グレースケールからカラフルへ No.7~創作大賞2025 ファンタジー小説部門エントリー作品
さっきお知らせを受け取りました。スキを沢山いただき本当に嬉しいです♪

第1章~第6章
第1章 学校に行く理由を教えて
第2章 居場所探し
第3章 ワタシルーティン
第4章 迷い込んだ場所
第5章 それぞれの持ち場
第6章 迷わない自分へ
第7章 集めた3つのしるし
「マリン、大丈夫?チョコ連れてきたよ」
と芙美香が声をかけると、
「おおーピンクのお姉さん、マリンじゃん」
とチョコが驚いたように言った。マリンは
「あ、チョコ、生きていたんだ。良かった」
と笑いを浮かべたが、明らかに困惑の表情が混じっていた。
「マリン、どうしたの?何かあったの?」
と芙美香が聞くと、マリンは持っていたものを手のひらに乗せて見せた。透き通った水晶でできた鍵だった。両手にピッタリ収まる程の大きさで、長さは20センチほどあるだろうか。
「それどこの鍵?その鍵どうしたの?」
と聞くと、マリンがぽつりぽつりと話し始めた。
芙美香がチョコを探しに村に下った後、イチシが戻って来て、マリンを村人たちの避難場所に連れて行ったのだという。
山道からそれた藪をイチシの後について歩いた。どれほど歩いただろうか。イチシがある程度道を作ってくれるのだが、人が通ったことが分かると目印になってしまい、避難している村人たちの安全を脅かすということで、灌木の枝やつるを切らずに歩いた。
マリンのワンピースは灌木の枝葉にこすれたり、枯れ枝に刺さって穴が開いたが、イチシに遅れないようついていった。そしてつるがはい回っている岩戸をあけると、中は天井が高い洞窟になっていて、大勢の村人が老若男女子供まで身を寄せ合っていた。
「おい、みんな、この人はわしらに危害を与える人じゃねえ。わしに水を飲ませてくれて介抱してくれた。わしらの村を平和に戻すために来てくださったお方だ。わしを信じて安心してくれ」
イチシは怖がっている村人たちに言いながらマリンを奥に連れて行った。マリンは洞窟に入ってから人々の不安そうな表情や動作からピリピリした空気を感じていた。村人たちから「ここに来るな」というような冷たい視線をなげられたり、思わず殴りかかろうとする人さえ現れた。そのたびにイチシが丁寧にその人たちに説明してくれてなんとか洞窟の奥に行けたという。
「ここで待っていて下され」
とイチシが言うと、幕が下りている部屋の奥に入っていった。ほどなくイチシが出てきて、
「わしに付いてきて下され」
と言うので、マリンは次は何が出てくるのかとドキドキしながら後を追った。奥には部屋がいくつかあるようで、一番奥の部屋に招かれた。そこには弱々しく老人が横たわっていた。
「そこの方、よく来てくださった。この『イチシ』に水を飲ませたり解放してやってくれて心から感謝申し上げる。この『イチシ』がいなければわしの仕事は引き継ぐ人がいなくなるのでな。わしはもう起き上がれないのでこのままの格好で失礼する。
本題に入るが、どういうわけか、わしらの村とそなたの世界が繋がってしまったことで、わしらは何千年ものあいだわしらの部族だけで穏やかに平和に暮らしてきたのだが、今回その生活が失われてしまった。
わしは妖術を使う家系に生まれてな。この村の人々を守るためにいろいろな術をつかったり、病気を治したりしてきた。その術を使って村人たちの穏やかな生活を奪った者たちを殺すのではなく一つ所に集めた。そして術を使い結界を張った上で鍵をかけて封じ込めた。
じゃが、封じ込めただけでは何の解決にもならない。わしらは元の穏やかな生活をもう一度手に入れたいのだが、暴れた者たちを閉じ込めておくだけだと、また今回と同じことが起こりうる。結界もいつか時が経てば封印が溶けてしまうのじゃ。
そこで山頂に住んでいる魔法使いのばあさんと相談してある策を導き出した。しるしを集めることで一括相殺するまじないをすることになった。
