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「率直に言って」は、なかなかの無茶ぶりだった - Netflixの4A

「遠慮なく、率直にフィードバックしてください」
そう言っていた人に、会議の後で「もう少し説明を短くするとよさそうですね」と伝える。「でも、あれは必要な説明だったので」と返ってくる。会話は終了。次からは「勉強になりました」と言おう。人はこうして、処世術を学びます。

受け取る側にも言い分はあるでしょう。短くしろと言われても、どこを削ればよかったのか。事情を知らない人に、簡単に言われたくない。お互いに悪気はないのに、次の会議が少し気まずくなる。

「率直に伝えよう」「成長の機会として受け止めよう」。大切な姿勢だと思います。でも、双方にその意欲があれば、うまくいくのでしょうか。

「ありがとう」は、承諾書ではなかった

Netflixの組織文化を扱った『NO RULES』を読んでいて、フィードバックの「4A」が気になりました。伝える側だけでなく、受け取る側にも作法がある、という整理です。

伝える側は、Aim to AssistActionable。相手や組織の役に立つことを目的に、行動に移せる内容を伝える。「あなたのため」と言って不満を吐き出すだけでは足りません。包装紙が立派でも、中身は別です。

受け取る側は、AppreciateAccept or Discard。耳を傾け、伝えてくれたことに感謝し、そのうえで採用するかを判断する。
ここで少し立ち止まった。感謝と同意は、分けてよかったのか。「ありがとうございます」と言った瞬間に、助言の実行契約が成立するわけではないのです。

伝え方を具体化する補助になるのが、建設的批判のガイドラインです。人格ではなく行動を扱う。事実と解釈を分ける。具体的な影響を説明し、相手の事情も確認する。

冒頭の例なら、こう言えそうです。
「今日の会議では、背景説明の後に5分しか残らず、案を比較できませんでした。次回は資料を事前に共有し、当日は判断が必要な点から話すのはどうでしょうか」

受け手も、「伝えてくれてありがとう。比較の時間が足りなかった点は理解しました。背景説明も必要なので、事前資料で対応できるか考えます」と返せる。話を聞きながら、自分の判断も残せます。

知識はある。口が追いつかない

これなら実践できそうだ。そう思って読み返すと、改善後の二人はずいぶん落ち着いています。頭の中に優秀な編集者がいる。

実際の私はどうだろう。「説明が長い」と言われれば、まず「いや、そもそも」と言いたくなる気がします。事実と解釈を分ける前に、口が仕事を始めてしまう。

作法を知っていることと、その場で使えることには距離があります。伝える側は、相手の反応を見ながら言葉を選ぶ。受け取る側は、反論したい気持ちを抱えながら指摘を確認する。相手がどれくらいこのやり取りに慣れているかによっても、難しさは変わるでしょう。

では、実際にやって覚えればよいのか。でも、言い方を失敗した同僚とは、翌日も仕事をします。関係がこじれれば、相談や連携にも響く。本番だけで経験を積ませるのは、相当にリスクのある方法です。

例文を書き直す、模擬対話をする、生成AIに決めつけがないか点検してもらう。伝える練習に加え、詳しく聞き返す、一度持ち帰る、一部だけ採用する、といった受け取り方も練習したい。

実務では上司が支え、振り返る。不適切な非難が起きたら、その伝え方にフィードバックする。非難された本人に、相手を教育する役まで兼任させなくてよいはずです。

上手に話せた。提案は却下された

では、二人とも作法を身につけたら、改善は進むのでしょうか。

会議の例を、もう少し続けてみます。背景説明を短くする提案に対し、相手がこう返したとしたら。
「ありがとうございます。ただ、今回は背景を理解してもらうための会議でした。案の比較は次回を予定しているので、今回は説明を短くする必要はなかったと考えています」

二人とも作法を守った。会話も険悪にならなかった。それでも、提案は採用されませんでした。

これは失敗なのか。むしろ、内容を検討し、採用しないと判断できたのだから、受け取り方としては適切です。4Aには、断る選択肢も含まれていました。

ここで、フィードバックの技術と、助言の中身は別なのだと気づきます。具体的で丁寧な提案でも、その状況に合っているとは限らない。伝え方を磨くだけで、提案まで正解になるわけではないのです。

その「良い会議」、誰と合意しましたか

それなら、改善案をよくするには何が必要なのか。

そもそも二人は、会議の目的を共有していませんでした。一人は意思決定の場だと思い、もう一人は背景を理解する場だと思っている。同じ時計を見ながら、別の仕事をしていたわけです。

私自身、「アジェンダを用意し、効率よく議論する」くらいは、当然の共通認識だと思っていました。でも、何を準備し、何に時間を使い、終わったときにどうなっていればよいのかまで、一致しているだろうか。

全員がうなずいていても、頭の中の「よい会議」は違うかもしれません。うなずきは便利ですが、合意内容までは記録してくれない。

業務や状況についての知識に加え、仕事の目的や判断基準が共有されていれば、提案する側は的外れな助言を減らせます。受け取る側も、個人の好みではなく、目的に照らして採否を説明できる。

受け手が納得しない理由を、すぐ「成長意欲が足りないから」と考えるのは早そうです。助言の妥当性や、仕事の前提がそろっているかも、確認する必要があります。

「率直に」の準備は、誰の仕事?

ここまでを、一人の努力で引き受けられるでしょうか。

自分の言い方は練習できる。でも、相手の受け取り方や、部署の仕事の基準までは、一人で整えられない。「率直に言ってほしい」という呼びかけには、思っていた以上に準備が必要なのかもしれません。

たどってきた道を整理すると、四つの段階があります。

  • 姿勢:率直に伝え、学ぼうとする。

  • 作法:4Aと批判ガイドラインを共有する。

  • 訓練:伝える・受け取る練習と、実務での支援を用意する。

  • 仕事の判断基準:目指す成果や働き方、期待する振る舞いを共有する。

四つは、順番に修了する講座ではなく、実践しながら行き来して整えるものなのでしょう。判断基準も、全員の意見を同じにするためではなく、異なる提案を比べるために共有する。

最初は、言い方と受け止め方の話だと思っていました。調べてみると、思ったよりずっと難しく、組織の仕事の仕方にまで話が広がった。

個人で言葉を選び、相手や場面を選ぶことにも、十分に価値があります。明日の気まずい会議を一つ減らせるなら、大したものです。

ただ、伝えても大丈夫な相手だけを探していては、話せることにも限りがある。だからこそ、組織で取り組めるといい。「率直に言ってください」の後に、「そのための練習も、困ったときの支援も用意します」が続いたら、少し安心して口を開けそうです。


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