見出し画像

2分に1回、私たちは中断されている。速く働いても定時に帰れない理由

こんにちは。定時退社研究家のこきちです。

私はずっと、同じことを言い続けてきました。

定時で帰りたいなら、速く働くより、中断を減らすほうが効く。

5年前、管理職のまま「絶対に残業をしない」体制をつくったときも、効いたのは処理スピードではありませんでした。仕事の順番と、邪魔されない時間のつくり方です。

ただ、これは長いあいだ私の体感でした。「そう思う」以上のことは言えなかった。

今回、その体感に数字がつきました。そして書くために自分の運用を見直したら、この主張の欠陥にも気づいてしまったので、そこも一緒に書きます。私にとっては、後半のほうが大きな気づきです。

2分に1回。これは体感ではなく、実測値だった

Microsoftが2025年6月に公開した働き方の調査レポート「Breaking down the infinite workday(無限に続く一日を分解する)」に、こういう数字があります。

Microsoft 365を使う従業員は、会議・メール・通知によって 2分に1回 中断されている。8時間の勤務なら 1日あたり約275回
平均的な働き手が受け取るのは 1日117通のメール と、平日あたり153件のチャット(Teams)
従業員の 48%、リーダー層では 52% が、自分の仕事は「混乱していて、断片化している」と答えた。
3人に1人 が「この5年の仕事のペースには、もう追いつけない」と答えた。
(出典: Microsoft, Work Trend Index Special Report「Breaking down the infinite workday」2025年6月17日)

2分に1回です。

この数字を見て、ようやく腑に落ちました。残業が終わらない原因を「自分の処理速度」に求めていたのが、そもそもの間違いだったということです。

30分の仕事が30分で終わらないのは、遅いからではありません。30分のあいだに15回止められているからです。

それでも「速く働く」では帰れない、という別のデータ

ここに、もう一つのデータを重ねます。今度は日本の調査です。

パーソル総合研究所が2026年2月に発表した「生成AIとはたらき方に関する実態調査」に、私が今年いちばん考え込んだ数字がありました。

生成AIを使ったタスクの所要時間は、平均で 16.7%(週26.4分) 短縮されていた。
しかし 業務時間全体を削減できたのは、利用者の約4人に1人(25.4%)
削減できた時間のうち 61.2%は再び「仕事をする」ことに使われ、その中身の 75.4%は日常業務 だった。
さらに 生成AIの利用頻度が高い層ほど、残業時間は長い 傾向にあった。
(出典: パーソル総合研究所「生成AIとはたらき方に関する実態調査」2026年2月3日発表)

いちばん効くのは、最初の数字を1日に割り戻すことです。

週26.4分 ÷ 5日 = 1日あたり5分ちょっと。

これが、AIで速くなったぶんの正味です。そして——「5分早く帰る」という帰り方は、存在しません。

定時が18時の会社で、17時55分に席を立つ人はいません。だから速くして生まれた時間は、「早く帰る」という形をとれないまま、次の仕事に吸われていきます。浮いた時間の61.2%が仕事に戻っていったのは、意志が弱いからではなく、5分は、帰るには小さすぎるからだと思います。

※ひとつ留保を書いておきます。「AIをよく使う人ほど残業が長い」は相関であって因果ではありません。もともと仕事量が多くて残業している人ほど、AIに手を出す動機がある——という説明のほうが自然です。AIのせいで残業が増えた、という話ではありません。

速く働くと、中断を減らす。生まれる時間の「形」が違う

ここが今回の気づきの中心です。

  • 速く働いて生まれる時間は、1日5分の粉になって、業務のあいだに散る

  • 中断を減らして戻ってくる時間は、最初から 30分の塊 の形をしている

同じ「時間が増えた」でも、使い道がまったく違います。5分には次の仕事しか入りませんが、30分の塊は「今日のぶんを終わらせて帰る」に使えます。

私が5年間、速さより中断にこだわってきた理由は、たぶんこれです。

帰れるかどうかを決めていたのは、時間の量ではなく、時間の形だった。

私が実際にやったこと(いちばん効いた1つ)

やったことは、そう多くありません。効いたのは1つです。

連絡を、午前と午後の2回にまとめて返す。

「来たら返す」をやめました。メールもチャットも、原則としてこの2回で処理します。本当に急ぐものだけ例外にします。

変わったのは処理量ではなく、集中し直す回数でした。人は中断されるたび、元の作業に戻るための助走を必要とします。その助走の回数が、目に見えて減りました。

……と、ここまでが「気づき」の前半です

この記事を書くために自分の運用を点検して、後半が来ました。こちらのほうが大事です。

この工夫は、私の中断しか減らしていない。

私が連絡を2回にまとめているあいだ、送った相手の側では何が起きているか。

  • 返事が来ない

  • いつ来るのかも分からない

  • だから、催促するか、待つか、自分の判断で進めるかを決められない

私は自分の集中を守るために、相手に「未確定」を渡していたわけです。しかも相手はたいてい、部下です。

管理職になって分かったことを一つ挙げるなら、これになります。

自分の時間を守る工夫は、たいてい誰かの時間で払われている。 そして上の立場になるほど、その付け替えが見えなくなります。私は見えていませんでした。

だから、二段構えにした

いま守っているのは、1つではなく2つです。

  1. 連絡を返すのは午前と午後の2回(自分の中断を減らす)

  2. 返す1通に、必ず「次の行動」を書く(相手の未確定を減らす)

「次の行動」に入れるのは、4つです。

  • 誰が やるのか

  • 何を やるのか

  • いつまでに やるのか

  • 難しい場合は、どうするか

4つ目がいちばん抜けます。そして4つ目がないと、相手は詰まった瞬間に、また私の返信を待つことになります。その待ち時間は、私のカレンダーには一行も表示されません。

「了解です、あとで見ます」は、いちばんやってはいけない返信でした。自分の中断は減らせて、相手の中断は増やせる。最悪の効率です。

お題「#仕事での気づき」への、私の答え

立場が変わって見えたことを一つに絞ると、こうなります。

中断を減らすのは、個人の集中術ではなく、チームの設計だった。

自分の通知を切るところまでは、1人でできます。でもそれは中断を消したのではなく、中断を下流に流しただけかもしれない。だから連絡の「返し方」まで決めないと、チームの合計では時間が増えません。

2分に1回止められる職場で、自分だけ静かな部屋をつくっても、部屋の外の行列は伸びていきます。5年かけて、私はようやくそこに気づきました。


もし今日から1つだけ試すなら、明日の1通目の返信に「難しい場合はどうするか」を書き足す、それだけで十分です。私はここで、5年目につまずいていました。


あわせて読みたい

いいなと思ったら応援しよう!