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李想「脱CATLではない」――理想が初めて語った「自社開発」の思想、Apple・TSMC型を自動車へ

    [無料]理想汽車(Li Auto)の李想CEOが2026年9月28日、自社開発とサプライヤーの関係について長文を公開した。

    理想はこの9月、セルを自社開発し、欣旺達(Sunwoda)と中創新航(CALB)へ製造委託する新しい電池体制を相次いで明らかにした。PACKは自社で開発・製造し、BMS、熱管理、車両制御、クラウドまで一体で握る。

    その結果として浮上したのが、「CATL離れ」「脱CATL」という見方だった。

    李想氏は今回、この解釈を明確に否定した。

    「『脱○○』はゼロサムゲームの発想であり、理想汽車はそのような考え方で自社開発戦略を定義したことはない」

    自社開発するから、サプライヤーを切るのではない。

    むしろ完成車メーカーが製品をより深く定義し、システムアーキテクチャと品質基準を握ることで、優れたサプライヤーとさらに深く協業する。

    そのモデルとして李想氏が持ち出したのが、AppleとTSMCだった。AppleはAシリーズチップを自ら開発するが、自社で半導体工場を抱えるのではなくTSMCが製造する。NVIDIAやQualcommも同様である。

    そしてTeslaも電池を自社開発しながら、CATL、LG、欣旺達などと協業する。

    「自社開発」と「優れたサプライヤーを使うこと」は対立しない。

    この考え方こそ、理想がこの9月に相次いで明らかにしてきた「セルは自社開発・委託製造、PACKは自社開発・自社製造」という電池戦略の根底にある思想だった。李想氏自身が今回、初めてそれを一つの論理としてまとめて説明した。

    「自社開発=脱サプライヤー」を李想氏が明確に否定

    この1カ月、理想の電池戦略だけを追っていると、確かに「脱CATL」に見える材料は増えていた。

    理想はセルの自社開発を本格化させた。

    欣旺達へ大型出資し、中創新航を新たな製造パートナーへ加えた。

    そして「PACKは自社開発・自社製造、セルは自社開発・委託製造」という分業構造を明らかにした。

    従来の「CATLが開発・製造した電池を理想が購入する」という関係から、「理想が開発したセルを電池メーカーが製造する」方向へ主導権を引き寄せていることは間違いない。

