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ノートパソコンの選び方|カタログの駆動時間は、何を測った数字か

    カタログに「バッテリー駆動時間20時間」と書いてあるノートパソコンを選びました。
    会議で使うと、午後には残りが心もとなくなります。
    うそが書いてあるわけではありません。

    日本で売られているパソコンの駆動時間は、業界団体が決めた方法で測られています。
    その方法を作った団体自身が、Q&A集に「実際のバッテリ動作時間を保証するものではありません」と書いています。
    カタログの数字は、機種を比べるための数字です。
    使える時間の予告ではありません。

    この記事では、業務用ノートパソコンを買い替えるときに読み違えやすい3か所を、原文にあたって確かめます。
    駆動時間の測定条件、周辺機器のドライバー、そして「翌営業日対応」がいつから数えられるか。
    最後に、買う前に作っておく1枚の表を示します。

    この記事は、一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)、Microsoft、Dellの一次資料をもとに、2026年9月時点の内容にしています。保守の条件は会社と契約によって違います。自社の契約書で確認してください。


    「一日もつ」は、何を測った数字か

    日本で売られているパソコンのバッテリー駆動時間は、JEITAが定めた「JEITAバッテリ動作時間測定法」で測られています。
    現行はVer. 3.0で、2023年5月31日に発行されました。
    JEITAのガイドライン一覧を2026年9月13日に開いて確認したところ、バッテリ関係でこれより新しいものは出ていません。

    まず、この測定法が何のために作られたものかが、まえがきに書いてあります。

    JEITA 測定法 2.0 同様、ユーザがバッテリ動作時間の比較を行う際の目安とでき、使用状況による動作時間の違いが分かりやすくなるような統一した測定法とする。

    「比較を行う際の目安」です。
    ここが出発点になります。

    測るのは2つ。動画再生時とアイドル時

    測定法は、2つの状態で時間を測ることを決めています。

    動画再生時は、こう書かれています。

    本測定法が指定する動画ファイルをフルスクリーンで連続再生し、バッテリ動作開始からシャットダウンまたは休止状態に移行するまでの時間を測定する。

    この「指定する動画ファイル」の仕様も決まっています。
    3840×2160ピクセル、H.264/AVC、映像ビットレート75.5Mbps、フレームレート60fpsです。
    いわゆる4K動画で、軽い処理ではありません。

    もう1つがアイドル時です。

    本測定法が指定する壁紙ファイルをフルスクリーンで表示し、デスクトップ画面の表示を行った状態で放置し、バッテリ動作開始からシャットダウンまたは休止状態に移行するまでの時間を測定する。

    壁紙を出して、放置する。
    それだけです。
    当然、いちばん長く持ちます。

    なお、オンライン会議を測定に含めることは、改訂のときに検討されています。
    解説にこう書かれています。

    測定方法改訂検討にあたり、動画再生以外にも、Web 動画再生や、オンライン会議等の他のアプリケーションも加えた方法を検討したが、お客様の使用方法は多様であり、一定の測定方法を定義するという観点から、4K 動画再生とした。

    検討したうえで、入れていません。
    会議中に何時間持つかは、この数字からは出ないということです。

    画面の明るさは「200カンデラ毎平方メートル以上」

    測定条件のうち、駆動時間にいちばん効くのが画面の明るさです。

    画面輝度:200cd/m 2 以上。最大輝度が 200cd/m 2 に満たない製品においては輝度を最大とする。

    cd/m2は明るさの単位です。
    ここで押さえておきたいのは「以上」と書かれていることです。
    200ちょうどに合わせるのではなく、200以上であればよい、という決め方になっています。

    そのため、輝度をどうやって200に合わせたかを公開することが、あわせて求められています。

    輝度計を用いなくても、およそ画面輝度を 200cd/m 2 に設定する方法

    これを含めて3項目が、Webやカタログなどにより開示すべきものとして挙げられています。
    残りの2つは「使用した動画再生アプリケーション」と「出荷時の状態から測定を行うまでにどのように設定を変更したか」です。

    無線LANは、つないだ状態で測っている

    ここは誤解しやすいところです。
    測定中、Wi-Fiは切られていません。

    無線 LAN:アクセスポイントに接続した状態とする。通信方式、通信の有無、電波環境、アクセスポイントまでの距離については規定しない。

    つないだ状態にはするが、通信しているかどうかは決めない。
    そういう条件です。
    「実際にファイルの転送を行うことも検討した」が、電波環境などでばらつきが大きくなるため見送った、と解説に書かれています。

