見出し画像

死ぬまでに観たい世界遺産映画101《第2章:アジア編》

第2章:アジア編


19.ラストエンペラー(The Last Emperor、ベルナルド・ベルトルッチ、1987)|故宮博物院(紫禁城)

北京と瀋陽の故宮の構成遺産である故宮博物院はかつて紫禁城と呼ばれた場所。一般人の立ち入りを禁じる《禁城》を冠するこの城は清の時代、政治の中心となった。

ベルナルド・ベルトルッチ『ラストエンペラー』を象徴する溥儀ふぎが即位する場面は故宮太和殿で撮影されている。傀儡のコマとして政治のトップにいながらも時代に翻弄された溥儀の人生を象徴するように故宮博物院の壮大荘厳な空間が坂本龍一、デイヴィッド・バーンそして蘇聡スー・ツォンの音楽に包まれる中で用いられている。

紫禁城が世界として存在し、外の世界のことを知らぬ溥儀。周囲の大人たちは、異様な間合いで彼を謁見する。何も知らぬ溥儀はそんな環境を受容していく。唯一、対等だったのは実弟・溥傑ふけつであり、乳母のアーモを巡る諍いは自分の手で人生を掴もうとする数少ないアクションであった。時は流れる。場内は時間の流れが止まったようであった。好奇心旺盛な溥儀はなんとかして場外へ出ようとするが止められる。自分の思い通りに人生を進められない様は彼に革命の心を宿すようになっていく。やがてクーデターによって紫禁城を追放される。その後は、政治犯として収容所に送られたり、満州国の皇帝に即位したりするがいずれも紫禁城時代同様に、外の世界から隔絶された中でその場に即した行動を求められる。政治によってコントロールされ、自分のアイデンティティが発現できず流されるがまま時代を駆け抜けていく。それは日中関係を揺さぶる歴史の転換期へ転がっていくのです。

溥儀は自分の手で世界を知ろうとした。しかし、政治的重要人物だったために、常に特定の領域に押し込められ操り人形のように政治に振り回されてきた。映画は広がりのあるような空間でありながら閉ざされている空気感が故宮博物院によって表現されている。奥行きのある空間に関係者が並ぶ。マスゲームのように関係者たちはお辞儀をし儀式を行う。その中心に溥儀がいる。幼少期の彼はこの状況を疑うことなく、純粋に振る舞う。それをカメラが客観視し、彼が荒涼としたハルビン駅で自殺を図る中で浮かべる回想と繋げることで傀儡な人生における孤独が強調されていく。

映画自体はフィクションの要素が強く、西太后は儀鸞殿ぎらんでんで崩御しており、この場面の装飾は実際とは異なる。しかし、科挙の最終試験である殿試や皇帝の即位、遷都と中国史の要を司る故宮博物院を中心にすることで溥儀の見た世界へ強く観客を惹き込むことができるのです。

20.黄泉の兵士: 始皇帝陵に眠る謎(Mysteries of the Terracotta Warriors、ジェームズ・トヴェル、2024)|秦始皇帝陵と兵馬俑坑

1974年、中国陝西省西安市臨潼区驪山ちゅうごくせんせいしょうせいあんしりんどうくりざんにて農民が陶製の人形・兵馬俑を偶然見つけた。学者たちが1年かけて調査すると、次々と兵馬俑や青銅製の武器が発掘された。驚くべきことに、この地は221年に中国初の統一国家を築いた秦の始皇帝陵墓であることが判明しました。中国史を塗り替える考古学的な大発見は世界にも影響を与え、発見からわずか十数年、世界遺産登録が始まってわずか10年という驚異的な早さで文化遺産に登録されました。

兵馬俑坑
※Wikipediaより画像引用

兵馬俑坑と聞くと、広大な坑道に兵馬俑が並べられている写真を思い浮かべる方が多いことでしょう。これは兵馬俑1号坑の様子であり、他にも未開の兵馬俑坑が存在するのです。実は半世紀以上経った今でも発掘調査が行われており、兵馬俑が修復されていることはあまり知られていない。

Netflixにて配信されている『黄泉の兵士: 始皇帝陵に眠る謎』は、明らかにされていない兵馬俑坑の発掘調査に密着したドキュメンタリーとなっています。まず、映画は兵馬俑がどのようにして発見されたかについて語る。1号坑のように直立した兵馬俑が土に埋まっていたわけではない。すべての兵馬俑が破損しており、400もの破片が地中に埋まっている。学者たちは気の遠くなるほどの分析を通じて、1体ずつ復元していくのです。また、武器や副葬品も出土する。これらは、中国史を裏付ける証拠となる。このドキュメンタリーが面白いところは、遺跡発掘がどのように歴史研究に活かされるのかを丁寧に解説している点にあります。

紀元前2世紀頃の歴史家・司馬遷が著した「史記」に記載された秦の栄枯盛衰の正当性を裏付ける作業が行われる。大量に見つかった足枷は、始皇帝が巨大な陵墓を作るため、大勢の人々を奴隷のように扱っていた様を証明しました。また、秦を衰退させたと言われている趙高の陰謀や陳勝・呉広の乱についても再現ドラマを通じて考察していく。考古学の面白さが凝縮されています。