    しかし李想氏によれば、それを「CATLを排除する動き」と解釈すること自体が違う。

    完成車メーカーと部品メーカーはゼロサムではない。

    完成車メーカーが製品体験、システムアーキテクチャ、品質基準をより深く定義する。一方、パートナー企業は工程化、製造技術、大規模量産という専門能力を提供する。

    つまり、誰かの仕事を奪うための自社開発ではなく、分業の境界線を引き直すための自社開発なのである。

    これは、理想がこれまで断片的に説明してきた電池戦略を理解するうえで重要な補助線になる。

    AppleはTSMCを切らなかった

    李想氏が今回、Appleを例に出したのは象徴的である。

    AppleはAシリーズチップを自社設計している。

    しかし、それは「脱TSMC」を意味しない。

    むしろAppleが自社製品に必要な半導体をより深く定義するほど、それを高品質かつ大規模に製造できるTSMCの能力が重要になる。

    NVIDIAやQualcommについても同じ構造を例示した。

    李想氏はさらにTeslaを挙げ、自社で電池技術を開発しながらCATL、LG、欣旺達などと協業していると説明した。

    重要なのは、この例を李想氏自身が持ち出したことである。

    CHINA CASEではこれまで、理想の「セル自社開発・委託製造」を半導体のファブレスに近い構造として整理してきた。

    もちろん電池と半導体は同じではない。

    電池では材料、電気化学、工程条件、製造品質が最終性能へ強く影響するため、設計データを渡して製造を任せれば終わり、という単純な分業にはならない。

    それでも今回、李想氏自身がAppleとTSMCの関係を持ち出したことで、理想が考えている「自社開発」の方向はかなり明瞭になった。

    自分で設計することと、自分で製造することを分離する。

    そして製造を外部へ任せるからこそ、その製造能力を持つ企業との協業をむしろ深める。

    理想が欣旺達へ資本参加し、合弁会社まで設けながら、中創新航にもセル製造を委託する構造とも整合する。

    CATLは「外す相手」ではなく、理想を作ってきたパートナー

    さらに今回の文章で目を引くのが、李想氏がCATLへかなり明確な謝意を示したことである。

    理想は2015年の創業時から電池研究開発チームを設置していたという。当時はまだSEVを開発していた時期である。

    その後、初代理想ONEを開発する際には、レンジエクステンダーという方式を成立させるため、大容量でありながら高出力にも対応する電池が必要になった。

    「都市では電気、長距離ではガソリン」という理想独自の商品思想を成立させるには、既存製品を購入するだけでは足りなかった。

    さらにMEGAでは、当初4Cとして構想していた超急速充電電池を5Cへ引き上げた。

    李想氏によれば、こうした製品構想が市場から理解されていなかった段階から、一緒に研究開発したのがCATLだった。

    今回、李想氏はCATLを「戦友」と呼び、理想による深い製品定義、両社による共同開発、CATL側の強い支援があったからこそ、現在の製品を実現できたと説明した。

    したがって現在のセル自社開発を、過去のCATLとの協業を否定するものとして位置付けてはいない。

    むしろ問いは逆である。

    そこまで優れたパートナーがいるのに、なぜ理想は自分でも電池を開発するのか。

    李想氏は今回、その答えを三つに整理した。

    第一の理由、市場にないものを自分で作る

    一つ目は、既存の業界標準を超えるユーザー体験を先に作るためである。

    ユーザーにとって重要なのは、電気化学の専門用語ではない。

    航続距離が実際の使用環境で大きく落ちないか。

    長距離移動で充電をどれだけ待つのか。

    極寒や猛暑でも性能が安定するのか。

    安全性をどこまで保証できるのか。

    理想ONEの大容量レンジエクステンダー用電池、MEGAの5C超急速充電、さらにLFP電池の低温性能、残量推定精度、長寿命化など、理想が欲しい性能には、市場から完成品を購入するだけでは実現できないものがあったという。

    だから理想自身が材料レベルまで入り、基礎研究を行い、必要な技術経路を探す。

    ここに理想が考える自社開発の第一段階がある。

    サプライヤーが作った選択肢から最適なものを選ぶのではなく、まだ存在しない選択肢そのものを完成車メーカーが定義する。

    その後の工程化や大量生産では、電池メーカーの専門能力を使う。

    この分業なら、自社開発とサプライヤー協業はむしろ同時に深くなる。

    第二の理由、電池を「部品」からクルマの一部へ

    二つ目は、さらに完成車メーカーらしい理由である。

    理想は電池を独立した部品として考えていない。

    セル、PACK、BMS、熱管理、電動駆動、車両制御までを一つのシステムとしてつなぐ。

    そうすることで、電池単体では実現できない安全、品質、性能、寿命を車両全体として引き出す。

    しかもハードウェアを統合して終わりではない。

    納車から数年が経過した車両でも、OTAによって充電戦略を変え、エネルギー管理を改善し、低温時の性能を改善できる。

    つまり電池は、納車時に性能が固定される部品ではなくなる。

    ソフトウェアと車両データによって、納車後も最適化され続ける車両システムの一部になる。

    この考え方に立てば、電池メーカーから完成した電池システムを購入するだけでは、完成車メーカーが握れる範囲に限界が出る。

    だから理想はセル内部へ踏み込み、PACKを自ら製造し、BMS、熱管理、電動駆動、車両制御までをつなごうとしている。

    SPDが示す、理想の「1+1>2」

    李想氏は今回、その考え方を説明するため、電池ではなく自社開発の高圧SiC電動駆動システム「SPD」を例に出した。

    SPDは駆動モーター、自社開発SiCパワーモジュールを使う電力制御、減速機構、熱管理などを統合したシステムで、i8とi6の後輪駆動版に搭載しているという。

    理想側の公表値では、従来採用していた業界の優秀な電動駆動システムと比較して、発売6カ月時点の累積故障率を約2倍、12カ月時点では約5.7倍改善したとしている。

    これは理想自身による比較であり、第三者による独立評価とは分けて見る必要がある。

    ただ、李想氏がこの数字を持ち出した理由は分かりやすい。

    理想が主張しているのは、「自社で作れば外部製品より優れている」という単純な話ではない。

    モーターだけを改善する。

    電力制御だけを改善する。

    熱管理だけを改善する。

    それではなく、完成車メーカーが複数のシステムを同時に設計し、相互に最適化することで、単品性能の足し算を超える結果を作る。

    それが李想氏のいう「1+1>2」である。

    そして、その電動システムで最後まで残っていたピースが電池だった。

    第三の理由、「物理の電池」を「データの電池」へ

    今回の李想氏の説明で、とりわけ象徴的なのが三つ目である。

    「物理の電池は、最終的にデータの電池になる」

    理想がセルを自社開発する理由を、電気化学だけではなくデータから説明した。

    一つの電池がユーザーのクルマへ搭載されるまでには、材料開発、セル製造、PACK生産など複数企業・複数工程が存在する。

    しかしユーザーが購入するのは、それぞれの部品ではない。

    理想汽車という一台の完成車である。

    そこで理想が構築しているのが、全ライフサイクル品質監視システム「連山」である。

    李想氏によれば、2021年にプロジェクトを開始し、2022年には完成車生産ラインへ導入。2024年からはサプライヤー側の生産ラインにも展開し、上流材料からセル製造、PACK生産、ユーザーによる実際の使用までデータをつなぎ始めた。

