の在庫がある一方、シール08やシーライオン08などの大型車は品薄と説明している。
特にシール08の供給が厳しく、希望する顧客にすぐ車両を渡せない状況があるという。
このため販売店では、在庫車や比較的販売しやすい旧型車を積極的に勧めている。
しかし、人気車種を希望する顧客が、必ずしも別の車種に変更するとは限らない。
BYDの販売現場では、需要減少と商品別の供給不足が同時に発生している。

鴻蒙智行、L3への期待が購入判断を左右
鴻蒙智行の販売員は、以前担当していた問界(AITO)ブランドと比べ、現在の販売現場では顧客との接点が減少していると説明している。
店舗の販売台数も最近は落ち込んでいるという。
ただし、この証言には担当ブランドや店舗が変わった影響も含まれるため、鴻蒙智行全体の来店客数が同じ割合で減少したことを意味しない。
今回の証言で特に重要なのは、顧客が自動運転レベル3(L3)に強い関心を示していることである。
販売員によると、顧客は単にL3対応を想定した車両構造を備えているかどうかではなく、現在購入する車両が、将来L3機能の利用を認められた際に、そのまま機能を使用できるのかを確認している。
これはAI Vehicle(AIV=AI自動車)の普及に伴う、新しい購入判断の特徴である。
従来は車両の装備や性能が購入時点で評価されていたが、現在は将来のソフトウェア更新や自動運転機能の提供可能性も購入判断に影響する。
一方、販売員によると、鴻蒙智行では10月8日以降、購入時の優遇措置が縮小された。車種によって5,000~1万元程度、値引きや優遇額が減少したという。
尚界(SAIC)H5についても、国慶節期間中には1万元程度だった優遇額が5,000元程度になったと説明している。
このため、購入を検討していた顧客が再び様子見に転じるケースもあるという。
供給面では、享界(STELATO)G9の納車待ちが約10週間に延びている一方、ほかの車種には比較的余裕があるとしている。
鴻蒙智行でも、人気車種とそれ以外の車種で供給状況に差が生じている。