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『そこのみにて光輝く』 今更レビュー|勝手に佐藤泰志原作映画祭②

作家・佐藤泰志は芥川賞候補に幾度も名を連ねながら受賞が叶わず、1990年に41歳で命を絶った。

だが、没後に著作は再評価の機運が高まり、函館の映画館シネマアイリスが中心となって、何本も映画化を果たすこととなる。

どの作品も完成度が高くダイナミズムが感じられるのは、表現の自由度が多い彼の原作が、監督の作家性を刺激するからか。

佐藤泰志と監督との真剣勝負ともいえる珠玉の作品群を、今更レビューしてみようと思う(このページはAmazonアソシエイトの広告を含みます)

『そこのみにて光輝く』

公開:2014 年  監督:呉美保
時間:120分  製作国:日本
勝手に評点:★★★★☆4.0

©佐藤泰志・「そこのみにて光輝く」製作委員会

無職の達夫(綾野剛)がパチンコ屋で知り合った、粗暴だが人懐こい青年・拓児(菅田将暉)。「姉ちゃんの昼飯喰っていけよ」と、拓児に強引に連れていかれた海辺の狭いバラックでは、ちょっと色っぽいが素っ気ない姉の千夏(池脇千鶴)が炒飯を作ってくれる。

寝たきりなのに性欲旺盛な父(田村泰二郎)と世話に追われる母(伊佐山ひろ子)。同僚を刺して刑務所に入っていた拓児、スナックの奥で売春して家計を支える千夏。社会の底辺で生きる一家。やがて達夫は千夏と惹かれ合う。

寡黙でぶっきらぼうな達夫とお調子者で姉思いの拓児。対照的キャラの綾野剛と菅田将暉。気怠さを滲ませて池脇千鶴が演じる気の強い千夏は、『ジョゼと虎と魚たち』の再来のようだ。

佐藤泰志の函館三部作は監督が異なるが、撮影はいずれも近藤龍人。背景にさりげなく入り込む路面電車と走行音が、函館の町の臨場感をかき立てる。

原作では、達夫が拓児や千夏と出会い、彼女の内縁の夫・中島に会いに縁日に出向き、殴られながら筋を通し、千夏に求婚。

後半で結婚し娘も生まれた達夫が、中古車購入で松本と知り合い、鉱山で拓児と働かせてもらうことに。だが、その直前に拓児は、酒場で姉を悪く言った客を刺してしまう。

この二部構成の原作を脚本家の高田亮は改変し巧みに繋ぎ合わせる。

©佐藤泰志・「そこのみにて光輝く」製作委員会

映画では達夫はかつて働いていた鉱山で、誤って部下の若者を発破で死なせてしまう。後に映画化される『オーバーフェンス』の原作から拝借したトラウマだ。その経営者・松本(火野正平)が、再び彼を鉱山に呼び戻す。

原作では別れた筈の千夏の夫・中島(高橋和也)が、映画ではしつこい愛人になっており、「俺の口利きで拓児は仮釈放された」と千夏を脅かす。映画では拓児が怒りで刃を向ける相手はこの中島となり、その後自首する。

©佐藤泰志・「そこのみにて光輝く」製作委員会

父の性処理相手が千夏だったという展開は原作どおりだが、終盤に父親を絞め殺そうとする場面が付け足された。

ラストは、明け方の浜辺での千夏と達夫の見つめ合い。達夫の背後から差す逆光のゴーストが、息をのむほど美しい。二人の人生は今、どん底を彷徨っているが、この瞬間、そこのみにて光輝いている。エンディングで初めてタイトルを出す手法がキマる。

昨年に9年ぶりの新作『ぼくが生きてる、ふたつの世界』を放った呉美保監督だが、やはり代表作はキネ旬ベストテン堂々1位に輝いた本作だろう。監督作品の中で、異彩を放っている。

『海炭市叙景』(2010)
『そこのみにて光輝く』(2014)
『オーバー・フェンス』(2016)
『きみの鳥はうたえる』(2018)
『草の響き』(2021)
『夜、鳥たちが啼く』(2022)

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