なによりも、特別に許可が下りた墓の採掘調査シーンが手汗握るスリルとロマンに満ちている。ドームで覆われているものの副葬品の劣化が心配されるため、10トン近くあるフィールドを室内へ運び出すプロジェクトが行われる。数十メートルも地中深くに眠る無数の副葬品の塊を台車に乗せて、急斜面を登っていく。都度レールを敷いて軌道修正する人力での作業となるのだが、道半ばでレールがひしゃげて脱輪するリスクが高まる。すぐさまストップをかけて、レールを敷き、棒などで微調整しながら復帰し、地上へ運び出す。あまりにもスリリングな場面なため、無事に副葬品を運び出せて大団円の花火が打ちあがるシーンは観る者をも強制的に当事者にしてしまう迫力がありました。

21.HERO(チャン・イーモウ、2002)|九寨溝

『紅いコーリャン』『紅夢』で知られるチャン・イーモウが2002年に初挑戦した武侠映画『HERO』は、アクション監督であるチン・シウトン、クリストファー・ドイルの撮影によりまるで神作画なジャンプアニメを彷彿とさせる圧巻の世界を楽しむことができます。

秦王の時代、刺客に狙われている彼は信頼できる家臣以外を近づけないようにしていました。そんな中、無名ウーミンが現れる。中国最強の刺客を次々と倒したらしい彼は秦王に己の物語を話す。

キン・フ―作品さながらの軽やかな動きで宙を舞い、武器をしならせ制圧していく刺客たちのアクションが次々と展開されていく。回想形式の物語でありながらも、セリフは抑え、ヴィジュアルで詩的に物語っていく点が印象的です。膨大な弓が降り注ごうと動じることなく、そして一振りで周囲のオブジェクトを崩壊させていく異様さはクエンティン・タランティーノを唸らた。FANGORIAのインタビューによれば、本作の配給権を持っていたものの1年以上塩漬けにしていたミラマックス社に対してタランティーノが説得し劇場公開にこぎつけたとのこと。また、日本ではキネマ旬報読者選出ベスト・テンにて6位に選出されています。前年の『活きる』に引き続き、2年連続チャン・イーモウ作品が選ばれており、またこの頃『少林サッカー』や『キル・ビル』などといったアジアンアクション映画が日本で盛り上がっていたためゼロ年代を代表する映画ともいえます。

さて、『HERO』屈指の名場面として、透き通った湖水を跳ねながら戦うシーンがあります。この場面は中国の世界遺産である九寨溝きゅうさいこうで撮影された。チベット族の村が9つあることから名づけられた四川省の九寨溝は、五花海をはじめとする透明度の高く、沈殿した石灰岩の成分により青やオレンジになどといった色が浮かび上がる。このように景勝地として顕著な普遍的価値があることから登録基準(vii)で世界遺産に登録されています。

映画では、箭竹海せんちくかいにてジェット・リー演じる無名とトニー・レオン演じる「残剣(ツァンジェン)」が決闘する。肉体だけでなく精神との闘いであることを表現するために、顔のクローズアップと広大な箭竹海の中で飛び交う二人のロングショットを重ね合わせながらシーンを盛り上げています。

ちなみに、九寨溝は中国有数のジャイアントパンダの保護区としてもしられており、また絶滅危惧種である霊長類キンシコウの生息地でもあります。

22.ココシリ(Kekexili: Mountain Patrol、ルー・チュアン、2004)|青海フフシル

年間平均気温0℃以下、海抜4,500m以上もの山々とステップ地帯からなる青海フフシルはチベットカモシカの生息地として知られている。2017年に自然遺産として世界遺産に登録されました。無人地帯の美しさ、そして固有種の多さが登録の決定打となり登録基準は(vii)と(x)が認められている。

またUNESCOによれば以下のように保護の必要性が訴えられています。世界遺産には「危機遺産」と呼ばれる早急に保護が必要とされる際に認められる区分が存在するが、認定されていない世界遺産も当然ながら保護が必要とされているのです。

Inaccessibility and the harsh climate have combined to keep the property free from modern human influences and development while at the same time supporting a long-standing traditional grazing regime that coexists with the conservation of nature. Nevertheless, this ''Third Pole" of the world appears to be suffering from the impact of global climate change with disproportionally warming temperatures and changing precipitation patterns. The ecosystems and geographic landscapes are extremely sensitive to such a change and external threats need to be controlled to allow ecosystems to adapt to environmental change.
訳:アクセスの難しさと厳しい気候が相まって、この地域は現代人の影響や開発から守られ、同時に自然保護と共存する長年にわたる伝統的な放牧体制を支えてきました。しかしながら、この「世界の第三極」は、気温の不均衡な上昇と降水パターンの変化など、地球規模の気候変動の影響を受けています。生態系と地理的景観はこうした変化に極めて敏感であり、生態系が環境変化に適応するためには、外部からの脅威を制御する必要があります。

