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株の配当とREITの分配金は、出どころが違います

「REITは利回りが高い」とよく言われます。

これは、危険だからでも、親切だからでもありません。お金の出どころが、株とは違うからです。

そこを知っておくと、「同じ利回り5%」の中身が違うことが見えるようになります。


株の場合

株式会社が配当を出すまでは、こういう順番です。

売上 → 費用を引く → 利益 → 法人税を引く → 残ったお金
                       ↙     ↘
                   一部を配当  残りは手元に置く

残したお金は、新しい工場を建てたり、研究開発に使ったりします。これが内部留保です。

だから株では、「利益のうち何%を配当に回したか」(配当性向)が意味を持ちます。低ければ「成長に回している」と読めます。


REITの場合

J-REITには、一定の要件を満たすと分配金を損金に算入できるという仕組みがあります。

分配金を費用のように扱えるので、配った分だけ課税される利益が減ります。

その要件の一つが、「利益の大部分を配ること」です。

だからJ-REITは、利益のほぼ全額を配るのが前提の乗り物です。
「たくさん配ってくれている」のではなく、そういう制度だからです。

※ 税制の詳細は制度改正や個別の事情で変わります。正確なところは国税庁やご利用の証券会社の説明をご確認ください。


ここから、帰結が3つ出ます

帰結① 利回りが高くなりやすい

利益の一部しか配らない株と、ほぼ全額を配るREIT。同じくらい稼いでいても、受け取る金額は後者の方が大きくなります。

利回りの水準差は、まずここから来ています。

帰結② 内部留保が薄い

配ってしまうので、手元にお金が残りません。では新しい物件を買うお金はどこから来るのか。

増資(新しい投資口を発行する)か、借入です。

だからJ-REITは、定期的に増資をします。そして増資すると、分ける先の口数が増えます。

簡単な算数で見てみます。以下は架空の丸い数字です。

増資で口数が 20% 増えた

・集めたお金で買った物件で、稼ぎが 25% 増えた → 1口当たりは 増える
・稼ぎが 15% しか増えなかった   → 1口当たりは 減る

つまり――「増資=悪い」ではありません。口数の増加に見合う稼ぎが乗るかだけが問題です。

これが、増資のニュースを見たときに見るべきところです。

帰結③ 「利益超過分配」というものがある

ここが、株から来た人が一番驚くところです。

決算短信の表紙に、こういう行があることがあります。

・1口当たり分配金
うち利益超過分配金

名前の通り、利益を超えて配っている分です。

主な原資は減価償却費。建物は帳簿上毎年価値が減っていくことになっていますが、その分の現金が実際に出ていくわけではありません。手元に残ったその現金を分配金として返す、ということです。


同じ「利回り5%」でも、中身が違う

この記事で一番伝えたいところです。以下は架空の例です。

分配金利回り
・銘柄A:5.0%
・銘柄B:5.0%

うち利益からの分配
・銘柄A:5.0%
・銘柄B:4.2%

うち利益超過分配
・銘柄A:0%
・銘柄B:0.8%

並べているときは、どちらも「5%」です。
でも、稼いだ利益から出ている割合は違います。

これは良し悪しの話ではありません。

セクターで、償却の重さが違う

償却の大きさは、物件のうち建物が占める割合で変わります。

都心のオフィス
・建物の重み:土地が高価で重い
・償却:相対的に小さい

物流施設・ホテル
・建物の重み:建物が重い
・償却:相対的に大きい

だから建物比重の高いセクターでは、実態のキャッシュを返すのに相応の理由があります。

問題なのは、内訳を知らないまま利回りだけで銘柄を並べることです。

どこで見るか:決算短信の表紙。上の2行が並んでいます。金額が入っていなければ、利益だけで配っているということです。

※ 利益超過分配は、税務上の扱いが利益からの分配と異なる場合があります。確定申告や受取時の源泉の扱いについては、ご利用の証券会社や国税庁の情報をご確認ください。


「予想」が出ているのが、REITの強み

もう一つ、株と違うところを。

J-REITは、投資法人自身が次期・次々期の分配金予想を出しています。

賃料収入は契約ベースなので、先の見通しが立ちやすいからです。

これが使えます。

分配金が増えているとき、投資法人が出している次期予想と並べる。
一時的な要因で増えているなら、彼ら自身が次期を低く出しています。

増配のニュースを見たとき、これだけでかなり分かります。

→ この話は別に書きました:分配金が増えたのに、喜んでいないことがある|一時要因の見分け方


株の感覚が、ここで一つ使えなくなる

最後に、株をやっていた人ほど間違えやすいことを一つ。

配当性向という考え方は、REITではほぼ意味を持ちません。

株なら「配当性向30%」と聞けば、残りの70%を成長に回していると読めます。低いことに意味がある。

でもREITは、制度上ほぼ全額を配るのが前提です。みんな同じような水準になるので、比べても差が出ません。

代わりに見るのが、この連載で扱う6つの指標です。

J-REITの指標、結局どれを見ればいいのか|6つと、見る順番【総目次】


まとめ

1. REITは分配金を損金に算入できる仕組み。だから利益のほぼ全額を配る
2. その帰結で、利回りが高くなりやすい
3. 同じ帰結で、内部留保が薄い。成長には増資か借入が要る
4. そして利益超過分配がある。同じ「5%」でも中身が違う
5. 配当性向では比べられない
6. 代わりに予想が出ている。これはREITの強み


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■ ご利用にあたって

本記事は、J-REITの仕組みと開示資料の読み方を解説する教育目的のコンテンツです。特定の投資商品の売買を推奨するものではなく、投資助言・代理業に該当する助言を行うものではありません。

本記事中の数値(利回り5.0%、口数20%増など)は、すべて説明のための架空の例です。実在の銘柄の数値ではありません。
税制の取扱いは制度改正や個別の事情により異なります。本記事は仕組みの概要を説明するものであり、税務に関する助言ではありません。詳細は国税庁の情報や、ご利用の証券会社・税理士にご確認ください。
・実際の数値は、各投資法人が公表した適時開示・決算短信をご確認ください。
・情報の正確性・完全性を保証するものではありません。
・投資判断はご自身の責任と判断において行ってください。本記事に基づく損失について、筆者は一切の責任を負いません。
・筆者は金融商品取引業者ではありません。

【保有の開示】筆者は複数のJ-REITを保有しています。

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