    一方、Bluetoothや携帯回線は切ってもよいことになっています。

    規定されていないものがある

    条件のうしろに、注意すべき一文が続いています。

    なお、パワーマネジメント設定、測定中の他の動作アプリケーションやバックグラウンドアプリケーションの扱いおよびシャットダウンまたは休止状態に移行する電池残量等については規定しないが、ユーザが OS、アプリケーション、BIOS 等で簡便な方法で設定可能な条件であること。

    裏で動くアプリの扱いは、決められていません。
    測定のときに止めてもよいことも、解説にはっきり書かれています。

    つまり、会社のパソコンで常に動いているもの、ウイルス対策、資産管理、クラウド同期、チャットの常駐は、測定時には止まっている可能性があります。

    JEITA自身が、保証しないと書いている

    ここまでの条件を並べると、カタログの数字と実務が合わない理由が見えてきます。
    そして、それはQ&A集にそのまま書かれています。

    実際のバッテリ動作時間はお客様の使い方により大きく変わります。JEITA 測定法は異なるメーカ間のバッテリ動作時間を簡単に比較できるようにすることを目的に考案されたものです。したがって、実際のバッテリ動作時間を保証するものではありません。

    さらに、短くなる場面が名指しで並べられています。

    実際のバッテリ動作時間は、CPU やネットワークの使用状況、カメラ等の内蔵デバイスや周辺機器の使用状況、ディスプレイの輝度の設定により、著しく短くなる場合があります。

    そして、その一例として次の5つが挙げられています。

    • オンラインでの会議や授業、通話等ネットワーク処理が高い状態が続く場合

    • ゲームや動画編集等 CPU 使用率が高い作業をしている場合

    • 大容量の映画やビデオをストリーミング再生している場合

    • バックグラウンドでウィルススキャン等の処理が連続動作している場合

    • USB 機器や外部ディスプレイを接続している場合

    1つ目が、そのままオンライン会議です。
    会議でバッテリーが持たないのは、機種が悪いからではありません。
    測定法を作った側が、そういう場面では著しく短くなると書いています。

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    カタログの数字を、どう読むか

    数字が何を測ったものかが分かったので、読み方に進みます。

    2つ並んでいるのが正しい形

    表示のしかたも、測定法が決めています。

    動画再生時の動作時間と、アイドル時の動作時間を併記する。

    併記が原則です。
    そして、並べ方まで決まっています。
    左右に並べるなら左が動画再生時、上下に並べるなら上が動画再生時。
    さらに、こう書かれています。

    併記に際して、アイドル時動作時間のフォントサイズを動画再生時動作時間より大きくしてはならない。

    長いほうの数字を大きく見せることが、明示的に禁じられています。
    測定法の側が、そういう見せ方を想定して先回りしているということです。

    ただし、片方だけの表示が許される場合もあります。

    カタログ等表示スペースが限られる場合は、動画再生時の動作時間のみ表示してもよい。ただしその場合は、動画再生時の動作時間であることを明記し、Web サイト等で動画再生時およびアイドル時の動作時間を表示すること。

    残してよいのは、動画再生時のほうです。
    アイドル時だけを残すことは認められていません。
    したがって、数字が1つしか書かれていないカタログを見たときは、それが動画再生時のものかどうかを確かめます。
    どちらか分からないまま比べないことです。

    版が違う数字は、並べても比べたことにならない

    測定法にはVer. 2.0とVer. 3.0があります。
    2.0からの主な変更点は、平均値の表示から2項目の併記へ、画面輝度は150から200へ、動画は1920×1080の30fpsから3840×2160の60fpsへ、というものです。
    条件が重くなっているので、同じ機種でも3.0の数字のほうが短く出ます。

    換算はできません。

    測定条件の変更による消費電力の増加が一律ではないため、動作時間を計算で求めることはできません。

    そして、2.0と3.0を並べて書く期間には、期限が設けられていました。

    併記することは問題ありません。ただし、併記は 2024 年 11 月 30 日までとするようお願いします。

    その先については、こう書かれています。

    Ver. 2.0 は近年の技術の進歩、使用環境の変化に合っていませんので、2024 年 12 月1 日以降に販売する機種は Ver. 3.0 のみを記載するようお願いします。

