環堂で聞いた話
編者より
ある環堂に長く通った者の筆記が、束になって残っている。
誰が書いたのかは分からない。名も、素性も、どこにも書かれていない。日付もない。かわりに、それぞれの話の頭に、その日がどんな日だったかが一行だけ添えてある。刈り入れのあとだった、雨が続いていた、というふうに。書き留めた者にとっては、そちらのほうが日付だったのだろう。
説いた環の神官の名も、書かれていない。この筆記の中では、ただ堂師さまである。
読みやすいように文字を整えた。言葉は、そのままにした。
以下、束の中から九つを選んで並べる。教えの筋がひととおり通るように選んだつもりだが、これは説教の写しであって、教えそのものではない。詳しく知りたい向きは、聖典を開いていただきたい。
九つで、束の三分の一ほどである。残りは、いずれまた。
——環は開いている。