その3つのしるしを集めることで、互いの世界は切り離され、全て元に戻されるのじゃ。そしてしるしを自発的に探してくれる「誰か」はこの土地に不案内な者に任命して探しだすことを条件としたんじゃ。
もともとはわしらとしては突然起こった災害じゃ。むろん村人たちが襲撃されているのを手をこまねいてみているわけにはいかない。とはいえ、ここで突然やってきた連中をただ処罰するだけでは何も収まらない。
ここまで話してお分かりかな?そなたがここに来てくれているということは、その条件を満たすための決意と覚悟を受け入れた証とみた。
この条件は、自分の意志で探して動くことじゃ。その意志こそが繋がった世界を切り離すことができるエネルギーだからじゃよ。おぬしはここでしるしの1つを手にすることができる。覚悟があるか?」
と長老がいうので、マリンは口ごもった。
「怖い」
マリンはものすごい恐怖を感じたのだった。しかし同時に、老婆が言った「自分の感覚に従う」という言葉を思い出した。マリンは「なぜ村人たちに会いに来ようとしたか」を思い出した。
いつも可愛がってくれる祖母の顔が脳裏に浮かんだ。いつもマリンを元気づけてくれた祖母と永遠の別れの前にもっと一緒にいるために早く元の場所に戻らなければ!そのために自分ができることなら何でもすると決めたはずだった。
その「自分ができること」が「覚悟する」ことではないのか?確かにそうだったが、なぜかマリンの全身全霊で「覚悟するなんて怖すぎる」という思いが襲って来て「覚悟する」という言葉が出なかった。
「どうしよう」
マリンは目を閉じた。老婆が言った「自分の感覚に従う」ならどうしたらいいか考えてみた。「覚悟したら私は死ぬのだろうか?」もし死んだとしたら逆に祖母に会えないだろう。ただまだ死ぬわけではない。
マリンは「覚悟をする」ということが怖かったことに気付いた。もし、自分の感覚に従うなら、この状況を乗り越えたい!そのためには覚悟を決める選択をする、その意思表示をする必要があると受け入れた。
「はい、覚悟します」
マリンは絞り出すような声で長老に言った。長老はマリンをみてニッコリわらった。
「よかろう。そなたにこの鍵を託す。この鍵は3つのしるしの1つとなる鍵じゃ。無法者たちを結界に閉じ込めているがその結界をこの鍵一つで動かすことができる。この鍵はそれだけ覚悟を持ったものにしか渡すことができない。今の言葉を聞いて安心してそなたに任せることができる」
長老は言い終わると、マリンを手招きして持っていた水晶の鍵をマリンの手に握らせた。マリンはそのまま鍵を握りしめ、イチシに見送られ元の山道まで戻ってきたが、そこで腰が抜けてしまったという。
「どうしよう私」
とマリンが言った。
「んーお前が悩むことないんじゃないか?やることをやったまでよ。偉いじゃん」
とチョコが言った。
「そうだね。すごく怖かったけど乗り越えた本当にマリンは偉いよ。その鍵を持って3人で山の上の小屋に行こう」
と芙美香が言った。
「歩けそう?マリンは武器を置いていった方がいいね」
と芙美香が言って、芙美香とチョコが両脇からマリンを支えて山道を登り、元の小屋まで戻った。そして赤いドアから中に入った。
「ただいま」
と芙美香が言いながら中に入ると、暗い部屋は更に暗くなったように感じた。老婆はミケのそばでこっくりこっくりうたた寝をしていた。チョコとマリンが芙美香に続いて部屋に入ってきた。
ミケはずっとパソコンに張り付いていたのだろう。
「ミケ、戻ったよ。何かわかった?」
と芙美香が声をかけると、
「もうちょっとなのよ。ようやくこのバグの原因の文字列がわかったから、今直しているところ。ちょっと座って待っていて」
とミケが言った。
「おおーミケか。三毛猫帽が似合ってるな」
とチョコが言った。
「え、あんたチョコ?一体どこで何をしていたのよ」
とミケがチョコを見ながら言った。
