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『ミッション:幼稚園送迎』 ――効率と愛情のハザマで、パパが「解析」に夢中になる理由

【連載:育児全史】 1話2話3話4話5話6話7話8話9話
10話 11話12話13話▶14話この記事です

1. 家族は最強の「チーム」である――Googleカレンダーと担当制

わが家には明確な「担当制」というルールがある。基本、嫌われ役(しつけや管理)を妻が担ってくれる代わりに、私が家にいる時間は「娘の全担当」を引き受ける。おやつ、飲み物、遊び相手。すべてが私のミッションだ。

この運用を支えるのは、Googleカレンダーによる可視化である。私、妻、そして「第二の母親」を自負する私の実母。この3人でカレンダーを共有し、幼稚園の年間行事、夫婦のシフト、母の予定を色分けして管理している。CSVファイルで一括インポートし、パパッと「誰がいつ動けるか」を最適化するプロセスは、仕事のプロジェクト管理そのものだ。

朝、娘が「今日は誰の日?」と聞いてくる。カレンダーという共通言語があるからこそ、娘もまた、今日のチーム体制を理解し、安心して一日をスタートできる。「パパ、今日はパパの日だね!」その笑顔を見るだけで、私の解析スイッチが入る。

2. 「ママが良い」という、誇らしき意思表示

妻がパートへ向かい、私が休みの日の朝。事前にすり合わせた「線引き」に従い、家庭内のバトンタッチが行われる。 「朝ご飯だけで良いよ」と妻には伝えていたのだが、ここで娘から明確な「物言い」がついた。

「ダメ、パパ。髪の毛結ぶの下手だからヤダ。髪の毛はママが良い!」

正直に言えば、パパとしては少しだけ苦笑いしてしまう瞬間だ。けれど同時に、胸の奥で深い喜びが込み上げてくる。かつては泣くことでしか感情を伝えられなかった彼女が、今では「誰に、何を、どうしてほしいか」を、自分の言葉でハッキリと主張できるようになった。

「パパよりママの方が上手」という客観的な比較検討までできている。これは立派な成長の証だ。自分の意思をしっかり示せるようになった娘を、私は誇らしく思いながら、「分かった、髪の毛はママにお願いしようね」とバトンを受け取った。

3. 「脳内やることリスト」と、愛すべきバグたち

髪を結んでもらった娘を送り出すべく、私のターンが始まる。「朝食の片付け」「ゴミ集め」「登園準備」。私の脳内には、バスの到着時間から逆算した緻密な「やることリスト」が生成される。

だが、現実はそう甘くない。愛らしい「バグ」が次々と発生するのだ。 「パパ、トイレ怖い、ついてきて」 「パパ、靴下がうまく履けないの」 割り込みタスクが次々と発生し、アレクサが無情にも出発の時間を告げる。

以前の私なら、進捗の遅れに焦りを感じていた。けれど今は、考え方を変えた。私は「脳内リスト」の最上位(優先順位1位)に、「娘を笑顔で送り出すこと」を固定した。あとの家事はすべて付随作業。娘を見送ってから、主体作業へと繰り上げることにしたのだ。

バスを大きく手を振って見送った瞬間、私は一人のエンジニアのように残りのタスクをテンポよく片付けていく。洗濯、皿洗い、掃除機。ふと時計を見れば、もう13時過ぎ。「なんだ、もうこんな時間か」と苦笑いしながら、掃除機を片付ける。

ふと訪れたリビングの静寂。ついさっきまでの嵐のような賑やかさが嘘のようだ。この一瞬の静けさすらも、ミッションを完遂した証だと思うと、少しだけ誇らしい。私はこの「全力で駆け抜ける時間」に、どこか心地よい夢中を感じている。

4. 「ワガママ」と「正当な主張」の境界線

娘が自分の意思をハッキリ示せるようになったある日のこと。妻が「ウインナーかベーコン、どっちがいい?」と娘に聞いた。娘は「ベーコン」と答え、妻も「はーい」と応じた。 ところが、食卓に並んだのはウインナーだった。