    最終的には一つ一つのセルを追跡し、特定できるという。

    製造段階でわずかな異常が発生すれば、それがどのセルなのか、どのPACKへ入り、どの車両へ搭載されたのかまで追える。

    逆に市場で異常が見つかった場合にも、製造側へ遡ることができる。

    これは従来のトレーサビリティを、ユーザー使用段階まで伸ばす発想である。

    そしてサプライヤーが複数存在しても、ユーザーはその分業を意識する必要がない。

    問題があれば理想へ持っていけばよい。

    産業チェーンは分業する。しかしユーザーに対する責任は分業しない。

    「物理の電池をデータの電池にする」という言葉には、理想がセル開発へ入り込む理由がかなり凝縮されている。

    電池は理想の電動システム「最後のピース」

    ここまで見ると、理想の自社開発電池を単独の電池事業として見るべきではないことも分かる。

    理想はすでに電動駆動、SiCパワーモジュール、電力制御、熱管理などへ自社開発領域を広げてきた。

    そして今回、李想氏は、「自社開発セルと電池は、理想の電動エネルギーシステムで最後に補う領域である」と位置付けた。

    8月の決算説明でも李想氏は、電池とチップを今後の中核的な技術障壁とし、自社開発はサプライヤーの製品が悪いからではなく、AppleやHuaweiのように将来の中核技術を自ら掌握するためだと説明していた。

    つまり理想が内製化しようとしているのは、単純な「部品」ではない。

    製品を定義する能力である。

    チップなら、自社のAIモデルと車両に最適な演算基盤を定義する。

    電動駆動なら、車両全体からモーター、SiC、熱管理を定義する。

    電池なら、必要なユーザー体験から逆算してセル、PACK、BMS、熱管理、充電、クラウドまで定義する。

    実際の製造を誰が担当するかは、その後の問題になる。

    自社開発はサプライヤーを遠ざけるのではなく、近づける

    この考え方に立てば、理想が欣旺達へ出資しながら、中創新航にもセル製造を委託し、同時にCATLへの謝意を表明することも矛盾しない。

    理想が変えようとしているのは、サプライヤーの有無ではない。

    完成車メーカーとサプライヤーの境界線である。

    従来は電池メーカーがセルを開発・製造し、完成車メーカーがそれを選んで購入するという構造が基本だった。

    理想が目指すモデルでは、完成車メーカー自身がユーザー体験から逆算してセルまで定義する。

    しかし、その電池を高品質で何十万台分も製造するためには、電池メーカーの工程技術と量産能力が必要になる。

    自社開発が深くなればなるほど、優れたサプライヤーが不要になるのではない。

    むしろ、より深い場所でサプライヤーとつながる必要が出てくる。

    李想氏は今回、自社開発について「孤島を作ることではない」とした。優れたパートナーをさらに近くへ引き寄せ、一緒にユーザー体験を作るものだという。

    これは、この9月に理想が次々と明らかにしてきた電池戦略の答え合わせでもある。

    セルは自社で開発する。

    しかし欣旺達や中創新航に製造してもらう。

    PACKは自社で製造する。

    CATLとの共同開発を否定するわけでもない。

    製造企業が誰であっても、材料、セル、PACK、BMS、熱管理、電動駆動、車両制御、クラウドのデータをつなぎ、最終的な製品責任を理想自身が負う。

    9月22日には、工信部傘下の中国工信新聞も、「マルチソース化」と「脱・大手」、「自主革新」と「何でも自分でやること」を同一視すべきではないという問題を提起していた。

    そして9月28日、今度は完成車メーカー側から李想氏が答えた。

    「脱○○」はゼロサムゲームの発想である。

    中国NEV産業で始まっているのは、CATLを使うか使わないかという単純な争いではない。

    自動車メーカーがどこまで製品を定義し、サプライヤーがどこから専門能力を提供し、両者がどこまでデータと技術を共有するのか。

    その境界線そのものが引き直され始めている。

    AppleがAシリーズを自社開発したことでTSMCが不要になったのではなく、むしろ両社の関係が世界でも屈指の深い設計・製造分業へ発展したように、理想が描いているのも、少なくとも思想としてはそれに近い。

    自社開発とは、すべてを自分で作ることではない。

    自分の製品にとって最も重要な技術を自分で定義し、それを実現できる最高のパートナーと、これまで以上に深くつながること。

    この9月に理想が相次いで公開してきた「自社開発電池」のさらに奥にあったのは、電池戦略というより、理想汽車という完成車メーカーがこれから何を自分で握り、何を産業へ委ねるのかという、「自社開発」そのものの思想だったのである。

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