    つまり2026年の時点では、新しい機種のカタログにVer. 2.0の数字が単独で出ていることは、本来ありません。
    出ていたら、その機種が2024年11月以前から売られているものか、表示が更新されていないかのどちらかです。
    どちらにしても、そこは確認する場所になります。

    なお、2.0の値を強調することについては、測定法の側が理由まで書いています。

    消費者保護の観点から、Ver. 2.0 の値を単独で使用する、あるいは強調するなど、優良誤認に至るような表現は避けること。

    数字が長いほうが、長く使えるとは限らない

    これはQ&A集の中でいちばん実務に効く一文だと思います。
    A社8.0時間、B社9.0時間なら、B社のほうが長く使えるのか、という問いへの答えです。

    画面輝度や OS、アプリケーション等が異なると B 社の方が短くなることもあり得ます。

    測定法が統一しているのは手順であって、機種の環境まで揃えているわけではありません。
    だから、そもそもこの数字は何なのか、という問いにも答えが用意されています。

    ユーザの使い方は多様であり、実際に使う条件の特定はできません。JEITA 測定法は、各メーカ間のバッテリ動作時間の測定方法を統一する方法として、どのメーカでも確実に測定できるよう考案されたものです。

    そして、使い方の案内はこうです。

    異なるメーカのノートパソコンを比較するときの「指標」のひとつとして活用頂ければ幸いです。

    指標のひとつ、です。
    選定の基準ではありません。

    実務としては、自社の比率を1回だけ測る

    では何を手がかりにするか。
    自社で1台だけ実測して、カタログとの比率を出すことです。

    1台借りるか、1台だけ先に買って、いつもの会議で使ってもらいます。
    何時間持ったかを記録します。
    カタログの動画再生時の数字と比べて、何割だったかを出します。

    その比率が分かれば、次からはカタログを見て見当がつきます。
    2割なのか5割なのかは、会社によって違います。
    使っている常駐ソフトも、会議の頻度も、画面の明るさも違うからです。
    1回測れば、次の買い替えでも使えます。

    電池は、買った日がいちばん長い

    もう1つ、測定の前提を確かめておきます。

    基本的に動作時間は、新品相当のバッテリを満充電状態でバッテリ動作を開始し、シャットダウンまたは休止状態に移行するまでの時間を測定した結果とする。

    新品相当の電池を、満充電から。
    カタログの数字は、買った日の数字です。

    充電と放電を繰り返せば、電池は少しずつ持たなくなります。
    だから「ぎりぎり足りる」機種を選ぶと、2年目には足りません。
    リース期間や更新周期と一緒に考えることになります。
    4年使う予定なら、4年目でも足りるかで選ぶ、ということです。

    必要な時間は、人によって違う

    そして、そもそも何時間必要なのかを決めずにカタログを見ると、長いほうがよいという理由だけで高い機種を選ぶことになります。

    事務所の自席で使う人は、コンセントに挿しっぱなしです。
    駆動時間が効くのは、停電のときと、席を移動するあいだだけです。

    会議室を回る人は、1回1時間の会議を1日に何回か。
    あいだに自席へ戻れるなら、必要なのは連続1時間です。

    外回りの人は違います。
    朝出て夕方戻るなら、充電できない前提で6時間から8時間です。

    必要な時間は、だいたい3種類くらいに分かれます。
    全員に同じ機種を配ると、いちばん長い人に合わせることになり、いちばん短い人の分まで高く買うことになります。


    新しいパソコンで、プリンターだけ使えない

    駆動時間の次は、周辺機器です。

    最近のノートパソコンには、Armという系統の頭脳を積んだものが増えています。
    電池が長持ちする代わりに、内部の作りがこれまでと違います。
    Microsoftのサポートページに、この機種で何が動いて何が動かないかが書かれています。

    アプリは動く、と書かれている

    まず、心配のいらないところから。

    はい。ほとんどの Windows アプリは、他のWindows 11 PC と同じように、Windows 11 Arm ベースの PC にインストールして実行できます。

