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『夜、鳥たちが啼く』 今更レビュー|勝手に佐藤泰志原作映画祭⑥

作家・佐藤泰志は芥川賞候補に幾度も名を連ねながら受賞が叶わず、1990年に41歳で命を絶った。

だが、没後に著作は再評価の機運が高まり、函館の映画館シネマアイリスが中心となって、何本も映画化を果たすこととなる(このページはAmazonアソシエイトの広告を含みます)

『夜、鳥たちが啼く』

公開:2022 年  監督:城定秀夫
時間:115分  製作国:日本
勝手に評点:★★★☆☆3.0

©2022 クロックワークス

佐藤泰志原作映画では今のところ、唯一の函館ロケではない作品。原作通りなら武蔵野が舞台だ。

売れない作家・慎一(山田裕貴)のもとに、先輩の元妻・裕子(松本まりか)が幼い息子・アキラ(森優理斗)と転がり込んでくる。

恋人と暮らしていた一軒家を母子に提供し、慎一は離れのプレハブで寝起きする。

若い頃に書いた小説で賞をもらったが、その後ろくに売れずにいる慎一の姿は、佐藤泰志自身と重なる。

かつて、同棲していた恋人の文子(中村ゆりか)を過度な嫉妬心と暴力で追い詰めた慎一。

文子は慎一を捨て、彼がバイトしていたライブハウスの善人面した先輩(カトウシンスケ)と不倫する。

結果、この先輩が離婚した妻が裕子なのだ。罪悪感から、離れを貸して母屋を取られる、というか率先して譲るのも当然といえる。

先輩に恋人を奪われた男の小説を苦しんで書き続ける慎一。「終わらせるために書く」その姿は、狂わないために走っていた『草の響き』の東出昌大に重なる。

自分を諦められない小説家と、愛を諦めたシングルマザーの、結婚してないけど家庭内別居生活。

寂しさから裕子は、アキラを寝かせると夜毎男漁りに出かけ、一方、アキラから父親のように慕われる慎一は、次第に裕子に惹かれていく。

「あの子に期待させないで。もう、仲良くしないで」

慎一と一定の距離を置こうとする裕子だが、力づくで抱きすくめられると、「好きにして」と熱い息を吐く。

肌の露出こそ控えめなのに、十分にエロい濡れ場は、城定秀夫監督の本領発揮。

©2022 クロックワークス

『東京リベンジャーズ』で見せる男くさい役とは別人のような、慎一役の山田裕貴。平静と激昂の演技の振幅の大きさ。

一方、裕子役の松本まりかも、従来なら不倫に走る文子役が割り当てられそうだが、本作から迫真の演技の新作『湖の女たち』へと、二人とも新境地に進んだ印象。

原作短編は「大きなハードルと小さなハードル」に所収。映画は、佐藤泰志原作にしては、妙な笑いもある。

  • 独立リーグで活躍していた野球選手が暴行事件で暴れたり(観戦シーンが城定監督の『アルプススタンドのはしの方』と同じだ)

  • おせっかいな隣人が登場したり(藤田朋子のキャラがドラマ『おい、ハンサム!!』と同じだ)

共同生活の末に疑似家族が生まれそうな展開は新鮮味が弱く、盛り上がりも中途半端に思える。

夜啼く鳥たちも、「近所の幼稚園に飼われている鳥たちが、発情期なのかも」と扱いが軽く、同じ高田亮脚本の『オーバー・フェンス』で蒼井優が見せた鳥の求愛ダンスに及ばない。

せめて、舞台を函館に変え、たまに市電でもフレームインさせれば、もう少し風情が出せた気もする。惜しい。

『海炭市叙景』(2010)
『そこのみにて光輝く』(2014)
『オーバー・フェンス』(2016)
『きみの鳥はうたえる』(2018)
『草の響き』(2021)
『夜、鳥たちが啼く』(2022)

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