UNESCO「青海フフシル(Qinghai Hoh Xil)」より引用

チベット語で「美しい山」、モンゴル語で「美しい娘」を意味するこの地を舞台にした『ココシリ』は、チベットカモシカの密猟者との闘いを描いた作品です。

自然保護区を設置するための調査としてやってきた記者のガイは、パトロール隊についていく形でチベットカモシカ密猟の実態を追跡していく。高山では、殺害されたチベットカモシカの残骸を目の当たりにする。中には密猟者に殺害されたメンバーもいる。自然は厳しく、寒々しい荒野をバンで走り回りながら草の根活動として人を捕まえていきます。

その中でガイたちは構造的問題に直面する。地元の農民たちが貧困のために密猟の手伝いをさせられていたのです。中には診療を受けるための金を稼ぐ手段として仕方なしに行っている者もおり、こうした農民たちを捕まえて厳しく罰するのはどうかと葛藤する。映画は、広大なフフシルの大地にパトロール隊や農民をロングショットで捉えることによって厳しい現実を強調している。

このような現実を報道したことで青海フフシルの実態は国際的に注目され、森林警察が生まれ、森林保護区化された。本作は、青海フフシルの歴史を伝える重要な作品として制作され、第17回東京国際映画祭では審査員特別賞を受賞しました。

ちなみに、世界遺産登録時の名前『青海フフシル』と本作のタイトル『ココシリ』で表記ゆれが発生している。チベット語に近い呼び方が《フフシル》であり、モンゴル語を中国語に音写した《可可西里》をカタカナ表記したものが《ココシリ》となっている。

23.王の願い ハングルの始まり(The King's Letters、チョ・チョリョン、2019)|『八萬大蔵経』版木所蔵の海印寺

2007年にUNESCO世界の記憶に登録された高麗大蔵経板および諸経板は、サンスクリット語から漢字に翻訳された仏教大蔵経の原本。木版製作技術の資料としてだけでなく、高麗時代の様子を知ることのできる歴史的アーカイブとしても重要なものとなっています。また、驚くべきことに現在でも鮮明な状態で印刷ができる保存状態の良さも評価されています。

海印寺ヘインサ
には、仏教の経典である大蔵経板が8万枚も保管されており、そのことから『八萬大蔵経』と呼ばれています。海印寺は802年に僧である順応スヌン理貞リジェンによって創建されました。寺の名前になっている「海印」は華厳経の《海印三昧》にちなんでおり、仏教のひとつである大方広仏華厳経を経典とした寺院となっております。

海印寺がロケ地として使用された作品がある。『王の願い ハングルの始まり』は15世紀に李氏朝鮮の第4代国王・世宗がハングル文字を発明し公布した出来事に基づくフィクション作品となっています。15世紀、当時の朝鮮では、自国語を書き記す文字が存在しませんでした。大蔵経は漢字で書かれていたため、中国の漢字を学んだ上流階級だけが読める状況にあり、世宗はなんとかして市民にも読めるようにしたいと考えていました。そこで彼は、独自の文字を開発することを決意します。

本作はあくまでフィクションであることを強調しながらも、八萬大蔵経を独自の文字で翻訳しようとする有識者たちの試行錯誤のプロセスが面白い作品となっています。八萬大蔵経はサンスクリット語から漢字に翻訳されているため、それぞれの文字を音素レベルで分解していく。漢字のようなハイコンテクストな形態をやめ、表音文字としてどのように落とし込めばいいのか。また、誰でも覚えやすいようなアルゴリズムをいかに実装していくのかを考えていく過程はどこかエンジニアの開発業務に近いものがあります。また、この文字の開発は臣下たちに強いハレーションを引き起こしてしまい、世宗の苦悩に焦点があたっております。そのため、時代劇でありながらも現代劇のような雰囲気が漂っており不思議な一本となっています。

本作で世宗を演じたのは『パラサイト 半地下の家族』で主演を演じたことで知られているソン・ガンホ。国王でありながらも、葛藤故に威厳がなく、臣下たちからの信頼が揺らぎながらも国民を想い、信念で文字を開発しようとする複雑な心理を好演しています。

24.S21 クメール・ルージュの虐殺者たち(S-21: The Khmer Rouge Killing Machine、リティ・パン、2002)|トゥール・スレン虐殺博物館

2023年の第45回世界遺産委員会より「記憶の場」の概念が採択された。これはアナール学派の歴史学者ピエール・ノラが編纂した論文集「記憶の場」を近年の紛争リーセント・コンフリクツが絡む世界遺産の登録に応用しようとする試みとなっている。

原爆ドームやアウシュヴィッツ・ビルケナウのナチスドイツ強制収容所など一般的に「負の遺産」として扱われている世界遺産があるが、世界遺産条約において負の遺産は定義されていない。近現代の戦争や人類が犯した過ちを記憶に留め、将来の教訓とする概念として「負の遺産」を長年運用してきたのだが、2018年に「第一次世界大戦(西部戦線)の慰霊と記憶の場」が世界遺産登録に値すると推薦された際に問題となった。諮問機関であるICOMOSからは、関係当事者の認識に食い違いがあり評価するための議論が不十分であると勧告を出し、世界遺産委員会でも近年の戦争に関する遺産の登録は世界遺産条約の趣旨から外れると意見が出た。従来は「負の遺産」を適用し登録していたのだが、近年の紛争が絡む世界遺産の登録において無理が生じてきたため、新しい概念を必要とした。