    表計算もメールもブラウザも動きます。
    問題はその先です。

    ドライバーは、別の条件で決まる

    同じページの「制限事項」の1つ目です。

    ハードウェア、ゲーム、アプリのドライバーは、Windows 11 Arm ベースの PC 用に設計されている場合にのみ機能します。

    そして、こう続きます。

    ドライバーが動作しない場合は、それに依存するアプリまたはハードウェアも動作しません (少なくとも完全ではありません)。 周辺機器とデバイスは、依存するドライバーがWindows 11に組み込まれている場合、またはハードウェア開発者がデバイスの Arm64 ドライバーをリリースした場合にのみ機能します。

    ドライバーは、機器とパソコンのあいだをつなぐソフトです。
    これが用意されていなければ、機器は動きません。
    アプリがいくら動いても関係ありません。

    どこで使われているかも、具体的に挙げられています。

    通常、ウイルス対策およびマルウェア対策ソフトウェア、印刷ソフトウェア、PDF ソフトウェア、支援技術、CD や DVD のユーティリティ、仮想化ソフトウェアで使用されます。

    印刷ソフトウェア、と書かれています。
    プリンターが動かないのは、ここです。

    使えない機能が、名指しで書いてある

    同じ制限事項の中に、もっとはっきりした記述があります。

    Windows FAX とスキャンは使用できません。 この機能は、Windows 11 Arm ベースの PC では使用できません。

    Windowsに標準で入っているFAXとスキャンが使えません。
    複合機でスキャンして取り込む運用をしている会社は、ここで止まります。

    もう1つあります。

    一部のサード パーティ製ウイルス対策ソフトウェアをインストールできません。 Arm ベースの PC 用に作成または更新されていない限り、Windows 11 Arm ベースの PC にサード パーティ製のウイルス対策ソフトウェアをインストールすることはできません。

    会社で入れているウイルス対策ソフトが入らないことがあります。
    これは1台だけ試したときに気づきにくい部分です。
    試したのが個人の端末で、会社のソフトを入れていなければ、問題は起きません。

    プリンターについては、道もある

    悲観的な話ばかりではありません。
    同じページには、こうも書かれています。

    Windows 11 Arm ベースの PC は、印刷標準 Mopria をサポートするプリンターを含む、ほとんどのプリンターをサポートします。

    Mopriaは印刷の共通規格です。
    これに対応しているプリンターなら、専用ソフトがなくても基本的な印刷ができます。

    ただし、基本的な印刷です。
    両面や集約、部門ごとの課金といった、専用ソフトで使っていた機能まで同じかどうかは別の話になります。

    そして、確認の方法が明記されています。

    ハードウェア開発者が、Windows 11 Arm ベースの PC で実行されるドライバーのバージョンを公開しているかどうかをチェックすることをお勧めします。

    確認先は、機器のメーカーです。
    パソコンのメーカーではありません。

    これはArmだけの話ではない

    ここまでArmを例にしてきましたが、同じことはOSを新しくするときにも、機種を替えるときにも起きます。
    アプリの動作確認だけして、機器の確認をしないと、どこかで止まります。

    買う前にやることは4つです。

    • いま使っている周辺機器を全部書き出す。複合機、ラベルプリンター、レシートプリンター、スキャナー、カードリーダー、業務用の測定機器、鍵の付いたUSB機器。壁と机の下を見て回る

    • それぞれのメーカーのページで、型番を入れて対応OSの欄を見る

    • 会社で入れているソフトのうち、機器を触るものを確認する。ウイルス対策、資産管理、印刷の管理、暗号化。これらは裏でドライバーを使っている

    • 確認できないものが1つでもあれば、まず1台だけ買って試す

    全台入れ替えたあとに気づくと、戻せません。


    「翌営業日対応」の翌営業日は、いつから数えるのか

    3つ目は保守です。
    見積書に「翌営業日対応」と書いてあると、壊れても翌日には直る、と読めます。
    実際には、契約どおりに動いた結果としてそうならないことがあります。

    ここでは例として、Dellが公開しているサポート受付時間の条件を見ます。
    条件は会社と契約によって違うので、自社の契約書で確認してください。

    受付には、締切時刻がある

    翌営業日対応オンサイト保守サービスの、サービス手配受付時間です。

    月~金(祝祭日および 12/29~1/3 を除く)9:00~16:00

    16時までです。
    夕方に壊れたら、その日は受け付けられません。
    ここまでは、多くの人が想像すると思います。

    16時までに終わらせるのは、電話ではない

    問題は注記のほうです。

    ※1 16:00 までにデルテクニカルサポートによるハードウェア障害箇所の特定がなされない場合、その翌営業日が受付基準日となります。

    16時までに済ませておく必要があるのは、電話をかけることではありません。
    障害の箇所を特定することです。

    15時に故障して、15時20分に電話する。
    担当者と一緒に切り分けを始める。
    再起動、部品の抜き差し、ログの確認。
    これが16時を過ぎた。

