「REITはやめとけ」と言われる理由を、5つに分けてみる
J-REITを調べていると、「やめとけ」「おすすめしない」という言葉に必ず当たります。
ちゃんとした理由もあれば、そうでないものも混ざっています。
この記事では、5つに分けて、どれが数字で確かめられて、どれが確かめようのないものなのかを分けます。最後に、あまり言われないが実は大きいリスクも一つ足します。
① 「金利が上がると弱い」
半分当たっています。ただし、すぐには効きません。
J-REITは借金をして物件を持っています。金利が上がれば利息が増え、分配金の原資が減ります。それはその通りです。
でも、今日金利が上がっても、明日から利息が増えるわけではありません。
既に借りている分の金利は、借換えのタイミングが来るまで変わらないからです。
見るべき3つ
固定金利比率:借入のうち、金利が固定されている割合
平均残存年数:次の借換えまでどれだけあるか
平均調達コスト:今、何%で借りているか
どれくらいの時間差なのか
以下は架空の丸い数字ですが、感覚をつかむために。
固定金利比率 90% / 平均残存年数 4年
この場合、変動金利の10%はすぐ影響を受けます。
残りの90%は、平均して年に四分の一ずつしか入れ替わりません。
つまり1年で新しい金利になるのは、全体の約4割弱。
逆に、固定比率が低く短期の借入が多ければ、影響はもっと早く出ます。
だから「金利が上がる→REITはダメ」という一括りの話は、銘柄ごとに分解できます。
どこで見るか:決算説明資料の「財務状況」または「有利子負債の状況」。ほぼ必ず3つ並んで載っています。
※ ただし、金利は分配金とは別の経路でも効きます。国債の利回りが上がれば、分配金が変わらなくても相対的な魅力が下がり、価格に出ます。こちらに時間差はありません。
② 「元本が減ることがある」
完全に当たっています。
上場している以上、投資口価格は日々動きます。買った値段より下がることは普通にあります。これに反論はありません。
ただ、何で動くのかは分解できます。
① 分配金の見通し ―― 投資法人が出す予想が上下すると動く
② 長期金利 ―― 国債との利回り差が縮むと売られやすい
③ 不動産市況 ―― 賃料や物件価格の地合い
④ 需給 ―― 指数に連動する資金の出入り、増資の需給
このうち、①だけは開示で追えます。残りは市場の話なので、受け入れるしかありません。
③ 「分配金が減ることがある」
当たっています。ただし、ある程度見分けられます。
分配金は確定したものではなく、稼ぎに応じて変わります。減る原因は、大きく4つです。
大口テナントの退去:退去の適時開示で分かる(事前に出る)
大規模修繕の実施:長期修繕計画に載っている
金利の上昇:上の3指標で時期が読める
増資による口数の増加:増資の開示で分かる
4つとも、先に開示されます。突然減ることは、実はあまりありません。
逆に、増えているときに「それが続く増え方なのか」を確かめる方法もあります。
一番簡単なのは、投資法人自身が出している次期予想と並べることです。一時的な要因で増えているなら、彼ら自身が次期を低く出しています。
→ この話は別に書きました:【★未取得:記事 lead-02(分配金が増えたのに、喜んでいないことがある|一時要因の見分け方) のURL】
④ 「値上がり益が狙えない」
半分当たっています。そして、それには仕組み上の理由があります。
J-REITは、一定の要件を満たせば分配金を損金に算入できる仕組みになっています。そのため利益のほぼ全額を配るのが前提です。
その帰結がこれです。
手元に残るお金(内部留保)が薄い。
だから新しい物件を買うには、増資か借入が必要になる。
株なら、利益を積み上げて工場を建て、企業価値が上がる――という成長の仕方があります。REITはそのルートが使えません。
代わりに――利益が手元に残らないということは、その分だけ受け取っているということでもあります。どちらを取りにいくかの問題です。
→ 詳しくは:株の配当とREITの分配金は、出どころが違います
⑤ 「実物の不動産投資より劣る」
これは、別の話です。
レバレッジ
・実物:自分でかけられる
・J-REIT:かけられない
物件の選択
・実物:自分で選べる
・J-REIT:選べない
管理の手間
・実物:ある
・J-REIT:ない
売りたいとき
・実物:数ヶ月かかる
・J-REIT:取引時間中に売れる
必要な資金
・実物:大きい
・J-REIT:1口から
分散
・実物:1物件に集中しがち
・J-REIT:複数物件に分かれる
どちらが優れているかではなく、やることが違います。
レバレッジをかけて大きくしたいなら実物ですし、手間をかけずに賃料収入に乗りたいならJ-REITです。同じ目的の道具ではありません。
⑥ あまり言われないが、実はこちらの方が大きい
ここからが、この記事で一番書きたかったところです。
「やめとけ」の記事でよく挙がる5つは、実はREIT全体の話です。でも実際に上か下かを分けるのは、銘柄ごとの中身です。
セクターの偏り
ホテルは業績に連動するので振れます。住宅は小口に分散されていて安定しやすい。同じ「J-REIT」でも、中身の振れ幅は全く違います。
テナントの集中
物件が分散していても、借りている会社が同じなら分散していません。物流などは1棟=1テナントになりやすく、長期契約で安定して見える一方で、抜けたときの穴が大きい。
増資による希薄化
上の④で見た通り、REITは成長のために増資をします。集めたお金で買った物件が、増えた口数に見合うだけ稼ぐか。ここが合わないと、1口当たりは減ります。
この3つは、どれも開示で見られます。
そして、「やめとけ」の記事にはほとんど書かれていません。
で、結局どうなのか
並べ直します。
① 金利 → 固定比率・残存年数で時間差が見える
② 元本 → 当たり。受け入れるしかない
③ 減配 → 4つの原因は先に開示される
④ 値上がり益 → 仕組み上そうなる。代わりに受け取っている
⑤ 実物との比較 → そもそも別のもの
⑥ セクター・テナント・増資 → ここが本当の差
①・③・⑥ は、自分で確かめられます。②と④は、そういうものだと知っておくしかありません。⑤は比べる対象が違います。
「やめとけ」の中身を分けてみると、数字で確かめられるものと、確かめようのないものに分かれます。この連載で扱うのは、前者だけです。
見るべき指標は6つだけ
ここまでで、固定金利比率、残存年数、増資、セクター――といくつか出てきました。
実際にはもっとありますが、最初に覚えるのは6つで十分です。見る順番と含めて、別の記事に一枚にまとめました。
J-REITの指標、結局どれを見ればいいのか|6つと、見る順番【総目次】
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■ ご利用にあたって
本記事は、J-REITの仕組みと開示資料の読み方を解説する教育目的のコンテンツです。特定の投資商品の売買を推奨するものではなく、投資助言・代理業に該当する助言を行うものではありません。
・本記事中の数値(固定比率90%・残存4年など)は、すべて説明のための架空の例です。実在の銘柄の数値ではありません。
・指標の定義・算定方法は投資法人によって異なることがあります。実際の数値は、各投資法人が公表した適時開示・決算短信・資産運用報告をご確認ください。
・情報の正確性・完全性を保証するものではありません。
・投資判断はご自身の責任と判断において行ってください。本記事に基づく損失について、筆者は一切の責任を負いません。
・筆者は金融商品取引業者ではありません。
【保有の開示】筆者は複数のJ-REITを保有しています。
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