ここで、ピエール・ノラの「記憶の場」が注目される。ノラは、ある事件がなぜ発生したのかというよりも今ある記憶や人々に共有された記憶がどのように語られていき変容していったのかを重要とし、記憶と歴史の関係性を掘り下げた概念「記憶の場」を提唱する。

記憶は常に想起と忘却を繰り返しながら、事実の歪曲をも取り込んで現在を生きているものと定義している。感情的で、自らの関心がおよぶ細部のみを受け入れている。

一方で歴史は現在を生きる記憶に対し、常に過去の再現(La représentation)となっている。事物の時間的な連続や変化、関係にのみ着目し、もっともらしい過去の連なりとして俗化する。歴史が生成されるプロセスは、記憶が持つ聖性を批判と分析によって奪っていくのです。

ノラは続けて、歴史学の特性を掘り下げた上で《歴史学の歴史》を語ることは危険な作業であると語っている。それは、歴史学もまた記憶と一体化したものであり、批判的に記憶から引き剥がすプロセスを伴うからとのこと。

歴史学は特性上、批判的な学問であることは自明となっている。なぜなら、歴史学者は先行研究を疑って見る必要があり、それらを断罪してきた。自らが記憶の犠牲になっていることに気づき、記憶といった異質なものから自分自身を追い出そうとしてきた背景があるからです。それによって抜け落ちてしまっているものに目を向けたのが記憶の場といえます。

第47回世界遺産委員会にて、「カンボジアの記憶の場所群 : 弾圧の中心地群から平和と反省の各所まで」が記憶の場として世界遺産に登録されました。クメール・ルージュの虐殺の記憶を顕著な普遍的価値を有するものとして人類全体で保護していくべく、旧M-13刑務所、トゥール・スレン虐殺博物館(旧S-21刑務所)、チューン・エク虐殺センター(旧S-21処刑場)の3つの資産が世界遺産として認められた。この中のトゥール・スレン虐殺博物館は、ドキュメンタリー映画の舞台として扱われた。リティ・パン監督は『S21 クメール・ルージュの虐殺者たち』の中で、空間を通じ記憶が呼び出される過程を映画へ落とし込んでいる。

トゥール・スレン虐殺博物館には、虐殺に関する写真や文献がある。当事者により再構築された絵もある。ありのままを捉える写真と記憶の外部化としての絵が交差する。現実/虚構、双方を繋ぐメディアとしてリティ・パンは加害者に当時のことを再現してもらう。牢屋に犬用の皿のようなものを放り込み、圧をかけながら与える。そこには加害者の声しかないのだが、我々は被害者の悲痛の叫びを感じ取ることができる。そして、加害者と被害者が対峙する。

類似の作品として『アクト・オブ・キリング』があるのだが、こちらは露悪的な手法となっていたのに対し、本作では繊細に過度な演出にならないよう再現を行う。そして目線を合わせないようなショットで加害者と被害者を同じ空間に捉え過去と向き合わせるのです。記憶の場を記録する映画として重要な一本であろう。

25.花様年華(In the Mood for Love、ウォン・カーウァイ、2000)|アンコール・ワット

ドラマシリーズ『繁花』で話題となっているウォン・カーウァイ監督の代表作『花様年華』。香港で新聞記者をしているチャウと秘書のスーは同じ日に同じアパートへ引っ越し隣人関係となったことから親密な間柄となる。奇妙なことに互いにはパートナーがいるのだが不倫しているらしい。心にぽっかりと空いた穴がパズルのピースのようにかみ合う。倫理的葛藤を抱きつつもふたりの心は近づいていく。

赤を強めた暖色セピアな空間の中でトニー・レオン演じるチャウとマギー・チャン演じるスーの関係性が静かに描かれる。カメラは男女の目線を逸らしながらも、離れることなく至近距離に留まる佇まいを捉えながら倫理と本心との間で反復横跳びをする。視覚芸術である映画の特性を活かした演出とトニー・レオンによる哀愁交じりの身体表象が評価され、第53回カンヌ国際映画祭では最優秀男優賞、フランス映画高等技術委員会賞の二冠に輝いた。

ウォン・カーウァイ監督は『ブエノスアイレス』におけるイグアスの滝に引き続き、世界遺産を心象世界のように扱っています。『花様年華』では、クライマックスにカンボジアのアンコール・ワットを持ってきている。束の間の情事は終わる。アパートという閉空間から解き放たれ、ふたりは別々の道を歩むかのようにチャウはシンガポール、そしてカンボジアへと移動する。カンボジアではアンコール・ワットを訪れる。12世紀前半、スーリヤヴァルマン2世が30年かけて建設した寺院アンコール・ワット。インド叙事詩やヒンドゥー神話などをモチーフとした浮彫が刻まれた場所。映画ではアンコール・ワットを廃墟のような空間として捉えており、チャンは壁の穴に何かを囁き土で埋める行動を取る。これは、スーとの情事は再び訪れることのない過去の遺物であることを象徴している。廃墟には、人為的な手触りがある。もはや機能していないが、過去に機能していた痕跡が廃墟にはある。アンコール・ワットには、上記のように物語が壁面に埋め尽くされている。そこにチャンの物語を埋めることで過去と折り合いをつけようとしているのです。