    このとき、受付の基準日は翌日になります。
    そして翌営業日対応なので、部品が来るのはそのまた翌日です。
    金曜の午後なら、月曜が基準日で、火曜に来ます。
    壊れてから4日目です。

    契約どおりです。
    誰も間違えていません。

    なお、時期によっては受付時間そのものが動くことも書かれています。

    物流繁忙期(ゴールデンウィーク期間、盆期間、および年末年始期間等)は、交通状況等により事前予告なく受付時間が変更される場合があります。

    時間の指定はできない

    もう1つ、注記があります。

    ※3 オンサイトエンジニア訪問時間およびパーツ配送時間の指定はできません。オンサイトエンジニアは 19:00 を超えて修理作業を行わないものとします。

    翌営業日に来るのは確かでも、何時に来るかは選べません。
    朝いちばんに来て9時半に直るのか、夕方に来るのかで、その日の仕事の組み立てはまったく違います。

    社内で「翌日に直る」が「翌日の朝から使える」と受け取られると、そこで食い違います。

    地域と部品で、日数が変わる

    対象地域も分かれています。

    翌営業日サービス地域: 本州全域、四国各県、札幌市、沖縄本島、九州全域 (いずれも一部地域を除く)

    これに対して、次の区分があります。

    翌々営業日サービス地域: 札幌市以外の北海道 お打ち合わせ後の決定: 離島、その他一部郡部

    同じ契約でも、拠点によって届く日が違います。
    本社で決めた保守契約を全拠点に付けている会社は、ここを確認しておく価値があります。

    さらに、受付が午後になった場合の注記もあります。

    ※7 本サービス手配受付が午後になる場合、一部地域の配送が翌営業日以降に延期される場合があります。

    そして、部品でも変わります。
    ノートパソコンでは、ここが効きます。
    リチウムイオン電池の配送について、航空各社が空輸を禁止しているため陸送に切り替えた、という経緯が書かれたうえで、こう続きます。

    これにより、一部の地域におきまして、従来の翌営業日での配送が、翌々営業日以降での配送になる可能性があります。

    ノートパソコンで多い故障の1つが電池です。
    そして、それがいちばん遅れる部品でもあります。
    第1章で見たとおり、電池は年々弱くなります。
    更新の終盤にいちばん壊れやすいものが、いちばん届きにくい、という組み合わせになります。

    では、何を見るか

    保守の見積もりを比べるとき、見るのは年数ではありません。
    次の5つです。

    • 受付の締切時刻と、そこまでに何が終わっている必要があるか

    • 訪問修理か、引き取り修理か。引き取りなら往復の日数が加わる

    • 自社の拠点が、どの地域区分に入るか

    • 部品によって日数が変わるかどうか

    • 代替機があるか

    そして、いちばん現実的な備えを書いておきます。
    1台だけ、予備を持っておくことです。

    5年の保守を付けるより、予備を1台置くほうが安い場合があります。
    壊れた端末を送り出して、予備で仕事を続ける。
    戻ってきたら予備に戻す。

    保守は、修理してもらうための契約です。
    仕事を止めないための備えは、別に用意するものです。


    買う前に作る、1枚の表

    ここまでの3つは、どれも「買う前に調べておけば分かること」でした。
    では、何を調べておくのか。
    表計算ソフトで1枚、使う人ごとに1行の表を作ります。
    列は5つです。

    • 持ち出すかどうか。社内だけで使うのか、持ち歩くのか。持ち歩くなら、電源のない場所で何時間使うのか

    • つなぐ機器。その人が使う周辺機器を全部書く。書き出さないと確認できない

    • 止まったときの影響。1日止まっても困らないのか、半日で業務が止まるのか。ここで保守の要否が決まる

    • 置き場所。拠点によって保守の到着日が変わる

    • いつまで使うか。リースなら期間、購入なら更新の目安。最終年でも電池が足りるかで選ぶ

    この5列を、10人分でも20人分でも埋めます。

    全員に同じものを配らない

    表を作ると、たいてい分かることがあります。
    全員に同じパソコンを配る必要がない、ということです。

    事務所から出ない人に、長時間の電池は要りません。
    1日止まっても困らない人に、当日対応の保守は要りません。

    同じ機種で揃えると管理は楽になります。
    ただ、揃えることの利点と、要らない性能に払う金額は、別に数えるべきものです。
    表があれば、2種類か3種類に分けたときの差額がすぐ出ます。

