副業の帳簿、Excelで足りますか?|300万円以下でも「帳簿があれば事業所得」に変わっていました
副業をしている人の税金は、「事業所得」か「雑所得」かで大きく変わります。
そして2022年10月に、この分かれ目のルールが確定しました。多くの人がまだ、変更前の案のほうを覚えています。
■ 「副業300万円以下は雑所得」は、そのまま採用されませんでした
2022年、国税庁が「収入300万円以下の副業は原則として雑所得」とする案を公表しました。これに対して意見公募(パブリックコメント)で大量の反対が寄せられ、内容が修正されたうえで通達が改正されました。
現在の取り扱いはこうです。
帳簿書類の保存があれば、収入金額が300万円以下であっても、原則として事業所得に区分されます。
帳簿書類の保存がない場合は、おおむね雑所得になります。
(所得税基本通達35-2、令和4年10月7日改正)
判定するのは金額ではなく、記録があるかどうかです。
ただし例外があります。帳簿を保存していても、収入金額が僅少と認められる場合や、その所得を得る活動に営利性が認められない場合は、事業と認められるかどうかを個別に判断されます。
また、前々年の副業の収入金額が300万円を超える場合は、現金預金取引等関係書類(請求書・領収書など)を5年間保存する必要があります。
■ 事業所得と雑所得で、何がどれだけ違うか
① 青色申告特別控除(最大65万円)
事業所得なら、要件を満たせば所得から最大65万円を引けます。雑所得では使えません。
② 損益通算
副業が赤字なら、給与所得と相殺して税金が戻ることがあります。雑所得ではできません。開業初年度に設備を買って赤字になった、というケースで効きます。
③ 純損失の繰越控除
青色申告なら、赤字を翌年以降に繰り越せます。
④ 専従者給与
家族に払った給与を経費にできます。
この差は、記録をつけているかどうかだけで生まれます。
■ では「帳簿」とは何をすればいいのか
「帳簿」と聞くと会計ソフトが必要に思えますが、法律が求めているのは取引を継続的に記録したものです。
最低限、次が記録されていれば形になります。
・日付
・取引の相手(プラットフォーム名でも可)
・取引の内容(何を売った・何を買った)
・金額
そしてこれを裏づける請求書・領収書・支払明細を保存します。プラットフォームの売上明細はダウンロードして保管してください。
**Excelでも帳簿として成立します。**ただし条件があります。
⚠️ **65万円の青色申告特別控除を狙う場合は、複式簿記による記帳が必要です。**単式(お小遣い帳形式)の記録では10万円控除にとどまります。Excelで65万円控除まで狙うなら、複式簿記の形で作るか、会計ソフトを使うのが現実的です。
つまりこう整理できます。
・まず記録をつける(Excelで十分)→ 事業所得になる/10万円控除
・さらに複式簿記+e-Tax等の要件→ 65万円控除
何もつけていない状態から、Excelで記録を始めるだけで、いちばん大きい段差を越えられます。
■ 「あとでまとめてやる」がいちばん損をします
確定申告の直前に1年分を思い出そうとすると、必ずこうなります。
・プラットフォームの明細が古くてダウンロードできない
・現金で買った材料のレシートが見つからない
・按分の根拠(走行距離・作業時間)が記録に残っていない
按分は特に、あとから作れません。ガソリン代を走行距離で按分するなら、その走行距離のメモが要ります。国税庁は家事関連費について「業務上必要な部分を明らかに区分できる場合」に限って経費にできるとしています(No.2210)。記録がない=区分できない、です。
月に1回、15分でいいので、その月の売上と経費を入力する時間を決めてください。これは事務作業ではなく、所得区分と控除額を確保するための作業です。
■ 記録に使えるもの
日付・科目・金額を入れるだけで科目別に集計される経費精算書(無料)。まず経費の記録から始めるならこれです。
現金・カードの売上を入れて月別に自動集計する売上日報(無料)。
月別の収入・支出から繰越残高まで出す資金繰り表(税込¥300)。「今月いくら残るか」まで見たい方はこちら。
在庫を持つ副業(物販・ハンドメイド)は、入庫・出庫の記録から現在庫が出る在庫管理表を(無料)。
作業時間を記録して工数を集計するタイムシートはこちら(無料)。
自宅の家賃・光熱費・通信費の家事按分について、割合の決め方と根拠の残し方を整理しました(無料)。
■ 参考・出典
・事業所得と雑所得の区分(帳簿書類の保存があれば、300万円以下でも原則として事業所得。ただし収入が僅少・営利性がない場合は個別判断):国税庁 所得税基本通達35-2(令和4年10月7日改正)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/kaisei/221007/pdf/02.pdf
・給与所得者で確定申告が必要な人(20万円ルール):国税庁 タックスアンサー No.1900 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm
・家事関連費の按分:国税庁 タックスアンサー No.2210 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm
※本記事は制度の一般的な整理です。青色申告特別控除の要件、ご自身の所得区分の判断、帳簿の具体的な形式については、所轄の税務署・税理士にご確認ください。
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