ちなみに、アンコール・ワットは肥前国の武士・森本右近太夫一房が落書きしていることでも知られているが、近年世界遺産だけでなく観光地を巡るオーバーツーリズム問題のひとつとして落書き問題がある。アウシュヴィッツ第二強制収容所では、観光客の落書きが問題となり、ガイドなしでの立ち入りを禁じていたりする。旅先で痕跡を残したくなるのは人間のサガであり、『花様年華』を観て旅先で歴史的建造物に手を加えたくなるのもわかるが、現在はできないので要注意です。

26.すれ違いのダイアリーズ(Teacher's Diary、 ニティワット・タラトーン、2014)|ケーン・クラチャーン国立公園

スポーツ大好き、笑顔が取り柄の青年ソーンは、体育の教員を志望する。しかし、山奥にある湖上の学校へと送られてしまう。電気も水道もない僻地、生徒もわずか数名。出鼻をくじかれたソーンだったが、しぶしぶ順応していくことにする。そんな中、前任者である女性教師エーンの日記を見つける。彼女もまたソーン同様に左遷させられ、試行錯誤苦労しながらも子どもたちと親密な関係となっていきました。そんな彼女の日記に勇気づけられながら、時に失望しながらソーンは子どもたちを教えていく。

タイで大ヒットしたハートフルコメディ『すれ違いのダイアリーズ』は、ソーンとエーンの間に流れるズレた時間を巧みな編集でもって繋ぎ合わせることで、駆け出し教師の成長をドラマティックに描いています。本作は大衆娯楽映画でありながらも高度な編集とカメラワークの業を観ることができる。ソーンが水上分校へ到着し扉を開けるショットの次に教室内からエーンの入室を捉えることで1年の行間を結ぶ巧みな編集がある。かと思うと嵐の場面では、長回しで先生が子どもたちを教室内へ入れカーテンを閉めようとすると壁ごと崩壊する怒涛の修羅場が映し出されるのです。

そんな『すれ違いのダイアリーズ』だが、実はタイの世界遺産ケーン・クラチャーン国立公園でロケが行われています。映画のモデルとなった水上学校は別の場所に存在するのだが、ニティワット・タラートーン監督が映画に相応しいロケ地を探す中でこの地を見つけたとのこと。映画撮影は制約がついて回る。バンコクから2時間ぐらいのところにありながらも電気も水道も通っていないケーン・クラチャーン国立公園は実話を映画に落とし込むに適していたのです。

ケーン・クラチャーン森林関連遺産群の構成遺産であるケーン・クラチャーン国立公園は、ミャンマー国境沿いテナセリム山脈に位置し、絶滅危惧種であるシロテテナガザルや希少種シャムワニなどが生息しております。2015年には固有種であるバラ科の植物プラヌス・カエンクラチャーネンシス(Prunus kaengkrachanensis)が発見されました。また、重要野鳥生息地でもあり、世界遺産に登録されている範囲の森林生態系は手つかずの状態が保たれているため、生物多様性に満ちた場所となっています。

この映画が製作された後、2021年に絶滅危惧種の生息地であり生物多様性を示す登録基準(x)が認められ、世界遺産に登録されました。

27.落下の王国(The Fall、2006、ターセム・シン)|タージ・マハル

映画の中で最も多くの世界遺産でロケした映画といえば『落下の王国』が頭に浮かぶであろう。日本ではカルト的人気を博している作品であり、一時期はDVDが廃盤、配信にもなく幻の一本となっていたのだが、2025年の冬にBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、グランドシネマサンシャイン池袋にて公開され話題となった。

一般的に本作でロケされている世界遺産は13件とされているが、じっくり映画を観ると最低でも17件もの世界遺産で撮影されています。その圧巻たる世界遺産で繰り広げられる夢物語に惹き込まれるものがある。

病院でアンニュイな日々を送っているアレクサンドリアはひょこんなことから大ケガを負ったスタントマンであるロイと仲良くなる。ロイは空想物語を語り、彼女と一緒に物語を紡いでいく。しかし、この物語にはロイのある意図が含まれていた。

本作は映画における編集と空想における編集を結び付けた内容となっています。映画は、特にサイレント映画時代は、生身の人間がスタントをする現実が映し出されている。しかし、編集というハッタリでもって虚構的世界が広がっている。空想も同様です。我々の記憶にある要素を繋ぎ合わせて世界を生み出していくのだが、それは非ユークリッド的空間であり、現実の位置関係からみるとあり得ないような遷移をする。また、様々な文化がひとつの物語構造に当てはめられ、その地の文化性とは異なる側面を見せる。たとえば、インドパートに着目する。

チャンド・バオリ
※筆者撮影(2024年)