    見積もりを取るときに、この表を渡す

    実務でいちばん効くのは、ここだと思います。

    販売店に見積もりを頼むとき、台数と機種名だけを伝えると、返ってくるのは機種と金額です。
    この表を渡すと、返ってくるものが変わります。
    周辺機器の対応可否、保守の区分、地域の条件。
    こちらが確認したかったことに、向こうが答える形になります。

    そして、答えられない項目があれば、そこが確認すべき場所です。

    1台だけ先に買う

    どれだけ表を作っても、実際に動かすまで分からないことは残ります。
    だから、まず1台です。

    1台入れて、その人に2週間使ってもらいます。
    見るのは3つです。

    • 電池が何時間持ったか。カタログとの比率を記録する

    • 周辺機器が全部動いたか。印刷、スキャン、社内システム、会社のソフト

    • いつもの仕事が、同じ手数でできるか

    これで問題がなければ、残りを発注します。
    問題があれば、そこで止まります。

    表は、捨てない

    最後に1つ。
    この表は、今回の買い替えのために作るものではありません。
    次の買い替えのときに、また同じ調査をしないための資料です。

    誰が何を使っていて、どの機器がつながっていて、どの拠点にあって、いつまで使うか。
    これは買い替えのとき以外にも要ります。
    故障したとき、人が入れ替わったとき、拠点を移すときです。

    この表がない会社では、買い替えのたびに同じ調査を一からやります。
    前回やった人は、もういません。

    作るのに半日、次に使うときに助かるのは数日分です。


    2026年9月時点の最新状況

    3つ、確かめておきます。

    測定法は、Ver. 3.0が現行のまま

    JEITAのパーソナルコンピュータ関係ガイドラインの一覧を2026年9月13日に開いて確認しました。
    バッテリ動作時間測定法として載っているのは2023年5月のVer. 3.0だけで、その後の改訂は出ていません。
    Ver. 3.0の本文にも、見直しの予定は書かれていません。
    Q&A集にあるのは「今後とも技術や使用環境の変化を注視し、必要があれば見直します」という一文だけです。

    Ver. 3.0への切り替えは、すでに済んでいる時期

    Ver. 3.0への移行は、次の予定で進められました。

    2023 年 12 月1日以降、各社の新製品のカタログ等に Ver. 3.0 で測定した動作時間が順次記載されていきます。

    併記は2024年11月30日まで、2024年12月1日以降に販売する機種はVer. 3.0のみ、とされています。
    2026年9月の時点では、切り替えから1年半以上が経っています。
    したがって、いま新品として売られている機種のカタログに出ている数字は、Ver. 3.0の前提で読んでよいことになります。

    裏返すと、いま見ているカタログに2.0の数字しか出ていなければ、それは新製品ではありません。
    在庫品や型落ちを見ている可能性があります。
    買い替えの検討中に安い機種が目に入ったときの、見分けの1つになります。

    期限に追われて買う必要は、いまはない

    買い替えを急がせていたWindows 10のサポートは、2025年10月14日に終了しています。
    Microsoftのページにも「Windows 10 は 2025 年 10 月 14 日にサポート終了を迎えました」と書かれています。

    ただ、終了後の受け皿は残っています。
    個人向けの拡張セキュリティ更新プログラム(ESU)については、Microsoftのページに次のように書かれています。

    Windows 10 のサポートは終了しました。 2027 年 10 月 12 日にプログラムが終了するまで、いつでも ESU に登録できます。すでに登録している場合は、その日まで自動的に補償が継続されますので、手続きは不要です。

    法人や教育機関については、Microsoft Learnのページで、登録した端末はサポート終了から最大3年間セキュリティ更新を受け取れると説明されています。
    ボリュームライセンスで年単位の購入になること、2年目から入る場合は1年目の分もあわせて支払う必要があることも、同じページに書かれています。