「ベーコンは……?」と戸惑う娘に、妻は「ワガママ言わないの」と返した。私はここで、そっと間に入ることにした。

「ベーコンだったんじゃないの? 正直、私もベーコンが出てくると思っていたよ」

妻に理由を聞けば「賞味期限がウインナーの方が近かったから」と言う。理屈はわかる。だが、手順が違う。

「ちょっと待って。それなら、その時点で言わなきゃダメだよ。だって、どっちがいいか聞いたでしょう? 変わるなら言わないと。賞味期限が近いからウインナーにして、と言った時にそれでも娘がベーコンがいいと言うなら、それはワガママだけど、今の娘の主張は間違っていない。ワガママじゃなくない?」

妻も気がついたらしく、「ごめん、確かにそうだね」と認めてくれた。「ウインナーはパパが食べるから、ベーコン焼いてあげて」と伝えると、娘はパッと明るい顔になった。 子どもだからと否定するのではなく、正当なロジックがあるなら全力で擁護する。娘が「自分の意思を尊重してもらえる」という安心感を持てるように。それが、いつか彼女が社会の荒波に出たときの、一番の武器になると信じている。

5. 私は「娘の未来」の解析に夢中だ

スマホのアプリで幼稚園バスの運行状況を確認し、時間を見計らって迎えに行く。 バスのドアが開き、娘が飛び出してくる。その瞬間の彼女の表情を、私は逃さず「解析」する。今日はどんな冒険をしてきたのか、その小さな瞳に映る世界を、私はもっと知りたいと願っている。

「仕事と大差ないな、これ。正直、時間が足りないよ」 パートから帰った妻にそう報告すると、彼女は楽しそうに笑った。 だが、これはただの弱音ではない。私は本気でそう感じているのだ。

仕事は、チームや部署といった「組織」のバックアップがある。トラブルが起きれば分担もできる。けれど、家事は違う。たった一人で、マルチタスクを同時並行で回し続けなければならない。これを毎日当たり前にこなしている世の中の親たちには、正直、感心するしかない。

家事や育児を効率化するのは、単に楽をしたいからではない。余計なノイズを削ぎ落とし、娘のわずかな成長のサインを、高い解像度で見つめることに夢中になりたいからだ。

私は、娘という名の「変化し続ける愛おしい被写体」を、誰よりも近い特等席で見守り続けていたい。 「パパは、当たり前にそこにいて、当たり前に自分を守り、家を回していた」 その記憶が、彼女が将来、誰かと人生を歩むときの健やかなベンチマーク(基準)になってほしい。

娘は、小学校へ通う年齢となった。 新しい環境、新しいミッション。 そのすべてを解析し、最適化し、彼女の笑顔を守り抜くこと。 私はこれからも、娘という名の「愛おしい謎」を解き明かすことに、ずっと夢中であり続けたい。

結びの言葉

結局のところ、私が「解析」に夢中になっているのは、効率化のためではない。無駄な時間を削ぎ落としたその先に、娘の屈託のない笑顔や、小さな成長の瞬間を、誰よりも鮮明に、誰よりも近くで「目撃」したいからだ。
パパという「避雷針」は、これからも娘に降りかかる困難を逃がし、彼女が自分の足で、自分の意志で歩んでいけるよう、静かにその背中を見守り続けていたい。


 あとがき

最後までお読みいただき、ありがとうございます。
わが家の「担当制」や「Googleカレンダー運用」は、一見すると冷徹なビジネスのように見えるかもしれません。けれど、家事という「組織の後ろ盾のない孤独なマルチタスク」を回し、娘という「予測不能な愛おしい存在」と向き合うには、私にとってはこの戦略的なアプローチこそが、最大の愛情表現なのです。
娘は小学校へ通う歳になります。 「避雷針パパ」のミッションも、また新しいフェーズ(小学校編)へと突入します。これからも、試行錯誤と解析の記録を綴っていければと思います。


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