サルの相棒がうろつく中で悲劇に見舞われる場面。青い街並みが特徴的なジョードプルで物語が展開するのだが、サルが落下した先は、チャンド・バオリとなっています。チャンド・バオリはインドの田舎町にRPGのようなダンジョンが鎮座している空間なため、現実の地理関係を知っているとあり得ない繋がりだとわかる。しかし、編集の妙によりシームレスに空間が繋がる。そして圧倒的な美しさでもって、そのハッタリを現実として観客も受け止める。これこそが空想の特性となっています。本作は複数の世界遺産を空間的に地繋がりなものとして結び付けているのだが、ここではタージ・マハルとアーグラ城との関係性に着目するとしよう。

タージ・マハル
※筆者撮影(2024年)

タージ・マハルはシドニーのオペラ・ハウス、カンボジアのプレア・ビヒア寺院に次ぐ数少ない登録基準(i)のみで世界遺産に登録された遺産となっています。登録基準(i)は人類の創造的資質を認める基準であるのだが、通常は他と併用されての登録となります。

タージ・マハルの世界遺産登録に関するICOMOS評価(1983)

なぜ、登録基準(i)のみでの登録となっているかは「すべてがわかる世界遺産1500」をはじめとする専門書でもほとんど明記されていないのだが、1983年当時のICOMOSによる文書を確認するとアーグラ城との棲み分けによる登録であったことが推察できます。

That the proposed cultural property and that of the Agra Fort form a joint proposition for inscription on the World Heritage List.
提案された文化財とアーグラ城塞の文化財は、世界遺産リストへの登録に向けた共同提案となる。

タージ・マハルの世界遺産登録に関するICOMOS評価(1983)

This exceptional moment, the Taj Mahal, could be inscribed on the World Heritage List based on criterion I.
ICOMS would propose, however, that cultural property should be cited in
a new proposition which would not dissociate it from the Agra Fort, another monument of the Mogul dynasty.
この例外的な瞬間であるタージ・マハルは、登録基準(i)に基づいて世界遺産リストに登録される可能性がある。しかしながら、ICOMOSは、ムガル帝国のもう一つの記念碑である文化財アーグラ城と切り離さないような新しい提案で引き合いに出されるべきである。

タージ・マハルの世界遺産登録に関するICOMOS評価(1983)
アーグラ城
※筆者撮影(2024年)

アーグラ城はタージ・マハルの近くにある世界遺産。タージ・マハルと同様に1983年に世界遺産に登録されたのだが、元々は2件をセットとして世界遺産に登録しようと考えていた模様。しかし、シリアル・ノミネーション・サイトの概念がない時代に離れた場所の遺産をひとつとして登録することは困難だったようで、登録基準(i)を担うタージ・マハルと登録基準(iii)を担うアーグラ城といった形で分離して登録。その際、ICOMOSとしてはムガル帝国の歴史的記念碑として双方を引き離して考えない方が良いと判断している。『落下の王国』はあくまで空想の世界としてふたつを繋げていたのだが、現実としても結び付けて考える必要があるのです。

28.スラムドッグ$ミリオネア(Slumdog Millionaire、ダニー・ボイル、2008)|チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅

アジア最大のスラム街・ムンバイ。ゴミ山で育ちコールセンターのアシスタントをしていた男ジャマールは人気クイズ番組「クイズ$ミリオネア」で最終問題を残しすべて正解する。しかし、不正を疑ったゲームマスターの手により警察へ連行され拷問を受ける。どこでその問題の答えを知ったのかをジャマールは語り始める。壮絶な人生を歩んだ男が運命で夢を掴もうとする様を『トレインスポッティング』のダニー・ボイル監督はスタイリッシュに演出しました。逆境を幸運に変えていく場面の連続にハラハラドキドキさせられる。このインドドリーム映画『スラムドッグ$ミリオネア』は第81回アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞含む8部門を受賞しました。

クイズは選択の連続。それは人生も同様であり、常に苦渋の選択をおこない、一手間違えれば取り返しのつかないこととなる。絶望的な状態であるが運命を信じて最前手を選んでいくジャマールの人生は観る者に勇気を与える。

たとえば幼少期のジャマールに目を向ける。スラム街にアミターブ・バッチャンが現れる。アミターブ・バッチャンとは、インドで8年もロングランした伝説の映画『炎』や『家族の四季 愛すれど遠く離れて』で知られる大スター。知らない者はいないであろう大物です。

実際にインドへ訪れた際にガイドとインド映画の話をしたのだが、サタジット・レイは知らずともこの名を口にした途端、饒舌に語り始めるほどに今でも愛されている俳優なのです。誰しもがサインを貰おうと群がる。トイレに閉じ込められたジャマールは意を決して便所穴に飛び込み、汚物まみれの状態で突撃する。あまりの激臭にまるでモーゼさながら群衆は道を開け、彼はアミターブ・バッチャンからサインを貰うことに成功する。

そんな『スラムドッグ$ミリオネア』の中盤、スラムから逃げて離れ離れとなったラティカと駅で再会するシーンがある。大波の人海の渦中に彼女の姿を見出したジャマールだったが、ラティカは悪党に誘拐されてしまう。実は、この場面とエンドロールのダンスシーンで使われた場所は世界遺産となっています。

チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅は、イギリス人建築家フレデリック・ウィリアム・スティーヴンスの手によって設計されました。1878年から10年もの歳月をかけて完成した駅はインドの伝統的な建築様式と英国ヴィクトリア朝のゴシック・リバイバル様式を織り交ぜており、建築技術の素晴らしさだけでなく文化的価値観の交流の顕著な見本として登録基準(ii)(iv)が認められています。

元々はヴィクトリア・ターミナス駅といった名前で知られていたのですが、英国植民地時代の名残があるとして1996年にチャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅に改名された。世界遺産としてはこの名前で登録されているのですが、その後2017年に「マハラージ」が追加され、現在では「チャトラパティ・シヴァージー・マハラージ・ターミナス駅(CSMT)」が正式名称となっています。

29.ユートピアの力(The Power of Utopia: Living with Le Corbusier in Chandigarh、カリン・ブッハー、トーマス・カラー、2023)|チャンディガールのキャピトル・コンプレックス

2026年5月に渋谷ユーロスペースにて組まれた特集《ル・コルビュジエとドーシ インドのモダニズム》。建築界の巨人であるル・コルビュジエと彼の弟子であるB・V・ドーシにまつわる2本のドキュメンタリー映画が上映されました。『誓い 建築家B・V・ドーシ』では、インド映画『きっと、うまくいく』のロケ地として知られるインド経営大学バンガロール校などを設計したB・V・ドーシのル・コルビュジエから継承し応用させていった哲学が語られます。学校をデザインする際に、あえて迷路のような複雑な造形にすることで思わぬ出会いを生み出し、時間から解放された知の交流が実現できるといった哲学に惹き込まれるものがあります。

そして『ユートピアの力』では、「ル・コルビュジエの建築作品:近代建築運動への顕著な貢献」の構成遺産でありながらも日本では話題に挙がりにくいインド・チャンディガールのキャピトル・コンプレックスについて知ることができます。建築家であり美術史家の山名善之「世界遺産 ル・コルビュジエ作品群」によれば、世界遺産登録においてインドが鬼門になったとのこと。ル・コルビュジエの建築作品が世界遺産選定の議論に挙がったのは2000年頃。インドはフランスの次にル・コルビュジエの作品が多く、『誓い 建築家B・V・ドーシ』でも登場したアーメダバードの繊維業会館をはじめとし7件の物件が世界遺産登録推薦の候補に挙がりました。しかしインドは一度、世界遺産登録推薦を辞退している。山名によれば、「インド中央政府内で調整ついていなかった」「チャンディガールの南北を縦断するかたちで高架モノレール建設の話もあり人々が住み、生き続け発展する街において世界遺産として何を保護するかという議論が収束しなかった」などといった憶測があったと語っている。

後者に関しては『ユートピアの力』で学ぶことができる。結局、インドからは「チャンディガールのキャピトル・コンプレックス」が構成遺産として登録されたわけだが、現在進行形で建築と都市開発との間で問題が生じている。1952年にチャンディガール州の独立を象徴するよう、また輝く都市やアテネ憲章の理論に基づきに開発されていった。壮大な都市計画であったが故に、ル・コルビュジエが他界した1965年時点では合同庁舎、高等裁判所、州議事堂の3つしかキャピトル地区に建設されていなかったのだが、その後に陰の塔、殉教者の碑、幾何学的な丘、開かれた手が建てられました。『ユートピアの力』での取材によれば、インドの都市開発は非人道的であったがチャンディガールは人間に歩み寄っておりインスピレーションが掻き立てられる場所として機能しているとのこと。一方で、国立西洋美術館もそうだが、ル・コルビュジエは現場にあまり足を運んでおらず、部下の手によって建てられたことも強調されていた。

「チャンディガールのキャピトル・コンプレックス」はモデル都市としてインド中に広がり、移住者が急増。数十万人ものキャパシティに対して1,700万人近い人が集まってきたため、急ピッチで周辺に都市が作られている人口増加の問題点が触れられていました。また、この地の都市開発の歴史や理念がインドの学生に十分伝わっていない点も指摘されており、いかに教育していくか、フィールドワークを通じて学生たちに何を学び取ってほしいかも言及されていた。世界遺産は登録が目的ではない。歴史や思想をどのように伝えていくかが重要であり、そのことは世界遺産条約でも「教育・広報」の項目として存在する。その実践の模索が本作で学べるのです。

30.旅のおわり世界のはじまり(黒沢清、2019)|サマルカンド

ホラー映画の鬼才・黒沢清は2019年に全編ウズベキスタンで撮影した映画『旅のおわり世界のはじまり』を発表している。彼は『Seventh Code』『散歩する侵略者』でAKB48の元メンバーである前田敦子との相性の良さを確信したのだろうか、ウズベキスタンのエキゾチックな風景を背に前田敦子の運動を捉えることに全神経を集中させた異色作となっています。