「ようやく4人のチームが一緒になった」
とマリンが言ってみんなで顔を見合わせて笑った。
「ただいま。おばあさん、実は私たち手がかりを2つ見つけてきたんです。一つはマリンが持っている水晶の鍵。もう一つはふもとの村で一人生き残っていたこのチョコです」
と芙美香が老婆に言った。
「ふむ。なるほど。水晶の鍵は確かにあってはならないもの。長老はどうしていたかな?」
と老婆が言った。
「もう長くないとおっしゃってました。この鍵は私が預かりました。これはしるしの1つなのだそうです」
とマリンはそういって鍵を見せた。すると
「出来たー!これでバグが直るよ!」
とミケが大声を出して椅子片立ち上がり、みんなを振り返って言った。すると老婆が
「それは良かった。終わったね。じゃあ始めるよ」
と言った。
「え?始める?」
と芙美香、ミケ、マリン、チョコの4人が同時に言った。
「そうさ。これから私が招待した『外の勇者』達が探してくれたこの3つのしるしで繋がれた世界を分けて元に戻すのさ」
と老婆は言って、古い地図のような巻物を机に広げた。なにやらいろいろ書いてあるが見たことのない文字で芙美香には読めない。その巻物を広げて、老婆は小さな声で呪文を唱えた。
すると巻物に描かれたものが変わり、なにやら図形が描かれた。そして老婆はそこにあったノートパソコンの電源を抜いてパソコンを閉じ、巻物の四角い図形の上に載せながらこう言った。
「1つはミケが見つけてくれたプログラムのバグ。ミケのものすごい集中力でたった1か所おかしなところを見つけてそれを直したのさ」
次にマリンの方に向いて、
「2つ目はその鍵だ。その鍵を持っているだけで怖かったろう。お疲れ様。もう大丈夫、こちらに載せて、元の世界に戻すために使うよ。その水晶の鍵をこの巻物に載せてごらん」
と言った。マリンはうなずいて鍵の形をした図形の上に持っていた水晶の鍵を置いた。みんな固唾をのんで見守っていた。
「そして3つ目の手がかりはあんただ」
といって老婆はチョコを指さした。
「え?俺?」
といってチョコが自分を指さした。
「そうだ。お前さんはこの3人とずっと同じチームでゲームをしていたんだろう?でも世界がつながる時にお前さんも村人たちの安全な生活を脅かす者達と同じ場所に行ってしまったのさ。
でもお前さんは他のゲーマーたちと違い、村人に襲い掛かったり困らせることはしなかった。だからお前さんは一人だけ村に残っていたんだ。そうじゃなければこの鍵で結界の中に封印されていたことだろうよ」
と老婆は言った。
「え、俺、結界に封印されたかもしれないんですか?そりゃあぶねぇ」
とチョコが言うとミケとマリンと芙美香が笑った。
「そうさ、だからお前さんはこの巻物の上に立ってもらういけにえになるのさ」
と老婆が言った。
「え、チョコもしるしの1つってことですか?いけにえって死んじゃうんですか?」
と芙美香が聞いた。
「まあ、死ぬわけではない。この世界とおぬしらの世界を分かつためにヒーローが必要なわけじゃ。安心なされよ」
と老婆が言うと、
「ヒーローか。悪くないな」
とチョコがまんざらでもないという顔をして、机の上に登って巻物の上に立った。
準備が整うと、老婆は巻物の前に立ち、何やら呪文を唱え、両手を振り上げたり下げたりした後、右手をこぶしを作りふりあげると、白い煙がもわっっと立ち込めた。チョコは「わー」という悲鳴を残して煙と共に消えてしまった。
☆ドキドキしながら創作大賞に初エントリーします。もしよかったらスキやフォローお願いします💛
#創作大賞2025
#ファンタジー小説
#グレー
#グレースケール
#カラフル
#長老
#マリン
#イチシ
#芙美香
#ミケ
#チョコ
#しるし
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします!いただいたチップはクリエイターとして大好きな情報収集に充てさせていただきます!