    つまり、今日いきなり全台を止めなければならない状況ではありません。
    この記事で挙げた3つの調査、駆動時間の実測、周辺機器の洗い出し、保守条件の読み合わせには、時間がかかります。
    その時間は、いまならまだあります。


    まとめ

    • カタログのバッテリー駆動時間は、JEITAバッテリ動作時間測定法(現行Ver. 3.0、2023年5月31日発行)で測られている。動画再生時とアイドル時の2つを併記するのが原則で、アイドル時を大きく見せることは禁じられている

    • 測定時、画面輝度は200cd/m2以上、無線LANはアクセスポイントに接続した状態。一方、裏で動くアプリの扱いは規定されておらず、止めてもよいことになっている

    • JEITAのQ&A集は「実際のバッテリ動作時間を保証するものではありません」と明記し、著しく短くなる場面の1つ目にオンライン会議を挙げている

    • 版が違う数字は比べられない。換算式もない。2024年12月1日以降の機種はVer. 3.0のみを記載することになっている

    • アプリが動くことと、周辺機器が動くことは別。ドライバーはArm用に設計されている場合にのみ機能し、印刷ソフトウェアはその例として名指しされている。WindowsのFAXとスキャンは使用できないと明記されている

    • 確認先は機器のメーカーである。パソコンのメーカーではない

    • 翌営業日対応には受付の締切時刻があり、そこまでに終わっている必要があるのは電話ではなく障害箇所の特定である。訪問と配送の時間は指定できず、地域と部品によって日数が変わる

    • 仕事を止めないための備えは、保守年数ではなく代替機である

    • 買う前に、使う人ごとに1行の表を作る。列は、持ち出すかどうか、つなぐ機器、止まったときの影響、置き場所、いつまで使うか

    この4つに共通しているのは、書いてある言葉の意味を確かめる、という作業でした。
    書いてあることは正しいのです。
    ただ、読む側が思っている意味と、書いた側の意味が違います。

    皆さんの会社に、誰が何の機器を使っているかの一覧はあるでしょうか。


    参考・引用元

    バッテリー駆動時間の測定法

    周辺機器とドライバー

    保守サービスの条件

    Windows 10のサポートと拡張セキュリティ更新プログラム


    実務で使う書式について

    この連載の内容を、社内でそのまま使える書式にまとめたものを、別のマガジンで公開しています。規程のひな形、対応フロー、チェックシート、報告書式などです。

    実務で使う書式・キット
    https://note.com/yunta_fukurou/m/mfc25857fab40


    関連する記事

    パソコンの価格そのものの話は、別の記事で扱っています。
    部品が下がっても本体が安くならない理由を、メモリ相場と為替から見ています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n333f7dce39e4

    カタログの数字を読むという意味では、モニターの記事が近い形です。
    画面の大きさや距離には、厚生労働省が決めている数字があります。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n396fab9e1d40

    機種の中身をどう選ぶかは、こちらで扱っています。
    CPUとGPUの違いと、型番の読み方をまとめています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n531e48516bdb

    誰が何を使っているかを一覧にする話は、権限の側でも書いています。
    共有リンクと退職者のIDをどう棚卸しするかをまとめています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n88b3e264756d

    買ったあとにつなぐ側の話は、こちらで扱っています。
    ケーブル、充電、外付けの画面で、同じ形なのに結果が変わる場面をまとめています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n18f830c7d620

    本体に入れる保存装置の寿命は、別の記事で扱っています。
    同じ1TBでも書ける量が25倍違う理由と、あと何TB書けるかの数え方をまとめています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/ncab65f480736

    持ち出して使う記録媒体は、別の記事で扱っています。
    箱の最大速度ではなくマークの数字を見る理由と、その読み方をまとめています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n7d5faa7c6ff9

    アクセスポイントを増やしても速くならない場合は、別の記事で扱っています。
    端末が移る条件と、無線の名前を1つにまとめる手順をまとめています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n30613cb10f85

    その端末を何人で使うかで、要る契約の数が変わります。
    共用パソコンの認証と、会議を同時に開ける数をまとめています。
    https://note.com/yunta_fukurou/n/n46d27b9ebae5

     
     
    Digital Workplace Architect|社内外のIT・AIの導入と運用 IT・AI・セキュリティと周辺機器の「今さら聞けない」を一次情報で解説。書式・キットも。 Amazonのアソシエイトとして、梟 〜GLEANINGS〜は適格販売により収入を得ています。

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