いきなり、前田敦子演じる葉子が走るところから始まる。ウズベキスタン人が、俺のバイクに乗れとせがむが、彼女はひっきりなしにNoという。しかし、最後には諦めてそのウズベキスタン人の指示に従う。彼女はドキュメンタリー番組のリポーターでありながら常に孤独。男性スタッフは、彼女をモノとしてしか扱わない。悪酔いする遊園地のアトラクションに4度も連続して乗せる程の鬼畜っぷりを魅せます。これは、黒沢清の意地悪さが全編に染み出している。そのため、物語は非常に歪で結局何故彼女は歌う必要があったのかなんてよくわからない。前田敦子が元AKBのメンバーだったという設定を知らなければ、彼女の語る「歌がついてこないんです」という言葉は全くわからないのです。

しかしながら、『旅のおわり世界のはじまり』は海外に出る日本人の傲慢さを痛烈に皮肉った作品と捉えることができます。

本作に登場する日本人スタッフは、全員ウズベキスタンを見下している。単なるロケ地としか思っていない。前田敦子演じる葉子は、ウズベキスタンにいる間、ほとんど日本語で話す。ウズベク語でAssalomu alaykum!(=こんにちは)、Rahmat(=ありがとう)、Kechirasiz(=ごめんなさい)なんてことは絶対に言わないし、英語もなるべく使わない。

食堂のおばちゃんが、現地料理プロフに火が通っていなかったことを猛省し作り直すのだが、彼女はありがとうも言わない。見かねた彼女は手土産を渡すのだが、ムスッと受け取る。彼女はバスに乗る。どこに行きたいのか、現地人は訪ねているのに、「No,No」と施しを拒む。そして、彼女は身勝手なままにウズベキスタンの街並みを駆け抜ける。しまいには、撮影禁止区域を撮影し警察に止められるや否や走って逃げ出してしまうのです。ウズベキスタンはリヒテンシュタインと並ぶ数少ない二重内陸国故、海への憧れを語られるが、「海なんか危険なところよ」と相手の気持ちなんか考えない発言までしてしまう。日本人観光客は、割と旅行先のことを調べない。ツアーなんかに行くと、現地語も英語も全く使おうとせず、現地人との交流も拒み、ただ物珍しそうに見る人が必ずいる。そういった人に漂う、見下した目線をこの映画は強烈なカリカチュアとして描写しているのです。

実際に本作ではサマルカンドでロケが行われているのですが皮肉にもサマルカンドは、「人々が出会う街」という意味があります。紀元前からシルク・ロードの重要都市として栄え、ホラズム・シャー朝やティムール朝の首都にもなりました。ティムール朝の時代には、青色を好むティムールがサマルカンド・ブルーを用いた建物を次々と建てたため、「青の都」と呼ばれるようになりました。2018年より日本国籍の人は条件を満たせばビザなしで滞在できるようになり、一時期旅行好きの間で青い街を一目見ようと注目されました。

映画に話を戻すと、海外ロケであっても黒沢清のホラーテイストは変わることはありませんでした。暗がりの中、葉子が歩いていると、近づいたら危険な若者集団が目の前にいる怖さ、道に迷い帰れなくなるかもしれないという恐怖。ウズベキスタン、サマルカンドの青の世界とはかけ離れた場所を黒沢清は撮るのです。これは、海外旅行でホテルにたどり着けない恐怖や、真っ暗闇の空間に迷う経験、英語が通じない国に行ったことのある者にとってもリアルに感じる恐怖描写でありました。

【目次】

【参考文献】

すべてがわかる世界遺産1500(上巻) 世界遺産検定1級公式テキスト(世界遺産検定事務局 、2024/3/22)
すべてがわかる世界遺産1500(中巻) 世界遺産検定1級公式テキスト(世界遺産検定事務局 、2024/3/22)
Quentin Tarantino holds out for HERO(FANGORIA、2004/3/15)
キネマ旬報ベスト・テン90回全史(キネマ旬報社、2017/7/28)
九寨溝(「セイナン・スカイ」九寨溝館~四川省中国旅行社)
青海フフシル(Qinghai Hoh Xil)(UNESCO)
世界の記憶 高麗大蔵経板および諸経板 (2007)(国家遺産庁)
海印寺(VISITKOREA)
・記憶の場 1《対立》(ピエール・ノラ、岩波書店、2002/11/8)
江戸時代、アンコール・ワットに落書きした武士がいた!?(刀剣ワールド)
「なぜダメ?」 悪びれず落書きする外国人、掴めぬ真意 日本人武士もかつてカンボジアで #エキスパートトピ(南龍太、Yahoo! Japanニュース、2026/2/8)
タイ映画「すれ違いのダイアリーズ」 ニティワット・タラートーン監督単独インタビュー(吉田彩緒莉、タイランドハイパーリンクス、2015/9/24)
ケーン・クラチャーン森林関連遺産群(UNESCO)
タージ・マハル(UNESCO)
Mumbai Railway station renamed to Chhatrapati Shivaji Maharaj Terminus(Maharashtra Times、The Times of India、2017/6/30)
世界遺産 ル・コルビュジエ作品群(山名善之、TOTO出版、2018/3/20)

※サムネイルの写真は『落下の王国』のロケ地でもある「タージ・マハル」です。(筆者撮影)


いいなと思ったら応援しよう!

CHE BUNBUN 映画ブログ『チェ・ブンブンのティーマ』の管理人です。よろしければサポートよろしくお願いします。謎の映画探しの資金として活用させていただきます。